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福島第1原発:過酷作業 防護服にマスク「サウナ状態」

東京電力が9日に撮影した福島第1原発1号機原子炉建屋内で作業する人=東京電力提供
東京電力が9日に撮影した福島第1原発1号機原子炉建屋内で作業する人=東京電力提供

 東京電力福島第1原発事故の復旧作業で、作業員らの安全確保のルールや手順がなし崩し的に緩和されていることが分かり、作業員の間に不安や戸惑いが広がっている。こうした規制の緩和に加え、過酷な作業環境やそれらに伴う人的ミス、専門外の慣れない作業内容など、作業員を取り巻く状況は複合的な危険にさらされているとの懸念も指摘されている。【町田徳丈、市川明代、日下部聡】

 福島県に住むベテランの下請け作業員は先月、福島第1原発のタービン建屋の汚染水を排水するため、現場でホースを取り付ける作業に従事した。原発から約20キロ南の福島県楢葉町にあるナショナルトレーニングセンター「Jヴィレッジ」で防護服や全面マスクなどの装備をもらい、所属する会社の車で第1原発の構内拠点の免震重要棟へ。作業直前に線量計をつけ、現場に向かった。

 暖かい季節となり、マスクなどのフル装備は「サウナスーツを着ているようなもの」。しばらくするとマスクには数センチの汗がたまり「熱中症で倒れている人がたくさんいる」という。「途中で苦しくなったら『しゃがんで落ち着いて深呼吸をしろ』と言われた。(作業は)正直2、3時間が限度。これから夏になったらさらにきつさが増す」と懸念する。

 作業にあたったのは約10人。タービン建屋の中は湿度が高く、さらに暑く感じたという。敷設したホースは太さ約10センチ、長さ20メートルほどの蛇腹。それを金具でつなぎ合わせて構内の集中環境施設のタンクまで延長する。

 現場のタービン建屋の床面はぬれていた。津波の水か放水かは不明だが「間違いなく放射性物質で汚染されている」と感じた。ホースは2人1組で運ぶが、重いため転がした。ホースもぬれ、「これ、やばいんじゃないの」と思わずつぶやいた。敷設の際には再び肩にかつぎ、首筋から後頭部にかけホースが当たった。防護服は耐水性のものではなく、水がしみ込んだ。「元請けの放射線管理担当者の事前サーベイ(調査)がちゃんとなっていなかった。原発の仕事で『水に触るな』は原則なのに」

 作業後、放射性物質が体に付着する「身体汚染」が判明した。一緒に作業していた約10人も同じだった。そもそもホースの敷設は専門外だった。「簡単に誰でもできる作業。だから『応援してもらいたい』(と元請けから依頼された)ということだったと思う。一緒にいた約10人は全員、ホースの作業は初めてだった。元請けの現場責任者から指示を受けてやった」

 身体汚染した作業員のうち3人は、放射性物質を洗い流す「除染」を完全にできなかった。暑さで毛穴が開き、そこに放射性物質が入り込んだ後、毛穴が閉じた疑いがあるという。だが、汚染部位などを記録した「確認証」を東電から発行され、作業に復帰した。

 「今は何でもあり。『まずは(原発の)いまの状態を止めろ』と。多少のことは目をつぶるという感じ」。作業員はそう指摘する一方、「怖いっすよ。この先、どのくらいの放射線量を浴びるのか」と漏らした。

毎日新聞 2011年5月14日 2時34分(最終更新 5月14日 2時53分)

 

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