【トップ直撃】趣味の「中国情報局」から日中友好ビジネス“橋渡し”

★サーチナ・端木正和社長

2011.05.02


サーチナ・端木正和社長【拡大】

 中国(チャイナ)の情報を検索(サーチ)するから、「サーチ」「チャイナ」で「サーチナ」。反日教育が徹底されている中国で生まれながら、日本の美学を受け入れ、日中友好がビジネスを通じてさらに深まるよう尽力してきた。真のパートナーになるにはまずお互いを知ること。必要なのは情報だ。(久保木善浩)

 ――ウェブサイトの「サーチナ」では、中国を中心とした政治、経済、エンタメなど幅広い情報を日本語で提供しています

 「中国株の取り扱いを始めた証券会社への情報提供がきっかけでビジネスが軌道に乗りました。2001年ごろですね。中国情報サイトとして知名度も上がり、ある程度安定した広告収入を得られるようになりました」

 ――「僕は商売人じゃない」とおっしゃられているそうですね

 「お金に対する執着があまりないのです。会社を立ち上げて1〜2年は自分で決算をやっていましたが、その後はお金をほとんど触っていません」

 ――お父さまが他界された後、17歳で来日しました

 「最初の2〜3週間は言葉もまったくできないなか、皿洗いのバイトです。都内の南大塚にあるアパートに入り、そこでは6畳の部屋に男女8人が暮らしていました」

 ――6畳に8人!

 「2人いた20代の女性が下着姿で寝転がっていたり。鼻血が出そうなほど衝撃的でしたね、ハハッ。その後、友人と中野のアパートに移ったときは、4畳半がものすごく広いと感じましたね」

 ――日本の好きなところは?

 「繊細と一生懸命。この2つが日本文化を代表する2つの言葉かな、と私なりに思っています。努力する、命を懸けるという価値観も共感できます。結局、日本文化を好きになるのは、日本の美学、美意識を受け入れるかどうか。拒否反応が出る中国人が多いなか、僕は受け入れられました」

 ――それはどうしてでしょうか?

 「僕は10代のうちに日本へ来ました。中国で完全に教育を受けていたらダメだったでしょう。もうひとつは出会い。ここまでたくさんの日本人に助けてもらい、感謝しています。運がよかったのかもしれません」

 ――中国へ日本文化を売り込みたい、と考えているとか

 「日本の商品そのものが日本文化の一部です。繊細、一生懸命といった要素が詰まっています。モノをどんどん輸出すべきです。そのとき、見習うべきPRの手段はアメリカでしょう」

 ――アメリカ?

 「アメリカは核爆弾を使わず、コーラ、ハンバーガー、ハリウッド映画で世界を“征服”しました。特に映画によって『アメリカ人は地球のために戦うんだ』などと思わされ、親しみを感じてしまう。そうするとアメリカの商品を気軽に受け入れてしまいますよね」

 ――日本も戦略的な映画を製作すべきでしょうか

 「例えばホンダ創業者・本田宗一郎さんのサクセスストーリーとか、ぴったりでしょう。『日中友好』と叫ぶよりよっぽど効果的です。反日教育によるマイナス感情を払拭し、そうして、お互いが利益を得て豊かになれる方法を考えるべきなのです」

 ――今後、中国はどうなるのでしょうか

 「経済改革を30年やってきました。この次は政治改革です。どのように緩やかな政治改革をするか。現在の安定成長路線の下で五輪、万博を開催し、GDPでも日本を抜きました。ところが、やることがなくなると目標を失います。習近平(国家副主席)さんの時代にどうなるか、心配ではあります。何も努力しなければ国はバラバラになります。これは歴史の法則です」

 【会社メモ】日本最大の中国情報ポータルサイト「サーチナ」を展開し、両国をつなぐ情報を発信している。金融機関への中国株株価や銘柄に関するシステム提供のほか、中国専門のシンクタンク機能も備える。1999年設立、資本金1億1120万円。2010年2月、ネット証券最大手のSBI証券などで形成される総合金融のSBIグループに入った。10年3月期の売上高は4億3600万円。常勤従業員39人。

 【学生時代】東京都府中市にあった寮に入り、武蔵野市のキャンパスまで自転車で通っていた。通学路には墓地が多かったため「夜は気味が悪かった」という。「反省しなければいけませんが、実は得るものがあまりなかったですねぇ。もう一度、大学へ行けるチャンスがあったらしっかり勉強したい。そして友だち付き合いも。今、連絡を取り合う大学時代の友人がほとんどいません。これが残念です」

 【日本の第一印象】「日本がどうこうというより、田舎出身だったので都会とのギャップが大きかった。そして、水道水のおいしさにはびっくりしましたね。蛇口から出る水をいくらでも飲めるのは『すごいなぁ』と感じました」

 【日本語の失敗談】「大学を卒業してから就職した会社で、ある書類に『御社』と書くところを『貴様』としてしまって…」

 【健康法】毎朝の太極拳。スポーツは卓球が得意。

 「太極拳は朝に5〜10分、身体を動かして。一日の準備運動みたいなものです。卓球は中国にいるとき小学校、中学校でやっていたので、わりと得意になったのでしょう」

 【好きな芸能人】女優の北川景子。「きれいな方ですねぇ」

 【読書法】気になった本の表紙、裏表紙を見て、中をパラッとめくり、目次を読む。面白そうな部分があったら、そこを重点的に読む。「ですからここ10年くらい、最初から最後まで精読したことがほとんどないのです。ただ中学、高校のときは小遣いのほとんどは本に使いましたね」

 【音楽】「あまり聞きません。カラオケ? 歌いませんねぇ」

 【睡眠時間】5〜6時間

 【お酒】基本的に飲まず、「いつもウーロン茶でごまかしています。飲めない体質なんです。でも、楽しく食事をするのは大好きです」

 【尊敬する歴史上の人物】日本では江戸末期の幕臣、勝海舟。中国ではトウ小平元国家主席。「勝さんは己のことではなく、世の中の大きなことを考えていたところが好き。トウ小平さんは何回も失脚しながら、70歳を過ぎてから復活しました。強靱な生命力を尊敬しています」

 【SBIホールディングスの北尾吉孝CEO】上司というより師匠だと思っている。「信・義・仁といった行動の指針を持っているため、ブレません。リーダーにぴったりの方で、いつも私は『なぜ政治家にならないのか』と言っています」

 【家族】妻と3歳の娘

 【引退後は?】中国の上海で幼稚園を経営したいと考えている。「そのための準備として、家内に保育関連の勉強をしてもらっています。今後、アメリカ留学してもらう予定です。インターネット関連と教育では全く違う分野ですが、基本的に変わらないのは、日本と中国の良好な関係づくりに役立ちたいということ。日本と中国にとって有益な人材を育てたいです」

 ■もとき・まさかず 1971年12月9日生まれ、39歳。中国・福建省出身、両親は中国人。17歳のときに留学生として来日。亜細亜大法学部卒。日本の商社へ入学し、営業を担当した。98年に退職してポータルサイトの「中国情報局」を開設。99年にサーチナを設立した。

 

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