本編目次 | 前ページ| 次ページ



第3章 消費文化・情報メディア体験からみた青少年のライフスタイルと価値志向

関東学院大学文学部教授 片岡栄美


要旨


消費社会,情報社会といわれる現代において,消費文化に参加する消費志向的な青少年と情報メディア型の青少年の特性を明らかにした。消費文化として具体的に取り上げた項目は,買い物,映画・スポーツ鑑賞,ゲームセンター・ディスコ・カラオケ,ドライブ・旅行である。家庭や学校の「外」の世界でこれらの消費文化に関わる青少年は,社会への関心を失っているのだろうか。また消費文化への適応と,物質主義的価値や私生活主義,他人に迷惑をかけなければ自由であるという個人主義的自由の考え方との関連性を検討した。さらにインターネットや電子メールを積極的に利用する情報メディア型青少年は,社会性に乏しく,かつ交友関係の狭いオタク的な青少年であるのかについて検討した。得られた知見は,以下のとおりである。

1. 消費文化への参加の度合いを「消費文化指数」として測定すると,男子より女子のほうが消費文化的である。消費文化への参加は友人関係を良好にし,友達とのコミュニケーションや親密性を高める。消費文化は若者にとって,友人との「つきあい文化」「コミュニケーション文化」となっている。また消費文化に多く参加する青少年ほど,予想とは反対に社会問題への関心は高く,同時に地域社会などへの社会参加も活発である。

2. インターネットや電子メールを休日に利用する情報メディア型の青少年は,消費文化にも参加する余暇活動の活発な層であると同時に,社会問題への関心も高い。情報メディア型には「気の合わない人」とも話ができる者が多く,異質な人間への寛容性が高くなる。

3. 消費文化と価値観の関連を検討すると,消費文化的な者ほど,物質主義的でかつ他人に迷惑をかけなければ何をしようと個人の自由だという個人主義的な自由を主張する傾向にある。また消費文化的な青少年ほど,身近な人間関係を大事にし,関係性志向と私生活主義が強い。享楽志向も強い。消費文化的な青少年は,私生活を大事にしながら,やりがいのある仕事や,自分のやりたい仕事を求めており,そのために努力することを評価する。肩書きではなく,能力や実績で社会から評価されることを期待しながら,消費文化を生きる新しいライフスタイルと価値をもっている。


青少年の余暇生活スタイルと価値観との関係を,検討することにしよう。消費社会化,情報社会化が進む中で,青少年は消費的な文化や情報メディアとどの程度,接触しているのだろうか。また青少年の間で,物質主義や私生活主義の価値観はどの程度広がっているのだろうか。他人に迷惑をかけなければ個人の自由だとする個人主義的な自由の感覚や社会性の発達は,消費文化の接触といかなる関係にあるかを明らかにする。さらにIT(情報技術)革命が,今後,進行することによって,社会性に乏しい情報オタク的な青少年が大量に生み出されるのだろうか。あるいは娯楽的な消費文化を好む消費志向的な青少年は,個人主義や私生活主義を強めて,社会問題への関心を失ったり,社会参加が乏しいのではないかという親世代の懸念は,事実なのだろうか。


1 青少年の休日の過ごし方

休日をどう過ごすかは,青少年のライフスタイルが最もよくあらわれる側面である。これらの質問を中心に,以下では青少年のライフスタイルと価値の関係について検討することにしよう。青少年の休日の過ごし方(C-Q30,A-Q22)として,消費文化との接触や情報メディアとの接触などを含む22項目について,複数回答を認めて回答してもらった。余暇の過ごし方に関する男女別・年齢段階別の集計結果から,余暇ライフスタイルの特徴を項目別に要約しておこう。表4-3-1は,「当てはまる」と答えた者の比率(%)を示している。

表4-3-1の結果から,発達段階に応じて,男女で次のような特徴がみられる。


1. 「家族とのおしゃべり」は,年齢が上がるにつれ減少傾向にあるが,「友人とのおしゃべり」は,年齢が高いほど増加している。いずれの年齢段階でも,男子より女子の比率が高い。おしゃべりを通じた人間関係は,小学校時代では家族と友人が同程度であるが,中学生以上の青年期になると,その比重が友人へと移っていくことがわかる。この傾向は,男子に顕著である。

2. 「音楽をきく」,「本を読む」といった文化的活動は,小学生〜17歳にかけては男子より女子に多いが,18歳以上では男女差は小さい。

3. 「テレビゲームなどの室内ゲームをする」者,「スポーツや運動をする」者の割合は,すべての年齢段階で女子より男子のほうが圧倒的に多い。

4. 「テレビを見る」者は,各年齢層の約5割〜7割程度を占め,年齢が上がるにつれ減少するものの,テレビは多くの青少年の余暇に関与している。

5. 「マンガを読む」者は,年齢が上がるとともに減少する。18歳以上の青年では,女子に比べて男子のマンガ購読率は約2倍である。

6. 「買い物をする」のは女子の特徴であり,女子の6割から7割が当てはまると答えたが,男子では2割から4割である。

7. 「ドライブ・旅行などに出かける」,「映画・スポーツなどを見に行く」,「ゲームセンター・ディスコ・カラオケなどに行く」では,年齢の上昇と共に経験率も上昇する傾向にある。

8. 「ボランティア活動」は,男女・年齢に関わりなく1%前後のごく少数の青少年のみが経験する。

9. 「インターネットや電子メールでのやりとり」は年齢とともに上昇するが,22-24歳層も1割程度で,いまだ少数である。


表4-3-1 青少年の休日の過ごし方  <CSVデータ>

「あなたは,休みの日は何をして過ごすことが多いですか。この中から当てはまるものをいくつでもあげてください。」 (数値は%)"
    小学生 中学生 15-17歳 18-21歳 22-24歳
何もしないでのんびりする 男子 10.1 20.8 25.2 29.8 24.1
女子 20.0 33.9 33.3 37.8 34.7
家族とおしゃべりする 男子 22.8 16.1 9.0 11.1 12.3
女子 39.1 25.9 20.8 23.8 28.0
友達とおしゃべりする 男子 24.1 33.7 39.6 44.3 40.1
女子 30.6 43.8 42.3 50.4 47.6
テレビを見る 男子 63.4 65.3 56.8 49.1 48.6
女子 71.4 71.5 69.9 49.3 54.2
音楽をきく 男子 4.3 28.9 45.7 47.3 35.8
女子 17.2 46.6 59.1 41.0 34.2
マンガを読む 男子 46.2 46.9 37.4 28.3 24.1
女子 51.6 52.1 33.7 14.3 12.9
本を読む 男子 14.8 17.8 17.3 19.9 22.2
女子 27.7 23.8 23.3 20.9 22.2
テレビゲーム,カードゲームなどの室内ゲームをする 男子 75.9 67.5 47.1 37.0 30.2
女子 39.2 25.2 15.4 8.0 7.6
勉強をする 男子 21.5 23.4 16.5 12.7 8.0
女子 25.1 21.6 17.2 6.3 9.8
楽器の演奏,工作などをする 男子 3.9 5.9 10.1 10.8 9.9
女子 8.3 9.0 7.2 5.7 4.4
近所で友達と遊ぶ 男子 30.8 25.9 25.5 25.6 13.7
女子 31.2 17.9 20.8 14.3 14.2
スポーツや運動をする 男子 45.0 41.6 32.7 24.7 31.6
女子 21.9 22.2 9.7 9.2 13.3
ドライブ,旅行などに出かける 男子 7.3 4.4 6.1 26.2 40.6
女子 13.3 5.0 4.3 27.2 40.0
買い物をする 男子 29.5 24.7 21.2 33.1 42.5
女子 60.4 63.5 56.6 65.0 77.8
映画,スポーツなどを見に行く 男子 7.3 12.2 10.8 17.5 19.8
女子 6.4 8.9 12.5 17.5 28.0
ゲームセンター,ディスコ,カラオケなどに行く 男子 4.5 8.1 15.8 25.0 19.3
女子 3.4 14.4 21.1 20.1 16.9
家事や家の仕事の手伝いをする 男子 9.2 7.4 6.5 6.0 13.7
女子 17.7 12.8 15.8 18.6 26.2
アルバイトをする 男子 0.4 0.2 8.3 22.0 10.4
女子 0.0 0.4 14.0 23.2 6.2
ボランティア活動をする 男子 0.7 0.7 0.7 0.3 1.9
女子 0.9 0.9 0.7 0.6 0.0
インターネットをする 男子 3.0 4.4 7.6 8.1 13.2
女子 3.1 7.3 7.5 7.4 10.7
電子メール(Eメール)でやりとりをする 男子 0.2 2.2 7.9 10.2 10.4
女子 2.1 5.7 16.1 9.7 16.0
その他 男子 0.9 1.9 2.5 0.6 1.9
女子 0.7 2.7 1.4 1.4 1.3
回答合計数 男子 425.8 459.9 450.4 489.8 474.1
女子 491.2 514.7 502.9 472.2 506.2

2 消費文化と青少年

青少年の休日の過ごし方(C-Q30)のうち,消費文化との接触がどのような特徴をもつかをみておこう。以下の記述からは,15〜24歳を対象とした青少年調査C票のデータを分析している。

消費文化とは,消費社会の用意する娯楽的要素をもち感覚刺激的な財やサービスを意味する。そしてそれらを消費する消費志向的な人間を,消費者として想定している。とくに,ここで扱う消費文化とは,学校以外および家庭以外の消費的な「場」へ出ていく余暇活動に限定した。具体的には,「買い物をする」「映画・スポーツなどを見に行く」「ゲームセンター・ディスコ・カラオケなどに行く」「ドライブ・旅行などに出かける」の4項目を取り上げた。これら4つの項目間の関連性は高く,消費文化に参加する青年層の間に共通性がみられる。消費文化に参加する青少年の特徴として,すでに表4-3-1で明らかなように,15歳以上では年齢段階が上がるほど,「買い物」「ドライブ・旅行」「映画・スポーツ観戦」に参加する青少年の数が多くなる。また,「ゲームセンター・ディスコ・カラオケ」も15歳以上の層が中心となっている。つまり,これらの消費文化項目に1つ以上関与している者は,15歳〜24歳の64.0%であり,消費文化への参加は現代の青年文化の一部分となっている。

では消費文化への参加は,青少年の友人関係や社会的発達とどのような関連をもっているのだろうか。価値観との関連については,後の節でまとめている。ここでは,「消費文化指数」という形で,消費文化への参加の度合いを指標化した。これは消費文化のそれぞれの項目について,当てはまると答えた項目の数を個人ごとに合計した。最高点は4点ですべての消費文化活動に参加している。また最低点は0点で,4つのいずれの活動も行なっていない。消費文化指数0点が36.0%,1点が34.5%,2点が17.2%,3点が8.8%,4点が3.5%であった。平均値は1.09点,中央値が1点なので,4つのうち1つの活動に参加している者が多い。男女差があり,男子は平均0.91だが,女子は1.27と男子より消費文化への参加が高い。おそらく多くの女子が「買い物をする」に当てはまると答えたことが1つの原因であると思われる。また年齢段階による差もあり,15-17歳コホートでは平均値0.74,18-21歳コホートでは1.16,22-24歳コホートでは1.43となり,年齢が上昇するにつれ消費文化指数は高くなる。


(1) 消費文化と友人関係

消費文化への参加は,友人関係にどのような影響をもたらすのだろうか。「買い物をする」者の間では,同時に「友だちとおしゃべりをする」者が多くなるので,これらの関連性が強いことが予想できる。そこで友人数(C-Q33)と消費文化指数の関連性を検討したが,友人数に差異はみられなかった。友人関係(C-Q34)については,「何でも話せる友人がいる」かどうかを,年齢,性別,消費文化指数でロジスティック回帰分析にかけた結果,性別と消費文化指数の有意な効果が認められた(結果略)。すなわち性別では女子のほうが,また消費文化への参加度の高い者ほど,「何でも話せる友人がいる」比率が高いことが明らかとなった(表4-3-2)。


表4-3-2 友人関係と消費文化への参加度  <CSVデータ>

(%は当てはまると回答した比率)
  何でも話せる友だちがいる どんなに大きな悩みでも相談できる友人がいる
男子 消費文化指数 0点 71.6 35.6
1点 74.3 45.2
2点 78.4 61.9
3点 86.3 68.6
4点 88.9 59.3
女子 消費文化指数 0点 74.0 47.1
1点 84.0 59.0
2点 89.9 68.2
3点 89.6 71.1
4点 90.3 83.9

また消費文化指数が高いほど,「どんなに大きな悩みでも相談できる友人がいる」と答える比率が高くなる(表4-3-2)。具体的には,男子で消費文化指数0点の場合では,そのうちの35.6%が何でも相談できる友達をもっているが,消費文化指数3点層では68.6%,4点層では59.3%と多い。女子でも0点層では47.1%であったが,4点層の消費文化に多く参加する女子は83.9%と2倍弱の差が生じていた。

以上の結果からわかることは,青少年の消費文化への参加は友人関係を良好にしているといえる。そして消費文化に参加することは,友達とのコミュニケーションを円滑にし,友人との親密性を深める「コミュニケーション文化」であるといえよう。

では,どのような青少年が消費文化に多く参加するようになるのだろうか。都市部の青少年ほど消費文化に多く接触しているかというと,居住地の人口規模によってほとんど差異は生じていない。以下では,高校生に限定して,性別と学校要因,家庭要因を中心に検討することにした。

まず性別による差がもっとも大きく,女子のほうが男子よりも消費文化指数が高い。学校要因としては,進学希望の学校段階(C-Q10),勉強が得意か苦手かどうか(C-Q11)との関連をみた。その結果,進学希望の学校段階の違いによって消費文化指数にやや差異が生じていた。特徴的なことは,男女ともに専門学校への進学を希望する層でもっとも消費文化的となるが,大学進学や高校までと考えている層では逆に消費文化指数は相対的に低い。しかし進学希望の違いは大きな差異ではない。また勉強の苦手な生徒が消費文化に走りやすいのかというと,そうした仮説を支持することはできなかった。また家庭要因として,父や母との関係(父や母とよく話すかどうか(C-Q13,C-Q16)/父母が対象者の気持ちをわかっているかどうか(C-Q15,C-Q18))や家庭生活の楽しさ(C-Q22)の影響を検討したが,家庭の人間関係と消費文化への参加との関連性はまったく見出せなかった。


(2) 消費文化と社会性の発達

次に消費文化にかかわる青少年について,社会参加と社会問題の認識度の2種類を指標として検討しよう。青少年調査では,地域や社会への社会参加の有無を12の項目について質問した(C-Q38)。例えば地域のお祭り,地域のスポーツやレクリエーションの大会などの地域行事への参加,さらには募金・献血,福祉施設訪問などボランティア活動への参加である。これらの活動への参加個数を集計し(最大値12,最小値0),消費文化指数との関係をみると,消費文化指数の高い者ほど社会活動への参加個数が多いという結果が見出せた。消費文化的な青少年ほど社会参加も活発であるという関係性は,性別や年齢の効果を統制しても変わらなかった。表4-3-3に明らかなように,とくに18歳以上の青少年において顕著である。

次に社会問題の認識度については,「あなたは今の日本の社会について,どのようなことが問題だと思いますか」(C-Q42)という質問で12項目を挙げ,当てはまると回答した項目数を集計した。やはり年齢にかかわらず,消費文化指数の高い層ほど社会問題の認識も高いという結果が得られた。具体的には,表4-3-3に示すように,消費文化活動のない者と4個ある者との間で,社会問題の認識度数に約2倍の差が見られる。


表4-3-3 消費文化と社会参加および社会問題認識度  <CSVデータ>

  消費文化指数 社会活動への参加個数(平均値) 社会問題の認識度数(平均値)
15-17歳 0点 .66 3.13
4点 .75 5.50
18-21歳 0点 .53 3.49
4点 1.14 6.10
22-24歳 0点 .61 2.96
4点 1.29 6.10

以上より,ゲームセンターや,ディスコ,カラオケに行くこと,ドライブや旅行,買い物,映画・スポーツ観戦など,消費社会の用意する娯楽的で消費志向的な活動(=消費文化)に参加する青少年は,むしろ外的世界への関心を高める傾向にあり,消費文化に参加しない青少年にくらべて社会参加と社会問題への関心が高く,社会性が発達していることがわかった。従来の消費社会論では,消費志向的人間は社会的関心が低いと指摘されるが,まったく逆の結果が得られた。さらに結果は示さなかったが,余暇活動でテレビを見るだけという層では,社会問題認識度や社会参加がかなり低く,社会性の発達がかなり弱い傾向にあった。


3 情報メディア型の青少年の特徴

休日にインターネットや電子メールを扱う青少年は,わが国ではまだ少数派である。休日にインターネットをする者は15-24歳のうちの8.8%,電子メールでやりとりをする者は11.5%である。インターネットと電子メールの両方をする者は全体の4.9%で多いとはいえない。男女差をみると,インターネットをする者は,男子の9.2%,女子の8.3%で男女差はない。しかし電子メールでやりとりをする場合は,男子9.5%に対し,女子13.5%と女子のほうが多い。

学校別では,インターネットをする者は,小学生では3.0%,中学生では5.8%,高校生7.5%,短大・高専・専門学校10.7%,大学・大学院生14.3%であった。電子メールを使う者は,小学生1.2%,中学生3.9%,高校生12.2%,短大・高専・専門学校10.7%,大学・大学院生では15.5%である.いずれも学校段階が上がるほど,使用率が高くなる。また学校卒業者では,学歴の高さにほぼ比例して使用率が高いが,大学・大学院卒の社会人で,休日にインターネットをする者は17.2%,電子メールは15.5%であった。

情報メディアに参加する青少年は,いったいどのような遊びをし,またかれらの価値観はどうであろうか。以下では,情報メディアに参加する者の特徴を,C票データの分析結果について記述する。これはあくまで,現在,一部の少数派となっている情報メディア青少年の特徴を示しているにすぎない。従って,以下に示す結果から,コンピュータや電子メールを使用するからこういう結果が必然的に生じるというように,因果関係を特定して理解するにはかなりの慎重さが必要である。ここでは関連性を指摘するに留めたい。つまり今後,情報メディアを利用する青少年が増加することによって,異質な層がメディア利用者となり,以下で示された特徴は変化していく可能性が大きい。あくまで現時点での,情報メディア利用者の特性として慎重に理解するべきであろう。

分析にあたって,情報メディアへの参加度を基準に3つないし4つのグループに分ける。まず第1は,インターネットと電子メールの両方を使いこなす「情報メディア型」で,かれらは全体の4.9%を占める。第2に,インターネットか電子メールのいずれか一方に参加する者で,全体の10.5%存在する。これはインターネットのみ利用と電子メールのみ利用の2層に分かれる。第3に,休日にはインターネットも電子メールもしない「情報メディア無参加型」が84.6%の大多数である。


4 情報メディア人間と人間関係

世間一般では,インターネットやパソコンにはまる人間にはオタク族が多いといわれることが多い。すなわち,かれらの社会とのつながりは電子世界のみとなり,友人数が少なかったり,人間関係が希薄となっているのではないかというのである。そこで,情報メディアの利用が,青少年の人間関係とどのような関連性をもつかを,友人数,友人関係について比較してみた。


(1) 「ひとりっ子」に多い情報メディアの利用

きょうだいの有無を比較すると,「ひとりっ子」ほど情報メディアの利用率が高いという結果であった(表4-3-4)。ひとりっ子の内では,インターネットをする者が13.3%,電子メールをする者が21.2%である。きょうだいの数が多いほどいずれも利用率は低く,「きょうだいの中で,一番上でも下でもない」3人きょうだい以上の家庭では,利用率は数%と低い。おそらく子どもの数が少ない家庭ほど,子への教育投資が経済的に可能となり,パソコンや情報機器を与えることが多いと考えられる。


表4-3-4 きょうだいと情報メディア  <CSVデータ>

(%)
  ひとりっ子 きょうだいの中で,一番上 きょうだいの中で,一番下 きょうだいの中で,一番上でも一番下でもない
インターネットをする 13.3 11.2 7.5 5.2
電子メールでやりとりをする 21.2 14.7 9.4 6.3
(2) 情報メディア利用と友人関係

インターネットや電子メールなどの情報メディアを利用する青少年は,友人関係に何らかの特徴があるかどうかを調べるために,友人数,友人関係について比較した。


表4-3-5 情報メディアと友人数  <CSVデータ>

(%)
友人数 1人もいない 1人 2〜3人 4〜5人 6〜9人 10〜19人 20人以上
メディア無参加 1.3 2.0 21.8 30.2 23.2 15.2 6.4 100
電子メールのみ利用 0.0 1.8 12.6 30.6 25.2 18.0 11.7 100
インターネットのみ利用 1.6 0.0 21.9 31.3 18.8 20.3 6.3 100
両方を利用 0.0 1.2 20.7 24.4 26.8 19.5 7.3 100
全体平均 1.1 1.9 21.1 30.0 23.3 15.8 6.7 100

表4-3-5をみてわかることは,メディアを利用するかしないかによって,友人数にそれほど大きな差があるわけではないということである。しいて特徴をあげれば,電子メールのみを利用している層がもっとも友人数が多く,メディア無参加層でもっとも友人数が少ないという結果になった。友人といっても対面ではなく,インターネットや電子メールを利用した友人との交流が存在すると考えられる。

つぎに表4-3-6から,友人関係についてみてみよう。「何でも話せる友人」の有無をみると,電子メールのみを利用する層でもっとも多くなり87.4%であった。逆にインターネットのみを利用している層では,「何でも話せる友だちがいる」者は71.9%ともっとも少なく,とくに男子で63.2%と少なくなるが,女性では84.6%と高く,男女差が大きい。メディアの両方に参加している者で「何でも話せる友だちがいる」のは79.3%,メディア無参加層では78.9%であった。情報メディアといっても,インターネットのみを利用する男子の場合は,何でも話せる友人がやや少なく,これとは逆に電子メールは友人を増やし,交友を拡大するのに役立つことがわかる。

次に,「友だちとの付き合いが,めんどうくさいと感じることがある」者の割合は,インターネットのみを利用する層でもっとも多くなり,45.3%であった。しかし電子メールとインターネットの両方をしようする層では,28.0%と逆に少なくなる。インターネットの世界と接触することで,対面的友人関係を面倒に感じる者は増えるといえよう。しかし電子メールでやりとりすることは,それとは反対方向の作用をもたらす。

「気の合わない人とも,話をすることができる」者は,全体では電子メール利用層に最も多く56.8%であった。インターネット利用層でも,数値は50.0%と多い。このように自分とは異質な人との関係をもっことができるのは,メディア参加者の重要な特徴となっている。これに対しメディア無参加層では,33.5%のみが該当するにすぎない。青少年のメディア体験は,異質な人間への寛容性を高める効果をもつ可能性が高いといえる。

友人とのつきあいが楽しいかどうかを問うた質問では,インターネットのみ利用する層でやや数値が下がるものの,全体として友人関係から楽しみを得ている青少年が大半であることがわかった。

以上をまとめると,電子メール利用層は多くの友人をもち,異質な他者とも交流することのできる寛容性の高い青少年が多い。とくに女子に特徴的である。またインターネットも異質な他者への寛容性の高い者が多くなる。しかしその反面で,友人とのつきあいをめんどうくさいと感じる者が多くなる。このような青少年はとくにインターネットのみを利用する傾向が高い。インターネットのみを利用する男子では,こうした友人関係への忌避観からか,何でも話せる友だちが少ないという特徴がみられた。しかし女子ではインターネットのみを利用していても,影響はでていない。インターネットの世界との関わり方は,男女で異なる可能性があると思われる。男子のほうが,インターネット利用によって,いわゆるオタクといわれるように,交友関係の狭い層が出現しやすいといえる。


表4-3-6 情報メディアと友人関係  <CSVデータ>

(%)
友人関係
(各項目に○をつけた者の割合%)
何でも話せる友だちがいる 友だちとの付き合いが,めんどうくさいと感じることがある 気の合わない人とも,話をすることができる 今の友達とのつきあいが楽しい(とても楽しい+楽しいの合計)
メディア無参加 全体 78.9 22.9 33.5 97.1
75.0 22.5 33.4 97.0
74.9 23.3 33.7 98.0
電子メールのみ利用 全体 87.4 33.3 56.8 97.3
82.5 37.5 55.0 95.0
82.7 31.0 57.7 98.6
インターネットのみ利用 全体 71.9 45.3 43.8 93.9
63.2 44.7 42.1 94.7
84.6 46.2 46.2 92.6
電子メールとインターネットの両方を利用 全体 79.3 28.0 50.0 97.6
76.3 23.7 57.9 99.9
81.8 31.8 43.2 95.4
全体平均 79.2 24.7 36.6 97.0

5 活動的で社会性の高い情報メディア型青少年

情報メディア型人間は余暇の過ごし方(C-Q30)において,いくつかの特徴をもっている。第1に,かれらの休日の過ごし方を検討すると,全体として休日の余暇活動が多方面にわたり活動的となるという特徴をもっている。「アルバイト」と「ボランティア活動」,「家事や家の仕事の手伝いをする」を除くすべての余暇項目で,情報メディア型の青少年ほど,高い経験率を示した(表4-3-7)。とくに差がめだった項目をあげると,「家族とおしゃべりをする」比率は,インターネットと電子メールを両方する者は,34.1%に対し,無参加型では15.4%にすぎない。「音楽をきく」比率も,情報メディア型では79.3%に対し,無参加型では39.5%と少ない。「マンガを読む」者の比率は,情報メディア型で42.7%,無参加型で23.0%,「本を読む」比率も情報メディア型が46.3%であるのに対し,無参加型は17.4%であった。また勉強に関しても差異が大きく,休日に「勉強をする」者は情報メディア型の29.3%,無参加型の9.8%となっている。「買い物をする」でも情報メディア型が高く69.5%,無参加型46.2%であった。他の娯楽的な項目でも,情報メディア型の青少年ほど,比率が高い。


表4-3-7 情報メディアと余暇活動  <CSVデータ>

(%)
  情報メディア
無参加型
インターネットか
電子メール(一方)
情報メディア
参加型(両方)
何もしないでのんびりする 29.8 37.5 42.7
家族とおしゃべりする 15.4 26.1 34.1
友達とおしゃべりする 43.1 50.6 52.4
テレビを見る 53.0 63.1 62.2
音楽をきく 39.5 68.2 79.3
マンガを読む 23.0 34.7 42.7
本を読む 17.4 36.9 46.3
テレビゲーム,カードゲームなどの室内ゲームをする 23.0 27.8 39.0
勉強をする 9.8 19.3 29.3
楽器の演奏,工作などをする 6.7 12.5 22.0
近所で友達と遊ぶ 18.2 26.7 24.4
スポーツや運動をする 18.4 25.0 29.3
ドライブ,旅行などに出かける 21.9 27.3 35.4
買い物をする 46.2 61.4 69.5
映画,スポーツなどを見に行く 15.0 30.7 26.8
ゲームセンター,ディスコ,カラオケなどに行く 18.4 29.5 26.8
家事や家の仕事の手伝いをする 12.8 21.6 19.5
アルバイトをする 14.3 18.8 20.7
ボランティア活動をする 0.7 0.0 0.7
インターネットをする 0.0 36.9 100.0
電子メール(Eメール)でやりとりをする 0.0 63.1 100.0

このことは,インターネットや電子メールをする層が,相対的に経済的・文化的に裕福であり,これらを背景として豊かな親はパソコンだけにかぎらず,多様な文化的体験を子どもに与えることができていると解釈することができる。あくまで推測ではあるが,経済的にも文化的にも豊かな階層では,全体的に青少年の余暇活動が活発となる傾向があると思われる。

次に,かれらの社会性についてみておこう。社会性については,青少年の社会参加と社会問題の認識度の2種類を指標としよう。

社会参加(C-Q38)についての結果は示さないが,地域や社会的活動への参加とは,例えば地域のお祭り,地域のスポーツやレクリエーションの大会などの地域行事への参加,さらには募金・献血,福祉施設訪問などボランティア活動ほかである。これらを情報メディア利用層と無参加層で比較すると,個別の項目で大きな差異は生じなかった。すなわちインターネットや電子メールなどの情報メディアに接触している者が,地域への社会参加が少ないという事実は見出せなかった。むしろ社会参加全体を総計すると,12の活動に「まったく参加していない」と答えた者は,メディア無参加層で50.6%であったが,電子メールのみ利用層で37.8%,インターネットのみ利用層で40.0%,両メディア利用層で41.5%と有意な差異が生じた。つまり情報メディアを利用する者のほうが,地域への社会参加は高いといえるのである。さらに「あなたは今の日本の社会について,どのようなことが問題だと思いますか」(C-Q42)と社会問題の認識を問うた質問で,当てはまるという社会問題の数を集計したところ,情報メディア利用者のほうが認識度が高かった。平均では3.83個であったが,メディア利用層は無参加層より有意に高い値を示した。中央値でみると,メディア無参加層では全部で12個の中の3個の社会問題を認識し,電子メールのみの利用者は4個,インターネットおよび両メディア利用者は5個の社会問題を認識している。この結果から,電子メールやインターネットなどの情報メディアの利用は,青少年の視野を広め,社会問題認識を高める可能性をもっているといえよう。


表4-3-8 社会問題の認識個数  <CSVデータ>

  平均値 度数 標準偏差 中央値
メディア無参加 3.67 1416 2.31 3
電子メールのみ 4.59 111 2.36 4
インターネットのみ 4.60 65 2.28 5
両方を利用 4.91 82 2.17 5
合計 3.83 1674 2.33 3

6 青少年の価値態度−物質主義的価値と私生活志向,個人主義的価値を中心に−

ここでは物質主義や個人主義的な価値,私生活志向のほか,社会変革志向などの諸価値について検討し,青少年のライフスタイルとの関連を検討しよう。


(1) 物質主義的価値・私生活志向・個人主義的価値・社会変革志向

まず各価値観の特徴を概観しておこう。


1. 物質主義的な価値を測定するために,「ほしいものを不自由せずにもてるような物質的に豊かな生活を送りたい」(C-Q51)という項目をたて,「あなたに当てはまりますか」と問うた。その結果,当てはまると答えた者は,15歳〜24歳青少年全体の27.3%であり,男子の29.3%,女子の25.3%が当てはまると答えている。年齢別には,15-17歳の25.5%,18-21歳の26.9%,22-24歳の30.2%が当てはまると回答した。居住地の人口別にみても大きな差はなく,大都市部で28.0%,人口10万以上の市で28.0%,人口10万未満の市で27.6%,郡部で25.3%であった。

2. 私生活志向としては,2つの側面から検討していく。まず第1に,仕事中心主義か私生活重視の生活かを問う項目に「そう思う」と回答した者をみてみよう。全体では32.0%が「そう思う」と答え,3人に1人は「私生活を犠牲にしてまで,仕事に打ち込むつもりはない」(C-Q29)と考えている。しかし3人のうち2人までは,仕事中心の生活を否定していない。とくに男子よりも女子のほうが,私生活を犠牲にしてまで仕事に打ち込むつもりはないと考える者が多く,男子では29.1%,女子で34.8%であった。また年齢が高いほど,私生活重視の傾向は多くなる(表4-3-9参照)。この価値は,学校段階や学歴による差が比較的少ない項目である。また私生活志向の別の側面として,7つの人生観(C-Q44)のなかから「身近な人との愛情を大事にしていきたい」を選んだ者は,女子に多く32.0%で,男子では21.8%である。年齢別には,15-17歳で24.8%,18-21歳で26.3%,22-24歳で30.9%と年齢上昇とともに増加傾向にある。

3. 個人主義的価値としては,個人の自由と社会責任との関連で「他人に迷惑をかけなければ,何をしようと個人の自由だ」(C-Q51)を用いた。これに当てはまると答えた者は,全体の21.5%であり約5人に1人の割合である。女子より男子にこの傾向が強く,男子では24.0%,女子では19.0%が当てはまると回答した。年齢による差異はなかったが,未婚者で特徴的となる。つまり既婚者では15.6%が当てはまると答えたが,未婚者では21.7%であったことから,結婚して家庭をもつことで社会への責任感がやや強くなるといえる。職業をもつ者の間で,この価値に当てはまると答えた者は,管理・専門職16.9%,事務的職業16.8%,労務的職業27.6%,自営業25.0%となった。

4. 社会変革志向として「自分の力で今の社会を変えていけると思う」(C-Q51)かどうかを問うた。その結果,全体の5.3%が当てはまると回答した。男女差が大きく,男子で当てはまると回答した者は,7.8%であったが,女子ではわずかに2.9%であった。ジェンダーによって社会変革への自己の可能性の信念は大きく左右されているといえよう。それ以外では,きょうだいの有無で差異が生じていた。「ひとりっ子」ほど,社会変革志向が強く自立的で8.8%が当てはまると答えたが,きょうだいのある者では「一番上」の者の5.5%,「一番下」の者の5.4%,3人以上のきょうだいの中間的位置の青少年で3.2%であった。


7 消費文化と青少年の価値観

最初に,青少年に広がっているといわれる物質主義的価値と個人主義的価値観の関連など,諸価値の関連をみておこう。

青少年においては,物質主義的価値(ほしいものを不自由せずにもてるような物質的に豊かな生活を送りたい)の持ち主ほど,個人主義的価値(他人に迷惑をかけなければ,何をしようと個人の自由だ)が強いという結果がえられた。すなわち物質主義的価値(全体の27.3%が該当)のうちの32.6%が個人主義的自由の価値に当てはまると答えた。非物質主義的な者(全体の73.7%が該当)では,17.3%であるので約2倍である。ここで,これらの2つの価値を交差させて,4つの類型にわけると,それぞれの構成比は「物質主義・個人主義」(8.9%),「非物質主義・個人主義」(12.6%),「物質主義・非個人主義」(18.4%),「非物質主義・非個人主義」(60.1%)であった。全体としてみれば,物質主義的でかつ迷惑さえかけなければ個人の自由という考え方の持ち主は,1割未満と少数である。これを男女別にみると,男子で「物質主義・個人主義」は10.7%,女子では7.2%となり男子のほうが多い。また年齢段階による差異はあまりない。

消費文化との接触や情報メディア利用と諸価値の関連性をみておこう。表4-3-9の数値の読み方は,たとえば消費文化指数0点のグループと4点のグループを比較し,それぞれのグループの内で各価値に「当てはまる」と回答した者の割合を%で示している。消費文化指数0点の596人のうち物質主義的価値にあてはまるのは21.2%であるが,4点では多くなり50.0%が物質主義的である。表4-3-9からわかることを,以下にまとめておこう。性別や年齢の効果も検討して,関連の強い項目を特徴としてとりあげた。

消費文化に多く参加する青少年の特徴は,第1にかれらが,身近な友人や家族との関係性を重視する関係性志向の強いタイプということである。すでに示したように,消費文化に多く参加する者ほど友人関係も良好である。表4-3-9では「人と一緒にいるより一人でいる方が好きだ(孤独志向)」と答える者が消費文化指数4点で8.6%と少なく,消費文化的な青少年は孤独志向ではない。また第2の特徴として,消費文化に参加する青少年ほど,物質主義的(消費文化指数4点の50.0%>0点の21.2%,以下同様)で,かつ個人主義的(他人に迷惑をかけなければ何をしようと個人の自由だ)な価値観が強い(34.5%>19.2%)。第3に,消費文化的な青少年は私生活志向が強く,「私生活を犠牲にしてまで仕事に打ち込むつもりはない」(48.3%>23.8%),「身近な人との愛情を大切にしていきたい」(32.8%>22.9%)と答える割合が高くなる。第4に,消費文化的な青少年ほど勉強や進学の悩みや心配事をもつ者が少ないことから(19.0%<31.8%),受験競争や学歴競争には強く関与はしていないと思われる。第5に,消費文化的な青少年の悩みや心配事は,お金のこと(43.1%>13.8%)や異性のこと(20.7%>6.1%)が中心であり,さらに家族のこと(17.2%>5.3%)で悩む者が多いという特徴をもっている。第6に,消費文化的な青少年ほど享楽志向が強く,「働かないで暮らしていけるだけのお金があれば,遊んで暮らしたい」と答える者は消費文化指数4点層の22.4%,0点層では9.6%であった。第7に,消費文化的な青少年ほど,高い地位や高い収入をめざす上昇志向的なライフスタイルを望むのではなく,むしろ「自分のやりたい仕事ができれば,収入や地位にはこだわらない」(69.0%>40.3%)者が多い。同様に「やりがいのある仕事についてがんばるのは人間にとって大事なことだ」(70.7%>45.3%)と,努力を評価する価値観も強い。すなわち地位や収入を求める上昇志向的な働き方や努力ではなく,身近な人との愛情や私生活を大事にしながら,やりがいのある仕事のために努力することに大きな価値を見出している。そして努力が一定の社会的成功につながるという努力信仰も,消費文化的な青少年ほど強い(「努力すればそれなりに満足できる地位や収入は得られるものだ」39.7%>25.8%)という特徴をもっている。第8に,かれらの特徴として,能力・実力主義で社会的に評価されることを望んでいる(「年齢や勤続年数よりも,能力や実績によって地位や給与が決められる方がよい」(44.8%>19.8%)。消費主義的な青少年は専門学校を希望する者がやや多いことから,学歴ではなく実力で評価してほしいという意味もあるのかもしれない。

消費文化活動に多く参加する青少年の特徴を要約しておこう。かれらは物質主義的な価値や個人主義的自由主義の価値観を強くもっている層である。そしてこれらの価値の背景として,私生活志向が強く浮かび上がった。つまりかれらは私生活を守り,友人や家族を大切にしながら,同時にやりがいのある仕事をみつけて自己実現のために努力するというライフスタイルをめざしているとも考えられる。そうした私生活志向は,当然,社会変革や社会や人のためにつくしたいという方向へ向かうものではなく,個人主義的でかつ物質主義的な価値観と並行している。ここに現代の消費社会を生きる青少年の欲望がみえかくれする。しかし私生活志向へと向かう消費文化的な青少年は,逆説的だが社会的な問題認識が高く,社会参加も活発であった。消費志向的な人間は社会的な関心を失いがちであるという,一般的な予測はここではあてはまらない。学校や家庭と異なる外の世界との接触が多い消費志向的な青少年は,社会へのアンテナは高くなるが,それは社会変革志向へとむすびつくものではないようだ。消費文化に参加する青少年の中には,学歴競争や地位競争からおりることによって,消費文化への適応を高めている者もいるであろう。消費文化的な青少年は勉強や進学の悩みは少ないが,高い地位や社会的評価にも肯定的である。しかしかれらは立身出世型の地位競争ではなく,やりがいのある仕事を通じた努力を評価し,能力や実績を重視する価値を持っている。消費文化的な青少年は,社会的地位や経済的成功において,決して高望みはしないが,努力とその成果である実績や能力によって報われるであろう将来像を思い描いているようだ。また消費文化に参加することは,友人との「つきあい文化」となっており,消費文化は若者にとってのコミュニケーション文化になっていると考えられる。そしてかれらは,私生活主義の価値をもちつつ,やりがいのある仕事や自己実現の努力を志向するライフスタイルによって,現代の消費社会を生きている。


表4-3-9 消費文化への参加度と価値志向 (C票)  <CSVデータ>

(%)
  消費文化指数
全体 0点
(596人)
4点
(58人)
物質主義(ほしいものを不自由せずにもてるような物質的に豊かな生活を送りたい〉 27.3 21.2 50.0
個人主義(他人に迷惑をかけなければ,何をしようと個人の自由だ) 21.4 19.2 34.5
社会変革志向(自分の力で今の社会を変えていけると思う) 5.3 4.5 5.2
自信欠如(自信をもってやれるものは,何もない) 9.9 8.6 10.3
社会的自立不安(社会に出ることに不安がある) 23.4 26.5 13.8
自分のやりたい仕事ができれば,収入や社会的地位にはこだわらない 47.6 40.3 69.0
実力主義(年齢や勤続年数よりも,能力や実績によって地位や給与が決められる方がよい) 26.4 19.8 44.8
私生活中心主義(私生活を犠牲にしてまで、仕事に打ち込むつもりはない) 32.0 23.8 48.3
享楽志向(働かないで暮らしていけるだけのお金があれば,遊んで暮らしたい) 14.3 9.6 22.4
努力志向(努力すればそれなりに満足できる地位や収入は得られるものだ) 31.2 25.8 39.7
やりがいと努力(やりがいのある仕事についてがんばるのは人間にとって大事なことだ) 54.1 45.3 70.7
人生観択一 良い業績をあげて,地位や高い評価を得たい 3.6 4.5 6.9
経済的に豊かになりたい 18.6 18.6 15.5
身近な人との愛情を大切にしていきたい 26.9 22.9 32.8
社会や他の人々のためにっくしたい 5.8 5.7 1.7
自分の趣味を大切にしていきたい 20.7 25.8 20.7
その日,その日を楽しく生きたい 23.3 22.1 22.4
勉強や進学の悩みや心配事がある 28.6 31.8 19.0
家族のことで悩みや心配事がある 8.7 5.3 17.2
異性のことで悩みや心配事がある 10.7 6.1 20.7
お金のことで悩みや心配事がある 23.2 13.8 43.1
孤独志向(人と一緒にいるより一人でいる方が好きだ) 17.0 19.4 8.6

このページの上へ

本編目次 | 前ページ| 次ページ