舞茸と銀杏の炊き込みごはん/魚の西京漬け焼き/治部煮/柿とセリの白和え
朱塗りの松花堂弁当箱で、ミニ懐石風に。桜模様の彫りで彩りを添えて
〈依頼人プロフィール〉
山田淳史さん 21歳 男性
東京都在住
大学生
◇
朝と夜、我が家の食卓には毎日ほぼ決まった時間にご飯が並べられていました。
晩ご飯は、ちゃぶ台を家族6人で囲んで食べるのがうちの習わし。小皿に盛りつけられたおかずが5品以上は必ずありました。僕は好き嫌いが多く、とくに刺身とキノコとナスが駄目。単なる食わず嫌いで、台所で料理を作る母の背中に向かって文句を言うことが多かったように思います。
そんな毎日が18年間続きました。実家の石川県から東京の大学に進学し、一人暮らしを始めてからは、ずっとご飯は一人で食べています。毎日食卓に手料理が並び、家族で晩ご飯を食べるというのは、とても恵まれていることだったと知ったのは、一人暮らしを始めてから。そして、毎日手料理をこしらえてくれる母に文句を言うのは、かなり「ぜいたく」だったのだということにも気付きました。
一人暮らしをしている友人はみな、コンビニの弁当や外食が多い。面倒で料理なんてロクに作っていないようです。でも僕にとって、料理は面倒なことでも何でもなく、切り離すことのできない生活の一部です。だから僕は、どんなに試験や卒業論文が忙しくても、疲れて帰宅したとしても、料理を作ります。まな板に響く包丁の音。鍋が煮える匂い。台所に向かう母の背中が、目に焼き付いているから。
毎日台所に立つことは別に教わったことでも、しつけられたことでもなく、いつの間にか体に染みついていました。とはいえ、はじめはやっぱり戸惑いました。レシピ本を買ったり、ネットで調べたり。記憶の中にある母の味をたどりながら、試行錯誤して料理をしていました。今では慣れてきて、いろいろなアレンジを楽しみつつ、友人にも手料理を披露できるようにもなってきました。
僕が本当に感謝しなければいけないことは、毎日ご飯を用意してもらっていたことではなく、料理を作る背中を見せてもらっていたことだと今は思っています。長い時間をかけて覚えたことは、一生忘れることはありません。母の努力と苦労に、心からありがとうと言いたいです。
来月、半年ぶりに実家へ帰るのですが、母へ何か手料理を作ってあげたいと思っています。うちは自営業で、母は夏は暑く、冬は寒い工場で働いています。飲むとすぐ顔が赤くなるのですが、酒は大好き。食べることも好きです。自家菜園で野菜を育てていて、トマトやトウモロコシ、キュウリ、アスパラ、茄子などがよく獲れます。冬は大根やかぶも。ときどき、母から送られてくる地元の野菜が楽しみで、東京の野菜とは比べものにならないくらいのおいしさに、いつも驚いてしまいます。
好物は魚と野菜が好きで、休日はおいしい料理を探して外食をしているようです。よい素材をきちんと調理したものが好きで、素朴な料理でも盛りつけや彩りに気を配って、しっかりと作る人。器も好きで、外で食事をしても器のことなどをいつも観察しています。
料理をすることの大切さ、楽しさを教えてくれた母へ。今度は僕から、手製のお弁当を贈りたいと思います。彩り豊かで、開けた瞬間に「わっ!」と驚いてもらえるようなお弁当なら、母もきっと喜んでくれると思います。どうぞよろしくお願いします。
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出張料理 “あゆみ食堂” として、様々なイベント、展示会などでケータリングを行う。料理を食べる人、食べる環境、コンセプトに合わせて作る“オーダーメイドレシピ”も多く手がける。季節ごとの食材で楽しくおいしい食卓を作りながら、日本の生産者の食材と食べ手をつなぎたいと思いながら活動中。
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