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障害のある子どもの教育について学ぶ

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緘黙について 笹森洋樹

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  1. 緘黙とは
  2. 家族や親しい友人とは何の問題もなく話しているのに,学校などの特定の場面では,ひと言も話すことができない状態を緘黙といいます。言語能力(発語・理解)はほぼ正常であるにもかかわらず,学校などの特定の場面や状況で話さなくなることから,場面緘黙症または選択性緘黙症といわれています。生活場面すべてにわたって話すことができない状態を全緘黙といいます。

    情緒障害教育では,選択性緘黙等があるものが対象とされています。

    登下校中は親しい友人とおしゃべりをしていても,校門に入った途端に黙ってしまったり,家族とは楽しそうに会話していても,家族以外の人が入ってくると口をつぐんでしまったりすることもよく見られます。行動も抑止的で,極度の緊張から身体が硬直してしまいがちです。重症の例では,行動や動作も止まってしまう場合があります。

  3. 診断基準と発症
  4. 米国の精神医学会の診断基準である「DSM−W精神疾患の分類と診断の手引き」では,選択性緘黙について次のように記載されています。

    1. 他の状況では話すことができるにもかかわらず,特定の社会状況(話すことが期待される状況,例えば,学校)では,一貫して話すことができない。
    2. この障害が,学業上,職業上の成績または社会的な意志伝達を妨害している。
    3. この障害の持続期間は少なくとも1カ月(学校での最初の1カ月に限定されない)。
    4. 話すことができないことは,その社会状況で要求されるまたは快適な,話し言葉を知らないことによるものではない。
    5. この障害はコミュニケーション障害(例:吃音症)ではうまく説明されないし,また,広汎性発達障害,統合失調症またはその他の精神病性障害の経過中にのみ起こるものではない。

    幼児期に最初に出現することがきわめて多く,幼稚園や保育園,小学校に入園,入学した時にまわりが気づきます。幼少期は特に女子に多く見られます。中学校まで続くとそのまま成人まで改善しにくいようです。

  5. 一般的な特徴
  6. まったく声を出さない状態から小さな声では話す,首を振ることで意思表示をする,特定の限られた人となら話す等,状態や程度は様々です。一般的には以下のような特徴が多く見られます。

    1. 話す能力はあるが特定の場面で話さない。
    2. 行動や動作等も緩慢になる場合がある。
    3. 話をしないだけでなく,他者とのかかわりを避けようとする。
    4. 話をさせられることに非常に敏感で,求められると一層かたくなになる。
    5. 本人にとって緊張を強いられる環境が変わると話しやすい。
    6. 自己主張はほとんどしないで,集団の中で目立たないようにしている。
    7. 学校は休まずに毎日登校する。
    8. 周囲の固定的な見方が状態を定着させ,話さない状態が適応状態になりやすい。
  7. 教育的な配慮
  8. 話さないことだけに注目してしまうと,話させようという働きかけが多くなります。そうした働きかけが極度の緊張と萎縮を生じさせ,対人恐怖やひきこもり等の二次的な不適応を引き起こします。わざと話さないのではなく,話そうとしても話せないという視点に立ち,緊張や不安,恐怖心を取り除くように関わることが大切です。

    • 発言の機会は保証するが,無理に話させようとはしない。
    • 身振りや仕草,手紙やメール等を活用して意思の疎通を図る。
    • 学習や生活面でもうまく取り組めない経験が多くなるため,自己評価の低下や自己否定感につながらないようにプライドに配慮する。
    • 安定した受容的なかかわりにより,緊張や不安,恐怖感を軽減していく。
    • 話すことだけを目的とせず,社会的な能力全般について見ていく。
    • 得意な活動を見つけ,自信を持たせる。
    • 個性の一つと考え,学級の他の子どもたちへの理解を図る。
    • いじめのターゲットにならないように細心の注意を払う。
    • 段階的に少しずつ長い目で見守る。
    • 家庭と学校が共通理解のもと連携しながら対応する。

    緘黙の状態は成長と共に改善する例も多く見られます。大切なのは社会的な場面での活動能力です。話ができなくても取り組みやすい課題や場面設定等,安心できる雰囲気作りを心がけます。必要に応じて専門機関も利用しますが,日常生活に般化していく場合には,家庭・学校との協働は不可欠です。

本文おわりです

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