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海賊物語 因島に原点 作家・和田竜さん

[文]山本孝興  [掲載]2014年01月20日

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「広島での経験が作品に生きている」と話す和田竜さん=広島市中区鉄砲町

表紙画像 著者:和田竜  出版社:新潮社 価格:¥ 1,728

 「のぼうの城」などで知られる人気作家・和田竜(りょう)さん(44)。昨年10月に、最新作「村上海賊の娘」(新潮社)を出版した。中学2年まで広島で過ごした経験が、独自の作品観に影響を与えているという。広島の思い出とともに、作品に込めた思いを聞いた。
 ――作家になった経緯を教えてください
 元々、テレビ局に入りたかったんです。ドラマの脚本が書きたくて。早稲田大政経学部に6年間通い、25歳の時、テレビ局は全部落ち、かろうじてドラマも作っている製作会社に入社できました。
 睡眠時間は2~3時間で、番組製作に入ると休みがない。ましてADという下っ端。自分で脚本を書けることなんて無かった。3年で製作会社を辞めて、繊維の業界紙に転職しました。
 「のぼうの城」を書いている時は、深夜0時から朝4時くらいまで書いて、3時間ほど寝てから会社に行ってました。で、さすがにこれは続けられないとなって、業界紙も辞めました。
 ――人気作家になって、生活は変わりましたか?
 そうでもないですね。普段は埼玉の自宅で仕事してますが、一度作家っぽいことしてみようと、連載中に道後温泉(松山市)の夏目漱石が泊まった旅館に1週間くらい行ったんです。けど、何にも変わらなかった(笑)。
 ――最新作はなぜ海賊で、しかも主人公が20歳の女性だったのでしょうか?
 小学生の頃、家族で因島(尾道市)に行って、そこで初めて村上海賊を知ったんです。赤ふんどしを買って、それを家の階段の壁にずっと張ってました。着想は4年前。そして書くなら、織田信長を敵に回した木津川合戦だと思ったんです。荒くれ者集団の中に女性がいれば、ドラマになるな、海賊船のへさきで罵倒してほえている女性が描きたい、とか。(首領の)村上武吉に実の娘がいたら、そういう設定にしようと考えました。
 ――和田さんと言えば歴史物のイメージです
 実は歴史は好きじゃなかった。でも、母が坂本龍馬が大好きで、名前の「竜」は龍馬から来てるんです。それで、大学に入って司馬遼太郎の「竜馬がゆく」を読んで。それからですね、歴史に興味を持ったのは。
 元々、ターミネーターなどのアクション映画が好きでした。ストーリーがどんどん進んで行くものが好きなんです。でも、日本で考えた時、現代物だとやりにくい。それで、戦国時代に題材を求めたんです。戦国時代には破格な人がいっぱいいますしね。
 ――登場人物やセリフもとても印象的です
 「のぼうの城」は、百姓たちが城にこもって頼りない武将と一緒に戦う話です。戦国時代物って、武将だけが格好良くなる。でも、当時の戦闘員はほとんどが百姓で、必死で戦ってる。なのに、エキストラ的にバタバタと死んで行く。これはちゃんとクローズアップしなければと思いました。そして、そんな百姓たちが一緒に戦おうとする人ってどんな人物かなと。そうやって場面を思い浮かべて、作り上げていくんです。
 ――広島での思い出は?
 実家は太田川の安佐大橋(広島市安佐南区)近くにありました。夏には近所の友達と泳ぎに行ったり、近くの山に登りに行ったり。広島の、田んぼや山々とか何げない風景が、今でも頭に残っています。
     ◇
 繊維系の業界紙記者だった2003年、オリジナル脚本「忍ぶの城」で脚本界の新人賞、第29回城戸賞を受賞。07年に同作を小説化した「のぼうの城」で作家デビューし、第139回直木賞候補にも選ばれた。時代小説を得意とする。

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