堀井雄二×さくまあきら


・堀井雄二

・さくまあきら



(要約)

さくま: あはは、いや、今は本当に忙しいんです。もう死にそうで。若い連中がみんなバタバタ
    病院に担ぎ込まれてる。

堀井: あはは、またそんなこと言ってるし。そういえば久しぶり。仕事?

さくま: そう、缶詰にされてる。

堀井: 僕も今、同時にファミコンソフト3本作ってる。でも僕がメインに作ってるのはそのうち2本
    で、1本はプロデュースしてるだけなんだけど。

さくま: あれだけ年1本でいいって言ってたのに、3本も抱えてるんだ。

堀井: 本当に忙しい。遊びたいよ。

さくま: でしょ?僕ね、別荘を借りたんですよ。買うよりは安いと思って借りたんだけど、全然行って
    ない。週末はヨットで、とか考えてるんだけど駄目。

堀井: 別荘?同じこと考えてる。長年付き合ってると似てきちゃうよね。

さくま: そう、それは言える。お互い考えてることがいつも一緒だったりするもん。もう、かなり古く
    からの付き合いですよね。僕がゲームやり始めたのも堀井君のせい。

堀井: 6、7年前なんだけど、会う人会う人に「パソコンは面白い!!」って言い回ってたんですよ。
    その頃一緒に仕事してた人間にパソコンを買わせて、気が付いたらみんなこういう仕事に
    就いてた。因果ですよ。

さくま: あの頃僕達の仲間うちでパソコン買ったっていう人は、みんな騙されたクチですよ。でも
    一番だまされたのは、うち。パソコンがあればなんでもできるからって言われて、フルセット
    買ったんです。本体とモニタ、プリンタまで買った。

堀井: 経理ができる!とか言ったんだよね。ワープロにも使えるからって。

さくま: そう、その1言にうちのマネージャーが騙されて買ったんだけど、あの頃のパソコンていうか
    ソフトがすごく使い辛くって、使い方が全然わからない。で、ある日堀井君に聞いたんです、
    「住所録とか、手で書いた方が早いんじゃない?」って。そしたら…

堀井: 1言、「そうだよ」って(笑)

さくま: もう、愕然とした。何のために80万も出したんだあ、とんでもない買い物をしてしまったあ!! 
    ってね。それからは猛然とゲームを買いまくってました。絶対元を取ってやるんだ!の一心
    で(笑)

堀井: 僕もアフターケア無しは悪いと思って、毎週土曜日曜に遊びに行ってたんだよね、ゲーム
    持って。毎週毎週夜中にタコ焼きとかお好み焼きとか作りながら、ゲームばかりやってた。

さくま: 『夢幻の心臓Jもやったし『信長の野望』もやった。その当時マップを取るなんてことは
    知らなかったから、3Dマップの中のどこでも目をつぶってでも歩けるようになっちゃった。
    本当にがむしゃらにやってた。

堀井: 僕がアップルで『ウィザードリィ』にはまってた頃で、その面白さを他の人にもわかってもらい
    たくて、無理矢理アップル買わせた人もいたぐらい。さくま君にもやって欲しかったから、
    さくま君のマシンでも動く同じRPGの『ブラックオニキス』を持ち込んで、延々2人でやって
    たりしたしね。

さくま: ある日僕が堀井君の家へ遊びに行ったら、彼が「ゲームでもしようか」って言うんです。
    そりゃいいやって思ってると、彼はカセットテープをセットして、コーヒーなんかを入れてる
    わけ。ゲームやるんじゃないのかなあって思ってると、「ちょっと時間がかかる」って。
    それからがもう、長い長い(笑)

堀井: 今みたいにROMやディスクじゃなかったからね。5分や10分は平気でプログラム読んでた。

さくま: そういうふうにして堀井君の所でゲームやったりして。何のゲームだか思い出せないけど、
    本当に数え切れないくらい遊んだよな。

堀井: 確かポートピアを作ってる頃かな。そう、パソコンのゲームを作って初めて賞をもらった『ラブ
    マッチテニス』の次だから(笑)

さくま: 彼はプログラムができたから、色んな作品を持ってくるわけですよ。例えばあるシミュレー
    ションゲームで、何回敵を叩き潰しても敵の数が減らないの。おかしいおかしいと思ってたら
    リターンキーを押す度に敵の数が増えるように改造してあるんだこれが。 RPGでも↓キーを
    押すと下の階に行っちゃったりするやつとか。慌てる僕を見て堀井君はクスクス笑ってたん
    ですよ(笑)

堀井: そういえば僕とさくま君とで、夜中にゲームセンター行って、朝の5時まで「近代五種」とか
    言って適当に選んだゲーム5つの総合得点とかを競い合ってたの。その頃のメンバーが、
    今みんなファミコンゲーム作ってるんだよね。

さくま: 僕がゲーム作ろうと思ったのは『桃太郎伝説』の直前ですよ。最初、広告代理店から話が
    あって、「堀井君の友達だから作れるだろう」って(笑)。そんなん作れるか!って言い張った
    んだけど、ドンドン話が進んじゃってもう後には引き返せない。嫌だったんですよ本当に。
    わきでゲーム作ってるの見てたから、コンピュータプログラムのような数字の羅列を僕が理解
    できるわけないって。で、堀井君に相談したの。そしたら「大丈夫、できるよ」だって。

堀井: パソコンでゲーム作ってた頃は自分でプログラムしてたから、パソコン扱える人にしか
    ゲーム作れないよなあ、ていうのはあったんですよ。ただ、ファミコン始めてからは自分で
    プログラム作ってないのね。シナリオしかやってない。その点、さくま君はそれまでRPGを
    山ほどやってるわけでしょ。だから「できるよ」と。

さくま: その頃、別の鉄道ゲームを作ってたんだけど、やる気がなくなってて。そういう時だったから
     なおさら乗り気になれなかった。堀井君の「ドラクエII 」が出てから何週間か後にドラクエ
     欲しいんだけど買えなくて、桃太郎伝説のグラフィックデザインの担当だったイラストレー
     ターの土居孝幸君のところに借りに行ったの。そのとき鉄道ゲームはどうしようか?って話
     がでてきて、やっぱり僕らはRPGが好きだからRPGにしようと、土居君っていう人が昔話とか
     おとぎ話とかが得意な人で、桃太郎は?っていう話になった。桃太郎ってRPGそのもの
     でしょ。こりゃいいや、これにしよう!って。

堀井: 土居君って、凄い研究熱心なんだよね、民話とか、凄く詳しく知ってるし。

さくま: で、桃太郎やりたい、RPG作って自分達で楽しみたい!っていう目標ができてきたでしょ。
    ドラクエIII が出るまで1本もRPGが出ないのは寂しいし、RPG好きだし。じゃ、自分達で
    作って自分達で楽しもうよ、ってことになっていったんです。単純ですよ。

堀井: 桃太郎伝説は、初めてゲーム作ったにしてはもの凄く良くできてるんだよね。色んなゲーム
    見て、どうすれば良くなるかを研究してたと思う。バランスも良かったし、情報とかも整理され
    てたしね。

さくま: 僕はバランス悪くて面白くないゲームいくつもやったから、それが良かったんだと思う。
    いいゲームで遊ぶより、悪いゲームで遊んだ方がゲーム作るときにどうしたらいいのかよく
    わかるんですよ。
    で、一番影響を受けたのはやっぱりドラクエなんですよ。で、ドラクエに対抗するにはギャグ
    しかないと思ってた。本気で作ったら、絶対同じになっちゃう。真似てるから(笑)
    でも、短期間で作ったからかなりきつかったね、終わりの頃にはスタッフもくたくたで、そういう
    状態で新しいイベントなんかを追加していったものだから、スタッフの誰が入れたのかわから
    ないイベントもあるんだ。さるかにの村のイベントなんか、未だに誰が作ったのかおぼえて
    ない。だって3ヵ月で作ったんですよ。全部で3ヵ月。シナリオから何から何までやって3ヵ月。

塀井: さくま君は早いんだよ仕事が。僕なんてギリギリまで待って、遊んじゃう。消しゴムちぎって
    投げたり、ヘンなゲームしたり(笑)。

さくま: 僕は夏休みの宿題、7月中にやっちゃってた方だから(笑)

堀井: ウィザードリィには滅茶苦茶はまったよね。その後ウルティマとか他のRPGも遊び込んだ
   なあ。

さくま: でもさ、普通に考えたら、それだけRPGやってたら最初にRPGを作ると思うんだけど、
    なんでアドベンチャーから始めたの?

堀井: それはね、熟成させてたからだよ(笑)。本当はね、僕はストーリーを追っていくのが好き
    なんだ。でも、あの頃RPGにはストーリー性があまりなかった。ウィザードリィもそうだったし。
    それでアドベンチャーをやったんだけど、結局行き詰まっちゃって。じゃ、どうしようか?
    そこで考えたのがストーリーを追っていくようなRPGがいいんじゃないか、と思ったわけ。
     RPGならゲームに行き詰まった時にやることがあるからね。そういう理由で作り始めたのが、
    ドラクエ。でも最初の頃はドラクエがファミコンで受けるかどうか凄く不安だった。数字ばっか
    りだし、マップの上を歩いてるときは敵の姿が見えないし。パソコンやってた人にとってみれ
    ば、そんなの当たり前で平気なんだろうけど、子供って絵が動かないと駄目なんじゃないか
    と。そういう点で「ゼルダの伝説」は凄く良く出来てた。

さくま: 僕ね、ゼルダの伝説やってないんですよ。あれが出た頃はまだゲーム素人で、ゲームを
    作ろうなんて気は全く無かったから。

堀井: ゼルダはね、レベルアップそのものに苦労するってことがない。ダンジョンを1つクリアすると
    レベルが1つ上がるようになってる。RPGのレベルアップは、何回も戦闘しなきゃできない。
    それがキツイんだ、単純作業だから。でもゼルダはとにかくダンジョンを1つ解けば、早かろ
    うが遅かろうがレベルアップするでしょ。凄く良く出来てる。あれこそ本当のアクションRPG
    だと思った。で、ファミコンはやっぱりアクションRPGだなぁと余計不安になったわけ。
    ドラクエはIからIIIまで繋がってるんだけど、「I」のときは「II」』が、「II」のときは「III」が見え
    てた。「I」のときに「III」まで作ろうとは思ってなかったけどね。「I」のときはプレイする人の
    周りにRPGの先生がいないわけだから、ゲームそのものをRPGの先生にするつもりで作った。
    その次からは周りにRPG先生がいるから、「ここはこうだよ」とか教えてもらえるわけ。「I」の
    おかげで「II」「III」があるわけなんですよ。シリーズで一番好きなのはやっぱり「III」だね。
    最近作ったのが一番いいよ、それぞれ思い出深いけど、どんどんゲームシステムが洗練
    されていってるし。買った人の9割には解いて欲しいんですよ、いつもそのつもりで作って
    いる。人を楽しませたいし、笑って欲しいですからね。ただ、「III」はよどみなく進みすぎた
    ってところが、ね。
    ドラクエで思い出に残るシーンってどこかって聞くと、みんな苦労したところを思い出すん
    だよね、ラゴスとか太陽の石とか。そういうところが「III」には無かったでしょ。あんなに長い
    ストーリーの中で、細かい情報を覚えておくのはしんどいだろうなと思って、あちこちにまた
    がるような宵越しの謎は作らないようにしたんだ。やってるときは「III」が一番面白いって
    思ってるかもしれないけど、終わってみると「I」や「II」の方が思い出あるんじゃないかな。
    今も「I が一番面白かった」っていう人がいるのは、最初にやったRPGだからだと思う。
    これはもの凄く強い。強力だよ。

さくま: 桃太郎伝説作るときにドラクエ以前のRPGのいいアイデアを使おうって思ったんだけど、
    みーんなドラクエに使われちゃってる。ちくしょー、草木一本も生えちゃいないよー、っていう
    ぐらいで(笑)。だから桃太郎伝説はもうドラクエ真似るしかなかった。だってみんなドラクエが
    しっかり身についちゃってるからそれしかないでしょ。ファミスタやっちゃうと他の野球ゲーム
    できなくなっちゃうのと同じで、システムが同じじゃないと駄目っていうのがあると思うんだよ。
    桃太郎伝説のアンケート葉書で、ドラクエと同じシステムでよかったっていう答えが結構
    あったんだ。やっぱり僕と同じ考えなんだなぁと思って安心した。

堀井: 実はドラクエのNES版を今度アメリカで発売する予定があるんだけど、やっぱりシステム的
    に難しすぎるみたいなんだ。RPGとしてはゼルダが流行ってるんだけど、ドラクエの方は文字
    と数字だけだからね。アクションシーンも全然ないわけだし、NESユーザーにはちょっと時期
    が早いのかなあって思った。

さくま: やっぱりRPGみたいな、自分で工夫して想像力使って楽しむっていうのは日本人向けなん
    じゃないかなあ。主人公見えなくって敵も歩いてない。そうなったらもう想像力しかないもん。
    シミュレーションもそうだと思う。アメリカにもそういう人いるだろうけど、ごく一部なんじゃないか
    な。元はアメリカなんだけど、さすがは日本人(笑)。
    『忍者らホイ!』はですね、父と子の物語なんだけどお父さんが死んだことになってて、でも
    ちゃんと生きてるのね。で、プレイヤーを影から見守っててくれる。やってる方はお父さんだ
    ってわかってるんだけど、最後までじらして出さない。最後に出てきて、感動!でも、先に
    やられちゃったからボツです。このストーリーは(笑)。

堀井: 今度はパーティプレイになるのかな?

さくま: そう、変則パーティプレイだよ。色んな人が出たり入ったり。

堀井: ん!!

さくま: おおお?どうしたの?先に言った方の勝ちだよ!こっちの方が早いもんね。

堀井: だいたい、次のものを見てるとツボがつかめてくるんだよね。そうなると、どうしても今まで
    見てきたモノに似てくるだろうと。タイムラグもあるしさ。僕がやろうとしてるのとは違うよ、
    きっと(笑)

さくま: ボツっちゃったアイデアで、大福帳システムっていうのがあってさ、謎解きに関係するメッセ
    ージをバッテリーバックアップでメモしておけるっていうのがあったんだけど、メモリの都合が
    つかなくって、ボツ。

堀井: それ、ドラクエIIIでもやろうとしたんだけど、同じようにメモリの関係でボツった。

さくま: いいアイデアだと思ったんだけど、それに使うメモリ、ちょっとでいいんだけど、それすら
    ない。そこでそのかわりにアンチョコ屋っていうのを出すことにしたの。お金払えば謎解き
    してくれる。もう、親切の極みですよ。私がやるとしたらギャグ。桃太郎伝説は最初に作った
    ゲームだからちょっと控えめにしてるところもあるんだけど、『忍者らホイ!』は無茶苦茶です
    よ。『ドラクエII』をお手本にしてて、超二流なの。なんとオープニングが高島忠夫の解説から
    始まるくらい(笑)。ドラクエが映画なら、こっちはテレビだぞって感じ。もしかしたら、ヒンシュク
    買っちゃうかもしれないくらいにギャグだらけ。

堀井: いいなあ、僕もプッツンしたの作りたい。でもプレッシャーがあって無理かなあ。

さくま: 実はね、僕もうこれでゲーム作るのやめるつもりなんですよ。本業に戻ろうかなあってね。
    僕としては10年後ぐらいに、「『ドラクエ』って良かったよね、そういえば横にヘンなのがあった
    なあ、名前忘れたけど」っていう、アダ花を作りたいんですよ。僕のところの弟子や友達は
    まだ作り続けていきますけど、僕はそろそろゲーム作りやめようかなあと思ってるんですよ。
    ここらで堀井君が「RPGは俺に任せろ」宣言してくれると、心おきなくやめられるんですけど
    ねえ。

堀井: う一ん、駄目だ(笑)。だって「III」のときに胃に穴が開きそうだって言ったら、お前それは
    仕事逃げたい病だって言われちゃったし。でも僕は、例えば本を5冊書き下ろしたような
    規模のゲームが年に1本出るよりは、原稿用紙1000枚くらいのが半年に1本出た方が
    いいんじゃないかと思ってる。本当は僕もそうしたいけど、年に1本しか出ないでしょう。
    その穴を埋めるのが出てきて欲しいよ。ユーザーは待ってくれないもん。

さくま: 某超大作シリーズは堀井君に打ち止めにして頂きたいですね。あとから作るほうが辛い。
    まじめに『III』クラス以上のものを作ろうとしたら、2メガじゃきかないでしょ。堀井君の次回作
    を1メガにしちゃうのが一番いい。

堀井: 僕もそれは言ってみたの、「I」のリメイクにしましょうって。スタッフもそりゃ楽でいい、そうし
    ましょうって言ってたんだけどなあ。
    「IV」は、もしかしたら『I 、II、III』のシステムで別のストーリーの方が良かったっていう意見が
    出るかもしれないほど、基本的な部分が変わってる。ちょっと挑戦しようかなって思ってるん
    だ。より深く人間性を追い求めるっていうか…パーティのそれぞれが役割を演じるっていう
    感じかなあ。

さくま: ロトはまだ続いていくのかな?

堀井: うーん…それはまだ秘密だな。
    ファミコンって制約が多いでしょ。例えばメモリの都合でダンジョンとかイベントが削られちゃ
    ったり、グラフィックとか。それが改善できるのならスーパーファミコンにはものすごく興味は
    ある。だって、いいに越したことないもの。CD-ROMも時間気にしないでいいならやってみた
    いし。

さくま: 実はもうやってるんですよ、桃太郎電鉄をPCエンジンで作るとこーなるっ!みたいなボード
    ゲームシミュレーションをね。

堀井: 僕もね、今ファミコンでボードゲームっぽいのを作ってる。奇遇だね、2人ともボードゲーム
    出すという…。これからはお金をもうけるゲームだって、一時期2人でよく話してたんだ。
    そしてこの前会って話してみたら、2人ともボードゲームにやけに詳しい(笑)。研究してた
    から。

さくま: ドラクエでね、お金出して武器を買うのが凄く楽しかったから、買い物ゲームがあったら
    なあって、またドラクエをお手本にゲームを作っちゃった。

堀井: 『松本享の株式必勝学』でね、あの「1億」って単語の「おく」に酔いしれちゃう。そういう
    のってあると思うんだ。

さくま: 『桃太郎電鉄』は、最後の方一挙に50億円ぐらい動くよ。途中出てくるスリの銀二なんか
    25億円ぐらいスッってっちゃう。でも本当は25円で、単に漢字で゛億円″ってつけてるだけ
    なんだけど(笑)

堀井: コンピュータプレイヤーは入れたの?

さくま: うん、面白いよぉ。無茶苦茶強気な奴と、石橋を叩いても渡らないような奴。あとね、収益
    何億円モードっていうのがあって。「堀井社長、目標額まであといくらです」って言ってくる。
    これは熱くなるよー。『桃太郎電鉄』はね、シミュレーション第1弾なの。入門編みたいな
    感じでね。いきなり数字だらけの、土地の価格変動がどうのとかやったら、慣れてない人は
    遊べないから。本当は色々入ってたんだけど、そういうのは慣れたころでいいやって。

堀井: 僕が作ってるのは、どちらかというとシミュレーションというよりは戦略的ボードゲーム。
    もし僕がシミュレーション作るとしたらね、RPGみたいに痛みが感じられて、ヒーローがいる、
    感情移入がスンナリできるのを作ってみたいね。勇者1人が自分の軍隊増やしていって
    国を作って最後に敵の城を陥落させて、お姫様を救い出すっていうの。軍隊の1人1人が
    自分の仲間みたいな感じかなあ。
    僕ね、現実逃避のクセがあって、現実と違うもう1つの現実が好きっていうか、望んでるん
    ですよ。ドラクエシリーズや、今作ってるボードゲームがその現れ。だからそういうゲームが
    いい。ゲームシステムよりも内容重視。この内容をこうするには新システムが必要、というなら
    それに沿っていくけど。例えば経験値を取っちゃうとかね。

さくま: 僕はもうこれからプレイヤーになっていくわけだけど、もし作るなら『桃太郎伝説』の完全
    バージョン作りたいですね。あとね、これからのRPGってシミュレーションに近づいていくと
    思うんですよ。シミュレーションにない面白さがRPGにはあって、その逆もしかり。いかにこの
    システム同士が交わっていくか。

堀井: いかに世界をリアルに見せるかだよね。

さくま: そうそう、僕もそれだと思います。

                                              (1988)