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「秘蔵の宿」稲葉なおとさんに聞く(2)
「街の文化漂う 秘蔵の宿」を連載している稲葉なおとさんのインタビューの第2回は、訪日外国人で予約が取りにくくなっていると言われるホテル業界の現状を伺います。【聞き手は今沢真・経済プレミア編集長、写真は亀井和真】
−−訪日外国人客が急増して、東京、大阪はじめ大都市のホテルの予約が取りにくくなっていると聞きます。実感としてどうですか。
◆稲葉なおとさん その実感はあります。2、3年前はホテルに宿泊取材を申し込むと、「平日ならいつでも」という答えが返ってきましたが、いまは「できたら日曜日泊、月曜日泊限定で」との答えが返ってきます。
−−平日も予約が取りにくくなっているということですね。
◆平日こそ、外国人の観光客で埋まっていきますから。連泊の人が多く、早めに押さえるというのも外国人の特徴です。日本人が泊まる場合は、休暇にしろビジネスにしろ、直前の予約が多い。今までは直前の方が料金が値下がりすることがありましたよね、「当日限り」とか「明日限定」で。そういうのはいま、なかなか出てこない。
宿泊料は今後上昇する気配
−−その状況で、宿泊料金は、上がっていますか?
◆今は、そんなに上がっている感じはしないです。ただ今は、インターネットで料金が設定されるので、金額がどんどん動くんですね。それで、値上げ・値下げが楽にできるという事情もあると思います。
−−これからさらに上がりそうですか。
◆そうですね。例えば東京や大阪のホテルの宿泊料は、もともとニューヨークやロンドンに比べて安い感じはしていました。外国の友人にも「東京や大阪のホテルは安いね」って言われます。それが円安で、さらにお値打ち感が出ています。そうしたこともあって外国人客が増えているんだろうと思いますが、これから上がる感じはあります。
−−日本人が国内旅行しようとすると、お金が今まで以上にかかることになりかねませんね。
◆そうだと思います。海外も高いし、国内も高い。そうすると何を削るかというと交通費になってくる。東京在住の人たちが休暇で海外にも国内旅行にも行かず、東京のホテルに泊まってゆっくり過ごすという、それが一つのスタイルになってきている気がします。
外国人客でも個人と団体とでは過ごし方が違う
−−外国人客の急増で、ホテルのサービスの部分では、どんな影響が?
◆僕自身は外国人の団体客を受け入れているホテルには泊まらないようにしています。「秘蔵の宿」の連載でも、そうしたホテルは避けているつもりです。外国人でも団体客の過ごし方は全然違います。着いた時から、もうロビーがその国になっちゃいますから。
全館禁煙にしていても、入り口の外で友達同士誘い合ってたばこ吸って、そこにポイ捨てされちゃうとか。
−−そういうマナーの向上は、ホテル側に気をつけてほしいと思いますが……。
◆そうですね、例えば、海上のホテル、豪華客船では、お客さんの層が船全体のイメージを決定づけるということに気を配っています。イメージづくりに成功している船は、旅行代理店を特定して、そこでお客さんを選別し、申し込み時点で指導する。「この船はこういう船ですから、こういうふうに過ごしてください」と。
ホテルに着いてから「マナーを守って」では遅い
海外に代理店を作っているホテルチェーンもあります。その代理店で日本のマナーを教えてもらうのも大事ですね。ホテルに着いてしまったお客さんを、スタッフはなかなか指導できないようですから。例えば、12月に紹介した「ファミリーイン西向」は、マナーをきちんと指導しています。ただ、そういう宿はごく少数ではないですか? 残念なのですが。日本人的なマナーを守ることができるお客さんをつかむか、わかってもらう人たちに来てもらう。そんな方針を語る支配人もいました。
−−大都市のホテルは外国人客の増加で稼働率が相当上がっているようですが、地方都市のホテルはどうなんでしょう。
◆あまり聞かないですね。東京、大阪、京都、あとは福岡でしょうか。仙台、札幌でも外国人は増えていますけれども、東京、大阪の比ではない。外国人の皆さんは連泊するので、東京で5泊したら、札幌での連泊はなかなか組めない。例えば東京4泊、京都で3泊、大阪3泊なら、それで10泊になって、それ以上の宿泊はなかなか組めないんでしょうね。
<「秘蔵の宿」稲葉なおとさんに聞く(3)「『余裕のあるスタッフとサービス』でホテルを選びたい」は、1月5日に掲載します>
【稲葉なおとさんの連載「街の文化漂う 秘蔵の宿」】
稲葉なおと
紀行作家、一級建築士
1959年、東京都生まれ。東京工業大学建築学科卒。世界の名建築ホテルを題材に旅行記、小説、児童文学、写真集を発表。第10回JTB紀行文学大賞奨励賞受賞。社交ダンスを題材にした長編小説をダンス雑誌「ダンスビュウ」に連載中。主な著書に「匠たちの名旅館」、「0マイル」、「サラの翼」など。公式サイトでお勧めホテル、名建築の写真を多数公開中。http://www.naotoinaba.com (顔写真の撮影は寺崎誠三さん)









