いがらしみきおさんの作品が昔から好きなんですよ。『ぼのぼの』も好きなんですけど、『Sink』は衝撃的でした。この作品あたりでちょっと変わりましたよね。首だけ長い人とか手だけでかい人とか。めっちゃ気色悪いですもんね。でも、完全な化け物とか狂気じゃなくて、日常とはちょっとだけズレてる異様なものを、うまく突いてくる。その居心地の悪さみたいなものが素晴らしいですね。
いま連載中の『I【アイ】』(※1)がね、最高なんです。いがらしさん自身がずっと考えてきた「生と死」について、この作品で描きたいということなんですけど、本当に考えさせられます。東北を舞台に、ふたりの少年が不思議な体験をしながら神様を探しにいくという展開、なんとなく聖書に近い感じなんですね。神様の自叙伝のようなストーリー。やっぱり雰囲気は気色悪いですけど(笑)。実際にいそうな人、起こりそうな“普通の”ことが出てきて、その社会や環境のなかに巻き込まれていく。だから怖いんですよ。絵にもエネルギーありますから、グイグイ引っ張られます。よくできてますよね。ホラーっていうのとも何かちょっと違うし、ジャンルを説明しづらいマンガですけど、こういうなんとも言いようのないマンガが、もっと世の中に浸透したらいいのにと思うんですけどねえ。「とにかく気色悪いから読め」っていうのも変ですけど(笑)。これはぜひ映像にもしてほしいですね。韓国映画だったらどうかな。出産シーンとか、裸で立ってるとことか、ばあちゃんのおっぱいとか(笑)、ちょっとエグいところもきっちり描いてもらって。 『I【アイ】』 ©いがらしみきお/小学館 今まで読んだマンガで、いちばん面白かったのは?って聞かれたら、大友克洋さんの『童夢』(※2)ですね。あれはびっくりしました。言うまでもないかもしれませんけど、ものすごい描き込みと、超能力バトルと、もちろんストーリーも。 それから、ずっと印象に残っているのが、チャンピオンでやってた『気分はグルービー』(※3)です。高校生がバンド組んでて大会に出るとか、キーボードの女の子と付き合いそうとか、進学するかプロになるか浪人するかで悩むとか、そういう青春ものです。ちょうど自分が高校生だった時期に連載してました。バンドとか全然やってなかったんですけどねえ(笑)。高校生がバンドして酒飲んでタバコ吸って遊んで、コメディ色もあって。特別なことをする作品ではないんですけど、一生懸命だったり、切なかったり、共感してたんですね。今でも本棚にありますよ。 最近は連載を追うより単行本で読むことが増えましたね。雑誌の紹介記事なんかで気になった作品を、本屋さんに行ってパッと探して、単行本をまとめ買いするんです。移動中とか家とかで読むことが多いですね。それから吉本にはマンガ好きが多いので、面白いマンガをすすめ合ったりしてます。いがらしさんが山上たつひこさんと組んで描いてる『羊の木』も気になってますよ。あれも不気味です。最近は少女マンガにパワーある作品が出てきてるんですよね。『ちはやふる』とか『坂道のアポロン』とか、読みたくて読めていない作品がまだたくさんあるので、すごく楽しみです。
|
バックナンバー
>> 第19回 古今亭志ん輔『ハリスの旋風』ほか
(1/11)
>> 第18回 勝谷誠彦『風と木の詩』ほか (12/25) >> 第17回 石田衣良『からくりサーカス』ほか (12/11) >> 第16回 マーティ・フリードマン『みこすり半劇場』ほか (11/27) >> 第15回 JUJU『ゴルゴ13』ほか (11/13) >> 第14回 バッファロー吾郎A『ポジャリカ』ほか (10/26) >> 第13回 田名部生来(AKB48)『MAJOR』ほか (10/12) >> 第12回 東野幸治『Sink』ほか (9/25) >> 第11回 うえむらちか『獣医ドリトル』ほか (9/11) >> 第10回 相場英雄『ブラック・ジャック』ほか (8/28) >> 第9回 京極夏彦『ゲゲゲの鬼太郎』ほか (8/10) >> 第8回 竹原慎二『タナトス〜むしけらの拳〜』ほか (7/27) >> 第7回 福田萌『龍−RON−』ほか (7/10) >> 第6回 荒俣宏『底のない町』ほか (6/26) >> 第5回 なぎら健壱『嗚呼!! 花の応援団』ほか (6/12) >> 第4回 鳥越俊太郎『兵馬の旗』ほか (5/25) >> 第3回 林家木久扇『佐武と市捕物控』ほか (5/11) >> 第2回 風間トオル『父の暦』ほか (4/27) >> 第1回 齋藤孝『寄席芸人伝』ほか (4/10) ビッグコミック作品
売上ランキング 各雑誌ジャンルへ
|
|||||||||||||||
取材・構成:根本和佳(DAN) 撮影:松原康之 |
||||||||||||||||
|