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 ついに初の飛行試験を果たした「MRJ(ミツビシ・リージョナル・ジェット)」。離着陸の舞台となった愛知県営名古屋空港(豊山町)の周辺には多くの人が詰めかけ、秋晴れの空を駆ける国産初のジェット旅客機を見守った。

 「あ、来た、来た!」。滑走路に面した神明公園で声が上がるやいなや、MRJは猛スピードで飛び去った。300人余りから拍手がわき、多くの人が機体へ向けて手を振った。

 「感動です。よくやってくれた!」。東京都中央区の男性(51)は会社を休んで訪れた。1年前にMRJの公開をテレビで見て、「鶴みたいな形の機体が日本らしくて美しい」と魅了された。この日、初めて機体を目の当たりにした。「やっぱり美しい。音も思ったより静かだった」

 埼玉県川越市の会社員武藤昇一さん(66)は、次男が三菱重工の社員で翼の設計に携わったという。「ピカピカでスマート。すばらしい機体だ。息子を褒めてやりたい」。妻の千代子さん(65)は着陸を見届け、「初飛行が延び延びになっていたので、ほっとしました」と表情を和らげた。

 地元の愛知県豊山町の櫛田和美さん(84)は、1962年に戦後初の国産プロペラ旅客機、YS11がこの滑走路から初飛行したころを思い起こした。「やっぱりYS11より速いね」。戦時中、滑走路整備で小石拾いに駆り出された。「思い入れのある滑走路から、日本が誇る美しい飛行機が飛び立った。世界中で飛ぶようになってほしい」

 空港近くの商業施設の駐車場には約500人が集まった。愛知県一宮市の会社員、滝戸静(しずか)さん(31)は1歳の息子と共に朝7時前に家を出た。「歴史的瞬間を息子に見せてあげたいと思って来ました」と話した。

 「こんなに人が集まったのは久しぶりだね」と、空港そばに住む愛知県春日井市の無職、石黒正義さん(76)。60年以上も、この空港から飛び立つ飛行機を見送ってきた。「いつもと違って、長いことかけて開発した飛行機が初めて飛んだ」とうれしそうだった。(斉藤太郎、篠原あゆみ)