将棋棋士 田丸昇の と金 横歩き

2013年4月 5日 (金)

田丸昇は2013年4月1日付で九段に昇段しました

私は4月2日の夜、《HAPPY》さんと《オヤジ》さんから寄せられた「九段昇段、おめでとうございます」という内容のコメントを見て、いったい何だろうと頭が混乱しました。1日遅れの「エープリルフール」かと思いました。

しかし将棋連盟のホームページで発表されたというので、「お知らせ」欄の「2013年4月1日付昇級・昇段者」(4月2日)をクリックすると、私がフリークラス規定によって九段に昇段したことが確かに載っていました。順位戦で昇級、ほかの棋戦で優秀な実績、通算勝利数などの規定で昇段した場合、その棋士の名前が「お知らせ」欄に載るのが通常です。今年の4月1日付の昇段者は私を含めて7人いたせいなのか、個人名は載りませんでした。

そんなわけで、私はこのブログのコメントを見るまで、自分が九段に昇段したことを知りませんでした。連盟から事前の通知もなかったのです。

私は順位戦で昇級を重ね、それぞれ同時に五段・六段・七段と昇段してきました。1991年(平成3年)4月16日には、七段昇段後に通算190勝の成績を挙げ、規定によって八段に昇段しました。そして翌年3月に順位戦でA級に昇級すると、92年4月の免状授与式では晴れてA級棋士として八段免状を受け取ったのです。

八段から九段への昇段は、タイトル獲得(竜王2期、名人1期、ほかのタイトル3期)、八段昇段後に通算250勝などの規定があります。

私は90年代半ば以降、年間勝利数が2ケタの10勝に届かず、通算250勝は遠い目標となっていました。3年後の2016年には引退を控えています。現役期間中の九段昇段は実現しないものと思っていました。

ところが、フリークラス棋士を対象とした別の昇段規定があったのです。連盟の担当者の説明によると、九段昇段の場合は八段昇段から「20年以上」が要件とのこと。ただし、単なる年数の経過では昇段できません。

私は、八段に昇段した1991年からフリークラスに転出した2009年(平成21年)までの18年間に通算157勝しました。その勝利数を160勝と切り上げ、「年間勝利数が平均10勝」という既定の基準によって「16年分」と換算します。そして09年4月から13年3月までの「4年分」を加えると、今年の4月で「20年以上」という九段昇段の要件を満たしたというわけです。

やや複雑な昇段制度ですが、「実績」と「年数」を組み合わせたものです。私は該当者になって初めて知りました。私は八段昇段から22年後に九段に昇段しました。つまりフリークラス転出時点で、八段昇段後の勝利数が私の157勝よりもっと多ければ20年後には九段に昇段し、もっと少なければ22年以上かかるのです。

棋士の段位は九段が最高位です。十段はタイトルの名称で、十段戦(竜王戦の前身棋戦)で活躍したごく少数の棋士が名乗りました。現在、九段の現役棋士は、3人のタイトル保持者を含めて29人います。私以外の九段の棋士は、タイトル獲得、通算250勝などの規定で昇段しました。私は少しばかり決まりが悪い思いですが、今後は九段にふさわしい将棋を指すように心がけ、盤外では自分らしい生き方をしていくつもりです。

なお、八段と九段の待遇面の違いはそれほどありません。竜王戦では段位が対局料に反映されて少し増額しますが、ほかの棋戦の対局料は順位戦のクラスが基準になっています。

私は思いも寄らず九段に昇段したので、今はその実感がありません。これまでは酒場などで将棋界のことを知らない人に段位を聞かれると、九段の下の八段という意味で「九段下」(日本武道館が近くにある東京の地下鉄の駅名)と冗談で答えたりしました。今後はどんな言葉にしようかと思案中です。

最後になりましたが、このブログのコメントで私の九段昇段をお祝いしてくれた方々に厚く御礼を申し上げます。

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コメント

田丸先生

九段昇段、お目出度うございます。
私は田丸門下の劣等生ですが、門下生である誇りだけは抱き続けてきました。
これで更に胸を張って自慢できるのが嬉しいです。
バンザ〜イ、バンザ〜イ!!

投稿: ギタリスト | 2013年4月 5日 (金) 08時52分

> 八段から九段への昇段は、タイトル獲得(竜王1期、名人2期、ほかのタイトル3期)、八段昇段後に通算250勝などの規定があります。

これは、「名人1期、竜王2期」の間違いですね。

投稿: とおりすがり | 2013年4月 5日 (金) 11時07分

田丸先生ご自身には、連盟から昇段の通知がなかったとは・・・
先生が連盟に問い合わせて「フリークラス規定による九段への昇段」について詳しくご説明下さり、勉強になりました。正直、先生の書かれていることが一読しただけでは理解できず、読み返してようやく理解できました。実に複雑ですね・・・
ともあれ、田丸先生にとっては思いがけない春の贈り物だったご様子ですが、ファンにとっても慶事です。先生のご健勝とご健筆を祈念いたします!

投稿: オヤジ | 2013年4月 5日 (金) 12時18分

こんにちわhappy01papernote
このたびの九段昇段、まことにおめでとうございますsign03
22年前ですか・・・私はまだ10代でcoldsweats01、子供のころはNHK杯常連の田丸先生の対局姿を見たり、NHKテキストでのマンガ講座(村田ヒロシさん、だったかな)を読んでました。
それでも『田丸七段』が長かったせいか、八段になられたのも、子供心に違和感を感じました(すみませんcoldsweats01)。
その『田丸八段』も22年ですから、さすがに今は違和感なくcoldsweats01(当たり前だ)今回の九段昇段は『むしろ遅すぎる』と思いますし、本当に喜ばしいことと思います。
来月5月5日は先生の62歳の誕生日。
その1ヶ月前に『最高段位』にたどり着いた事は、将棋の神様からへの『早いバースデープレゼント』でしょうかhappy01
暖かい季節になりましたが、まだまだ予断を許さない気温になることもありますので、どうか健康留意し、元気にお過ごし下さいhappy01papernote
このたびは本当におめでとうございますsign03sign03

投稿: S.H | 2013年4月 5日 (金) 15時30分

えー、ホントですか?ご本人が知らされていないなんて・・・
そんなことがあるのですね。田丸先生の話は本当に驚かされます。
九段の最高位となられた先生にお願いがあります。
私は将棋は強さが魅力だとも思っていません。ゴルフや高校野球もそうであるように人それぞれに楽しみ方があると思っています。当たり前のようにコンピュターがプロ棋士に勝つようになっても、私は今と同じように棋譜をたどり、楽しむことができると思います。女流棋士の将棋もそうです。
できれば今以上にニコ動やネットで多く棋譜が公開されるようにしてほしいなと思います。タイムリーに、それが将棋が皆から愛されると私は思っています。先生には一層そういう意味で昔話や勝負の駆け引きを語っていただき多くの棋譜とともに命を吹き込んでほしいと思います。
 最後に九段田丸昇の色紙か扇子を発売楽しみにしております。

投稿: 将棋太郎 | 2013年4月 6日 (土) 22時43分

田丸先生九段ご昇段、誠におめでとうございます。

お健やかにて、さらなるご活躍をお祈り申し上げます。

投稿: 五平餅 | 2013年4月 7日 (日) 13時29分

ご昇段おめでとうございます。フリークラス昇段についてはわかりやすい説明が見当たらず、勉強になりました。ありがとうございます。
これからもご壮健で活躍されますよう、お祈り申し上げます。

投稿: Britty | 2013年4月 8日 (月) 20時05分

九段昇段おめでとうございます。
上でも書かれていますがフリークラス昇段は連盟のHPにみあたらないので勉強になりました。
ところで、昇段規定には「引退棋士昇段規定」というのもあるようですが、こちらはどういう仕組みなのでしょうか。
簡単にでも教えていただければうれしいです。

投稿: 通行人 | 2013年4月 8日 (月) 23時17分

田丸先生9段昇段おめでとうございます。
規定というのは複雑ですね。本人に通告がないというのはどうなんだろうなあと思います。

竜王戦だと段位が対局料に反映とは初めて知りました。非常に奥が深いものです。

投稿: 深田有一 | 2013年4月 9日 (火) 00時49分

田丸先生九段昇段誠におめでとうございます。
今回のお話でどうしてもわからないことがあるので質問させていただけますでしょうか。的外れな質問でしたら大変申し訳ありません。
今回のお話によりますと、この制度においてはフリークラスに転出した場合のほうが昇段しやすい場合も多い(と思われる)ことになると思いますが、どのような理由からでしょうか。例えばフリークラスで全く勝っていない場合でも年数が換算されると思います。ご教示くださいましたら幸いです。

投稿: 地蔵流2 | 2013年4月 9日 (火) 01時05分

うれしいです、どんな条件を満たして昇段したのかは後で調べるとして。田丸先生を知ったのはNHK杯かNHKのテキストだったと思います。そのころ、時々、NHK講座のテキストを買っていました。そのテキストで棋士のランキング、順位戦のことを始めて知り、たまたま買った号が田丸、先崎戦が掲載されていました。まだそのテキスト、あるかもしれません。田丸先生はそのときB1でした。その後、A級に昇級しました。地元長野の棋士だったので好きになりました。それと棋風。ただその後、それほど熱心に将棋は見なくなりましたが、
最近はスマホアプリ「将棋ウォーズ」楽しんでいます。
九段は響きがちがいますね!

投稿: 飛び石 | 2013年4月20日 (土) 21時39分

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