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伊藤 穰一 × 坂本龍一 スペシャル対談
プラナフ・ミストリー「“第六感”テクノロジーの素晴らしい可能性」

2013年6月24日放送の「坂本龍一が語る TEDトーク」~前編~で
プラナフ・ミストリー「“第六感”テクノロジーの素晴らしい可能性」を題材におこなわれた
「伊藤 穰一 × 坂本龍一 スペシャル対談」の全貌をこちらでお届けいたします。

スペシャル対談

「彼のアイデアは、発明というより、革命かもしれない」

坂本:プラナフ・ミストリーのことは、ぼくは好きですね。どうして好きかというと「手を使った仕事」と「一貫したロジック」が、見事というしかない。彼の発明って、手近な安いものを使っていて素人の大工仕事のようだけど、次々と論理的に展開していって最終的には誰も考えたことのなかったところまでたどり着いているから。

伊藤:その背景にはたぶん、インドの文化もあると思います。「限られた資源でいかにおもしろいことができるか?」という文化。

坂本:でも、彼はすごいよね。本当に優秀。潜在的に優秀な頭脳というか、かっこいいよね。だけどこういう才能は、貧富の差とかは関係なく、どこにでもいますね。

伊藤:ええ。

坂本:ただ、普通の企業は「高価なデバイスをつくって、それをたくさん売る」という感じだけど、彼の話は「デバイスがなくてもいいよ」だから、商品化は難しいんじゃないかって思うよね。

伊藤:インターネットが最初に出てきたころを思い出すよね。「誰がもうけるの?」「誰ももうからないよね」「でもきっとムーブメントは起きるよね」っていう、そういうのに近いよね。

坂本:そのとき孫正義さんは「インターネットがもうからないって、誰がいったの?」って、もうけていたわけでしょ? そういう人もいる。面白い時代だったからね、あの頃は。だけど、プラナフ・ミストリーのアイデアは、それに匹敵するすごい発明だと思う。発明というより、革命かもしれない。彼は革命家ですね。


より新しいインターフェイスの探求と、伝統的な楽器の素晴らしさ

伊藤:彼が在籍していたうちのラボでは、Fluid Interfaces(流動的インターフェイス)といって、「画面やキーボードだけでなく、どこにでもインターフェイスがあるべき」ということで、彼のほかにも、いろいろな取り組みをしています。たとえば工場のすべての壁にディスプレイを設置するとか。そういうアイデアに興味持ってくれるのは、大きな工場を持ってる企業ですね。ユーザーになってくれそうな会社が強い関心を持ってくれます。

坂本:たとえば飛行機をつくるなら、膨大に部品があって、マニュアルなんかも分厚い。そういう工場で、Fluid Interfaces(流動的インターフェイス)は本当に役に立つだろうと思います。
もう、高価なデバイスをつくって売る時代じゃないのかもね。その次に移ってしまっているのかも。あるいは、その次に移ろうとしているのかな。ただ、もちろんある種のデバイスはなくらないわけです。デバイスというより、インターフェイスといったほうがいいのかな。Joiのラボでも、インターフェイスの研究もしているんでしょ? 

伊藤:していますね。

坂本:僕はピアノとかシンセサイザーを使っているけど、ギターとかバイオリンのようないわゆる伝統的な楽器って、インターフェイスとして考えるとものすごく優秀なのね。シンセサイザーで音をつくろうと思うと、たくさんプラグインを使って、いろんなことをする必要があるから、膨大な時間がかかる。でもギターだと、かちゃかちゃと調整したら、もう、一発で音が鳴る。本当に優秀。──そういう研究をしてほしいよね。「どういうインターフェイスをこれからつくるべきか?」みたいな。

伊藤:ええ。ピアノとか楽器がもっている良さも、取り入れていこうと思っています。


「やっぱり『足りない』って、大事なことだよね」

伊藤:MITメディアラボもインドでイノベーションに取り組んでますが、全然違う発想が生まれますね。

坂本:そうなんだ! やっぱり「インド人ならではの発想」ってあるの?

伊藤:あります。なんだろう? そういう資源がないところの方が面白い。メディアラボも、アフリカとかインドに行くと、本当に何にもない所で、優秀な人を見つけて来たりする。
世界中のいろんなところから人材を引っ張ってこようとするのは、メディアラボにとって「多様性」がすごく重要だから。 今、シエラレオネから学生が来ていて、夏休みとかで彼が戻ると、自分たちでラジオ局を作っちゃう。数百円くらいのパーツで。

坂本:世界の最貧国ですもんね。

伊藤:でもすごいんだよ、ちょっと教えると勝手に作る。うちのラボの学生も作るけど、作っても役に立たないわけ、アメリカでは。でも、シエラレオネのビレッジだったら、すごい価値がある。

坂本:国のためにもなるかもね。

伊藤:そうそう、そうなんだよね。

坂本:やっぱり「足りない」って、大事なことだよね。足りないから工夫して何かを作ろうとするじゃない?
十分足りていると、「足るを知る」という言葉もあるけど、満ち足りているとなかなか発想は出てこないですよね。


「日本企業に入ってもらいたかったな」

伊藤:彼は今、韓国の電機メーカー、サムスンで働いていて、大きな研究所の所長をやっています。

坂本:若いのに?

伊藤:そう、31歳。これからメーカーは、発展途上国のマーケットを攻めなくてはいけないし、彼らの美学に合うようなものをつくらないといけないからね。

坂本:でも、こういう人の発想をうまく使うことができるか、企業の質も問われそうだね。

伊藤:ちょうど彼がMITメディアラボを卒業するときに、僕がメディアラボに入って、彼から「人生のアドバイスがほしいから時間をください」といわれたんだけど、タイミングが合わなくて……。あのときちゃんと時間つくればよかった。日本企業に入ってもらいたかったな。

坂本:ヘッドハンティングしたらどうですか?

伊藤:ちょっと思っているけど、彼はすごくひっぱりだこだからね。TEDがすごいのは、ああやってTEDに出ると、すごくひっぱりだこになるところ。

坂本:すごく注目を浴びるよね。

伊藤:(坂本さんもTEDに)出て下さいよ!


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