慰安婦報道や福島第1原発事故「吉田調書」報道の誤報と記事取り消しなど、報道機関としての姿勢を問われている朝日新聞社。同社の内幕を記したOBの著書が話題となっている。朝日を代表する大物記者たちが次々と実名で登場、人間性をあらわにするような行状が紹介される。さらには、現在の朝日的論調を方向付けた可能性もあるという“秘密会合”が存在していたことも明かしているのだ。
『ブンヤ暮らし三十六年 回想の朝日新聞』(草思社)を書いた永栄潔(ながえ・きよし)氏(67)は1971年に朝日に入社し、富山、大津支局を経て経済部、「週刊朝日」「月刊Asahi」副編集長、「大学ランキング」「週刊20世紀」編集長などを歴任した。
ダイエー創業者の中内功氏やセゾングループの堤清二氏らの人間性を示す逸話や、大韓航空機を爆破した金賢姫元死刑囚のインタビュー秘話など記者時代のエピソードが盛りだくさんだが、見逃せないのが朝日社内の描写だ。
「狂犬。破壊分子。極左で極右」「ベトナム戦争のことでも中国や北朝鮮のことでも、朝日にケチばかりつけて、産経の肩を持つ」と上司に評されたという永栄氏が現役時代に接した“大物記者”たちの様子が紹介されている。
朝日のリクルート事件で、経済部長当時の箱島信一氏が「何が問題なんだね。ただの経済行為だろ」と話していたのが、編集局長に昇進後のパーティーでは「戦後最大の汚職事件」と述べたことに驚いたことも振り返る。箱島氏はその後社長になった。