第36回日本アカデミー賞優秀作品一覧に戻る
優秀作品賞
最優秀賞/優秀賞

最優秀作品賞 「桐島、部活やめるってよ」


【最優秀受賞コメント】
こんなに賞を頂けるとは思っていなかったので本当に驚いています。製作が始まるときから正直、テレビ局(主導)の映画はもっといろいろなプレッシャーをかけられるのかなと思っていましたが、今までの映画で一番自由に好きにやらせてもらいました。ですから、まずプロデューサーに感謝したいです。それから若い俳優たち。そして彼らが思う存分仕事ができる場所を用意してくれたスタッフ。本当に全員に感謝しています。(吉田大八監督)

【作品情報】
第22回小説すばる新人賞を受賞した、朝井リョウのベストセラー小説を映像化。バレーボール部のキャプテン・桐島の不在から校内に広がっていく波紋をいくつかの視点から描き、思春期特有の感情や葛藤を生々しく映し出す。神木隆之介、橋本愛、大後寿々花以外はワークショップ形式のオーディションで抜擢。期待の若手俳優たちが、高校生のリアルな心情を演じている。口コミやリピーターにより観客動員を増やし、驚異のロングラン。ヨコハマ映画祭作品賞受賞(ベストテン1位)。報知映画賞、ヨコハマ映画祭、毎日映画コンクールで監督賞を受賞するなど、国内の映画賞レースを席巻した。今回の日本アカデミー賞では4部門で優秀賞を受賞。

監督:吉田大八 脚本:喜安浩平/吉田大八
[製作会社]
日本テレビ放送網/集英社/読売テレビ放送/バップ/DNドリームパートナーズ/アミューズ/WOWOW

優秀作品賞 「あなたへ」


【作品情報】
「新網走番外地」シリーズ、「冬の華」(78)、「駅 STATION」(81)、「居酒屋兆治」(83)、「あ・うん」(89)、「鉄道員(ぽっぽや)」(99)、「ホタル」(01)と、数々の傑作を生み出してきた降旗康男監督と主演・高倉健のタッグで描く、1200キロにわたるロードムービー。高倉健にとっては6年ぶりの映画出演作となる。亡くなった妻から届いた絵手紙をきっかけに、妻の故郷に向けて旅する主人公が経験する一期一会の出会いと別れが、観客の心に温かな余韻を残す。飛騨高山、瀬戸内、門司、長崎県平戸市の漁港・薄香など、次々と映し出される日本の風景の美しさにも目を奪われる。今回の日本アカデミー賞では11部門において12賞(助演男優賞は2人)の優秀賞を受賞。高倉健は「ホタル」に続き、本作での主演男優賞を辞退している。

監督:降旗康男 脚本:青島 武
[製作会社]
東宝/テレビ朝日/電通/日本経済新聞社/幻冬舎/朝日放送/メ~テレ/TOKYO FM/Yahoo! JAPAN/日本出版販売/KBC/HTB/SATV/中日新聞社/北海道新聞社/北日本新聞社/KNB/BBT/TUT/HOME/
HAB/KHB/NCC/yab/KSB

優秀作品賞 「北のカナリアたち」


【作品情報】
『告白』のベストセラー作家・湊かなえの『往復書簡』に収録された『20年後の宿題』を原案に描く、東映創立60周年記念作品。北海道の小さな島の分校で、20年前に起こったある事故をきっかけに島を去ったはる先生は、教え子の一人が事件を起こしたと知り、6人の教え子たちと再会することを決意。それぞれが20年間抱えていた胸の内と事故の真相が明かされていく。日本最北の地である利尻島、礼文島で撮影を敢行。真冬の撮影では体感温度がマイナス30度にもなったという。阪本順治監督と木村大作カメラマンの強力タッグも話題となった。今回の日本アカデミー賞では12部門で優秀賞を受賞。

監督:阪本順治 脚本:那須真知子
[製作会社]
東映/テレビ朝日/木下グループ/博報堂/博報堂DYメディアパートナーズ/加賀電子/朝日放送 /セントラル・アーツ/メ~テレ/イノベーションデザイン/TOKYO FM/アマゾン ジャパン/北海道テレビ /朝日新聞社/読売新聞社/幻冬舎/日本出版販売/東映ビデオ/北海道新聞社/九州朝日放送 /東日本放送/新潟テレビ21/静岡朝日テレビ/広島ホームテレビ/愛媛朝日テレビ/瀬戸内海放送

優秀作品賞 「のぼうの城」


【作品情報】
03年に、新人脚本家の登竜門と言われる『城戸賞』を受賞したオリジナル脚本『忍ぶの城』を、犬童一心監督と樋口真嗣監督による、異例のダブル監督体制で映画化。石田三成率いる2万の大軍にたった500人で立ち向かった、“のぼう様”こと成田長親率いる成田軍の奮闘を、史実をもとに描く。『のぼうの城』のタイトルで小説化されベストセラーとなる以前から、のぼう役は野村萬斎にオファーされていた。VFX技術を駆使して生み出された迫力の合戦シーン、オールスターキャストが繰り広げる濃密な人間ドラマは、幅広い観客の支持を受けて大ヒットとなった。今回の日本アカデミー賞では10部門で優秀賞を受賞。

監督:犬童一心/樋口真嗣 脚本:和田竜
[製作会社]
TBSテレビ/アスミック・エース エンタテインメント/毎日放送/CBC/東宝/小学館/C&Iエンタテインメント/博報堂DYメディアパートナーズ/ADK/ジェイアール東日本 企画/WOWOW/ハピネット/TBS R&C/RKB毎日放送/北海道放送/静岡放送/中国放送/ヤフー・ジャパン/日販/サイバード/朝日新聞社/シブサワコウプロダクション/テレ ビ埼玉/東北放送/テレビ山梨/TSUTAYA/新潟放送/TOKYO FM

優秀作品賞 「わが母の記」


【作品情報】
井上靖が家族への思いを綴った自伝的小説を、静岡県出身で高校の後輩に当たる原田眞人監督が映画化。井上靖の邸宅で撮影が行われ、実際の書斎が使用されている。母親に捨てられたという思いを抱きながら生きてきた息子が、年老いて少しずつ記憶をなくして行く母親と対峙し、ついに母親の本心を知る……。普遍的な親子の愛情が世界各国でも受け入れられ、第35回モントリオール世界映画祭では、審査員特別グランプリ受賞。第16回釜山国際映画祭のクロージング作品となったほか、第47回シカゴ映画祭、第42回インド映画祭など様々な国際映画祭に出品された。今回の日本アカデミー賞では12部門で優秀賞を受賞。

監督:原田眞人 脚本:原田眞人
[製作会社]
松竹/キングレコード/電通/衛星劇場/CBC/Yahoo!JAPAN/ワコー/朝日新聞社/静岡新聞社
優秀アニメーション作品賞
最優秀賞/優秀賞

最優秀アニメーション作品賞 「おおかみこどもの雨と雪」


【最優秀受賞コメント】
この作品は、子供を育てる親の話です。震災を経た今の日本で頑張っている子供たち、その子たちを抱えてこの大地にしっかり立つ親たちのような、そういう心の強さを得たいと思って作りました。評価してくださり、本当にありがとうございます。(細田守監督)

【作品情報】
「サマーウォーズ」(09)で国内外の映画賞を席巻した細田守監督が描くオリジナルアニメーション。13年にわたる物語で、『ひとりの女性が、恋愛・結婚・出産・子育てを通じて成長する姿』と、おおかみおとこと人間の間に生まれたおおかみこどもの“雨”と“雪”が「誕生から自分の生きる道を見つけて自立するまでの過程」を描きだす。宮﨑あおいが主人公の“花”を、おおかみおとこを大沢たかおが声優として演じた。興行収入は40億円を超え、「サマーウォーズ」の16億円を一気に更新し、細田作品の中でも最高記録となった。シッチェス・カタロニア国際映画祭アニメーション部門最優秀長編作品賞、ヨコハマ映画祭審査員特別賞、毎日映画コンクールアニメーション映画賞など多くの賞を受賞している。

監督・脚本・原作:細田守 脚本:奥寺佐渡子
[製作会社]
日本テレビ放送網/スタジオ地図/マッドハウス/角川書店/バップ/D.N.ドリームパートナーズ/読売テレビ放送/東宝/電通/デジタル・フロンティア/STV・MMT・SDT・CTV・HTV・FBS

優秀アニメーション作品賞 「ヱヴァンゲリヲン 新劇場版:Q」


【作品情報】
95年から96年までテレビ東京系列で放映され、社会現象を巻き起こした、庵野秀明監督によるアニメーション『新世紀エヴァンゲリオン』を新たに4部作として再構築する「エヴァンゲリヲン新劇場版」シリーズの3作目。全2作同様、庵野秀明が原作・脚本・総監督を務めている。1作目の「エヴァンゲリヲン 新劇場版:序」(07)が20億円、2作目の「~:破」(09)が40億円の興行収入をあげたが、本作ではシリーズ最高となる50億円を超える興収を記録した。1作目、2作目とも日本アカデミー賞優秀アニメーション作品賞を受賞している。

総監督・脚本・原作:庵野秀明 監督:摩砂雪、前田真宏、鶴巻和哉
[製作会社]
カラー

優秀アニメーション作品賞 「ももへの手紙」


【作品情報】
デビュー作「人狼 JIN-ROH」(99)がベルリン国際映画祭パノラマ部門に出品されるなど高い評価を受けた沖浦啓之監督による、待望の2作目。原案・脚本も自身が務め、7年の歳月をかけて作り上げたハートウォーミングな作品。突然父親を亡くし、母とふたりで豊かな自然が美しい瀬戸内海の島に引っ越してきた少女・ももが、不思議な妖怪に見守られながら、成長する姿を優しく描く。声の出演は、美山加恋、優香、西田敏行、山寺宏一など。ニューヨーク国際児童映画祭長編大賞、文化庁メディア芸術祭アニメーション部門の優秀賞など、数々の賞を受賞。第36回トロント国際映画祭、第44回シッチェス・カタロニア国際映画祭ほか、世界各地の映画祭にも出品された。

原案・脚本・監督:沖浦啓之
[製作会社]
バンダイビジュアル/角川書店/プロダクションI.G/TBSテレビ/オー・エル・エム/ホリプロ/毎日放送/CBC/Yahoo!JAPAN/ジェイアール東日本企画/東急レクリエーション/RCC/毎日新聞社

優秀アニメーション作品賞 「friends もののけ島のナキ」


【作品情報】
「ALWAYS 三丁目の夕日」シリーズなどを手がけるヒットメーカー、山崎貴監督が、『泣いた赤おに』を原作に脚本を執筆。20年来の盟友である八木竜一監督と共に完成させた3DCGアニメーション映画。暴れん坊の赤おに・ナキをSMAPの香取慎吾が、親友の青おに・グンジョーを山寺宏一が演じたほか、阿部サダヲ、YOU、加藤清史郎などが声優を務めている。役者の演技を最大限に生かすため、声を先に収録してからアニメーションを付ける「プレスコ」の手法を採用しており、キャラクターたちが演技派俳優も顔負けの名演を見せる。大人から子供まで楽しめる、笑いあり涙ありの作品に仕上がった。

監督:山崎貴、八木竜一 原案・脚本:山崎貴
[製作会社]
東宝/小学館/テレビ朝日/ジェイ・ドリーム/ROBOT /白組/ソニー・ミュージックエンタテインメント/博報堂DYメディアパートナーズ/タカラトミーアーツ/Yahoo!JAPAN/阿部秀司事務所

優秀アニメーション作品賞 「ONE PIECE FILM Z ワンピース フィルム ゼット」


【作品情報】
『週刊少年ジャンプ』連載中で、単行本が国内最高の累計発行部数を記録している大人気コミック『ONE PIECE』の劇場版アニメーション第12作。10作目の「ONE PIECE FILM STRONG WORLD」(09)で製作総指揮を務めた原作者の尾田栄一郎が総合プロデューサーとなり、劇場版としては初めて『新世界』を舞台としたオリジナルストーリーとなった。NEO海軍を率いる元海軍将校ゼットと、ルフィたち麦わらの一味の戦いを描く。興行収入は60億円を突破。前作の記録(48億円)を塗り替え、シリーズ最高かつ、00年代の東映作品としても最高となる興行収入記録を樹立した。脚本は、人気放送作家の鈴木おさむ。ゲスト声優は、香川照之と篠原涼子。

原作・総合プロデューサー:尾田栄一郎 監督:長峯達也 脚本:鈴木おさむ
[製作会社]
フジテレビ/東映アニメーション/東映/集英社/バンダイ
優秀監督賞
最優秀賞吉田大八(桐島、部活やめるってよ)


【最優秀受賞コメント】
若い頃から青春とかそういうものが大っ嫌いだったんですけども、若い俳優たちのパワーと才能と野心に背中を押されてできた映画で、こういう場所に立っているのがすごく不思議な感じがします。ありがとうございました。

※初受賞
優秀賞犬童一心(のぼうの城)


「のぼうの城」は、新人シナリオコンクール、「城戸賞」の2003年受賞作品です。城戸賞の実行委員会、審査委員の方々に心から感謝したいと思います。皆さんのおかげで素晴らしいシナリオに出会うことが出来ました。
あきらめずに8年粘った久保田プロデューサー、新人のシナリオにもかかわらず8年前に出演を決めてくれた野村萬斎氏、そして、最後に製作を決定してくれたTBSの濱名氏に心から感謝します。
樋口さーん、W監督第二弾は何をやりましょうか?
【受賞歴】第31回「眉山-びざん-」、第33回「ゼロの焦点」に続き3度目の監督賞受賞。また、脚本賞もこれまでに2度受賞している。
優秀賞樋口真嗣(のぼうの城)


和田竜さんが書かれた、素晴らしいオリジナル脚本に感動し、何年も映画化をあきらめないプロデューサーと、この大変な作品にかけてくださった多くの出資者の皆さんに出会えました。
そして、何よりも映像化するのが、とてつもなく大変なこの作品を、最後まで共に歩んだ犬童一心監督と、一緒に粘り強く創り上げた素晴らしいスタッフ、キャストたち。「のぼうの城」を一緒にやって来た、全ての人々に感謝したいです。
本当にありがとうございました!!
【受賞歴】第19回「ガメラ 大怪獣空中決戦」で特別賞特殊技術賞を受賞。監督賞は初受賞。
優秀賞阪本順治(北のカナリアたち)


「北のカナリアたち」は、一点の曇りなく、一切の妥協なく、活動屋と撮影地の地元の方々がひとつになって、作り上げたものです。吉永小百合さんの気迫に後押しされ、みなさまに支えていただいてなんとか監督業を全うすることが出来ました。木村大作さんとの初仕事も私の財産です。本当にありがとうございました!
【受賞歴】第24回「顔」で初受賞にして最優秀賞を受賞。第35回の「大鹿村騒動記」に続き、2年連続4度目の受賞。
優秀賞原田眞人(わが母の記)


我が母は映画館をハシゴして「小鹿物語」鑑賞中に陣痛をおぼえ、ぼくが生まれたそうです。映画を好きになったのは間違いなく母の影響です。その意味でこれは自分の原点を探る作品でした。そこに、役所さん、樹木さんの光り輝く名演、出演者とスタッフの情熱と巧みの技が上積みされ、時代を超えて評価される作品に育ちつつあります。映画作りの同胞であるアカデミー会員からの素晴らしい贈り物に心から感謝いたします。
【受賞歴】第23回に「金融腐蝕列島 呪縛」で初受賞。監督賞は今回が4度目の受賞。
優秀賞降旗康男(あなたへ)


老骨を鞭打ってではなく、老骨を杖で支えての撮影でしたので、スタッフ、キャストのみなさんに助けられているのはいつものことながら、今回はひとしおの感がします。
受賞はその結果でしょう。みなさんに心からお礼申し上げます。
【受賞歴】第23回「鉄道員(ぽっぽや)」で最優秀監督賞と最優秀脚本賞を受賞。第25回の「ホタル」以来となる6度目の監督賞受賞。(第5回は2作品、第13回は3作品で受賞)
優秀脚本賞
最優秀賞内田けんじ(鍵泥棒のメソッド)


【最優秀受賞コメント】
石鹸で滑って記憶喪失になるっていう、たぶん一番やってはいけないベタなところから(始まる物語で)、こういう賞を頂くのはすごく嬉しいです。役者さんたちに大変負担のかかる脚本だったと思いますが、本当に素晴らしい人たちに集まって頂いてすごく幸運を感じています。
脚本…ルビ:ホン
【受賞歴】第32回に「アフタースクール」で初受賞。2度目の受賞。
優秀賞青島武(あなたへ)


脚本が出来上がった後も、降旗組の一員として撮影現場にいたい。ただそれだけの理由で足繁く現場に通わせて頂きました。何をする訳でもなく、唯々見ていただけですが、それは至福の時間でした。その上、賞まで頂きありがとうございます。この作品に関わったすべての皆様にお礼申し上げます。
※初受賞
優秀賞喜安浩平(桐島、部活やめるってよ)


今思い返せば、私はなにもしていなかったのではなかったか。吉田監督をはじめ、原作の朝井さん、スタッフキャストの皆様が背中を押し、肩を抱き、時には鞭で打ってくだすったお陰と存じます。感謝しかございません。
※初受賞
優秀賞吉田大八(桐島、部活やめるってよ)


原作のあの美しい場面、そこへ映画としてどうやってたどり着くかをひたすら考えました。喜安さんが一緒にいてくれて、とても心強かったです。ありがとうございました。
※初受賞
優秀賞那須真知子(北のカナリアたち)


普通の人々が普通に生きようとしても、人生は厳しい。それでも、ひたむきであれば、何かしら恵があるものだという思いで、この作品を描きました。少しでもそれが伝わって下されば幸いと思っています。ロケ地の厳しい寒さの中で惜しみなく、力を注いで下さったキャスト、スタッフの皆様に心より感謝申し上げます。
【受賞歴】第11回に「別れぬ理由」で初受賞。今回が4度目の受賞となる。
優秀賞原田眞人(わが母の記)


高校の先輩であり郷土が生んだ最高最大の文豪井上靖の原作がすべてです。そこに井上先生のエッセイや講演を紛れ込ませたのがぼくの功績でしょうか。さらには撮影時まで残っていた世田谷の井上邸、現存する軽井沢の井上家の別荘を使用させていただくなど、井上家の強力な援助失くしてこの映画はできませんでした。この受賞をきっかけに井上文学最高峰「しろばんば」の映画化に前進できれば、と思います。
【受賞歴】第26回に「突入せよ!『あさま山荘』事件」で脚本賞を初受賞。3度目の受賞。
優秀主演男優賞
最優秀賞阿部寛(テルマエ・ロマエ)


【最優秀賞受賞コメント】
この作品は、震災があった次の日にイタリアに行って、みんなでその気持ちを大切に一生懸命作った作品です。多くの外国人の方にも協力して頂きましたし……何言おうかな。本当にこんなことが自分に起きるとは思いませんでした。今、何というか、こんなにデカい体なのに鳥肌がたって情けないです。今度もしこの壇上に帰ってくることができたら、今度は日本人役でよろしくお願いしたいと思います(笑)。

人気コミックの映画化で、古代ローマから現代日本にタイムスリップする浴場設計技師ルシウス役に扮した。『外国人でなく阿部寛さんに演じてほしい』とプロデューサーが熱望した役柄を、期待に応え見事に演じきり、劇場を笑いの渦に巻き込んだ。作品は12年の日本映画第2位となる興行収入59.8億円の大ヒットとなり続編の製作が決定。14年に公開予定。本作で、ヨコハマ映画祭主演男優賞受賞。また、本作と、「麒麟の翼」、「カラスの親指」で、ブルーリボン賞主演男優賞も受賞している。日本アカデミー賞は今回が初受賞。
優秀賞堺雅人(鍵泥棒のメソッド)


舞台中心に活躍後、NHKドラマへの出演等で人気を得る。以降、映画界でも目覚ましい活躍を続ける。内田けんじ監督と「アフタースクール」(08)に続く、2度目のタッグとなった本作で演じたのは、売れない役者。記憶を失った殺し屋になりすましたことから事件に巻き込まれていくさまを、軽妙に演じた。日本アカデミー賞の主演男優賞は、第35回の「武士の家計簿」(11)に続き、2年連続2度目の受賞。第32回「クラマーズ・ハイ」(08)、第33回「ジェネラル・ルージュの凱旋」(09)では助演男優賞を受賞している。
優秀賞野村萬斎(のぼうの城)


国内外で多数の狂言、能公演に参加し、普及に貢献する一方、世田谷パブリックシアターの芸術監督を務めたり、自ら舞台演出も手掛けるなど、幅広く活躍する狂言界の至宝。9年ぶりの映画主演作で演じた“のぼう様”こと成田長親は、でくのぼうにも関わらず、周囲の人間すべてを魅了するカリスマ性の持ち主。まさに、野村萬斎にしか演じることのできないキャラクターだった。日本アカデミー賞は、第25回に「陰陽師」(01)で新人俳優賞と主演男優賞をダブル受賞して以来、2度目の受賞。
優秀賞森山未來(苦役列車)


99年舞台でデビュー。以来、テレビドラマ・映画・舞台と幅広く活躍を続けている。04年に映画「世界の中心で、愛をさけぶ」が大ヒットし、第28回日本アカデミー賞で新人俳優賞と助演男優賞のダブル受賞。主演男優賞は今回が初受賞となる。芥川賞を受賞した小説『苦役列車』の映画化となる本作で、原作者である西村賢太を彷彿とさせる主人公を好演。ひねくれ者ながらも、なぜか憎めない青年を絶妙に演じた。本作で、キネマ旬報ベスト・テンの主演男優賞も受賞。
優秀賞役所広司(聯合艦隊司令長官 山本五十六 -太平洋戦争70年目の真実-)


「CURE/キュア」(97)で東京国際映画祭主演男優賞を受賞。主演作の「うなぎ」(97)がカンヌ国際映画祭パルムドール受賞、「ユリイカ」(01)が同映画祭国際批評家連盟賞を獲得したほか、「SAYURI」(05)、「バベル」(06)など海外の作品にも出演し、国際的にも高い評価を受けている。本作で演じたのは、真珠湾攻撃を行い、開戦の火蓋を切って落とした聯合艦隊司令長官・山本五十六。一方で、平和を愛し、日本を愛し、軍人でありながら日米開戦に強硬に反対し続けたという彼の、苦悩と生き様、知られざる一面を力強く演じている。
優秀賞役所広司(わが母の記)


井上靖をモデルにした主人公に扮し、母親への複雑な心情を好演した本作で、今年度2つ目の主演男優賞を獲得。日本アカデミー賞主演男優賞は、第34回より3年連続の受賞となる。初受賞は第14回「オーロラの下で」(90)。第20回「Shall we ダンス?」(96)と第21回「うなぎ」で、2年連続最優秀主演男優賞を受賞。また、第20回から第26回までは7年連続で主演男優賞を受賞している。今回が15回目(17作品目)の受賞となり、男性の歴代最多受賞記録を更新した。
優秀主演女優賞
最優秀賞樹木希林(わが母の記)


【最優秀受賞コメント】
若い監督、若い次の役者たちがどんどん出てきているのを見て、「日本映画って良いな」って言うのが実感なんです。私(にこの賞)はおまけです。本当に本当にありがとうございました。

70年代に、『時間ですよ』、『寺内貫太郎一家』(共にTBS)に出演し、不動の人気を獲得。個性派女優として常に圧倒的な存在感を見せてきた。本作では、老いて次第に記憶を失いながらも、息子への思いだけは消えない母親の姿をリアリティたっぷりに、かつチャーミングに演じ、観客を魅了した。本作と「ツナグ」で、日刊スポーツ映画大賞の助演女優賞を受賞。日本アカデミー賞主演女優賞は、第31回に「東京タワー オカンとボクと、時々、オトン」(07)で最優秀を受賞して以来、2度目の受賞。助演女優賞は、これまでに8度受賞しており、第34回の「悪人」(10)では最優秀を獲得。
優秀賞草刈民代(終の信託)


09年にバレリーナを引退後は女優として活躍。役所広司と「Shall weダンス?」(96)以来、16年ぶりの再共演を果たした本作は、周防正行監督が『終末医療や取調べという重いテーマを持ちながらも、まぎれもなくラブ・ストーリー』とコメントする渾身の一作。患者に命の終わりを託されたエリート医師の心情を繊細に演じている。日本アカデミー賞は、女優デビュー作となった「Shall weダンス?」で第20回新人俳優賞と最優秀主演女優賞をダブル受賞して以来、2度目の受賞となる。
優秀賞沢尻エリカ(ヘルタースケルター)


ファッションモデルとして活躍後、04年に映画デビュー。「パッチギ!」(05)のヒロイン役で一躍注目を浴び、第29回日本アカデミー賞で新人俳優賞と話題賞を受賞した。主演女優賞は今回が初受賞となる。漫画家・岡崎京子の原作を蜷川実花監督が映画化した本作で、全身整形でトップスターの座に上り詰めたヒロインが、心身ともに追い詰められ、転落して行くさまを演じきり、「クローズド・ノート」(07)以来約5年ぶりのスクリーン復帰を飾った。
優秀賞松たか子(夢売るふたり)


94年にNHK大河ドラマ『花の乱』でテレビデビュー。「告白」(10)以来の映画主演となった本作は、火事ですべてを失い結婚詐欺を繰り返すようになる夫婦の姿を描いた人間ドラマ。献身的に夫を支える一方で、淡々と詐欺を企てる妻の一筋縄ではいかない心情を深みのある演技で見せた。日本アカデミー賞の主演女優賞は4度目の受賞。「ヴィヨンの妻~桜桃とタンポポ~」(09)では第33回最優秀主演女優賞を獲得。「東京タワー オカンとボクと、時々、オトン」(07)では第31回助演女優賞を受賞した。本作で、ヨコハマ映画祭主演女優賞受賞。
優秀賞吉永小百合(北のカナリアたち)


59年のデビュー以来、数多くの映画に出演。日本アカデミー賞主演女優賞は、第4回に「動乱」(80)で初受賞以来、15度目(19作品)の受賞で女性最多となる。最優秀主演女優賞を4度受賞している。本作で演じたのは、20年前のある事故をきっかけに、離島の分校を去った元・小学校教師。教え子を圧倒的な存在感で“先生”役として牽引した。本作で山路ふみ子女優賞および、報知映画賞と日刊スポーツ映画大賞の主演女優賞を受賞している。
優秀助演男優賞
最優秀賞大滝秀治(あなたへ)


【最優秀受賞コメント】大滝さんは、「もう駄目だと思ったり、まだやれると思ったり」というようなことをよく色紙に書かれていました。こうやって褒めて頂くと、それが励みになり、これでもう一年やれるかもしれないと一生懸命勉強する方でした。今日はこれから大滝さんの家に帰って、大滝さんの遺影の前で、2人で大好きなお酒を飲んで乾杯したいと思います。(代理:劇団民藝・俳優の山本哲也)

高倉健演じる主人公の英二が妻の散骨に訪れた平戸市・薄香の漁港で出会う、寡黙な漁師を演じた。彼が「久しぶりに、きれいな海ば見た」と言うシーンは、高倉健に「あの芝居の相手でいられただけでもこの映画に出演して良かった」と言わしめた名場面となった。50年に劇団民藝に研究生として参加。52年に劇団員となる。看板俳優として舞台で活躍する一方、映画、テレビドラマでも幅広いキャラクターを演じてきた。降旗康夫監督の高倉健主演作には「冬の華」(78)以来、たびたび出演してきたが、本作が遺作となった。日本アカデミー賞は今回が初受賞となり、歴代最年長での初受賞となる。
優秀賞香川照之(鍵泥棒のメソッド)


89年に俳優デビュー。出演した姜文監督の「鬼が来た!」(00)がカンヌ国際映画祭の審査員特別グランプリを獲得。その後も「ゆれる」(06)、「トウキョウソナタ」(08)ほか、国内外で数多くの賞を受賞した作品に次々と出演してきた。本作では、記憶を失ってから真面目な男に大変身する、強面で凄腕の殺し屋。その両極端を見せるキャラクターを自在にユーモラスに演じきった。日本アカデミー賞は、第28回に「赤い月」(04)で初受賞以来、6度目の助演男優賞受賞。第33回には「劔岳 点の記」(09)で最優秀を受賞している。
優秀賞高良健吾(苦役列車)


森山未來演じる貫多に振り回され、それでも彼をほっておけない、貫多と対照的な真面目な好青年を見事に体現した。「ハリヨの夏」(06)で映画初出演。映画「M」(07)で第19回東京国際映画祭『日本映画・ある視点』部門特別賞受賞。「ケンタとジュンとカヨちゃんの国」、「おにいちゃんのハナビ」(共に10)で第23回日刊スポーツ映画大賞・石原裕次郎新人賞を受賞するなど着実にキャリアを重ね、12年「軽蔑」(11)で日本アカデミー賞第35回新人俳優賞を受賞。優秀助演男優賞は今回が初受賞となる。
優秀賞佐藤浩市(あなたへ)


80年に役者デビュー。映画初出演となった「青春の門」(81)で第5回日本アカデミー賞新人俳優賞、ブルーリボン賞新人賞などを受賞する。その後も、数々のテレビドラマに出演するほか、映画界に欠かせない役者として多くの作品に出演。「忠臣蔵外伝 四谷怪談」(94)では、日本アカデミー賞最優秀主演男優賞を受賞している。本作では、他人に言えない過去を抱えていたが、高倉健扮する主人公・英二と出会い心を開く、重要なキャラクターを担っている。
優秀賞佐藤浩市(のぼうの城)


本作では、のぼうの幼なじみで“漆黒魔人”の異名を持つ、成田軍の侍大将・正木丹波守利英を演じた。武辺が優れていることを示す朱槍の持ち主で、領民からも一目置かれる存在の丹波は、合戦シーンでも大活躍。馬上で見事に槍を操ってみせた。日本アカデミー賞助演男優賞は、昨年に続き2年連続、6度目の受賞。第24回の「ホワイトアウト」(00)と第27回の「壬生義士伝」(03)では最優秀助演男優賞を獲得している。
優秀賞森山未來(北のカナリアたち)


「苦役列車」では優秀主演男優賞を受賞しており、2部門での受賞となる。本作で演じたのは、吉永小百合扮する、はるの教え子の一人。とび職をしていたが、殺人事件を起こしてしまう。吃音があり、他人とコミュニケーションを取るのが苦手ながらも、はるのことを母親のように慕う青年の心情を圧巻の演技で魅せた。本作ほかの演技で日刊スポーツ大賞の助演男優賞を、本作と「ALWAYS 三丁目の夕日'64」で報知映画賞の助演男優賞を受賞。
優秀助演女優賞
最優秀賞余貴美子(あなたへ)


【最優秀受賞コメント】
受賞のお礼を心から申し上げます。本当にありがたく、嬉しく思っています。人生あまり上手く行かないことが多いですが、こうやってご褒美を頂くと力になります。これからもご褒美を頂けるようないい作品に出させて頂き、いいお芝居ができますように努力いたします。

86年、劇団「東京壱組」を結成し、96年の解散までに14公演に出演。88年、「噛む女」で本格的スクリーンデビューし、「うみ・そら・さんごのいいつたえ」(92)で初主演を果たす。98年には、「あ、春」、「学校Ⅲ」でブルーリボン賞、毎日映画コンクール、日本アカデミー賞の助演女優賞を獲得。日本アカデミー賞は今回が4度目の受賞となる。第32回の「おくりびと」(08)、第33回の「ディア・ドクター」(09)では2年連続で最優秀助演女優賞を獲得する快挙を成し遂げた。本作では、高倉健演じる英二が出会う、食堂のおかみに扮し、懐の深さを感じさせる母親像を、魅力的に演じた。
優秀賞寺島しのぶ(ヘルタースケルター)


92年に文学座に入団。96年の退団以降、舞台、テレビ、映画など幅広く活躍し、「キャタピラー」(10)では、日本人として35年ぶりにベルリン国際映画祭の最優秀女優賞(銀熊賞)を受賞した。日本アカデミー賞は、これまでに主演女優賞を3度獲得し、第27回の「赤目四十八瀧心中未遂」(03)では初受賞にして最優秀を受賞。助演女優賞は今回が2度目の受賞となる。本作では沢尻エリカ演じる、りりこのマネージャー役。りりこに罵倒され、翻弄されつつも、りりこに心酔し続けるキャラクターを抑えた演技で見事に演じきり、作品を支えている。
優秀賞広末涼子(鍵泥棒のメソッド)


94年にCMデビュー、95年にドラマデビュー。98年、映画デビュー作となった「20世紀ノスタルジア」(97)で第21回日本アカデミー賞新人俳優賞を受賞。以降、日本アカデミー賞は第23回「秘密」(09)、第32回「おくりびと」(08)、第33回「ゼロの焦点」(09)で主演女優賞、第23回「鉄道員(ぽっぽや)」(99)で助演女優賞を獲得しており、今回が助演としては2度目の受賞となる。本作では、婚活中の真面目で几帳面な編集者をメガネ姿で演じ、新たな一面を披露した。本年度のブルーリボン賞助演女優賞も受賞している。
優秀賞満島ひかり(北のカナリアたち)


ダンスヴォーカルユニットを経て、97年の「モスラ2 海底の大決戦」で映画デビュー。「愛のむきだし」(09)で数多くの新人賞とキネマ旬報ベスト・テンの助演女優賞を受賞し、一躍注目を浴びる。本作で扮したのは、はる先生と唯一20年間連絡を取り合っている教え子役。小学校時代のとある事故によって、心に傷を負った素朴な女性を演じている。日本アカデミー賞は、第24回に「悪人」(10)で助演女優賞を初受賞。第35回の「一命」(11)に続き、3年連続3度目の受賞。
優秀賞宮﨑あおい(わが母の記)


01年、カンヌ国際映画祭で国際批評家連盟賞受賞作「EURIKA ユリイカ」(01)の演技が鮮烈な印象を与える。初主演作「害虫」(02)でナント3大映画祭主演女優賞、日刊スポーツ映画大賞新人賞を受賞。その後も、映画中心に活躍。08年のNHK大河ドラマ「篤姫」では最年少で主演を務め、高視聴率を記録した。本作では、3姉妹の最年少で、自分の意見を曲げない女性をしなやかに演じた。日本アカデミー賞は第33回「少年メリケンサック」(09)、第35回「ツレがうつになりまして」(11)で主演女優賞を受賞しており、助演女優賞は初受賞となる。
優秀音楽賞
最優秀賞川井郁子(北のカナリアたち)


【最優秀受賞コメント】
今日はこんな晴れやかな場所でこんな素敵な賞を頂けると思っていなかったので、まだ実感がないんですが、本当にありがとうございます。いろんな意味で大きな映画に関わらせて頂いて大変光栄に思っております。本当に、この映画に関わられたお一人お一人のすごく大きな力に支えられて、そこから私もインスピレーションを頂いて生まれた音楽です。素敵なミュージシャンの方々にもこの音楽を助けて頂きました。

※初受賞
優秀賞上野耕路(のぼうの城)


時代劇の音楽を手掛けたいという私の長年の願いが一流のスタッフの元で実現し、しかもこのような席にお招きいただけたとは大きな喜びです。
思い出深いのは、萬斎さんの湖上の田楽踊りの音楽を作るにあたり、クランクインを遡ること一ヶ月前から、萬斎さんをはじめ監督、プロデューサー、様々なスタッフと協議しながら、その場でコンピューターにプログラムしつつ作曲していったことです。
【受賞歴】第33回に「ゼロの焦点」で初受賞。2度目の受賞。
優秀賞林祐介(あなたへ)


日本を代表する素晴らしい作品に携わる事ができ、さらにこのような名誉ある賞を頂きまして、大変光栄に思っております。「あなたへ」では聴いた人が旅をしたくなるような、心温まる音楽にしようと心がけて作曲しました。音楽プロデューサーの和田亨氏、ミュージシャン、音楽制作スタッフと共にこの歓びを分かち合いたいと思います。降旗康男監督、キャスト並びにスタッフ、ご覧頂いた全ての観客の皆様に改めて御礼申し上げます。
※初受賞
優秀賞久石譲(天地明察)


このような賞をいただけたことを、ほんとうに嬉しく思います。滝田監督とご一緒するのは3作目になりますが、やはり監督の人柄が特別な力を持っているのか、役者さんもスタッフの皆さんも、のびのびと解放感に満ちているといった、今回もとてもいい現場でした。その中で、「ひとりの人間が夢を追い続けて叶えていく」という青春や希望に焦点を当て、作品としてのスケール感を大切に作る音楽制作は本当に楽しい時間でした。
【受賞歴】これまでに第34回の「悪人」をはじめ、最優秀賞を7度受賞。優秀賞は12度受賞、うち第14回と第15回は4作品で、第17回は3作品で受賞している。13度目の受賞。
優秀賞富貴晴美(わが母の記)


原田監督からの希望は“バッハを超える曲”。バッハの歴史、音楽理論は知っていましたが、再度、彼のメロディー、構成、リズムの組み立てを研究。すべてを吸収、体内に取り入れては吐き出し、壊し、又組み立てる。
その作業を繰り返した後に真っ白な気持ちになって台本を読む。台本から溢れだした音楽を形に。行き着いた答えは“バッハを超える”より“映画に最もふさわしい最高の音楽”、「わが母の記」ありがとう!
※初受賞
優秀撮影賞
最優秀賞木村大作(北のカナリアたち)


【最優秀受賞コメント】
当然のごとく今年は僕が獲ると思ってました。アカデミー賞は会員の投票ですから獲れるチャンスがあるなと。他の撮影賞は全部批評家が選ぶんでね。僕はそっちの方にあんまり人気がないんですよ(笑)。ここ2、3年授賞式に来ていなかったんですが、今年は賞金をキャッシュでもらえないんですか? 振込って書いてあったんですけど。キャッシュでもらうのと振込とでは全然違うんですよ。岡田会長よろしくお願いしますよ。何で振込なんですか。また話が長くなるからこのぐらいにして座が面白くなくなったら僕が登壇します。どうもありがとうございました。

【受賞歴】第1回に「八甲田山」で優秀技術賞を受賞。これまでに優秀撮影賞を19度受賞(2作品受賞が5度)、うち最優秀を4度受賞している。第33回「劔岳 点の記」では最優秀監督賞、最優秀撮影賞、優秀脚本賞を受賞した。21度目の受賞。
優秀賞芦澤明子(わが母の記)


映画を観て下さった全国の観客の方々に感謝申し上げます。評価して下さった皆様ありがとうございます。原田監督の導きのおかげで無心で撮影に臨む事ができました。すべてのキャスト、スタッフ、地元ボランティアの方々が一丸となって作品を創り上げる事ができた事を誇りに思い、心から感謝申し上げます。共に考え歩んだ照明部、常に支えもりたててくれた撮影部のみんなと喜びをわかち合い、賞に恥じない精進に励みたいと思います。
※初受賞
優秀賞清久素延(のぼうの城)


犬童、樋口両監督をはじめ、撮影、照明、録音、美術、編集、音楽スタッフみんなで授賞式に参加できる、これほど嬉しいことはないです。
※初受賞
優秀賞江原祥二(のぼうの城)


今回この作品に共に参加したスタッフ・キャストの皆さんに感謝します。価値ある賞をいただきありがとうございました。京都で喜びを噛みしめております。今後もこの賞を糧に頑張る所存です。ありがとうございます。
※初受賞
優秀賞浜田毅(天地明察)


京都での撮影中は、星と空を観続けていました。幸せな時間でした。
一緒に戦った滝田監督、そして全てのスタッフ、キャストに感謝します。
何よりも、京都の盟友、安藤清人と共に受賞出来た事は最高の喜びです。
【受賞歴】第17回「僕らはみんな生きている」で初受賞、第32回「おくりびと」で最優秀を受賞。5度目の受賞となる。
優秀賞林淳一郎(あなたへ)


企画から3年。最後にまた報われました。映画と同じ道を車で走り、車窓で感じた風景を皆で懸命に撮影していました。改めて、監督、俳優さんたち、そしていつものスタッフたちと苦労のしがいがありましたこと深く感謝いたします。また、息子と同じ場に立たせて頂き感慨深いものがあります。フィルム撮影の最終期にフィルムで回せたことにも感謝しています。ありがとうございます。
※初受賞
優秀照明賞
最優秀賞杉本崇(北のカナリアたち)


【最優秀受賞コメント】
寒い厳しさの中の撮影を思い出します。私は東映京都撮影所で育ちました。安藤(清人)さんに仕事を学び、木村(大作)さんに映像の厳しさを学び、阪本(順治)さんに芝居の厳しさを学びました。本当に嬉しいです。これからまたいろいろ頑張れると思います。

【受賞歴】第31回に「憑神」で初受賞。2度目の受賞。
優秀賞永田英則(わが母の記)


こんなすばらしい作品に参加出来、しかも良い評価を頂き大変嬉しいです。私にチャンスと助言を与えてくれた芦澤カメラマンと原田監督、パーフェクトな仕事をしてくれた助手達と日本照明、陰で支えてくれた家族に感謝します。本当にありがとうございました。これからも良き日本映画に参加していけたらと思います。
※初受賞
優秀賞杉本崇(のぼうの城)


先ず東日本大震災で亡くなられた方々のご冥福を申し上げます。完成から公開まで時間が経ちましたが、多くの方々に見て頂きうれしく思います。北海道、山梨、京都とのマッチングを考慮して仕事をしたのを思い出します。初めての出会いとなる御二人の監督、カメラマン、他全スタッフ、キャストの皆様に心から感謝とお礼を申し上げます。本当にありがとうございました。感謝!
優秀賞安藤清人(天地明察)


滝田洋二郎監督作品にお話があり、参加させて頂きました。アカデミー会員の皆様よりの評価と、その上にこのような名誉ある賞まで頂き、大変嬉しく思います。松竹京都の素晴らしいスタッフ、関係各位に深く感謝いたします。有難うございました。
【受賞歴】第20回に「わが心の銀河鉄道 宮沢賢治物語」で初受賞。5度目の受賞。
優秀賞中村裕樹(あなたへ)


助手の頃から憧れていた降旗監督、高倉健さんとのお仕事で、作品、映像が良い評価を受けた事はこの上ない喜びです。映画の主人公「英二」の様に撮影の行く先々で出会った多くの方々のお力添えで想い描く照明を成し遂げる事ができました、素晴らしいキャスト、協力してくれた全スタッフ、応援してくれた友人、家族に感謝致します。
【受賞歴】第28回「世界の中心で、愛をさけぶ」で最優秀照明賞受賞。6度目の優秀賞受賞。第17回は2作品で受賞している。
優秀美術賞
最優秀賞磯田典宏/近藤成之(のぼうの城)


【最優秀受賞コメント】
大感激です。ありがとうございました。2009年に何もない状態で、オープンセットの場所探しから始まりました。本当にこの映画は完成するのかと思ったことを覚えています。でも、「自分が見たことのないもの、誰も見たことないものを作りたい」という思いで、ワクワクしながら仕事をしていたのを覚えています。この作品の関係者の皆さん、そして家族、本当にありがとうございました。
【受賞歴】第26回に「Dolls<ドールズ>」で初受賞。3度目の受賞。
(磯田典宏)

今日はこのような素晴らしい賞を頂きまして本当にありがとうございます。美術部全員で大変な思いをして取り組んだ作品だったので、感無量です。
【受賞歴】第30回に「男たちの大和YAMATO」で初受賞にして最優秀を受賞。3度目の受賞となる。
(近藤成之)
優秀賞原田満生(北のカナリアたち/テルマエ・ロマエ)


映画「北のカナリアたち」は、厳しい自然環境の中、監督、スタッフ、キャスト、北海道の関係者が一丸となって創りあげた作品だと思います。皆様に感謝したいと思います。
映画「テルマエ・ロマエ」では、作品内容を実写化するにあたり、かなり苦労しましたが、支えてくださった、監督、スタッフ、キャスト、関係各位の皆様に心より感謝いたします。
二作品で協力して頂いた、美術スタッフにも感謝したいと思います。有り難うございました。
【受賞歴】第29回に「亡国のイージス」で初受賞。3度目の受賞。
優秀賞部谷京子(天地明察)


「天地明察」での美術賞受賞がことのほか嬉しいです。滝田洋二郎監督、原作の冲方丁さん、関わられたスタッフ・キャストの皆さまに心から感謝申し上げます。天文学・和算・囲碁・暦学などこの作品特有の分野に関しては専門の先生がたから貴重なご教示をいただきました。主人公・算哲のように決して諦めることなくクランクアップまで完走できたのは皆さまのおかげです。「天地明察」が、この先も長く愛される作品となりますように。
【受賞歴】11度目の優秀賞受賞。第20回と第31回で最優秀を受賞している。
優秀賞矢内京子(あなたへ)


美術賞をいただき、うれしくありがたく思います。なんといっても、降旗組に参加することが出来たことが本当にうれしいです。現場での緊張感、集中力は、今までに味わったことのないものでした。東京のセットと、地方ロケ、建て込みの行ったり来たりでしたが、美術の皆のチームワークでのりきれました。大勢の美術関係者、皆に感謝です。
【受賞歴】第33回に「ヴィヨンの妻~桜桃とタンポポ~」で初受賞にして最優秀を受賞。2度目の受賞。
優秀賞山﨑秀満(わが母の記)


素晴らしい作品に巡り会い、参加させて頂き、原田監督を始め素敵なキャスト、スタッフの皆様と一緒に仕事が出来て本当に感謝しています。あらためて映画作りは、総合芸術だなと再認識しました。それぞれの思いが、詰まった作品です。今後もさらなる機会が与えられます様に頑張っていきたいと思っています。
【受賞歴】第27回に「阿修羅のごとく」で初受賞。3度目の受賞。
優秀録音賞
最優秀賞橋本文雄(聯合艦隊司令長官 山本五十六 -太平洋戦争70年目の真実-)


【最優秀受賞コメント】
去年の11月2日に橋本さんはいなくなってしまいました。それ以来、いろいろな作品で助手を務めた僕ら弟子たちはいろんな思いがあったんですけども、今日こういう場で、代理で賞を受け取ることになりました。たぶん橋本さんは『もういらん』と言うと思うんですが、もらってあげてくださいという感じで、助手から、私たちの方から渡したいと思います。(代理:尾崎聡/録音助手)
【受賞歴】第29回の「亡国のイージス」以来となる12度目の受賞。最優秀はこれまでに3度受賞している。
優秀賞小野寺修(天地明察)


滝田監督を始めとする、素敵なスタッフ、キャストの皆さんと、この作品を創り上げることが出来て、とてもうれしく思っています。ありがとうございました。
【受賞歴】第7回に「家族ゲーム」「みゆき」で初受賞。優秀賞は14度目の受賞。これまでに最優秀を5度受賞している。
優秀賞志満順一(北のカナリアたち)


北海道北部の雄大な自然をバックにした人間ドラマである本作品の音響設計で最も気をつけた点は現場の音にこだわる事でした。セリフは勿論ですが、効果音も現地で収録した音をメインに使いました。劇中の歌声も一部を除いて現場のシンクロ音源を使用して、臨場感を大事にしています。ロケ中はスタッフ全員が一丸となって撮影現場での雪かきなどを行い、まさに同じ釜の飯を食った仲間の結束が強くなった事が一番嬉しい事でした。
優秀賞志満順一(のぼうの城)


仕上げ作業中に大震災に見舞われ、諸処の事情で公開が一年以上延期になるという試練を乗り越えて公開された作品です。それだけにスタッフ全員の思い入れは大きく、作品がヒットしたことでやっと苦労が報われた想いがしました。アカデミー賞に入賞出来た事は映画の神様からのご褒美だと思います。音に関しては現代の人には多少解りづらい所があるかもしれませんが、時代を感じるセリフ廻しを多用して雰囲気を出したつもりです。
【受賞歴】第30回「嫌われ松子の一生」で初受賞。4度目の受賞。
優秀賞本田孜(あなたへ)


今回この様な賞を頂きありがとうございます。降旗監督と高倉さんとは二度目の作品でしたが、前回より緊張感が高かった様な気がします。今回はロードムービーということで環境音や現場の音を多用し、セリフも俳優さんのセリフを持ち帰り使いました。特に今回雨や風が多く苦労でしたがスタッフ、キャストの協力で何とかやりとげることが出来ましたこと、お礼申します。
この映画が末永く観客の皆様に愛されますよう祈っています。
【受賞歴】第25回の「ホタル」以来となる4度目の受賞。
優秀賞松本昇和(わが母の記)


今回、このような賞をいただけた事を、心より感謝しています。「わが母の記」のクランクアップ直後に大震災があり、また個人的にも父の癌が発覚したりと、色々と思い出深い作品です。何よりも、支えてくれた録音助手の皆に感謝しています。
※初受賞
優秀賞矢野正人(わが母の記)


この度は、優秀録音賞に選ばれ大変光栄です。原田監督を始め、スタッフ、キャストの皆様に感謝致します。この「わが母の記」というすばらしい作品に出会えた事、最高に幸せです。
ありがとうございました。
【受賞歴】第32回に「クライマーズ・ハイ」で初受賞。3度目の受賞。
優秀編集賞
最優秀賞日下部元孝(桐島、部活やめるってよ)


【最優秀受賞コメント】
ありがとうございます。この賞は桐島映画部の技術パートを代表して頂けたものだと思っています。この壇上まで連れてきてくれたすべての方に感謝します。本当にありがとうございました。そして最後に僕のやりたいようにやらせてくれた妻と最高の笑顔で癒してくれた息子にありがとう。
※初受賞
優秀賞上野聡一(のぼうの城)


投票していただいた皆様、ありがとうございます。「のぼうの城」の編集は田楽踊りのVコンテ作りから始まりました。コンテを入れ替え、書き足し、スタッフでアフレコをし、効果音を入れ、皆でやんややんやとやっていました。そして、その雰囲気のまま初号まで駆け抜けていきました。途方もないプロジェクトが完成できたのは、あの雰囲気のおかげだったと思います。
【受賞歴】第26回に「ピンポン」で初受賞。8度目の受賞。
優秀賞菊池純一(あなたへ)


映画「あなたへ」、この作品は降旗監督、主演・高倉健さんという、僕にとって夢のようなコンビの映画を編集させて頂き、感謝しております。そしてこのような賞を頂き、大変名誉なことと思っています。そして監督を始め、この映画に携わった方々にお礼申し上げます。私にとって大変すばらしい思い出が出来ました。ありがとうございます。
【受賞歴】第20回「Shall weダンス?」、第31回「それでもボクはやってない」で最優秀を受賞。4度目の優秀賞受賞。
優秀賞原田遊人(わが母の記)


2011年3月11日「わが母の記」編集初日。一人の生涯を描くこの作品と連日増える行方不明者数・死者数の報道。その現実に心が痛み、葛藤した事を今も鮮明に覚えています。余震が続き、計画停電の中でも助手さんを務めてくれた非常に優秀な細野優理子さん、全スタッフ、そして監督の的確な指示によってあの時、諦めずに皆で作品を完成させた事で今回の受賞があると思います。
この作品に関わる全ての方に感謝致します。
【受賞歴】第32回に「クライマーズ・ハイ」で初受賞。2度目の受賞。
優秀賞普嶋信一(北のカナリアたち)


「北のカナリアたち」は最近では大変、数少なくなったフィルムでの編集作業でした。フィルム作業で育った私にとっては、原点に戻ることができ、とても有意義な時間を頂いた作品でした。その上この様な賞を頂き感謝しております。
【受賞歴】第31回に「東京タワー オカンとボクと、時々、オトン」で初受賞。2度目の受賞。
優秀外国作品賞
最優秀賞最強のふたり


【最優秀受賞コメント】
フランスから遠い遠い国、日本で受賞することができ大変恐縮いたしております。映画が世界を変えられるかはわかりませんが。製作を始めた頃の私たちのゴールは、真実に基づいた、素晴らしい友情についての映画を撮ることでした。そして「最強のふたり」は予想外の展開をもたらし、フランス以外の国でも観客に届きました。心に触れることができました。私たちはそれをとても誇らしく思います。(エリック・トレダノ、オリビエ・ナカシュ両監督からのメッセージを代読/ギャガ株式会社取締役 水野貴夫)

【作品情報】
全身麻痺の大富豪が、介護者として雇ったのはスラム街出身の黒人青年だった。実話をもとに、正反対のふたりが出会い、最強の友人となっていく過程を笑いと感動で綴るフランス発のヒューマン・コメディ。フランスで、11年の年間興行収入1位に輝いたほか、ドイツ、スペイン、オーストリアなどヨーロッパ各国で大ヒット。日本でも49スクリーンでスタートしながら、徐々に上映規模を拡大し、興行収入16億円を突破。「アメリ」が持つ、フランス映画の日本国内興収記録を塗り替えた。東京国際映画祭でグランプリと主演男優賞をダブル受賞。日刊スポーツ映画大賞外国映画賞を受賞。ハリウッドリメイクも予定されている。
優秀賞アルゴ


【作品情報】
1979年、イランのアメリカ大使館で人質事件が発生。混乱の中、大使館を脱出し、カナダ大使の家に身を隠した6人の大使館員を救出するため、CIAは偽の映画「アルゴ」の製作を企画。6人をロケハンに来た撮影スタッフに仕立て上げ、出国させようとする……。18年間も機密扱いされていた衝撃の実話を、俳優としてだけではなく、監督・脚本家・プロデューサーとしても活躍するベン・アフレックの監督・主演で映画化。ジョージ・クルーニーがプロデューサーに名を連ねている。第70回ゴールデン・グローブ賞、および第66回英国アカデミー賞では作品賞と監督賞を受賞(英国アカデミー賞では編集賞も)。第85回米アカデミー賞では7部門にノミネートされ、作品賞、脚色賞、編集賞を受賞している。報知映画賞の海外映画賞受賞作。

原題:Argo
監督:ベン・アフレック 脚本:クリス・テリオ
配給:ワーナー・ブラザース映画

原題:Intouchables
監督:エリック・トレダノ、オリビエ・ナカシュ
配給:ギャガ
優秀賞ダークナイト ライジング


【作品情報】
クリスチャン・ベイル主演、クリストファー・ノーラン監督で製作された「バットマン」新シリーズの第3作。「バットマン ビギンズ」(05)、「ダークナイト」(08)に続くシリーズ完結編となる。舞台は「ダークナイト」の8年後。平和を取り戻した街に覆面テロリスト、ベインが現れ、ブルース・ウェインはもう一度立ちあがることに……。アン・ハサウェイ演じるキャットウーマンと、トム・ハーディ演じるベインが新たに登場し、作品を盛り立てる。世界興行成績は前作を超える10億ドル8000万ドル。日本でもシリーズ最高のオープニング成績を記録し、興行成績は19億円となった。前作よりIMAXカメラの撮影シーンを増やし、臨場感を溢れる映像を生みだしている。

原題:The Dark Knight Rises
監督:クリストファー・ノーラン
脚本:ジョナサン・ノーラン、クリストファー・ノーラン
配給:ワーナー・ブラザース映画
優秀賞ドラゴン・タトゥーの女


【作品情報】
原作は、スウェーデンの作家、スティーグ・ラーソンの3部作のベストセラー小説。先にスウェーデンで映画化された3部作は、世界各国で大ヒット。その第1作目だった「ミレニアム ドラゴン・タトゥーの女」(09)を、ハリウッドリメイクしたのが本作である。40年前に起きた少女失踪事件の真相を、ダニエル・クレイグ演じるジャーナリストと、背中にドラゴン・タトゥーのある天才ハッカー、リズベッドが究明していく。鬼才・デヴィッド・フィンチャーが監督し、原作と異なるラストを描いた。2012年の第84回米アカデミー賞ではルーニー・マーラの主演女優賞をはじめ、5部門にノミネートされ、編集賞を受賞した。

原題:The Girl with the Dragon Tatoo
監督:デビッド・フィンチャー 脚本:スティーブン・ザイリアン
配給:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント
優秀賞007 スカイフォール


【作品情報】
「007」シリーズ23作目、シリーズ誕生50周年の節目に発表された最新作。ダニエル・クレイグが主演になってから3作目となる本作は、「アメリカン・ビューティー」でオスカーを受賞したサム・メンデスが監督を務め、アクションはもちろんドラマとしての面白さも存分に楽しめる快作に仕上がった。悪役で登場するハビエル・バルデムも強烈な印象を残す。全世界の興行収入は11億ドルを超え、シリーズ最高の興行成績を樹立した。第85回アカデミー賞では撮影賞はじめ5部門ノミネートされ、主題歌賞、音響編集賞を受賞している。これは「007」シリーズ史上最多となる。第66回英国アカデミー賞では、英国作品賞と作曲賞を受賞した。

原題:Skyfall
監督:サム・メンデス 脚本:ニール・バービス
配給:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント
新人俳優賞
優秀賞染谷将太(ヒミズ/悪の教典)


【受賞コメント】
「ヒミズ」という映画で、僕の人生が大きく変わったと思っています。共演した二階堂さんのおかげでこの場に立てていると思っています。今ちょうど「ヒミズ」の園子温監督とスタッフの皆さんとで新しい作品を撮影しており授賞式に行ってこいと見送り出されてきました。この喜びを現場に持ち帰って皆さんと噛みしめたいと思っています。


01年に映画初出演。既に10年以上にわたるキャリアを持ち、数多くの映画やテレビドラマに出演している。「ヒミズ」では、第68回ヴェネチア国際映画祭において、日本人初となるマルチェロ・マストロヤンニ賞(最優秀新人俳優賞)を受賞。衝動的に父親を殺してしまった15歳の少年が、絶望から再生へ向かうまでを魂のこもった演技で見せ、観る者の心を揺さぶった。「悪の教典」では、サイコパス教師に立ち向かう頭の切れる生徒役で、圧倒的な存在感を示している。エランドール賞新人賞も受賞。
優秀賞チャンミン(黄金を抱いて翔べ)


【受賞コメント】
素晴らしい監督と素晴らしい俳優さんたちと素晴らしいスタッフと仕事ができてすごく光栄でしたし、こんな素晴らしい賞を頂けて感謝しています。ありがとうございます。

『東方神起』のメンバーとして04年に韓国デビュー。熱狂的な支持を集め、05年、日本でも活動を開始。アジア各国で数多くのライブを成功させる。韓国でドラマ主演経験はあったが、日本での俳優デビューとなった本作でスクリーンデビューを飾った。ミステリアスな爆弾工作員の、閉ざした心が徐々に開いて行くさまを、美しい身のこなしと表情で繊細に表現。特にその目の演技は観客の心に強く訴えかけた。
優秀賞東出昌大(桐島、部活やめるってよ)


【受賞コメント】
高校2年生のときにモデルデビュー。パリ・コレクションなど海外のショーでも活躍してきた。本作で600人を超えるオーディションの中から、最も倍率の高かった宏樹役を勝ち取り、映画デビュー。スポーツが得意な人気者でありながら、焦燥感を抱えている青年の心情をリアルに演じ、一気に注目を浴びた。本作を機に、モデル業を辞め、俳優業に専念することを決断している。毎日映画コンクールのスポニチグランプリ新人賞も受賞している。

23歳でこの「桐島」のお話を頂きました。当時別の仕事をしていたので、転職という意味でもかなりの覚悟と重圧がありましたが、共演者とスタッフの方々のおかげで何とかやり遂げることができました。当面の目標としましては、役者としての成長もありますが、また「桐島」のスタッフの方々と違う現場で必ずお会いしたいので、今後も精進していきます。
優秀賞松坂桃李(ツナグ/麒麟の翼/今日、恋をはじめます)


【受賞コメント】
去年の日本アカデミー賞の放送を見て、自分もここに立ってみたいなと思っていました。それが今回作品に恵まれたおかげで、この場に立つことができました。共演者の武井さん、橋本さんへ感謝の極みです。それと同時に新人だから許されていた部分もあったと思うので、これからは一俳優として様々な作品に関わっていき、またここに立てるように日々精進したいと思います。

樹木希林演じる祖母から特殊な能力を受け継ぐ高校生役を演じた「ツナグ」で映画単独初主演。「麒麟の翼」では父に対して素直になれない思春期の青年を、「今日、恋~」では自信満々のSキャラ男を、それぞれ説得力たっぷりに演じ、作品を成功に導いた。また、2012年はNHK朝の連続テレビ小説『梅ちゃん先生』の信郎役で、お茶の間の人気を獲得。飛躍の年となった。日刊スポーツ映画大賞の石原裕次郎新人賞、エランドール賞新人賞も受賞している。
優秀賞武井咲(るろうに剣心/愛と誠/今日、恋をはじめます)


【受賞コメント】
本日はこのような賞を頂きまして本当に、本当に嬉しく思います。さきほど役所(広司)さんから頂いた言葉を一生覚えて、素敵な作品と監督と(出会えるように)、そして素敵な作品にできるように私自身もこれから頑張っていきたいと思います。

ブルジョア育ちのお嬢様を可憐に演じた「愛と誠」で本格的スクリーンデビュー。大ヒットした「るろうに剣心」では、主人公の剣心に惹かれていく、芯の強いヒロインを凛とした美しさで演じた。「今日、恋~」では、超地味な少女が恋をしてどんどん綺麗になる過程を鮮やかに体現し、観客を魅了。12年はテレビでも3クール続けて連続ドラマの主演を務めるなど、精力的に活動を行った。
山路ふみ子映画賞新人女優賞、日刊スポーツ映画大賞新人賞(「愛と誠」、「るろうに~」に対して)、エランドール新人賞も受賞している。
優秀賞二階堂ふみ(ヒミズ/悪の教典)


【受賞コメント】
この度はこのような賞を頂き本当にありがとうございました。面白いことを言って欲しいと言われたんですが、何一つ思い浮かばないぐらいものすごく緊張しています。一緒に受賞した染谷くんのおかげでちょっと緊張がほぐれました。会場に母が来ていまして、母にもこの場で感謝を伝えられたことをすごく光栄に思います。これからも頑張っていきたいと思います。ありがとうございました。

モデルとして活躍後、09年に女優デビュー。2011年に公開された「劇場版 神聖かまってちゃん ロックンロールは鳴り止まないっ」で初出演を務める。染谷将太とともに第68回ヴェネチア国際映画祭最優秀新人俳優賞を獲得した「ヒミズ」では、心に傷を抱えながらも、主人公に全力で想いを寄せる同級生の少女をみずみずしく、情熱的に演じきり、観る者を圧倒した。「悪の教典」でも、感受性が強く、陰のある女子高生を好演している。
優秀賞橋本愛(桐島、部活やめるってよ/HOME 愛しの座敷わらし/Another アナザー)


【受賞コメント】
08年、オーディションのグランプリを受賞したのを機に、芸能活動をスタート。09年に映画初主演。「桐島~」では、バトミントン部所属のヒロイン役で、女子高生の心理をリアルに表現したほか、人間関係に悩む思春期の少女を演じた「愛しの~」、不思議な存在感を持つ美少女役の「Anotherアナザー」などで、自身の持つミステリアスな雰囲気を生かし、鮮烈な印象を残した。12年には8本の出演作が公開された。ヨコハマ映画祭最優秀新人賞、キネマ旬報ベスト・テン新人女優賞も受賞している。


今回は私の出演した作品を見て頂いて、本当に嬉しく思います。これからも大好きな人たちと大好きなことを、できればずっと長い間やっていけたらなと。そのために頑張っていきます。お母さん、お父さん、妹、おばあちゃん、たぶん(この場に)いると思うので、みんなありがとう。
協会栄誉賞
優秀賞山田洋次


【受賞コメント】
第1回日本アカデミー賞で監督賞をはじめ、たくさんの賞を僕の作品「幸せの黄色いハンカチ」が受賞したのは、何と言っても強烈な思い出ですね。それがどれだけあのとき勇気づけてくれたかわかりません。そういう意味で今回、名誉のある文化勲章をもらったことをとても嬉しくありがたく思っております。特に「寅さん」映画は、大衆と言われる人たちのために作った作品ですし、これに与えられたということはなかなかありがたいことではないかと思います。ちょっと面喰ったりもしましたが、映画界を代表するつもりで頂きました。

山田洋次 監督 1931年生まれ
 国民映画と呼ばれる「男はつらいよ」シリーズ(69~95)は、もともと68年に同名の連続テレビドラマとして放映され、山田洋次監督は26回分のオリジナル脚本を執筆。葛飾柴又生まれの風来坊、車寅次郎(渥美清)への愛着から映画化され、大ヒット。26年間48作(46作品を監督)の記録はギネスブック入りし、“盆暮れ”には全国各地で観客が押し寄せた。松竹の屋台骨を支えた山田監督は、54年に松竹入社。川島雄三、渋谷実、野村芳太郎監督作品などにつき、「二階の他人」(61)で監督デビュー。初期の「馬鹿まるだし」(63)をはじめとする“馬鹿”シリーズ三部作でのハナ肇扮する主人公は、車寅次郎に至る山田喜劇の出発点である。「男はつらいよ」シリーズ以外でも「家族」(70)、「幸福の黄色いハンカチ」(77)、「息子」(91)、「学校」(93)など多くの名作を生み、近年の藤沢周平原作による「たそがれ清兵衛」(02)、「隠し剣鬼の爪」(04)、「武士の一分」(06)は後の時代劇ブームの先鞭を付けると共に、新たな境地を切り開く。81本目となる「東京家族」(13)では、小津安二郎監督の名作「東京物語」(53)をモチーフに現代日本の家族を描いた。12年文化勲章受章。
【受賞歴】第1回最優秀監督賞、最優秀脚本賞「幸福の黄色いハンカチ」「男はつらいよシリーズ」、第2回優秀監督賞「男はつらいよ 寅次郎わが道を行く」「男はつらいよ 噂の寅次郎」、第4回優秀監督賞、最優秀脚本賞「遥かなる山の呼び声」「男はつらいよ 寅次郎ハイビスカスの花」、第6回特別賞、第10回優秀監督賞「男はつらいよ 柴又より愛をこめて」「キネマの天地」、優秀脚本賞「キネマの天地」、第12回優秀監督賞「男はつらいよ 寅次郎物語」「ダウンタウンヒーローズ」、優秀脚本賞「男はつらいよ 寅次郎物語」「ダウンタウンヒーローズ」「椿姫」、第15回優秀監督賞「息子」、優秀脚本賞「男はつらいよ 寅次郎の告白」「息子」、第17回最優秀監督賞、最優秀脚本賞「男はつらいよ 寅次郎の縁談」「学校」、第20回優秀監督賞、優秀脚本賞「学校Ⅱ」、第22回優秀監督賞、優秀脚本賞「学校Ⅲ」、第24回優秀監督賞、優秀脚本賞「十五才 学校Ⅳ」、第26回最優秀監督賞、最優秀脚本賞「たそがれ清兵衛」、第28回優秀監督賞、優秀脚本賞「隠し剣 鬼の爪」、第30回優秀監督賞、優秀脚本賞「武士の一分」、第32回優秀監督賞、優秀脚本賞「母べえ」、第34回優秀監督賞、優秀脚本賞「おとうと」
会長功労賞
優秀賞「踊る大捜査線」シリーズ製作


【受賞コメント】
この賞は、15年間、約3000万人を超えるお客様が劇場に来てくださり、そのお客さまが頂いた賞だと思っております。私はテレビ局の人間ですが、この賞は僕らと一緒にテレビ局で映画を作っている人間に与えられた賞だとも思っています。これからも1人でも多くのお客さまを劇場に呼びたいと思っていますので、よろしくお願いいたします。本当にありがとうございました。【製作:(株)フジテレビジョン 常務取締役 亀山千広さん】

【解説】
 第1作「踊る大捜査線 THE MOVIE」(98)は映画業界を揺るがす想定外の大ヒット。そして 第2作「踊る大捜査線 THE MOVIE2 レインボーブリッジを封鎖せよ!」は日本実写劇映画の歴代記録を大きく塗り替え、シリーズ4作品の興行収入合計は400億円を突破した。従来の刑事物ドラマとは異なり、「所轄=湾岸署」と「本店=警視庁」の構造を導入し、新たな魅力に富んだドラマとして構築した点が勝因であり、90年以降、伸び悩んだ日本映画に対して、出発点であるテレビドラマ版の親しみやすいキャラクターを最大限に生かし、新しい映画の観方を観客に提示した意味は大きい。シリーズ4作品のメガヒットは、05年にはスピンオフ作品2本を生み、しかもオリジナルグッズ販売や関連書籍、コラボレーションCMなど数々のキャンペーンを展開。第1作公開時には、映画が作品ごとに公式サイトを設けることが珍しい頃に、ファンと作り手たち、あるいはファン同士のコミュニケーションが可能な場として公式サイトを立ち上げ、そうした波の先駆けとなった。NTTドコモとタッグを組んだ携帯電話への配信コンテンツも積極的に行い、まさに映画を社会現象に押し上げたことは高く評価されるべきだろう。
会長特別賞
優秀賞新藤兼人(監督)(監督・脚本 2012.5.29没 享年100歳)


本日はありがとうございます。新藤兼人は昨年5月には100歳で亡くなりました。最後まで映画人として生きたんだなと思っております。そして、とどのつまりに、全映画人、映画業界から、こんな華やかな場所で賞を頂くことができました。本当に光栄です。【ご子息で近代映画協会代表の新藤次郎さん】
<解説>
監督デビュー作「愛妻物語」(51)から、99歳での遺作「一枚のハガキ」(11)まで半世紀以上にもわたるフィルモグラフィは監督作品49本、脚本作品78本に及び、日本のインディペンデント映画の先駆者として設立した近代映画協会の歴史は、そのまま日本映画史の重要な流れを形作る。代表作「裸の島」(60)ではモスクワ国際映画祭グランプリ、「裸の十九才」(70)では同映画祭金賞を受賞するなど、海外の映画人からも尊敬を集めていた。合宿システムなど独特の製作方式で知られ、常に未知の表現に果敢に挑み続け、「ある映画監督の生涯、溝口健二の記録」(75)、「午後の遺言状」(95)、「一枚のハガキ」の三作は、それぞれキネマ旬報ベストワンを受賞。生涯の主題ともいえる原爆を題材にした「原爆の子」(52)、「第五福竜丸」(59)、「さくら散る」(88)などでの告発の姿勢も一貫していた。晩年には円熟したユーモアや笑いの要素も加味され、その作品世界は、いっそう豊かな広がりを見せていた。『新藤兼人の足跡1~6』(岩波書店)、『小説・田中絹代』(読売新聞社)、『愛妻記』(岩波書店)など著作も多数あり、日本映画界を牽引する存在であったことは間違いない。02年文化勲章受章。
【受賞歴】第1回優秀監督賞、優秀脚本賞「竹山ひとり旅」、第2回で最優秀脚本賞「事件」、第3回優秀脚本賞「絞殺」「配達されない三通の手紙」、第11回優秀脚本賞「ハチ公物語」、第16回優秀脚本賞「遠き落日」「墨東奇譚」、第19回最優秀監督賞、最優秀脚本賞「午後の遺言状」、特別賞企画賞、第23回優秀脚本賞「おもちゃ」、第26回協会栄誉賞、第35回優秀監督賞「一枚のハガキ」
優秀賞橋本文雄(録音 2012.11.2没 享年84歳)


本当に長い間お世話になった皆さんにお礼の言葉を申し上げたいです。お世話になりました。ありがとうございました。270本近い映画を撮り上げて逝きましたので、本人は思い返すことはないかと思います。長い間本当にありがとうございました。お世話になりました。【奥様の橋本陽子さん】
<解説>
 台詞も含めて高い技術力がもたらす大胆な省略と誇張、そして音楽との親和性など音の設計から映画の感動を紡ぎ出した橋本氏は、46年大映京都撮影所に入社。伊藤大輔、衣笠貞之助、森一生などの巨匠の作品に録音助手として付き、経験を積む。54年、製作を再開した日活に移り、「生きとし生けるもの」(55)で技師に昇格。川島雄三、中平康、今村昌平などの名匠や日活アクション映画を数多く担当する。日活がロマンポルノに路線変更後も同社に残り、オールアフレコを逆手にとったロマンポルノ独自の音を作りあげる。82年にフリーになった後も、森田芳光、澤井信一郎、阪本順治など後進の監督たちの作品を支える。監督だけでなく、俳優や他のパートの技術スタッフからの信頼も厚く、重鎮として撮影現場の空気を時に引き締め、時に和ませ、映画録音回の第一人者として業界の発展と新人の育成に大きく貢献する。「聯合艦隊司令官長 山本五十六」(11)を最後に引退を表明、56年間で担当した作品は280本を超える。04年から4年間、日本映画・テレビ録音協会会長を務め、その映画人生は『ええ音やないか 橋本文雄・録音技師一代』(リトルモア)に聞き書きとして纏められている。
【受賞歴】第3回優秀録音賞「赫い髪の女」「戦国自衛隊」「天使のはらわた 赤い教室」、第9回最優秀録音賞「刺青・IREZUMI」「恋文」「早春物語」「それから」「タンポポ」「Wの悲劇」、第10回最優秀録音賞「植村直己物語」、第12回最優秀録音賞「敦煌」、第15回優秀録音賞「おいしい結婚」「王手」「夢二」、第17回優秀録音賞「虹の橋」「夜逃げ屋本舗2」、第21回優秀録音賞「失楽園」、第23回優秀録音賞「39刑法第三十九条」、第26回「優秀録音賞「模倣犯」、第27回優秀録音賞「阿修羅のごとく」、第29回優秀録音賞「亡国のイージス」
優秀賞森光子(俳優)(俳優 2012.11.10没 享年92歳)


森さんの楽屋での昔話のひとつに舞台を演じながら掛け持ちで映画を何本か撮ったというエピソードがありました。朝撮影所に行き、午後には日比谷の劇場に戻って舞台を務め、そして夜また撮影所に行く。それ以後、テレビも加わっていくことになりました。そんな森さんの役者人生をこうして映画の方たちからも褒められ称えられて、そのキャリアを映画でスタートした森さんもとても喜んでいると思います。森さんどこかで見てますか。どうも本当にありがとうございました。【代理:『放浪記』プロデューサーの岡本義次さん】
<解説>
 少女時代から宝塚に憧れ、従妹の嵐寛寿郎率いる寛プロ作品「なりひら小僧、春霞八百八町」(35)で映画初出演。戦前だけで60本近い映画に出演した。戦後は荷2年余の療養生活を経て、見事にカムバック。『花のれん』『がめつい奴』『がしんたれ』など舞台出演で実績を上げ、61年、芸術座『放浪記』で主演し、以来09年まで2017回という前人未到の上演記録を打ち立てる。「台所太平記」(63)、「大根と人参」(65)、「暖春」(66)、「乱れ雲」(67)、「めぐりあい」(68)、「映画女優」(87)、「川の流れのように」(00)など生涯の映画出演作も100本に及び、その明るく庶民的な持味を生かして、『時間ですよ』(TBS)などのテレビドラマでも人気を集める。88年から92年までは日本喜劇人協会会長を務めるなど、その活動は多岐にわたり、現役の女優として観客に最後まで明るい希望を与え続けた。自叙伝『人生はロングラン』(日本経済新聞出版社)では、大正、昭和、平成を駆け抜けた女優の軌跡が鮮やかに綴られている。61年に芸術祭文部大臣賞、84年に紫綬褒章、91年に毎日芸術賞、92年に勲三等瑞宝章、05年に文化勲章、09年に国民栄誉賞などを受賞。
【受賞歴】第24回優秀主演女優賞「川の流れのように」、第29回協会栄誉賞
優秀賞山田五十鈴(俳優)(俳優 2012.7.9没 享年95歳)


いま山田五十鈴さんは天空から日本アカデミー賞のさらなるご発展を祈っていると思います。そして12歳でデビューして以来ずっと主演を続けた日本の映画界に熱い御礼を申し上げていると思います。本日はありがとうございました。【代理:『淀どの日記』演出家の北村文典さん】
<解説>
 六才の頃から清元などの芸事を叩き込まれ、12才で日活に入社、「劔を超えて」(30)で映画デビューする。「瞼の母」(31)や「国士無双」(32)などに出演後、溝口健二監督「浪華悲歌」「祇園の姉妹」(共に36)に主演し、“演技指導をせずに、あくまで俳優に考えさせる”溝口演出に徹底的に鍛えられ、“役は誰に教えられるものでもない、自分自身で創り上げるもの”と演技に開眼する。ことに現代的で打算に強いが、結局は男に捨てられる「祇園の姉妹」の芸者おもちゃ役は高く評価される。38年、東宝に入社。「蛇姫様」(40)などの大ヒットで国民的スターとなり、女優としての地位を確立する。その後も「現代人」(52)、「たけくらべ」(55)、「流れる」(56)、「蜘蛛巣城」「どん底」(共に57)、「ぼんち」(60)、「もず」(61)など、成瀬巳喜男、渋谷実、黒澤明ら日本を代表する監督の作品に次々と出演し、日本映画界を代表する女優として、その存在感を示す。56年以降は舞台やテレビドラマにも積極的に挑み、『井伊大老』、『赤穂浪士』、『必殺』シリーズなどでお茶の間の人気も獲得した。その70年余にわたる芸歴が認められ、2000年には女優として初めて文化勲章を受章。
【受賞歴】第18回会長特別賞、第24回協会栄誉賞
優秀賞若松孝二(監督 2012.10.17没 享年76歳)


本日はありがとうございました。監督はもうこちらにはいらっしゃいませんが、監督の残した映画「千年の愉楽」は明日(3月9日)公開になります。劇場でぜひ監督の残したメッセージを受け取って頂ければと思います。どうもありがとうございました。【代理:若松プロダクションの木全 哲さん】

<解説>
映画製作の原点は「怒り」と公言し、常に反体制の視点から映画を撮り続け、その生涯にわたって若者たちから圧倒的に支持された若松氏は、宮城県の農業高校中退後、上京。63年に「甘い罪」で監督デビュー。65年若松プロダクションを設立し、足立正生、大和屋竺、曽根中生、高橋伴明ら多くの才能を結集し、以後一貫したスタイルで110本もの監督作品を送り出す。大島渚監督「愛のコリーダ」(76)ではプロデューサーとしても手腕を発揮し、80年代以降は「水のないプール」(82)や、「われに撃つ用意あり」(90)、「寝盗られ宗介」(92)などで一般映画にも進出する。近年の「実録・連合赤軍 あさま山荘への道程」(08)ではベルリン国際映画祭最優秀アジア映画賞を、「キャタピラー」(10)では、寺島しのぶに、同映画祭主演女優賞をもたらす。古稀を過ぎても創作意欲は衰えず、「海燕ホテル・ブルー」「11.25自決の日 三島由紀夫と若者たち」(共に12)を精力的に発表。「千年の愉楽」(13)の公開を控えていた。政治とエロスに彩られた全速力の映画人生は、その著書『俺は手を汚す』(河出書房新社)、『時効なし。』(ワイズ出版)などにエネルギッシュに記されている。

・林 光
(はやし ひかる)
作曲
2012/1/5没 80歳
・二谷英明
(にたに ひであき)
俳優
2012/1/28没 80歳
・三崎千恵子
(みさき ちえこ)
俳優
2012/2/20没 90歳
・淡島千景
(あわしま ちかげ)
俳優
2012/2/16没 87歳
・井上泰幸
(いのうえ やすゆき)
特撮美術デザイナー
2012/2/19没 89歳
・神波忠男
(こうなみ ふみお)
脚本
2012/3/4没 78歳
・中原早苗
(なかはら さなえ)
俳優
2012/5/15没 76歳
・地井武男
(ちい たけお)
俳優
2012/6/29没 70歳
・津島恵子
(つしま けいこ)
俳優
2012/8/1没 86歳
・内藤武敏
(ないとう たけとし)
俳優
2012/8/21没 86歳
・堀川弘通
(ほりかわ ひろみち)
監督
2012/9/5没 95歳
・大滝秀治
(おおたき ひでじ)
俳優
2012/10/2没 87歳
・藤本義一
(ふじもと ぎいち)
小説・脚本
2012/10/30没 79歳
・石上三登志
(いしがみ みつとし)
評論
2012/11/6没 73歳
・斎藤光正
(さいとう こうせい)
監督
2012/11/25没 80歳
・中村勘三郎
(なかむら かんざぶろう)
俳優
2012/12/5没 57歳
・佐藤 充
(さとう まこと)
俳優
2012/12/6没 78歳
・小沢昭一
(おざわ しょういち)
俳優
2012/12/10没 83歳
・千石規子
(せんごく のりこ)
俳優
2012/12/27没 90歳

(※没月日順)

協会特別賞
優秀賞菅原俊夫(殺陣)


【受賞コメント】
素敵な賞を頂きまして感激しております。いろいろな監督さんとやらせて頂きましたが、深作(欣二)監督が一番厳しいと思っていましたら、それに負けないほど厳しい阪本(順治)監督に出会うことができ、本当に幸せでした。この喜びを京都に持ち帰りましてチャンバラのメンバーと楽しいおいしいお酒を酌み交わしたいと思います。

【解説】
 殺陣の基本は、打つ、受ける、突く、振る、の四態にあり、これが臨機応変に組み合わされて、無数の型になる。そして、殺陣を構成する上で最も重要な存在はカラミであるという、名殺陣師、故・足立伶二郎氏の遺した、その基本を継承しつつこれまでの殺陣の流れを大きく変えたのが、菅原氏である。時代劇から任侠映画を経て、ジャンルが多様に広がり、大作エンタテインメントの中で、殺陣の醍醐味をいかに見せていくかという、時代の要請に応じて培われたものだろう。菅原氏は61年に東映京都撮影所に入所。「東京=ソウル=バンコック 実録麻薬地帯」(73)で殺陣師としてデビュー。以後、深作欣二監督「柳生一族の陰謀」(78)、「魔界転生」(81)、「蒲田行進曲」(82)、「里見八犬伝」(83)、斎藤光正監督「戦国自衛隊」(79)、「伊賀忍法帖」(82)、工藤栄一監督「影の軍団 服部半蔵」(80)、降旗康男監督「寒椿」(92)、中野裕之監督「RED SHADOW 赤影」(01)などで、伝統的な立ち回りを踏まえつつ、独自のアイデアでケレン味溢れるアクションを創出。阪本順治監督「座頭市 THE LAST」(10 )ではハードかつリアルな殺陣を工夫し、ダイナミックな時代劇作りを見事に支えた。
優秀賞馬場正男(美術管理)


【受賞コメント】
どうもありがとうございます。私は映画界で60年の歴史を持っております。20代から映画界に入りまして、今85歳になります。あと何年か映画をやりたいと思いますので、皆さんの協力よろしくお願いいたします。本日はどうもありがとうございます。
【解説】
 黒澤明監督の名作「羅生門」(50)のタイトルロールである“羅生門”は、寺院の山門を参考にして大映京都撮影所のオープンセットに建てられた。当初の構想では、そのあまりの巨大さに上部の屋根をまともに作ったのでは柱を支えきれないので荒廃しているという設定を口実に屋根の半分を毀したり寸法を盗んで建てたそうだが、それが逆にリアリティを高め、後世に残る名作に寄与した。その大道具製作に関わったのが馬場氏である。47年、大映京都撮影所・装置部に入社。「地獄門」(53)や「新平家物語」(55)、「朱雀門」(57)、「釈迦」(61)など多くの映画美術製作に従事。71年の大映倒産後は、徳間大映へ編入する。80年、東京配転を機に、美術課長時代の経験を活かして独立。88年、京都映画(現在の松竹撮影所)に入所後は、美術監督時代の経験を踏まえ、活躍し、管理部門、制作部門など他部門からの信頼も厚く、後進の指導育成にも大きく貢献し、業界にとって、かけがえのない存在である。「壬生義士伝」(03)、「花よりもなほ」(06)、「鴨川ホルモー」(09)、「武士の家計簿」(10)、「天地明察」(12)など現在も映画美術に関わり、業界最長老の棟梁として活動されている。
優秀賞宮本まさ江(衣裳)


【受賞コメント】
本日はこのような賞を頂きありがとうございます。役者さんを陰で支える、すべての衣裳メイクスタッフを代表して頂いたと思っております。協会の方々にお願いがあります。来年からはぜひ衣裳とメイク賞を添えて頂ければと思います。よろしくお願いいたします。
【解説】
 脚本に書かれている人間の台詞は具体だが、衣裳はスタッフの想像力に委ねられていることが多く、映画の力はそこで試される。登場人物の衣裳には、役柄なり俳優の、それまでの人生が凝縮されるからだ。それと同時に時代背景や全体のバランスなどが考慮されて、初めて衣裳が決定される。衣裳で映画全体の世界観が決まると断言しても過言ではないだろう。その第一人者である宮本氏は、85年に第一衣裳に入社。その後、株式会社ワード・ローブを立ち上げ、独立系の低予算映画から大作まで幅広く映画衣裳に携わる。「夢二」(90)、「12人の優しい日本人」(91)、「トカレフ」(93)、「身も心も」(98)、「ハッシュ!」(00)、「青い春」(01)、「赤目四十八瀧心中未遂」(03)、「間宮兄弟」(06)、「東京タワー ~オカンとボクと、時々、オトン~」(07)、「酔いがさめたら、うちに帰ろう」(09)、「源氏物語 千年の謎」(11)、「テルマエ・ロマエ」(12)など、これまで関わった作品は、180本を超える。CM、テレビドラマ、舞台でも多くの作品を手がける一方、市川準監督「ざわざわ下北沢」(00)ではプロデュースも務め、その活動は、映画全体をとりまく衣裳にまで及ぶ。
優秀賞岡安プロモーション


【受賞コメント】
映画に関わる全スタッフの思いが込められた、世界でただ一つ、唯一無二のネガフィルムにはさみを入れる。それがネガ編集です。決してミスの許されない最後の砦だと思っています。それだけに緊張を強いられますが、同時に誇らしく思える仕事です。この特別賞を、岡安プロスタッフ一同、そして最後の砦として頑張ってきたネガマンの仲間と一緒に喜び合いたいと思います。
【解説】
 撮影されたシーンやショットと冷静に向きあい、監督が意図したことをどう観客に伝えるか、技術に裏打ちされた創造力こそが編集の力であり、編集の良し悪しで映画の出来は左右される。
いわば編集は作品の「思いをつなぐ」作業であり、近年の映画製作のデジタル化に伴い、映画フィルム処理工程の最終段階のひとつである“ネガ編集”の作業が激減しつつある現在だからこそ、編集の重要性は認識されるべきだろう。
多くの後進を育成し「戦国自衛隊」(79)や「楢山節考」(83)「ビー・バップ・ハイスクール」(85)「黒い雨」(89)「櫻の園」(90)
「Love Letter」(95)「始皇帝暗殺」(98)「鏡の女たち」(03)「血と骨」(04)「犬神家の一族」(06)「サイドカーに犬」(07)「座頭市 THE LAST」(10)など多数の劇映画や「映画ドラえもん」シリーズ(「のび太のねじまき都市冒険記」95「のび太とロボット王国」02
「のび太の恐竜2006」06など)「映画クレヨンしんちゃん」シリーズ(「嵐を呼ぶモーレツ!オトナ帝国の逆襲」01など)、アニメ映画の名作の“ネガ編集”を手がけ、映画業界を牽引してきた岡安プロモーションの功績は大きい。
優秀賞三陽編集室


【受賞コメント】
ありがとうございます。みなさんのおかげでこのような賞を頂き本当に嬉しく思います。三陽編集室一同、感謝と共にみなさんに御礼を申し上げます。
【解説】
 戦前から戦後にかけて、「将軍と参謀と兵」(42)や「夏目漱石のこころ」「自分の穴の中で」(共に55)などの名作で、日活映画全盛期
を支え「ビルマの竪琴」(56)ではサン・ジョルジュ賞を受賞したベテラン編集者、故・辻井正則氏の遺志を受け継ぎ、有限会社三陽編集室は
77年、辻井好子、菊池玲子、佐藤洋子の三名で設立された。会社発足当時より現在まで女性だけの編集室は珍しく、
当初はCM、テレビドラマ、アニメーションが中心だったが、「シコふんじゃった。」(91)「全身小説家」(94)「HANA-BI」「ラヂオの時間」(共に97)
「らせん」「ニンゲン合格」(共に98)「ウォーターボーイズ」(01)「黄泉がえり」(02)など劇映画やドキュメンタリーのネガ編集も
数多く手がける。ネガ編集とは、ポジ編集を終了したラッシュ(ワーク・フィルム)に合わせて、ネガ・フィルムをつなぐ作業であり、どのショットと、どのショットを
つなぐかという作業は、映画の決定的な役割を担うが、女性ならではのきめ細やかな仕事が認められ、広く知られるようになった。
映画製作のデジタル化に合わせて、三陽編集室は「東京家族」(13)を最後に35年間の幕を下ろした。
岡田茂賞
優秀賞株式会社セントラル・アーツ


【受賞コメント】
岡田茂会長の映画魂をいかにして引き継いでいくかをいろいろと考えながらやりましたが、結果として、松田優作さん、舘ひろしさん、柴田恭平さん、仲村トオルくんなどと一緒に作品を作り続けて参りました。そして今日、こういう賞を頂いたことは非常にありがたく、スタッフと共に御礼を申し上げたいと思います。【取締役社長 黒澤 満さん】


【解説】
 松田優作(「探偵物語」83)、仲村トオル(「ビー・バップ・ハイスクール」85)、長淵剛(「オルゴール」89)、窪塚洋介(「GO」01)などセントラル・アーツ作品を足掛かりに大きく飛躍した俳優は数多い。その軽快な製作のフットワークは、日本映画の最先端としての自覚に根差し、俳優のみならずベテランから、脂の乗り切った中堅、意気の良い新人監督を起用することで、常に日本映画界をリードしてきた。セントラル・アーツは、初期日活ロマンポルノの時代の製作の舵取りを行った黒澤満氏が、日活退社後、岡田茂社長に誘われ、東映ビデオにプロデューサーとして入社、80年に黒澤氏を中心に設立された会社で、劇場用映画102本、テレビドラマ38本(1シリーズを1本として)、Vシネマ118本を製作。「あぶない刑事」(87)シリーズを初めとするアクション、「それから」(85)や「時雨の記」(98)などの文芸作品、「ラブ・ストーリーを君に」(98)などの青春純愛ものまで、幅広いジャンルを手がけ、多くのプロデューサーや若手スタッフを輩出した。製作プロダクションとして32年目を迎え、東映創立60周年記念作品「北のカナリアたち」(12)では、長期の北海道ロケを敢行。日本映画界への永年の貢献に加え、新たなる飛躍をとげた。

日時: 2013(平成25)年3月8日(金)
場所: 新高輪プリンスホテル 国際館パミール崑崙
司会: 関根勤、井上真央