※世界日報社は米紙クリスチャン・サイエンス・モニターと提携しています。

2008年11月24日

「黒人大統領」にうごめく白人優越主義−米国

人種絡む事件 200件以上

南北分離主張も台頭?

 ジョージア州の片田舎で、オバマ次期大統領についての「不適切な」コメントをネット上に書き込んだ高校生のグループが、シークレットサービスの事情聴取を受けた。ノースカロライナ州ローリーでは、四人の大学生が、歩行者用トンネルに、人種差別を思わせるセリフをスプレーで落書きしたことを認めた。六日、ペンシルベニア州アポラコンでは、異人種間カップルの家の庭で(KKKの象徴とされる)十字架が燃やされた。

 公民権保護の活動をしている南部貧困法律センターによれば、米国で初めて黒人の大統領が選ばれたことで、人種偏見に基づくとみられる事件が二百件以上も起きたという。人種の壁を乗り越えたとして多くの有権者が胸をなで下ろした選挙結果に対して、白人優越主義を主張する人々は「オバマ氏の勝利は、むしろわれわれの賛同者を増やす結果となる」とみており、これまでは牙を抜かれたも同然だった勢力が新しい力を得る恐れがあるとして、警戒する声が上がっている。

 カリフォルニア州立大学サンベルナディオ校のブライアン・レビン教授は「白人優越主義者の活動の多くは暴力的なものではないが、本質的に暴力的な内容があり、権力から疎外されたと感じている人々と結び付こうとしている」と分析する。「問題は、この小さな渦が竜巻になるのか、不吉な風になるのかということだ。まだそれほど深刻ではないが、地平線にはほこりが舞い上がっていて、風の渦は少しずつ(暴風へと)集まりつつある」(レビン教授)

 ルビーリッジ事件、ウェイコー事件、オクラホマシティー連邦ビル爆破事件(いずれも白人の犯人と連邦政府が対立した事件)と、一九九〇年代に対決が一気にエスカレートした後、白人優越主義や国粋主義のグループは今世紀に入り、ほとんどが無力になった。非白人の移民の増加によって、こうしたグループの数は、二〇〇〇年の六百二から、〇七年の八百八十八に増えたものの、主なリーダーたちは死ぬか、刑務所に入るか、さもなければ見向きもされなくなっていた。

 ところが、今回の大統領選挙後、少なくとも二つの白人優越主義グループのウェブサイトに、サーバーがダウンするほどアクセスが集中した。また、連邦政府からの分離を標榜する南部連盟というグループの場合、サイトへのアクセスはそれまで毎月五万件程度だったのに、投票日の十一月四日以降だけで三十万件にもなり、電話も鳴りやまないという。

 白人優越主義者のプロパガンダも活発になっている。十字架を焼いたり、オバマ暗殺の可能性を賭けたり、オバマ人形をつるしたりといった不穏な事件が、メーン州からアラバマ州にかけて報じられた。

 南部貧困法律センターのマーク・ポトク氏は「われわれは人種間戦争やそれに近い事態を予想しているわけではない」としながらも、「しかし、一部の白人の強烈な反発は間違いない。(景気の後退で)職を失う人が増えれば、それにつれて状況も悪くなる」と懸念する。

 エモリー大学(ジョージア州)のメール・ブラック教授は「ミシシッピ、ルイジアナ、アラバマなどディープ・サウスと呼ばれる南部の州では、人種ごとの投票傾向がはっきりしている。黒人が、オバマ氏は彼らの利益や意見をこれまでとは異なる方法で体現すると信じているのに対して、白人たちの受け止め方は全く正反対だ」と述べる。

 南部連盟の主張をブログで展開するマイケル・タグル氏は、自分たちは非暴力の分離主義者であるとして、米国の方向性と南部の役割についてより活発な議論が起きることが目標だと説明する。

 もちろん、一八六〇年代のような南北分裂を目指しているのではなく、むしろ、スペインが向かっているような「広範な自治権を有する地域の連合」がモデルだという。それによって、連邦政府の野放しの権力を抑えるのだとしながら、タグル氏はこう力を込める。

 「分離という考えは、今やそれほど気違いじみたものではない。自分たちが見捨てられていると思っている人は多い。われわれは、何か奇怪で急進的なものが、われわれの国を乗っ取ってしまったと感じている」

(米紙「クリスチャン・サイエンス・モニター」特約)