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特集第25回  『幻魔大戦 Rebirth』単行本1巻発売記念インタビュー

まずはじめに
「幻魔大戦 Rebirth」を描くにあたって

早瀬: 『サイボーグ009完結編』以降石森プロが発表できる企画として、どんなものがあるかと検討して、009に匹敵する作品は『幻魔大戦』であろうと考えました。実は2005年頃、あるテレビ局で『幻魔大戦』のアニメ企画があり、平井和正先生、七月鏡一さんと会いました。七月さんは平井先生から全幅の信頼を得ていたので、今回まず友人でもある七月さんに相談しました。

七月: 早瀬さんからお声がけをいただき、『幻魔大戦』の再生企画について石森プロにてお話をお伺いしたのが始まりでした。

早瀬: そして平井先生、七月さんにご了承をいただき、企画がスタートしました。アニメ企画の時に平井先生から当時、少年マガジンで連載していた『幻魔大戦』が打ちきりだった、実はその後のシナリオも書いたというお話をお伺いして「それを是非見せてください」とお願いしましたが「もう無い」と言われ「では思い出して書いてください」と…(笑)。「後の事は七月さんにお任せしているので…」と言われてしまいました。

七月: 平井先生に、月が落ちた後はどんな構想だったんですかと尋ねたことがあります。そうしたら「もう忘れました」って言われました。まあ、分かります。作品が終わってしまうと、それまで考えてたアイデアってどんどん蒸発していってしまうものですからね。

原作との違い

七月: かつての劇場用アニメは、マンガ版をベースにしたアニメ化でした。今回の企画は、早瀬さんの絵で同じお話をリメイクをするのではなく、今までの作品群を踏まえて新しい『幻魔大戦』を作ろうというものです。私自身が、石ノ森、平井両先生の原作を読んで育った世代です。かつてご両氏は、いつかこの二つの潮流が合流することもあるかも知れないと言っておられたのですが、結局それは幻に終わってしまったんですね。その幻の合流した世界を作れないかというのが今回の企画です。『幻魔大戦Rebirth』は、かつての60年代のマンガ版の続編のように見えながら、平井石ノ森両氏がその後それぞれに紡いできた『幻魔大戦』を内包して、ぐるっと一周してつながった物語にしたいと思っています。

早瀬: オリジナルの『幻魔大戦』のラストでも001(イワン)が登場していたりとか、ミュータントサブやさるとびエッちゃんが登場していたりするんですよね。オールスターズのような様相を呈して終わるので、全てを内包して…というのは、とても面白いですね。ですからいずれ『神話前話の章』のルーフとジンも登場させたいです。七月さんはもちろん『幻魔大戦』の大ファンで、いわゆるヒライストですし、私は、石ノ森章太郎の弟子で、石ノ森作品のテイストを熟知しているつもりなので、オリジナルを否定することなく、全く新しいモノが作れたらいいのではないかと思いましたね。今回の『幻魔大戦Rebirth』はオリジナルを読んでいると、さらにそれをひっくり返される展開なんですが、新しい読者も従来の読者も同時に楽しめるという意味で、七月さんの素晴らしいアイデアだったと思います。

七月: なので、まず第1話はベガから始めたんです。『幻魔大戦』のおさらいであると同時に、新しい物語のプロローグとして。かつてのオリジナルの『幻魔大戦』でも、まずベガがどんな存在か語るところから始まるじゃないですか?フロイによって。それを踏まえての第1話なんです。そこに旧作のルナではなく、今回は重要なキイになる人物としてルナの娘のステラという少女が登場するんですが、この子が出てくることによって、かつての『幻魔大戦』の先の世界だと分かるようにしています。一周まわって別の世界が始まっているんです。

作品を作る上で苦労したところ

早瀬: ベガのデザインについて、オリジナルを大切にしたい気持ちももちろんあるんですが、1967年のデザインなので、それをそのままにするのは若干の抵抗がありました。私が一番楽しんでいた頃の石ノ森作品は『仮面ライダー』『人造人間キカイダー』、『イナズマン』だったんですよね。ですから、描きたい絵柄もその位の時代にあって…。ですから仮に石ノ森先生が、1970年代、1980年代に幻魔を描いたら、こうなっているんじゃないのかなというリデザインをしています。あと1983年に角川映画での、大友克洋さんのベガのデザインが強烈で…。ベガというとあのデザインを想像する方も多いと思ったので、若干イメージを寄せたりしました。当初はオリジナルのデザインを変えることに抵抗が無かったわけではないんですけども、実際描いてみたら意外と石ノ森テイストだったので、わたし的にアリなら、きっと石森ファンもアリなんじゃないかという感じがしましたね(笑)。

七月: 脚本、ストーリー面では、こういう『幻魔大戦』のイメージを描いてもらうにはどんな文章にすればいいんだろうというのは、毎回悩んでいます。絵を説明する文章というのは実につまらないものなので、ビジュアルイメージを喚起する書き方を心掛けているんだけど、これは今後も苦労し続けるでしょう。そのためにも平井先生のオリジナルを、今回かなり読み返しました。

早瀬: 七月さんのイメージと私のイメージが合っているか不安な時もあるのですが、ほぼ同年代を生きて、同じ作品に影響を受けたりしているので、共通言語はかなり多いんです。

七月: 今ちょうどニューヨーク編を描いているんですけど、参考になる映画に『マーシャルロー』っていうのがあるよーと言うと、早瀬さんも見たよーって言ってくれるので、とても楽ですね。

早瀬: 七月さんは平井テイストをガンガン入れてきていると思うんですよ。私はそれに対して、石ノ森テイストでどう立ち向かうか、まさにここで『幻魔大戦』が行われているわけですよ(笑)平井vs石ノ森の大戦が行われているんです。二人とも『幻魔大戦』が好きで、それぞれの先生に対して強いリスペクトの気持ちを持っていて、愛情が果てしなくあるという事が分かったんです。それは尊重して行かなくてはいけない所ですよね。

今回発売された1巻の中で、気に入っているシーン、思い入れのあるシーン、特に見てほしいシーンなど

七月: 丈の最初の超能力の発動シーンかな。地上で戦っているのに、衛星軌道上まで幻魔吹っ飛ばしてしまうんです。もう楽しい大嘘、大ボラふきたかったんですよ(笑)絵になるとほんとに衛星軌道上でね、下に地球があって、プカプカ浮いてるビルの残骸が絵になると予想以上に面白かった。絵になった瞬間に、それってありになるんですよ。これはマンガの凄さだなって思います。

早瀬: 私は難しいですね。単行本作業で過去の原稿を見ると全部描き直したくなっちゃうんですよね。だから、気に入っているとはなかなか言えない(笑)。気に入っているというよりは、大変だなって思ったのは、やっぱり冒頭のベガ率いる宇宙艦隊vs幻魔の戦いですね。

七月: あれ描くの大変だったでしょう?こっちはわずか5行だったのに(笑)

早瀬: あれは描くの大変ですよね。私じゃなくてアシスタントが大変なんですけどね。そのアシスタントがヒライストなので助かってます(笑)。あの辺りが具体的にバーンとビジュアル化されたものは無かったわけですから、そういった意味では石ノ森先生がやれなかったことをやれたというのは面白かったし、非常に意義のあることだったなと思います。

七月: 宇宙艦隊を率いていたころのベガって、小説『真幻魔大戦』の方に詳細な描写があるんです。これをなんとか漫画で見せたかったんです。今回それが実現できて感慨深いですね。そして今ちょうど、ニューヨークで幻魔ザメディと戦う展開に入ってるんですが、これが楽しくて楽しくて! ザメディは『幻魔大戦』の千両役者ですから。ザメディのミートボールをついに出せました!早瀬さんが気合の入ったコンテ切ってくれましたから! すごく楽しみにしてます。と、あえてプレッシャーかけて(笑)。

これからの展開

七月: せっかく『幻魔大戦』を描くんだから、もう一度再会したいキャラクターがいるんですよね。そのキャラクターたちをどんな形で登場させるのかはこれから思い悩むところなんですが。

早瀬: 私も七月さんに、このキャラクターを登場させたいと提案させてもらったりとかしています。ドクタイガーの同期に○○○○○○○を出そうとか(笑)。あとは、こういう展開になると石ノ森っぽくて燃えるよという提案をさせてもらってます。七月さんがそれをどう調理して下さるのか、もしくはスルーされてしまうのか…それも併せて楽しみにしてます(笑)。

七月: 実際楽しいですよ。こういったお仕事は、楽しさ苦しさ表裏一体なんですよ。楽な仕事では無いけど、楽しい仕事でもあるから続けているわけで。

早瀬: いやあ、私も描いたこと無いものをすごくたくさん描かされるし(笑)。でもすごく勉強になりますね。勉強になるし楽しみですけど同時に、多分どの読者よりも私が一番ドキドキしながらシナリオを読んでるんじゃないですかね。だってすごいシーンが、わずか1行2行で書いてあったりしますからね(笑)。「ニューヨーク炎上」とかね…わずか8文字ですけど、絵に起こすとなるとね(笑)。

それぞれの先生との関係について

七月: 平井先生との出会いは、まだインターネットが普及していない94年頃、パソコン通信で、作者名を伏せたネット小説が発表されたんですよ。作者名は誰でしょう?といった事をやっていて、試しに読んでみたら、あれ?これはどう見ても平井和正じゃないかなと思って、作者名は、平井和正先生ですねとメールを送ったところ、本当に平井和正先生の『ボヘミアンガラス・ストリート』という小説の実験的なネットでの発表だったんですよ。それがきっかけで、平井先生とお会いしませんかとのご縁をいただいて、ご挨拶したのが始まりだったんです。それは有頂天になりました。中学生のころからずっと読んでいて、私が物書きの道に進んだのは平井先生の作品の影響でしたから。それ以来お付き合いさせていただいて、平井先生の『月光魔術團』に解説を書くことになったり、私と藤原芳秀さんの『ジーザス』の文庫版に解説をいただくことが出来たり。その後2000年代に入ってから『8マン』の復活企画にお呼ばれして、『8マン・インフィニティ』という作品のシナリオを担当したりしました。そういったご縁もあって、『幻魔大戦』のアニメの時に協力してくれませんかと声をかけていただいて、石森プロさんにお邪魔したんですね。それが今、このマンガ『幻魔大戦Rebirth』につながっているのが、不思議というか、おもしろいものです。

早瀬: そうですよね。あの時の会議はムダではなかったという事ですよね。テレビ局の担当者の異動で、アニメ化は実現しなかったですけれども…。

七月: 平井先生自身が、マンガ大好きなんですよ。なので、私の『ジーザス』や『闇のイージス』や『ARMS』も読んでいただいて、時々感想のメールなんかもいただいて。平井先生とは、そういったご縁でした。ここ2,3年ずっと体調を悪くされていて心配していたんですが、今年の一月に亡くなられてしまいました。単行本を見ていただけなかったのが残念です。

早瀬: 私自身は『幻魔大戦』を手伝った事が無かったのですが、ファンとしてずっと楽しんでいて…。石ノ森先生とは最晩年の10年間を一緒にお仕事をさせていただいたんですが、今思えば、もっとこれを聞いておけば良かった、あれを聞いておけば良かったというのがあるんですけれども、ただ、作品は今も残っているわけですから、それを読み返すことによって、何か石ノ森先生と会話をしているような気分になったりもするわけなんです。今回も、『幻魔大戦』を本当に繰り返し繰り返し読んでいるんですよ。そうすると、当時気付かなかった発見があるんですね。『幻魔大戦Rebirth』だと、東丈と一緒にいる少年で同級生のジュンというキャラクターがいますが、これは石ノ森先生の別作品での有名なキャラクターで、オリジナルだと矢頭四朗なんです。髪の毛が黒く塗られているキャラクターなんですけど、よく見ると一箇所だけ白い髪のシーンがあって、そこに石ノ森先生のタッチでツヤが入っているんですね。ですから、案外、というか私は確信しているんですけど、元々髪の毛の白いキャラクターだったんじゃないかなと…。当時のアシスタントが間違えて黒く塗っちゃったんじゃないかなって…(笑)。ジュンはまさに髪の毛の白いキャラクターですから、ちょっと面白い発見でしたね。ですから、作品を通して石ノ森先生と会話しながら、描いているような感じですね。
*図参照

最後に皆様に一言

七月: 我々の勝手な思い入れのみで作ってしまっていないだろうかと恐々ながらも、自分が一番読みたかった『幻魔大戦』を早瀬さんと作らせてもらっております。もしこれをおもしろがっていただける方がいらっしゃいましたら、ぜひ一言お寄せください。と言うか、本買ってくれるとすごく嬉しいなー(笑)。本の初動が悪いと作品は早く終わってしまいます。また月が落ちてきます。

早瀬: 以前の『幻魔大戦』は、時代が早すぎて、打ちきりになるケースが多かったんですけれども、今回は大団円を、迎えられれば嬉しいなと思います。『幻魔大戦』は宇宙で様々なストーリーがあっていいわけですけど、その中の一つとして、完結したいです。よろしくお願い致します。

七月、早瀬: ありがとうございました。

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