番組内容
放送時間
番組概要
  「みんなの寅さん」第7回 2016年5月14日放送分 「寅さんとタコ社長・たびたび」

■文化放送「みんなの寅さん」 
・放送時間:文化放送 毎週土曜日6時40分~6時50分 

■山梨放送 土曜朝9時~
北海道放送 日曜朝5時25分~

「みんなの寅さん」第7回 2016年5月14日放送分 「寅さんとタコ社長・たびたび」

ディレクター 岩田清(文化放送)
構成・パーソナリティ 佐藤利明

「ラジオで楽しむ"男はつらいよ"の世界『みんなの寅さん』」
主題歌第7作『男はつらいよ 奮闘篇』ヴァージョン(5/14のみ)


タイトルコール「寅さん名場面!」
寅さん名場面! 第7作『男はつらいよ 奮闘篇』寅さんの帰郷

竜造「上野あたりで買ってきた一個100円の土産をこう... 例によってバカ面してよ、ヨッ、おいちゃん、おばちゃん、元気? なんて言うだろ。すると、おまえたちがスーっと立ち上がってよ、
やあ、まあ、寅さんよくお帰り...てんで肩の一つもポーンと、叩いてやるだろ、そうすっと、あの寅のバカヤロウ、コロッコロッして大喜び、
簡単なんだよなあ、こんな簡単なことがどういう」
竜造「何だ、 え、 え、え、 バカおどかすな、そんな、あっ、いた、 あ、すいません、あの、おかえりなさい」

 娯楽映画研究家・佐藤利明です。「みんなの寅さん」今週も始まりました。
 本日の"寅さん名場面"は、第7作『男はつらいよ 奮闘篇』です。寅さんが柴又に帰ってくる時の店先のシーンは、毎回、様々なバリエーションがあります。山田洋次監督は、五代目柳家小さん師匠の落語「笠碁」をイメージして、このシーンを撮っていたそうです。今回は、寅さんの噂話をしていると、後ろから本人が現れる、というパターンですが、初代おいちゃんの森川信さん、さすがですね。さくらも、おばちゃんも、観客も、後ろに寅さんが立っているのを知っているのに、なかなか気づかない。それゆえ、気づいた時のリアクションが最高です。「あ、すいません」って。これぞ喜劇の呼吸、コメディの味わいです。

それでは「みんなの寅さん」すすめてまいりましょう!」 

タイトルコール「寅さん四方山話」
「男はつらいよ」シリーズの名場面とともに、寅さん博士の佐藤利明さんの、寅さんトリビア、名づけて「寅ビア」をお送りします。

 先週は「源ちゃん」特集をお送りしましたが、今回は「寅さんとタコ社長・たびたび」と題して、寅さんと名コンビの、タコ社長とのあれこれをお届けします。
 朝日印刷株式会社・代表取締役社長・桂梅太郎は、戦後間もなく、奥さんと柴又に印刷工場を立ち上げて、今日まで頑張ってきた苦労人です。演ずるは、浅草育ちの名バイプレイヤー・太宰久雄さん第1作『男はつらいよ』で、寅さんに「ゆでダコ」と呼ばれて以来、通称・タコ社長。お人好しのなのですが、お調子者というか、一言多いのが玉に瑕。しばしば、不用意な一言で、寅さんを怒らせてしまいます。

第5作『望郷篇』で、寅さんが長山藍子さん演じる節子に失恋したとも知らずに、タコ社長、こんな風に声をかけてしまいます。

寅さんとタコ社長 その1 失恋したとも知らずに・・・

社長「あ、寅さん。珍しいね。花火見物かい?」
寅「まぁな」
社長「なんだい、嬉しそうな顔しちゃってさ、連れてこなかったのかい?」
寅「誰を?」
社長「コレだよ。聞いてるよ、上手くやってるようじゃないかよ、浦安あたりでさ」
寅「そうかい」
社長「ひひひ、色男!、ハハハ・・・イタタタ!」

よせばいいのに、タコ社長、エスカレートしてしまって、寅さんの怒りの導火線に火をつけてしまいます。

第9作『柴又慕情』で、吉永小百合さん演じる歌子に「また来てもいい?」と言われた寅さん、今日来るかと、一日千秋の思いで待ち焦がれています。毎日のように、夕方の鐘が鳴ると、ため息まじりに寅さんがこんなことを言うので、家族は腫れ物に触るような思いです。

寅さんとタコ社長 その2 今日も彼女は来なかったか・・・

(鐘の音)
寅「あーぁ...、今日もとうとう来なかったか...」
寅「俺、今、独りごと言ったか?」
さくら「あ、何も」
寅「博、俺、何も言わない?」
博「ええ...何も聞こえませんよ。」
寅「そうか...そりゃよかった...」
社長「あーあ、今日も彼女は来なかったか!」
社長「あ!!」

これは、明らかに社長がいけませんね。寅さん、怒るのも無理はありません。しかし、毎回、こういう局面で、絶妙なタイミングで、タコ社長が不用意な一言を発してしまうのは、間が悪いというより、ある意味、才能かもしれません。ここから寅さんと社長の壮絶なバトルが展開されるわけですが、案外、二人のストレス発散の場なのかもしれません。

さて、恋する寅さんと、仕事のことで頭がいっぱい、お金に忙しいタコ社長の見解の相違が明らかになった名場面があります。第14作『寅次郎子守唄』で、寅さんは、十朱幸代さん演じる京子から土曜日にコーラスに誘われて、それが楽しみで仕方がありません。一方の社長といえば・・・・

寅さんとタコ社長 その3 まだ木曜日、もう木曜日

社長「もう木曜日?本当か?」
竜造「ああ」
社長「水曜日だとばっかり思ってたよ」
社長「あ、いけねえ、土曜が期限の手形があるんだよな。あと1日しかないじゃないか大変だこりゃこうしていられねえや。なんでこう一週間ってのは、早くたつのかな」
竜造「まったくだ」
寅「おいちゃんおいちゃん、」
竜造「うん」
寅「今日は金曜日だろ?」
竜造「うん?木曜日だろ」
寅「まだ木曜日?なんだよ俺、てっきり金曜日かと思ってたよ...。あーあ、どうしてこうも1週間が長いかねえ...」

社長にしてみれば、手形の期限は生命線です。土曜日までになんとかしなければいけない。だから一日でも長い方がいい。しかし、寅さんは、土曜日のコーラスのことしか考えていません。これは、それぞれの生き方の違いなので、寅さんを責めても仕方がないのですが、この時も壮絶なバトルへと発展しました。

そんな、寅さんとタコ社長ですが、喧嘩するほど仲が良い、と言われるように、実はお互いのことを、思いやっているのです。金策に出たまま帰らない社長を心配して、もしやと、源ちゃんと江戸川一帯を捜索したこともあります。第14作『寅次郎子守唄』では、土壇場で京子に失恋してしまった寅さん。例によってカバンを手に、旅立つ時に、タコ社長に、こんな言葉をかけます。

寅さんとタコ社長 その4 社長の金の苦労に比べれば・・・

寅「社長、達者でな」
社長「寅さん」
寅「え?」
社長「辛いだろうな」
寅「なあに社長の金の苦労に比べりゃ...俺の色恋ざたの苦労なんてなヘッ!、
屁みたいなもんだよ」
社長「ありがとうよ寅さん」

寅さん、実はわかってるんですね。「もう木曜日、まだ木曜日」で喧嘩した二人ですが、お互いの辛さを理解しあって、優しく言葉を掛け合う。これがいいんです。タコ社長にまつわるエピソード、まだまだあります。またいつか、特集しましょう。

エンディング

次回、「みんなの寅さん」は、第8作『寅次郎恋歌』の名場面と「寅さんと御前様」をお送りします。お楽しみに!

2016.05.15
  「みんなの寅さん」第6回 2016年5月7日放送分 「寅さんと源ちゃん・たびたび」

■文化放送「みんなの寅さん」 
・放送時間:文化放送 毎週土曜日6時40分~6時50分 

■山梨放送 土曜朝9時~
北海道放送 日曜朝5時25分~

「みんなの寅さん」第6回 2016年5月7日放送分 「寅さんと源ちゃん・たびたび」

ディレクター 岩田清(文化放送)
構成・パーソナリティ 佐藤利明

タイトルコール「寅さん名場面!」
寅さん名場面! 第6作『男はつらいよ 純情篇』より おいちゃんと同じ?

寅「なんだ、おいちゃん、なに考えてんだ?ん?」
竜造「おめえと同じことよ」
寅「い...いい年してなんだよ!汚ねえよ!考えてる事が不潔だよ!まったくなあ!ああ、オレは恥ずかしいよ。卑しいジジイがオレの身内だと思うとなぁ...」
竜造「なにいってんだい?あー今日も日が暮れるなぁって...」
寅「うそだよぉ―!ハハハハ!隠したってダメだよ、今その口で言ったじゃねえか!オレと同じ考えだって、そうだろ!ハハハ!なぁ!ハハ......あれぇ―??」

 娯楽映画研究家・佐藤利明です。「みんなの寅さん」今週も始まりました。
 本日の"寅さん名場面"は、第6作『男はつらいよ 純情篇』です。とらやの二階に住む、別居中の人妻・夕子(若尾文子さん)に一目惚れした寅さん。彼女がお風呂に入っている時に、妄想を逞しくしています。そこで「おいちゃん、何考えてんだ?」「おめえと同じことよ」と森川信さんの初代おいちゃんが答えたものですから、お聞きの通りの展開に。寅さんの「あれぇ!」の一言が、いいですね。天才俳優・渥美清さんの真骨頂です。

それでは「みんなの寅さん」すすめてまいりましょう!」 

タイトルコール「寅さん四方山話」
「男はつらいよ」シリーズの名場面とともに、寅さん博士の佐藤利明さんの、寅さんトリビア、名づけて「寅ビア」をお送りします。

「みんなの寅さん」6年目を迎えて、好評の源ちゃんの知られざる秘密を探るシリーズ、今回は「寅さんと源ちゃん・たびたび」と題してお届けします。佐藤蛾次郎さん演じる、源ちゃんは、題経寺の寺男。両親の縁が薄く、関西から柴又に流れてきたところを、誰にでも優しい御前様の配慮で、お寺に住み込んでいます。

シリーズの後半になると、ほとんどセリフがなく、パントマイムのような動きで、寅さんや、御前様に突っ込まれて、僕たちを笑わせてくれます。

第1作『男はつらいよ』で、寅さんが、御前様のお嬢さん・光本幸子さん演じる冬子さんと、婚約者のツーショットを目撃してしまった後の、寅さんと御前様の会話です。

寅さんと源ちゃん その1A 第1作『男はつらいよ』寅さん失恋の瞬間

御前様「帰るのか」
寅「へえ、あのー...ご親戚ですか」
御前様「うん、...これから親戚になる男だ」
寅「ええ?」
御前様「つまり、冬子の婿にな」

衝撃の事実を知ってしまった寅さん。これがシリーズ最初の失恋となるわけですが、意気消沈の寅さんを見て、生き生きとしているのが、この人・源ちゃんです。

寅さんと源ちゃん その1B 第1作『男はつらいよ』失恋を冷ややかに・・・

題経寺の境内で、水を撒きながら、北島三郎さんの「喧嘩辰」をニヤニヤしながら歌う源ちゃん。蛾次郎さん曰く「悪魔の微笑み」です。しかも「喧嘩辰」は、寅さんにとっては冬子との想い出の曲。失恋の痛みに、さらに追い討ちをかけるなんて・・・

さて、佐藤蛾次郎さんが「みんなの寅さん」のゲストにお出で頂いた時に、寅さんが恋をしたり、失恋したりすると、柴又中の人が即座に知ってしまうのは、源ちゃんの噂のネットワーク、通称・柴又CIAあればこそ、という話になりました。

第6作『純情篇』で、寅さんが若尾文子さん演じる、おばちゃんの遠縁の夕子に、一目惚れした時も、源ちゃんは、自慢の喉で、ひとくさり・・・

寅さんと源ちゃん その2 第6作『純情篇』柴又CIAの源ちゃん

源ちゃん「♪寝ては夢 起きてはうつつ 幻の、♪さてこの寅さんの幸せがいつまで続くことでしょうかぁ」

題経寺の前で、近所の旦那衆を集めて、源ちゃんがこんな浪曲を唸っているもんですから、通りかかったさくらは、悲しいやら、情けないやらです。ことほど左様に源ちゃんは、寅さんの恋を、いつも注視して、みんなに報告するわけです。普段、アニキ〜と慕いつつも、どこか距離を置いている、そんな源ちゃんです。

 源ちゃんの大事な仕事は、鐘撞き。題経寺では、午前6寺、お昼の12時、夕方6時の三回、柴又の人々の平穏を祈って、鐘を突いています。この鐘楼、昭和30年に、平和を祈念して建立されたものです。鐘撞きにまつわる名場面は、たくさんありますが、第9作『柴又慕情』で、吉永小百合さん演じる歌子と楽しく江戸川で遊んできた寅さん、歌子が晩御飯をさくらの家で食べると聞いて、スネてしまいます。それを例によってニヤニヤと見ていた源ちゃんでしたが・・・

寅さんと源ちゃん その3 第9作『柴又慕情』笑ってる場合じゃ・・・

寅「結構だよ。どうせ俺のことなんか、誰も呼んじゃくれねぇんだ。へっ!芋の煮つけでも食って屁でもたれて寝るか」
博「君、そろそろ鐘をつく時間だぞ」
源ちゃん「は・・・」

冷静沈着な博さんに指摘されて、慌てて、参道を全力疾走する源ちゃん。果たして鐘撞きに、間に合ったのでしょうか?

どうやら源ちゃんは、ときどき、寅さんと一緒にいて、時の経つのを忘れて、鐘撞きに遅れそうになることがあるようです。第23作『翔んでる寅次郎』では、結婚式場からウエディングドレスのまま、桃井かおりさん演じる"ひとみ"がとらやに逃げてきて大騒動となります。そのあと、例によって源ちゃんが遅刻、御前様はカンカンです。

寅さんと源ちゃん その4 第23作『翔んでる寅次郎』鐘撞き遅れた罰・・・

源ちゃん「すいません」
御前様「鐘撞きほったらかして、どこへ行っていた?」
源ちゃん「あのな、寅さんに嫁さんが来たんや」
御前様「うん?」
源ちゃん「綺麗な人や!」
御前様「御仏に仕える身が嘘などつきおって」
源ちゃん「ほんまや」
御前様「この中に入りなさい」
源ちゃん「ほんまや、堪忍して、堪忍して」

鐘の中に入られた源ちゃんの絶叫、果たしてとらやまで聞こえたのでしょうか?「源ちゃん」にまつわるエピソード、まだまだあります。また、いつか特集しましょう。

エンディング

<告知>
ここで、「寅さんに関するお知らせ」です。
黒柳徹子さんのテレビにまつわるエピソードや、草創期からの俳優・歌手など著名人との交流を描いたドラマ「トットてれび」がNHK総合テレビで、毎週土曜日夜8時15分から放送中です。このドラマに、渥美清さん役で中村獅童さんが出演しています。アメリカ留学中の黒柳さんから届いた手紙を、寅さんを演じる獅童さんが読むシーンが寅さん記念館で撮影されたそうです。寅さんファン必見です。ぜひご覧ください。

次回、「みんなの寅さん」は、第7作『奮闘篇』の名場面と「寅さんとタコ社長・たびたび」をお送りします。お楽しみに!

2016.05.08
  「みんなの寅さん」第5回 2016年4月30日放送分 「寅次郎音楽旅・寅さんのテーマ」

■文化放送「みんなの寅さん」 
・放送時間:文化放送 毎週土曜日6時40分~6時50分 

■山梨放送 土曜朝9時~
北海道放送 日曜朝5時25分~

「みんなの寅さん」第5回 2016年4月30日放送分 「寅次郎音楽旅・寅さんのテーマ」

ディレクター 岩田清(文化放送)
構成・パーソナリティ 佐藤利明

◆「寅さん名場面!」
寅さん名場面!第5作『男はつらいよ望郷篇』寅さん真面目になる

つね「あの、そんなところに突っ立ってないでさ、水風呂でも浴びてさっぱりして、冷たいビールでもどう?」
寅「いけない!皆様が、汗水垂らして一生懸命働いているのに、私だけ一人楽をするなんて、おばちゃん、何かお手伝いできるものは、ないだろうか」
さくら「とにかくさ、お兄ちゃん、洋服でも着替えてらっしゃい、ね」
寅「そうねぇ、こんな格好でもなんだから、では二階でちょっと着替えさせてもらいます。あ、さくら、これから汗水流して地道に働くかと思うと、なぜか身のうちが引き締まるようだなぁ」

娯楽映画研究家・佐藤利明です。「みんなの寅さん」今週も始まりました。
 本日の"寅さん名場面"は、第5作『男はつらいよ 望郷篇』です。北海道でテキヤの親分の哀れな末路に、自分の人生の儚さを感じた寅さん。前に、さくらに説教されたように「額に汗して、油まみれになって働く」決意をして、柴又に帰ってきます。その決意が揺らいではいけないので、おばちゃんの「冷たいビールでもどう?」の甘い言葉にも動じません。あくまでも寅さん、形から入るので、まだ働いてもいないのに「なぜか身の内が引き締まるなぁ」と感慨無量。果たしてどうなりますか・・・

それでは「みんなの寅さん」すすめてまいりましょう!」 

「寅さん四方山話」
「男はつらいよ」シリーズの名場面とともに、寅さん博士の佐藤利明さんの、寅さんトリビア、名づけて「寅ビア」をお送りします。

月末恒例、山本直純さんの音楽をご紹介する「寅次郎音楽旅」。今月は「寅さんのテーマ」です。この「みんなの寅さん」でも毎週、おかけしている渥美清さんの歌う「男はつらいよ」は、昭和43(1968)年、フジテレビのドラマ「男はつらいよ」の主題歌として、星野哲郎さんが作詞、山本直純さんが作曲。星野さんの詞が先に出来上がり、直純さんの曲が完成したのが、なんとレコーディングの当日だったそうです。

もちろん映画でも、この主題歌が採用され、随所に、寅さんのテーマとして、その場の寅さんの心情や、コミカルな場面を盛り上げ、悲しいシーンに寄り添うように流れます。寅さんが旅立つ時も、このメロディーが静かに流れてきます。

では、まず映画が始まるときのワクワクした気分を盛り上げてくれる松竹マークの音楽、第2作『続・男はつらいよ』から。

M1 第2作『続・男はつらいよ』 松竹マーク

この松竹マークもシリーズ初期から中期にかけては、毎回、スタジオで録音されていました。演奏は、寅さん楽団と呼ばれる、山本直純さんがセレクトした一流の音楽家の方々です。

続いては、第1作『男はつらいよ』から、奈良の東大寺で御前様とそのお嬢さん・光本幸子さん演じる冬子)とバッタリ再会、奈良公園の浮御堂で写真を撮る時に、御前様が「バター」と言ってしまう、あの名場面に流れる「寅さんのテーマ」です。

M2 第1作『男はつらいよ』御前様と冬子〜バター、奈良ホテル 寅のテーマ

実は、この曲、「みんなの寅さん」のエンディングとして、この五年間、毎回流れている曲なのです。

続いては第5作『望郷篇』で、額に汗して油まみれになって、働く決意をした寅さん、タコ社長の印刷工場も半日でやめてしまい、江戸川に係留しているボートで昼寝をしています。すると、もやいが解けてしまい、寅さんのボートは川下に流れていきます。そのシーンに流れる「江戸川を寅のボートが行く」です。

M3 第5作『望郷篇』 江戸川を寅のボートが行く テーマ

「ひねもすのたり、のたりかな」という与謝野蕪村の俳句が、ぴったりののどかな音楽です。寅さんの乗ったボートは、そのまま千葉県浦安市まで流され、そこから意外や意外の展開となります。

こうした明るいアレンジだけでなく、寅さんが家族と喧嘩をしたり、いたたまれなくなって、家を出るシーンに静かに流れてくるのも、寅さんのテーマです。第8作『寅次郎恋歌』からお聞きください。

M4 第8作『寅次郎恋歌』。寅の背中、テーマアレンジ

昔の仲間と日暮里の焼き鳥屋でバッタリ出会い、酔った仲間をとらやへと連れてきた寅さん。さくらにお酌をしろとか、歌を歌えとか調子付いていましたが、「かあさんの歌」を歌いながら涙ぐむさくらの姿に、シュンとした寅さん、静かに旅立ちます。その光景が目に浮かぶようですね。

そして映画の最後もやっぱりこの曲。お盆、お正月の日本晴れの空に流れるのも「寅さんのテーマ」です。第12作『私の寅さん』からエンディング曲「阿蘇のお正月」です。

M5 第12作『私の寅さん』 阿蘇のお正月〜エンディング

山本直純さんが作曲した「男はつらいよ」の様々な音楽を集大成したCD「寅次郎音楽旅」。現在、4タイトル発売中です。ネットで「寅次郎音楽旅」と検索してみてください。


エンディング

次回、「みんなの寅さん」は、第6作『純情篇』の名場面と「寅さんと源ちゃん たびたび」をお送りします。お楽しみに!

2016.05.01
  「みんなの寅さん」第4回 2016年4月23日放送分 「あにいもうと」

■文化放送「みんなの寅さん」 
・放送時間:文化放送 毎週土曜日6時40分~6時50分 

■山梨放送 土曜朝9時~
北海道放送 日曜朝5時25分~

「みんなの寅さん」第4回 2016年4月23日放送分 「あにいもうと」

ディレクター 岩田清(文化放送)
構成・パーソナリティ 佐藤利明

「ラジオで楽しむ"男はつらいよ"の世界『みんなの寅さん』」
主題歌第4作『新・男はつらいよ』ヴァージョン(4/23のみ)


タイトルコール「寅さん名場面!」
寅さん名場面!第4作『新・男はつらいよ』春子先生と寅さん

寅「へぇ、こらぁ驚き桃ノ木山椒の木、ブリキにタヌキに蓄音機だよ。ね、おいちゃん、春子先生から下宿代をお取りかい? 」
竜造「そら、あたりめえよ」
春子「あの、とっても安くしてくださってるのよ」
寅「そうですか、先生、黙っていてください。よくもあんな部屋で下宿代が取れるねぇ。そりゃ常識外れているよ。それとも、そんな阿漕な人間だったかね、おいちゃんは」
竜造「阿漕? そういうわけじゃねえよ」
寅「いいかい? あんな薄きたねえ、物置みたいな部屋、俺だから我慢してロハで住んでやったんだよ。こうやってお他人様の春子先生がお住みになるというんだから、どうもありがとうございますと、おじちゃんの方で、お金を差し上げるというのが常識あるやり方じゃねえのかい?」 

娯楽映画研究家・佐藤利明です。「みんなの寅さん」今週も始まりました。
 本日の"寅さん名場面"は、第4作『新・男はつらいよ』です。御前様が園長を勤める、ルンビニー幼稚園の宇佐美春子先生(栗原小巻さん)が、二階に下宿をしていて、寅さんには夢のような日々です。寅さんにしてみれば、それで十分なのに、おいちゃんが下宿代を取っていると知っての「ブリキにタヌキに蓄音機」です。寅さんのロジックもむちゃくちゃですが、恋をする男の論理の飛躍と、つい笑ってしまいます。この第4作、テレビ版を手がけていたフジテレビの小林俊一さんが監督をしているだけに、テレビ版の雰囲気を味わうことができます。

それでは「みんなの寅さん」すすめてまいりましょう!」 

タイトルコール「寅さん四方山話」
「男はつらいよ」シリーズの名場面とともに、寅さん博士の佐藤利明さんの、寅さんトリビア、名づけて「寅ビア」をお送りします。

「男はつらいよ」は、放浪者である寅さんと、柴又に住む・定住者のさくらの「あにいもうと」の物語です。旅先で妹を思う寅さん、柴又で旅先の寅さんを案じるさくら。二人の細やかな感情の機微が、このシリーズを豊かなものにしてくれています。というわけで、今日は「あにいもうと」をテーマに、お話してまいります。

第5作『望郷篇』は、テレビ版でさくらを演じた長山藍子さんがマドンナ節子を演じています。倍賞千恵子さんと長山藍子さん、二人のさくらが共演した作品でもあります。この時、寅さんは「額に汗して油まみれになって働こう」と決意をするのですが、実は、映画の前半で、さくらのこの一言が、きっかけの一つになっているのです。

あにいもうと その1 第5作『望郷篇』さくらの説教

さくら「額に汗して油まみれになって働く人と、いい格好してブラブラしている人と、どっちが偉いと思うの? お兄ちゃん、そんなことがわかんないほど、頭が悪いの? 地道に働くってことは、尊いことなのよ。お兄ちゃん、自分の年のこと考えたことある? あと5年か10年たってきっと後悔するわよ。そのときになってからでは取り返しがつかないのよ! あー、ばかだと思ってももう遅いのよ!」

寅さんは、かつて世話になった北海道の政吉親分危篤の知らせを聞いて、舎弟・登と一緒に北海道へ行こうとしますが、先立つものはお金です。さくらに借りに行くのですが、その時、涙ながらに言う、この言葉、実の妹なればこそ、と思います。

さくらは、いつも「お兄ちゃんのこと」を考えています。早く生業について欲しいとか、お嫁さんをもらって身を固めて欲しいと願っているのです。第6作『純情篇』で惚れっぽいとはいえ、若尾文子さん演じる人妻の夕子に恋をした寅さんに、「夕子さんはお兄ちゃんと関係ない人よ」と涙ながらに言います。その時、寅さんはこんな風に答えます。

あにいもうと その2 第6作『純情篇』頭と気持ちの問題

寅「いや、頭の方じゃ分かってるけどね、気持ちの方じゃ、そうついてきてくれねえんだよ。ねっ! だからこれはオレのせいじゃないよ」
さくら「だって、その気持ちだってお兄ちゃんのものでしょ?」
寅「いや、そこが違うんだよ。早い話がだよ、オレはもう二度と柴又に戻ってこないと、そう思ってもだよね。でも、気持ちのほうじゃ、そう考えてくれねえんだよ。あっ、と思うと、またオレここに戻って来ちゃうんだよ。」

夕子に恋してはいけないと頭ではわかっていても、好きだなぁという気持ちはそうはいかない。このセリフは、人間の本質を見つめてきた山田洋次監督の真骨頂です。寅さんの愚かさに呆れ、情けないと思いながらも、兄のことを第一に考えてしまう妹・さくらだからこそ、素直に本音を漏らす寅さん。神妙な顔の寅さんと、情けなくて泣いていたさくらが最後はニッコリと微笑みを交わします。「わかっちゃいるけど、やめられない」のが人間でもあるのです。

第11作『寅次郎忘れな草』で、果たして寅さんは中流階級か? という談義を、家族でするシーンがあります。きっかけは、おばちゃんは中流階級だから、放浪の歌手・リリーの苦労はわからないという話で、それがエスカレート。タコ社長は経営者だから上流階級。では、寅さんは? という話になった時に、さくらがこんなことを言います。

あにいもうと その3 第11作『寅次郎忘れな草』中流階級談義

さくら「お兄ちゃんはさ、カラーテレビもステレオも持ってないけど、その代わり、誰にも無いすばらしいもの持ってるもんね?」
寅「なんだよ、え?あっ!お前俺のカバン調べたろ!」
さくら「違うわよ。形のあるものじゃないのよ。」
寅「なんだよ?屁みたいなものか?」
さくら「ちがうわよ。つまり...、愛よ。人を愛する気持ち」
社長「そ!それはいっぱい持ってる!」

恋多き男・寅さんを「ばかだねえ」とおいちゃんのように笑うのは簡単ですが、寅さんの「人を愛する気持ち」は「誰にもない素晴らしいもの」だというさくらの優しい眼差し。これには誰もが納得します。第11作『寅次郎忘れな草』で、リリーに恋をして、その孤独を共に分かち合うことが出来る寅さんこそ、上流階級なのかもしれません。

しかし、その恋が成就しないのも、いつものことです。『寅次郎忘れな草』のラスト、さくらは上野駅の地下食堂まで寅さんのカバンを持ってきます。もしもリリーが訪ねてきたら、俺のいた部屋に下宿させてやってくれよ」と本音を漏らします。寅さん、優しいんです。そのあとの、あにいもうとの会話です。

あにいもうと 第11作『寅次郎忘れな草』上野駅のあにいもうと

寅「チビによ、飴玉のひとつも...。500円か。切符買ったからなくなっちゃったよ」
寅「え?何?」
さくら「お金もう少し持ってくればよかったね...」

さくらは、財布の中から折りたたんだ、お札を丁寧に一枚一枚広げて、寅さんの紙入れに入れます。「お金、もう少し持ってくれば良かったね」と涙ぐむさくら。この千円札と五千円札は、博が額に汗して、油まみれになって働いた労働の結晶です。妹のお兄ちゃんへの気持ちにあふれた名場面です。倍賞千恵子さんは、このシーンが一番好きだと話してくれました。


エンディング

次回、「みんなの寅さん」は、第5作『男はつらいよ 望郷篇』の名場面と「寅次郎音楽旅・寅さんのテーマ」をお送りします。お楽しみに!

2016.04.24
  「みんなの寅さん」第3回 2016年4月16日放送分 「おいちゃんとおばちゃん」

■文化放送「みんなの寅さん」 
・放送時間:文化放送 毎週土曜日6時40分~6時50分 

■山梨放送 土曜朝9時~
北海道放送 日曜朝5時25分~

「みんなの寅さん」第3回 2016年4月16日放送分 「おいちゃんとおばちゃん」

ディレクター 岩田清(文化放送)
構成・パーソナリティ 佐藤利明

「ラジオで楽しむ"男はつらいよ"の世界『みんなの寅さん』」
主題歌第3作『男はつらいよ フーテンの寅』ヴァージョン(4/16のみ)

タイトルコール「寅さん名場面!」
寅さん名場面! 第3作『男はつらいよ フーテンの寅』湯の山温泉の番頭

寅「お客さん、東京だそうですね、私もね、東京は、葛飾の、柴又ってとこに住んでんですけど、ご存知ですかあんなところ。へへへ、今でもそこに叔父き夫婦が団子屋やってるんですけどね、えーっと、これがだいぶもうもうろくしましてね、もう棺おけに片足入れてるんですよ。淋しいから帰って来い帰って来いなんてよく言うんですけどね、へへ、なかなか忙しくってそうもいけねえや。あ、お客さん、度々お使い立てしてすいませんがね、そこのソケットこっちに、ちょっと入れてみてください。上のほうにね。はい、はい、できました。えー、できました」
竜造「寅さん...」
寅「いよー!おいちゃん!」
 
娯楽映画研究家・佐藤利明です。「みんなの寅さん」今週も始まりました。
 本日の"寅さん名場面"は、第3作『男はつらいよ フーテンの寅』です。おいちゃんとおばちゃんが、三重県の湯の山温泉に、夫婦水入らずで旅行に出かけたら、泊まった旅館で、寅さんが番頭をしていたという、思い出すだけでもおかしい状況です。寅さんがなぜ番頭をしているのか? 宿の女将が、新珠三千代さん演じるお志津さんだったとは、おいちゃんも納得だと思います

それでは「みんなの寅さん」すすめてまいりましょう!」 

タイトルコール「寅さん四方山話」
「男はつらいよ」シリーズの名場面とともに、寅さん博士の佐藤利明さんの、寅さんトリビア、名づけて「寅ビア」をお送りします。

 僕たちが「男はつらいよ」を観て、ああ、とらや・くるまやに帰ってきたなぁ、と感じるのは、おいちゃんとおばちゃんが、いつも、こちらの期待通りにいてくれるからです。というわけで、今日は、おいちゃんとおばちゃんをテーマに、あれこれご紹介してまいります。

シリーズ初期、おいちゃんといえば森川信さん。生粋のコメディアンとして、戦前、戦中、戦後、舞台や映画、テレビで活躍してきました。渥美清さんとの息もピッタリで、数々の名場面が生まれました。特に、寅さんが帰ってくるシーンのおいちゃんのリアクションは抜群です。第3作『フーテンの寅』で、寅さんから店に電話がかかってきます。てっきり旅先から電話かと思いきや・・・

おいちゃんとおばちゃん01 第3作『フーテンの寅』旅先は店先・・・

竜造「お前一体どこから電話してんだい?え? 旅先?旅先ってどこだよ?東北方面かい?北陸かい?え? どうでも良くないよ、今も噂してたとこなんだよ。帰っておいでよ。みんなで心配してんだぜおめえのこと」
寅「ありがとうよ、心配かけてすまねえと思ってるよ」
つね「ちょっとちょっと、どっからなんだい?」
竜造「知らねよ、旅先だってんだが。おい、寅さんよもしもし...もしもし?もしもしィ~??」
寅「もしもしじゃないよ、ほら、客だよ。どこにィ~?、後突っ立ってるじゃねえかー。ほら、おばちゃんマゴマゴするんじゃないよ」
竜造「うん、あいよ おい、つね、」
つね「うん?」
竜造「表お客だってよ」
つね「あ、いらっしゃい、どうも」
竜造「あ、え?」

なんと旅先は店先だったんですね。向かいの店の公衆電話からかけているもんですから、とらやにお客さんが入っていくのを観て、矢も楯もたまらなくなって、店先に入ってきます。これぞ喜劇の楽しさです。第3作『フーテンの寅』『なつかしい風来坊』テレビ「男はつらいよ」や第1作の共同脚本を手がけた森崎東監督による、パワフルで一味違う寅さんが味わえます。

そうそう、もう一度、寅さんが番頭を務めたことがあります。第13作『寅次郎恋やつれ』で、島根県は湯泉津の温泉旅館で番頭をしていた寅さん、結婚相手を見つけて、柴又に報告に帰ってきます。この時のおいちゃんは、二代目・松村達雄さんでした。

おいちゃんとおばちゃん02 第13作『寅次郎恋やつれ』湯泉津の朝ごはん

竜造「なんだい、お前番頭やってたのか」
寅「そうだよ。『あいすぐ行くよ』そう答えておい、ポンポンポンっと布団をたたむ。トントントントントーンと階段を下りて、ガラッと湯殿の戸を開けてザブーンっと朝風呂に入る。身も心もさっぱりした所で朝ごはんですよ。さっきまで生きていたイカの刺身、ね、こんなどんぶり山盛りだしょうがをパラッとかけて、醤油をツルツルッとたらし一気にパアーッと食っちまう。あとはアジのたたきに新鮮な卵。これで朝ごはんをたっぷり頂いて、さあ仕事ですよ」

もう聞いているだけで、お腹がすいてきます。茶の間で寅さんが、旅先であったことを語る「寅さんのアリア」は、おいちゃん、おばちゃんたち同様、観客である僕たちも、映像で描かれていない、寅さんが旅先で体験したこと、感じたこと、を体感できるのです。初代おいちゃん・森川信さんが急逝されて、第9作『柴又慕情』から第13作『寅次郎恋やつれ』まで、松村達雄さんが二代目おいちゃんとなるのですが、山田監督の作品でもインテリ役の多かった松村さんが、ちょっと不謹慎な感じの下町の親父を見事に演じていました。

さて、寅さんには三人の母親がいます。まずは産みの母、柴又で芸者をしていたお菊さん(ミヤコ蝶々さん)。第2作『続・男はつらいよ』と第7作『奮闘篇』に登場しますが、会えばすぐに大げんか。そして第1作に写真だけ登場の、さくらのお母さん。寅さんとって理想の母親は、この育ての母であることは、第47作『拝啓車寅次郎様』で語られています。そして、寅さんのことを実の息子のように、心配し、帰ってきたら美味しい料理を作ってくれる、三崎千恵子さん演じる、おばちゃんです。第32作『口笛を吹く寅次郎』で、寅さんはこんなリクエストをおばちゃんに出します。

おいちゃんとおばちゃん その3 第32作『口笛を吹く寅次郎』精進料理

寅「おばちゃん、明日の朝飯な」
つね「うん」
寅「精進にしてくれ、精進に」
つね「え?」
寅「肉魚いっさい抜き、簡単でいいだろ、な、味噌汁の身はね、豆腐とワカメ、それからおからの煮付け、それから納豆、それからまあ、一夜着けの、お新香にパリパリの味付け海苔そんなもんでいいかな」
つね「それだけ全部、朝の5時に作るのかい?」
寅「そうだよ」

寅さんがこう言ったのは、岡山は備中高梁の蓮台寺の住職の娘・朋子(竹下景子)に一目惚れして、本格的にお坊さんになる決意をしたからなのです。朝の五時に、作って欲しいという精進メニュー、なんとも贅沢です。

おばちゃんの得意メニューは、お芋の煮っころがしと、がんもどきの煮たの。寅さんが帰ってくるたびに腕をふるってくれます。お芋は寅さんのソウルフードなのです。でも、寅さんは、おばちゃんに甘えているもんですから「お芋」や「がんもどき」のリクエストはしません。大抵は、さくらが「今日はお兄ちゃんの好きなお芋よ」などと言います。第42作『ぼくの伯父さん』で、1年ぶりに柴又に帰ってきた寅さんが、おばちゃんにリクエストする「理想の食事」です。

おいちゃんとおばちゃん 第42作『ぼくの伯父さん』理想の食事

寅「おばちゃ~ん、オレは久しぶりに帰ってきたんだぜ。このうちでしか食えねえものを作ってくれよ。たとえば、一塩のシャケ。パリッとした浅草海苔、秋茄子の煮たの、しらすの大根おろし」
おばちゃん「わかったわかった、なんか作ってあげるよ」

呆れ果てながらも、「わかったわかった、なんか作ってあげるよ」と、寅さんの言うことを聞いてくれるのが、おばちゃんなのです。おいちゃんとおばちゃんは、戦時中まで上野で和菓子屋をやっていたと、「小説・寅さんの少年時代 けっこう毛だらけ」で山田洋次監督が書かれています。東京大空襲で焼け出されて、兄を頼って柴又にやってきたそうです。そんなおいちゃんとおばちゃんは、なんと恋愛結婚、その馴れ初めについて、映画の中で寅さんがまことしやかに語るシーンもありましたが、またいつかご紹介しましょう。


エンディング

次回、「みんなの寅さん」は、第4作『新・男はつらいよ』の名場面と「あにいもうと」をお送りします。お楽しみに!

2016.04.17