『週刊ポスト』がはしゃいでいる。細川護煕・小泉純一郎の「元首相連合」の東京都知事選出馬をスクープしたのは本誌だと、自慢なのだ。たしかに、1月4日発売号で小泉氏が細川氏をかつぐと書いていて、朝日新聞が「細川元首相、候補に浮上」と伝えたのは1月9日付朝刊だったから、一番早かった。もっとも、他のメディアも昨年暮れから細川氏周辺が都知事選で動いていることは勘づいていたが「早く書き過ぎると話は潰れる」(全国紙政治部記者)と様子見だった。『週刊ポスト』はそれを早い者勝ちで書いたわけだが、週刊誌の世界は「書いた者勝ち」なのである。
『週刊ポスト』がはしゃいでいるのはスクープしたからだけではない。安倍政権の原発前のめり、改憲への動き、特定秘密保護法で見せた強引体質などへの批判キャンペーンを続けていて、細川氏が選挙で勝てば安倍政治に冷や水をかけることができるからだ。20日発売号でも、「『細川都知事』なら東京が変わる、日本が変わる」と意気が揚がる。
では『週刊ポスト』の期待通り細川氏が勝つのだろうか。衰えぬ小泉劇場の人気、舛添要一元厚労相の自民党や公明党内での嫌われよう、そしてなにより世論調査で「脱原発支持」が7割という状況からは、細川優勢は動かないように見える。安倍内閣・自民党幹部が「原発は国政マター。自治体の首長選挙になじまない」とあちこちに言って回っているのも、それだけ危機感が強いということだろう。
『週刊ポスト』は自民党幹部と大手新聞ベテラン政治記者が検討した選挙情勢分析として「有権者総数は約1080万人。票読みは投票率55%という前提で行った。宇都宮氏は共産党の基礎票に近い約60万票、田母神氏も約40万票にとどまり、舛添氏は自公の基礎票の目一杯で約230万票、対する細川氏は250万票前後になり舛添氏を逆転するという結果だった」と自民党幹部に語らせている。これを受けて、政治ジャーナリスト・野上忠興氏は「投票率55%で細川氏と互角という自民党の読みは正確でしょう。投票率が高くなれば、それだけ細川氏に風が吹く」と分析する。
舛添サイドとしては、とにかく「原発選挙」になることは避けたい。支持率の高かった元首相コンビが、ツーショットで選挙カーから「原発やめるなら今でしょ!」と訴えるのだからインパクトは強い。そこで、ひそかに練られているのが「争点ずらし作戦」だという。自民党都議関係者はこう話す。
「反原発に真正面から対抗しない。自民党も原発は減らしていく方向と言っておいて、でも『即ゼロ』では暮らしや経済へのマイナスが大きいので、自然エネルギーの拡大を進めながら減らしていくと訴えればいい」
即ゼロか、漸減かを争点にするというのである。こんな方便が通用すると思われているとしたら、都民もなめられたものだ。
1950年横浜生まれ。週刊誌、月刊誌の記者をへて76年に創刊直後の「日刊ゲンダイ」入社。政治、経済、社会、実用ページを担当し、経済情報編集部長、社会情報編集部長を担当後、統括編集局次長、編集委員などを歴任し2010年に退社。ラジオ番組のコメンテーターも10年つとめる。現在はネットニュースサイト「J-CAST」シニアエディター。コラムニスト。