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楽園おんがく Vol.18: 竹中労プロデュース 沖縄民謡名盤10作品

楽園おんがく Vol.16

 旅と音楽をこよなく愛する、沖縄在住ライター 栗本 斉による連載企画。第18回は、沖縄音楽の魅力的なミュージシャンを紹介していったジャーナリストの竹中労がプロデュースした名盤10作を掘り下げる。

 今でこそ沖縄は美しいリゾートや美味しい料理などのイメージが強いが、1972年に返還された頃はまだまだ異国のように未知なる存在だった。音楽だって同様。沖縄民謡が全国区で定着するのは、70年代以降に様々な音楽家が取り上げるようになってから。まだ一般的でなかった頃に、沖縄音楽の魅力にとりつかれ、次々と素晴らしいミュージシャンを紹介していったのが、ジャーナリストの竹中労だ。
 この夏、彼が70年代にプロデュースした名盤10作が、およそ40年ぶりに完全な形で初CD化となった。メインとなるのは、なんといっても嘉手苅林昌の歌声だろう。1920年に生まれ1999年に没した林昌は、“風狂歌人”との異名を持つ沖縄民謡界最大のカリスマだ。これまでに残した音源は膨大だが、いずれも魂に訴えかけるような歌声にしびれるだろう。そして、林昌を筆頭に、多くの実力者たちがこのシリーズに歌や演奏を残している。登川誠仁、照屋林助、山里勇吉、大工哲弘、国吉源次、知名定繁、知名定男、里国隆、大城美佐子、饒辺愛子、糸数カメ、瀬良垣苗子などなど、故人も含めて現時点の評価としては、いずれも巨匠クラスばかり。彼らの貴重な音源が、気軽に聴けるようになったことは、沖縄音楽ファンだけでなく、ワールド・ミュージックという大きな視点から見ても非常に重要だ。
 また、今回の再発にあたって、久保田麻琴がリマスタリングを担当。スタジオ録音からライヴ/レコーディングまで様々な形態ではあるが、当時の生々しい音像がさらに臨場感を持って迫ってくる。70年代に次々と“発見”されていった芳醇な沖縄音楽の神髄を、この10作品で堪能してもらえるのではないかと思う。

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『語やびら島うた 彈 ~嘉手苅林昌の世界~』

1974年8月に、大阪のフェスティバルホールで行われた琉球フェスティバルの実況録音から、嘉手苅林昌の実演を収めたもの。嘉手苅林次、知名定男、大工哲弘といった名手のサポートも手伝って、ソウルフルな歌声と三線や太鼓のアンサンブルによる独特のグルーヴが圧倒的だ。「唐船ドーイ」や「嘉手久」における終盤の熱狂的な手拍子からも、その熱演ぶりがうかがえる。


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『語やびら島うた 響 ~島々のうた~』

同じく、琉球フェスティバルのライヴ録音から、嘉手苅林昌以外のメンバーによる歌と演奏がたっぷり聴ける。自由奔放に歌う金城陸松、響きのいい声を振り絞るように熱唱する山里勇吉、存在感のある声でじっくりと聞かせる知名定男、ロングトーンで独自の世界を築く大工哲弘、「てぃんさぐの花」を可憐に歌う桃原愛子、そして最後をクイチャーで盛り上げていく国吉源次と、いずれも名演揃いだ。

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『飄 ~嘉手苅林昌の世界 その2~』

1974年10月に沖縄のコザ(沖縄市)の料亭にレコーディング機材を持ち込んで録音されたライヴ作品。大会場ではないだけにアットホームな雰囲気に包まれており、とくに前半のアップテンポの楽曲におけるはつらつとした印象が素晴らしい。また、「加那よー」などでフィーチャーされた大城美佐子の歌も聴きどころのひとつ。他にも、知名定男、松田弘一、普久原恒勇などが参加。

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『情 ~嘉手苅林昌の世界 その3~』

こちらもコザの料亭におけるライヴ・レコーディングで、『その2』の続編にあたる。比較的スロー・テンポの楽曲が多く、いわゆる情歌と呼ばれる色恋をテーマにした楽曲がどこか艶めかしい。とりわけ、崎山千栄子とデュエットする「情の唄」が見事。ここでも大城美佐子が「片想い」で美声を聴かせ、渋くなりがちなステージに花を添えている。知名定男、普久原恒勇なども参加。

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『1975年8月15日 熱狂の日比谷野音 VOL.1 “戦場の哀れ”』

タイトル通り日比谷野外音楽堂における琉球フェスティバルの模様を収めた実況盤。終戦30周年の日ということもあり、冒頭の嘉手苅林昌と饒辺愛子による「ひめゆり部隊の歌」を筆頭に、戦争をテーマにした楽曲がずらりと並ぶ。異色であると同時に、沖縄音楽ならではの貴重な企画だ。登川誠仁、知名定男、里国隆も登場する豪華さだが、照屋林助のコミカルな名人芸も興味深い。

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『1975年8月15日 熱狂の日比谷野音 VOL.2 “望郷” ~ふるさとを想う~』

同じく、琉球フェスティバルのライヴ録音から、嘉手苅林昌以外のメンバーによる歌と演奏がたっぷり聴ける。自由奔放に歌う金城陸松、響きのいい声を振り絞るように熱唱する山里勇吉、存在感のある声でじっくりと聞かせる知名定男、ロングトーンで独自の世界を築く大工哲弘、「てぃんさぐの花」を可憐に歌う桃原愛子、そして最後をクイチャーで盛り上げていく国吉源次と、いずれも名演揃いだ。

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『吟 ~嘉手苅林昌の世界 その4~』

1975年に赤坂のスタジオで録音されたアルバム。題材のメインが沖縄の古典音楽ということもあっておとなしめだが、丁寧に録音された音源は貴重な記録といえる。ここでは、知名定男と嘉手苅林次の2人が全面的にバックアップ。三線と太鼓によるミニマムなアンサンブルで、古典が本来が持つシンプルな魅力を浮き彫りにしてくれる。まさに沖縄のソウルを感じられるだろう。

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『恋 ~十九の春 島々のうた 第2集~』

知名定男と大城美佐子がデュエットする「十九の春」から始まる本作は、いわゆる沖縄民謡の有名曲をメインに収めた名演集。国吉源次の特徴的な歌い方が印象的な「カヌシャガマヨー」や、山里勇吉と女性コーラスによる掛け合いが一風変わった「安里屋ユンタ」もいいが、ここでの主役といっていいのが大工哲弘。ハイトーンを活かしたのびのある声で表現する「仲筋ぬヌベーマ」などが素晴らしい。

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『汗 ~山原ユンタ 島々のうた 第3集~』

仕事歌を中心に、沖縄民謡の仲でもかなり土着性のある選曲で構成した作品。本島だけでなく、宮古や八重山での録音も含まれているのが貴重だ。ブルージーに声を響かせる山里勇吉、朴訥な歌い口に引き込まれる国吉源次、息の合った掛け合いでアップテンポな楽曲をデュエットする知名定男と大城美佐子、臨場感溢れるライヴ録音で聴かせる大工哲弘など、ディープな民謡世界を堪能できる。

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『撥 ~島々のうた 第4集~』

冒頭におかれた登川誠仁の強烈な早弾きと個性的な歌による「アッチャメ小」。もうこれだけで、本作の価値があるというものだ。糸数カメのお囃子を加えてさらにアグレッシヴに攻める「ハンタ原」、ほとんどブルースといっても差し支えなさそうな「南風原口説」と、登川節が冴え渡る。知名定繁や嘉手苅林昌の歌唱も含め、知名定男が弾く琉琴の響きとともに、少しドライな印象を残す異色作。

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