滝川 映画『めめめのくらげ』、いよいよ始まりますね。
村上 手応えはあります。でもまだCGが制作中です。
滝川 公開直前ですよね!?
村上 この工房にある絵画作品も、海外での展覧会が始まる5日前、通関ギリギリまで描いているんです。映画もギリギリの進行。この映画は、パート2も制作するんですよ。
滝川 パート1がこれから公開なのに、すでにパート2を考えていらっしゃるんですか。
村上 昨年、撮り切りました。
滝川 ものすごいスピード感ですね(笑)。
村上 パート1のストーリーに未完の部分があったので、2を作る過程でそれを追いかけようと思ったんです。おかげで『めめめのくらげ』がどういう話なのか、明確になってきました。
滝川 尊敬している映画監督はいらっしゃるのでしょうか?
村上 宮崎駿さんです。
滝川 では今回の映画には、宮崎作品のイメージがあったと?
村上 敢えて言えば、『もののけ姫』の時に宮崎さんがテーマにした「日本人って何なの?」という問いかけを、僕なりに引き継いだ気がします。僕は以前、宮崎さんの『未来少年コナン』や『ルパン三世 カリオストロの城』を観て、アニメーションの仕事に就きたいなぁと思っていたんです。
滝川 でも映画監督にならずに、アーティストになりました。
村上 アニメーションや漫画を作る才能がありませんでした。パラパラと明滅するアイデアを1枚の絵にすることはできたけれど、それらを時間軸に編みこむことができなかったんです。それで挫折しました。でも、虚仮の一念で、今回の映画がなんとか完成しそうなので、続けて5本ぐらいは作りたいと思います。そこで真価を問いたい。
滝川 1本だけでの勝負は難しいですか?
村上 天才肌の人はたった1本で世界が変わるのかもしれませんが、僕は地味にコツコツやって、やっとわかってもらえるタイプ。地道にやっていこうと覚悟しています。
滝川 内容を子供向けにしたのも理由はそのあたりに?
村上 僕は「子供へのメッセージこそ未来を創るものだ」と信じています。だから現代美術の作品も、半分以上は専門的な小難しい内容ではなくて、カラフルで一見ハッピー。ちょっとした悪意もこもっていますが。そして、そんな作品を観に来るお客さんは、大部分が親子連れ。僕より以前には、その層へアプローチする作家がいなくて、僕がそこにスポッと収まった。