THE CONTEMPORARY FIX・吉井雄一氏のプロデュースのもと、「Mercedes-Benz Fashion Week TOKYO 2012 S/S」最終日に、一般のファンにも開放して開催されたメインイベント「VERSUS TOKYO」。その舞台において初のランウェイショーながら、10年を超えるキャリアを持つブランドらしさを表現してみせたのが、下野宏明氏率いるWHIZ LIMITEDだ。
モードとストリートの壁を超えた東京ならではのスタイルをいち早く提案し、自らが欲しいと思うものを作ることにこだわる、ある意味、消費者としての視点も持つ。絶大な支持を得てきた下野氏が、ショーの舞台裏やブランドのスタンスなどについて語ってくれた。
ブランド初の試みとなった、昨年10月のショーの感想から聞かせてください。
下野:吉井(雄一)さんに誘って頂いたのがきっかけです。吉井さんとは、2010年、ブランド10周年として、過去のアーカイブをリニューアルしたコレクションを発表した時の展示会に来て頂き、そこからお付き合いをするようになりました。今までは、ショーというのは限られた人たちのためのもので、僕らのような小さなブランドができるような場所ではないと思っていたのですが、今回吉井さんに誘って頂き、参加することになりました。やったことのないことを完全に一から行う感じだったので、ブランドを立ち上げた当時に戻ったようで、とても新鮮でした。
ショーに合わせて、服作りやスタイリングなど、普段と変えた部分はありましたか?
下野:(VERSUS TOKYOの)話があった時にはすでにデザインは進めていましたし、あくまで、これまでの延長でやろうと思っていたので、大きく変えた部分はありません。これまでもカタログやプレゼンテーション映像などのスタイリングは自分でやっていて、当初ランウェイショーということを少し意識して見せていこうかと考えていました。ただ、会場を視察すると、屋外の割と普通な風景の場所だったので、あまり作り込みすぎても気持ち悪いかなと思い、演出担当の方と流れなどを確認しながら、普段通り見せることにしました。
2012 S/Sコレクションのテーマについて教えて下さい。
下野:テーマは「UNITE」にしました。3.11以降、東京でもデモなどを目にする機会が増えましたが、そうした怒りの感情がインスピレーションソースになっています。自分が体感した気持ちのようなものを洋服に落とし込んでいきました。基本的に僕は、洋服はあくまでも洋服として捉えていて、自分の気持ちや趣味などはあまり反映させないようにしているのですが、今回はちょっと特別でしたね。
ショーの後、周りからの反応はどうでしたか?
下野:洋服だけではなく、音楽をはじめプラスアルファで入れていける要素が色々あるのでイメージを伝えやすいし、これまで展示会やカタログ、映像などで見せていた時にはなかった反応もあったので、ショーを見に来てくれた人たちにとっても新鮮なものになったんじゃないかと思います。あの環境にいた人だけが体感できるものがあったはずだし、また次もやってみたいなと思いましたね。