2011年01月27日

シンポジウム「科学的手法によるアニメ人材育成変革の可能性」

 昨日(1月26日〈水〉)の午後、六本木ヒルズの49Fにあるスカイスタジオで開催された「科学的手法によるアニメ人材育成変革の可能性」というシンポジウムに参加してきました。

 これは日本動画協会・経済産業省・東京大学 人工物工学研究センターの共催によるもので、政府の「クールジャパン」構想の一環として、輸出産業であり文化産業でもあるアニメの人材育成について考えていこう、という主旨のようです。

 ぼくは大学院の修士論文で「マンガ教育(マンガを描いてみたい初学者向けの教材開発+eラーニング授業の設計と実践)」をテーマにした関係で、アニメの人材育成にも関心があり、出かけてみることにしたものです。

 本当は23日(土)にも、秋葉原のデジタルハリウッド大学で開催された『漫画家白書』の発刊記念プロジェクトにも出かけたかったのですが、こちらは緊急に歯医者に行く用事が入ってキャンセルしてしまいました(先週、抜歯した後に入れた仮歯が落ちてしまい、急ぎ修理してもらうことになったため)。

 シンポジウムでは、早稲田大学高等研究所の七丈直弘准教授が担当しているはずのアニメの現場を「エスノグラフィー」という手法の内容や、アニメの現場の分析結果について知りたかったのですが、今回は「中間報告」なのだそうで、具体的な手法や例は紹介されませんでした。

 今回は第1回ということもあってか時間も短く、まずは現在のアニメ業界が置かれた実状と人材育成の方法について、日本動画協会の布川郁司理事長(スタジオぴえろ社長)と事務局をつとめる株式会社シンクの森祐治社長(以前、早稲田大学大学院アジア太平洋研究科で講演をさせていただいたとき、聴講していただいたことがあります)から説明があり、つづいて七丈先生の「制作工程分析」についての報告があった後、休憩を挟んでパネルディスカッションとなりました。

 こちらは日本工学院専門学校クリエイターズカレッジ・カレッジ長の佐藤充氏、株式会社フロントメディア取締役(元マッドハウス代表取締役)の増田広道氏に、森氏と七丈先生が加わって、アニメ業界の人材教育の現状について、海外のICT利用によるアニメ技術の革新ぶりなどについて説明がありました。

 日本のアニメ業界の得意技は、セルに絵を描く2次元(2D)アニメですが、いまや時代はCGアニメであり、3Dのアニメが主流の時代。そんな海外の動きに対抗できる人材を育てる必要があるのですが、でも、そんな技術に興味を持つ人材は、定収入のアニメ業界には来ないで、ゲームやWebの世界に行ってしまうという現実があります。

 ここで気になったのは、日本工学院の佐藤先生の言葉。最近のアニメが好きで、アニメの業界に「憧れて」入学してくる若者が多いそうですが、目立つのは「人間力の弱体化」だとのこと。そのため入学時の導入教育をはじめているとのことですが、その前に、コミュニケーションスキルが乏しい学生も多いことから、「まず挨拶をしよう」と、教職員の側から学生に声をかけているそうです。

 マンガ家も、編集者やアシスタントのコミュニケーションが取れないと、仕事はできません。大人数でチームを組むアニメの現場ではなおさらでしょう。

 佐藤先生は、このような学生の人間力育成の必要に触れながら、同時に、「教員を大学に送り込むなどして再教育する必要がある」とも訴えていました。

 専門学校や大学でアニメやマンガの実作を指導する教員の多くが、アニメーターやマンガ家の経験者ですが、とりわけ教え方を学んだわけでもなく、「学生が描いた作品を添削するだけ」といった受け身の授業も多いようです。

 ぼくは、専門学校や大学から「マンガの先生にならないか」と声をかけられたのがきっかけで、早稲田大学人間科学部eスクールに入り、早稲田大学大学院人間科学研究科にまで進みました。専攻したのはインストラクショナルデザインという教育工学の一分野ですが、基本的には教え方の設計と実践の方法や、効果の確認手法について学ぶものでした。

 心理学やITをベースに、教育の方法について考える学問分野でしたが、佐藤先生の話を聞いていると、「6年間のキャリアも無駄にせずにすむかもしれない……」というほのかな燭光が見えてきたような気分にもなりました。

 このシンポジウム、今後もつづけられるそうで、次回は3月初旬に東大で開催されるそうです。

Posted by すがやみつる/菅谷充 at 12:40 │マンガ/アニメ
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参考ニュース:光より速いニュートリノのgoogleニュースでの検索結果(注) (
光より速いニュートリノ:正に、科学的方法論における反証事例の好例ですね(長文注意)【カミタク・ブログ】at 2011年10月15日 19:22
参考ニュース:光より速いニュートリノのgoogleニュースでの検索結果(注) (
光より速いニュートリノ:正に、科学的方法論における反証事例の好例ですね(長文注意)【カミタク・ブログ】at 2011年10月15日 19:29
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