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【社会】

介護保険での住宅改修 業者の半数 経験不足

2013年4月22日 07時01分

 介護保険で費用が補助される住宅のバリアフリー改修で、業者の過半数は年間受注が四件以下だったことが分かった。四件以下では経験が不足し「素人に近い」技術力ともされる。現状では技術力に関する基準はなく、トラブルが多発する一因となっている。厚生労働省の外郭団体による初の実態調査で判明した。 (三浦耕喜)

 公益財団法人「テクノエイド協会」(東京)が調査した。対象は、本来は利用者が自治体に請求する補助金を代行請求できる「受領委任払い登録事業者」として、各自治体がホームページで公開している千八十九社。

 調査結果によると、年間の受注件数はゼロ件が14・6%、一件が9・5%、二件が13・6%、三〜四件が17%で、四件以下が54・7%を占めた。十件以上は三割に満たなかった。調査には、七割以上が回答しておらず、実態は、経験不足の業者の割合がより大きい可能性もある。

 また、改修の依頼者別による傾向では、介護事業者や地域の支援センターを通じて受注している業者は年二十件以上の実績があるところが多かった。個人が直接依頼する場合に、経験不足の業者が目立った。

 自治体で業者向けに技術研修をしているのは、過去に行ったことがあるところを含めても一割弱。87%が実施していない。都道府県で業者向け研修をしているのは秋田、千葉、福井、岐阜、静岡、島根の六県のみ。市町村や関係機関での研修の有無を把握しているのは東京都と千葉、山口両県だけだった。

 バリアフリーの住宅改修は、利用者によって異なる障害に合わせて設計・施工する必要があり、手すりの高さや位置など、実際の使い勝手は業者の経験に左右されやすい。介護保険による補助は原則、生涯に一回だけで、器具やサービスと違って、一度施工すると取り換えは難しい。

 介護保険を使って住宅を改修すると、十八万円を上限に工費の九割が補助される。報告書では「改修の結果も検証されず、技量や人材が蓄積されていない」と指摘している。

◆月に5〜10件必要

 バリアフリー改修が専門の「高齢者住環境研究所」社長で一級建築士の溝口千恵子さんの話 介護保険の住宅改修で技量を上げるには、通常、月に五〜十件程度を受注する必要がある。年四件以下では素人に近い。このような実態が今まで把握されていなかったこと自体、驚くべきことだ。自治体の担当者も交代するたびに知識が引き継がれず、住宅改修の質をどこもチェックしてこなかった。多額の公費が投じられているのに、技術力の基準がないことも問題だ。

(東京新聞)

 

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