「北朝鮮VSバーレーン」観戦ツアーに日本から行った人からビデオを入手した。
参加者はわずか3名。平壌空港に到着した3人がまず案内されたのは大同江に浮かぶ船での歓迎パーティー。暗い船内でガイドが電気をつけるよう促すと、つけられたのは電気ではなくローソクだった。料理はマツタケなど豪華な物が並ぶ。ガイドは「今日はいっぱい召し上がってください。明日からはお米がないから」と冗談を言った。
ツアー二日目は終日観光。バスに乗って郊外へ。しかし高速道路には車はなく、人が歩いていた。
そして迎えた試合当日の朝。しかし平壌の町には試合の看板も見当たらない。金日成スタジアムに到着すると外では号外が配られていた。号外には北朝鮮選手のプロフィールが。北朝鮮で号外が配られるのは極めて珍しいという。バスでチケットが渡された。外国人用チケットの値段は40ドル(約4200円)。北朝鮮人民の2か月分の給料に相当する。ちなみに国内用は約300円。
スタジアムの周りには人が集まってきた。しかし、歩いてきたのか、バスなどはなかった。
そして試合開始。早々にバーレーンが先制。しかし観客席は淡々としたものだった。試合から2日後に放送された朝鮮中央テレビでも「バーレーンチームが得点を入れました」と静かな実況。1点を返した場面でも「強力なヘディングで得点を入れました」と淡々とした実況。朝鮮中央テレビが試合の様子をノーカットで伝えるだけだった。負けた試合を放送するのは極めて異例だという。
試合終了後、帰りのバスの中で「弱いですよウチのチームは」とガイド。ニュースで流れるのかと聞くと「流れますよ。負けたのは事実じゃありませんか」と自国のチームに対する苛立ちを露わにした。
観客たちは黙々と徒歩で家路についていた。
ツアーでは最近できたという大同江ビール工場へ案内された。
ガイドによると北朝鮮で生ビールが飲めるようになったのは大きな進歩だという。サーバーは日本製だったが中身は北朝鮮ナンバー1の大同江ビール。乾杯をするが、工場には庶民の姿はなかった。
そこでツアー最終日、庶民と触れ合うために屋台につれていって欲しいと頼むことにした。しかし、連れていかれたのは外国人観光客専用の土産店。「いっぱいお金を落としてください。お金を落とさないと帰れませんよ」と冗談交じりに話すガイド。
言われるままに買い物すると、この後、屋台での買い物も許された。
屋台ではパンや惣菜が売られていた。買ったのは揚げパン9個で700円、なんと平均月収の3分の1の値段。ガイドによると最近の経済改革で収入の格差が広がり物価が急激に上がったという。
3泊4日のツアーで庶民の生活を垣間見たのはこの時だけだった。 |