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スポーツ報知>コラム>城田憲子の「フィギュアの世界」

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全日本選手権 期待の若手、宮原知子

フリー3位で総合6位になった13歳の宮原(写真提供・今永百合子)

 13歳の新星が、初登場のシニア大会でフリー3位と大健闘した。3回転ジャンプを次々成功させ、会場をわかせた。連続の3回転ジャンプを含む5種類7つを決め、3つのスピン要素は全てレベル4とノーミスに近い演技でフィニッシュで、フリー3位の116・79点をたたき出すなど、SP15位と出遅れたものの163・85点で総合6位に入った。

 SPはジャンプで2回転倒し15位。フリーで気持ちを切り替えることが出来たのは、日ごろの鍛錬のたまものだろう。緊張しながらも、それを強さに変えられたのかもしれない。それでも本人は度胸が少し足りないと思っているらしいが…。練習が自信へ、確実性へと変えられるところはクリスティ・山口(米国)と似たところがあるのかもしれない。

 以前、両親がヒューストン(米国)で生活していたこともあり、宮原は5歳の時に現地のスケート教室に通い始めた。その当時は左利きジャンプを跳んでいた。7歳の時に京都に戻り、濱田美枝コーチに従事。初めは、みんなと違う逆回りでジャンプもスピンもやっていた。ある時どうもうまくいかなかったので、順回転にしてみたら、こちらの方が良い感じ。右利きにした結果、彼女の幅が広がった。今でも逆回転のダブルジャンプもスピンもやれるそうだ。しかし、変えたがためにダブルアクセルも確実になるまでには普通の人より時間がかかったが、左右の要素がすべて出来るため要素の幅も広がり、対象にしたプログラム作りも出来るようになった。

 パトリック・チャン(カナダ)がやるような、ウォーレンからのカウンターターンのジャンプはなかなか見ごたえがあり、難しいトランディションだ。それを宮原は、フリーの中で、ウォーレンからカウンターターンをして、トリプルフリップを難なくやってのけた。濱田コーチは夏休みを利用して、トロント、ボストン、コロラドと夏の海外合宿を毎年試みていた。そしてトロントで、パトリック・チャンのコンパルソリーの練習風景を何度も目のあたりにした。

 アウトとインエッジの乗り分けターンの習得。そこにステップが加わり、スケーティングと、そこからのジャンプやスピンへの導入など身をもって学んだ。その頃、私もトロントに在住していて、スケート・クラブの選手の練習でのアドバイスなどを頼まれ何度も行っていたので、パトリック・チャンの練習は見ていた。いつの日か彼が世界を制するだろうと察しは付いてはいたが、あれほどのトラディションを使いこなしながらスピードを伴い、各ジャンプやスピン要素をプログラムの中でこなして来るとは思えなかった。

 なぜかと言うと、彼はステップやターンでの転倒の繰り返しで、なかなかジャンプまで行き着かない状態が続いたからだ。これが出来るようになった時には、かなう選手はいるのか? と思うほど凝ったステップ・ターンでの要素のこなし方だった。それを夏合宿中見ていた濱田コーチにも響くものがあったのだろう。2年ほど続けてトロントで夏合宿をしていたから、同じ思いがあったのかもしれない。

 そんな中、トロント郊外のソーンヒルで毎年夏休みに競技会が行われていた。私も滞在中は審判員に呼ばれ、「両親が医師のお嬢さんで期待できるスケーターです」と紹介された。その時の宮原は小学3年生で、将来がありそうな選手だなぁーと思った記憶がある。さらにトロントでの狙いがもう一つあった。クラブのチーフ・コーチにジョゼ・シュイナール(アルベールビル、リレハンメル両五輪カナダ代表)がいたからだ。

 プロになってからもトリプルアクセルを成功させるほどジャンプが素晴らしい選手。今の10点法、5コンポーネンツも加わった新ジャッジング・システム。これにはルッツジャンプのアウトエッジの踏切と、フリップジャンプのインエッジの踏切が正確に出来ることが大切になってきたことだ。濱田コーチは、自分の生徒たちに、ルッツジャンプの正確なアウトエッジの踏切をジョゼに指導をしてもらった。その中の選手に宮原もいた。今回の全日本でも「e」はなし、13歳ながら正確にエッジのコントロールは出来ていたという事はコーチの先を見ての夏の訓練の成果と言える。

 3位になったフリーの振り付けは、昨夏合宿したコロラドのトム・ディクソン氏。曲は「マザー・グース組曲」。宮原は体力があるらしく、4、5回フリーを通しで滑っても大丈夫で、コロラドの高地でも初日からフリーをこなしてしまって、みんなを驚かせたらしい。競技会が近づくにつれ、ステップやターンを抜く選手が多い中、宮原は作ったプログラムを何も省かず忠実にこなしたそうだ。だからジャンプ、これから跳びます―という感覚ではなく、パトリック・チャンみたいにトラディションの中でジャンプやスピンをこなしていく、流れの中で要素を遂行出来るのだ。今、求められているプログラムへの挑戦をやり遂げたと感じたのは、本人ではなく濱田コーチだったろう。だから音の頭も上手く拾え、リズム感も良く、小気味が良い。今が一番、無心で滑ることが出来る若さという利点もあるかもしれない。

 今後は、子供体型から変化して行く過程で上手く調整しながら、宮原のオリジナリティを失わず新しい境地にも挑戦しつつ、自立したスケーターとして独り立ちできるようになるかが課題の一つ。スケートの質の向上、シニアとしての心と技と体の構成を濱田コーチと共に歩むことが出来るように、進化していけるように、失敗を恐れず攻めの気持ちを忘れないように。今大会はジュニアながらシニアと互角に戦い総合6位。それを証明出来たことが素晴らしかった。

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(2012年1月26日16時57分  スポーツ報知)

著者略歴 城田 憲子(しろた・のりこ)

 1946年7月4日、東京都生まれ。立大卒。選手時代はシングルとアイスダンスで活躍し、全日本選手権ダンス部門2連覇。現役引退後は日本スケート連盟で選手強化を手掛け、長野五輪からトリノ五輪までフィギュア強化部長を歴任。また、国際審判員とレフェリー資格を持ち、五輪をはじめ多くの国際試合でレフェリー&ジャッジも務める。

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