松本清張スペシャル 一年半待て

松本清張×ジェームス三木×菊川怜

4月15日金曜午後9時

松本清張の傑作ヒューマンサスペンスを菊川怜・主演でドラマ化!家庭という密室で起こった殺人事件からすべてが動き出す!!“一年半”先に待ち受けていた結末とは…!?松本清張スペシャルドラマを二週連続でお送りします!

弁護士・高森滝子(菊川怜)にある日、一つの弁護依頼が舞い込んでくる…。

保険会社勧誘員、須村さと子(石田ひかり)が無職の夫・要吉(渋川清彦)の殺害容疑で逮捕された。事件の夜、酒癖の悪い要吉が酔っ払って、妻のさと子に殴る蹴るの暴行を働いた。さと子は、家庭内暴力、いわゆるDVから、一人息子のタカシ(鴇田蒼太郎)を守るため、止む無く夫殺害に至ったと言うのだ。

容疑者がDV被害者の妻で、無職の夫がヒモ状態であったことから、女性の人権に関わる注目の事件となった。さと子を擁護している婦人団体からの弁護依頼は、滝子にとって名誉を勝ち取る大きなチャンスでもあった。「正当防衛は無理かもしれないが、情状酌量狙いで執行猶予がついたら弁護士として勝ったも同然」だと話す、法律事務所所長・栗原英彦(寺田農)の後押しもあり、滝子はさと子の弁護を引き受けることにする。

滝子は、正当防衛を主張し、無罪を勝ち取ろうと強く言うが、一方のさと子は、素直に夫殺害の罪を認め、罰を受ける覚悟をしており、息子のタカシのことだけを心配している様子だ。しかし、要吉には浮気相手がいたということが新たな事実として分かる。バー“ミモザ”のママ・脇田静代(雛形あきこ)はさと子の高校の一年先輩で、要吉と男女の関係にあり、怪しげな存在だ。

そして始まった裁判。さと子の正当防衛を主張し、無罪を求める弁護人の滝子と、あくまで殺意があったと主張する検察の意見が真っ向からぶつかる。

迎えた判決日。裁判長が重い口を開く…。「主文、被告人を懲役三年に処する。ただし、この裁判が確定した日から二年間、その刑の執行を猶予する」。さと子の目から涙がこぼれる。事実上の勝利を得た裁判だったが、まだ正当防衛で無罪を主張し控訴することもできる、という滝子に、さと子は“裁判は一事不再理ですよね”と問う。そして、「タカシのことを考えると、これ以上、裁判を続けるのは辛い。もう人目にさらされたくない」と控訴しないことを決意する。世間から注目され敏腕弁護士の名をほしいままにした滝子には、参議院選挙への出馬打診の話まで舞い込み、政界進出の目も。これですべてが終わったと誰もが思った…。

しかしある日、滝子の自宅に鳴り響いた一本の電話。それは誰もが予想し得ない、おぞましい悲劇の始まりを告げる電話だった…。

インタビュー

主演・菊川怜

Q. 台本を読んでの率直な感想は?

「松本清張さんの作品はこれで5作目になりますが、今までにやらせていただいた作品とはちょっと違ったタイプの主人公の役どころでした。今まではどちらかと言うと、精いっぱいひたむきに犯人を追っていくというタイプだったんですけど、今回はちょっと大人のいろいろな善悪を織り込まれているような部分が、今までとは違って非常に難しいですが、すごく自分にとってやりがいのある役だと思い、ぜひ挑戦させていただきたいと率直に思いました」

Q. 法廷シーンを演じた感想は?

「ある意味、法廷は“舞台”のように感じました。演説ではなく弁論なんですけど、誰に向かって、何を聞かせ、どう訴えるのが効果的なのかを、監督と意見を交わしながら演じました。あまり強く言っても逆に軽く見えますし、サラっと言ったほうがいいのかなど、どうやって色を付けていくのがいいのか非常に難しかったです。また難しい言葉がたくさんあったので、滑舌には苦労しました」

Q. 松本清張作品5作目の出演となりますが、今まで演じた役と比較してどうか?

「今までは男性とバディになって事件を追っていき、自分の大事な人が殺され、その周りの人を救うべく、けなげに一生懸命になるタイプの女性が多かった気がします。でも今回は今までの4作とはまったく異なり、自分に自信があってプライドも高く、挫折などとは無縁の役でした」

Q. 石田ひかりさんとの共演について

「石田さんとは意外にも今回が初共演でした。私が演じる高森滝子と、石田さん演じる須村さとこの二人だけのシーンがいくつかあったのですが、石田さんとお互いに意見を交わしながら撮影に臨みました。滝子とさとこの関係性がストーリーが進むにつれて少しずつ変化していく部分を二人でうまく表現できたと思っています」

Q. 最後に視聴者にメッセージをお願いいたします

「松本清張さんの作品には、その根底に横たわる雰囲気というか、えたいの知れない魅力というか、物語に引きずり込まれる部分が毎回すごくあって、すべて見終わったあとも不思議な気持ちになるというか、なんか消化しきれず残っちゃって引きずるんですよね。他の作品を拝見してもそうですし、その微妙な心情の変化や欲とかは、誰しもどこかに持っているもので、誰にでも当てはまるものだと思います。そういうちょっとヌメッとうごめいているような、目に見えない空気の動きのようなものを味わっていただければおもしろいんじゃないかと思います。なんかミステリアスで、危ない毒を含んでいるようなところが清張作品の独特の魅力ではないでしょうか。
この作品を通じて、やっぱり人生は割り切れないことだらけだと改めて感じさせられました。人間の本質的な部分をえぐり出し、ウソがないからこそストーリーに引き込まれると思いますので、豪華俳優陣が集結したサスペンス超大作、松本清張スペシャル『一年半待て』をぜひご覧いただければと思います」

ジェームス三木&西浦正記監督

『一年半待て』の脚本を手掛けるにあたって

(ジェームス三木)
短編ですが、改めて挑んだらすごくよくできている話で脚本を書きやすかったです。100%の善人はいないし、100%の悪人はいないと普段から思っています。今回も犯人の良いところは出してあげたいと思いましたし、常に正義を貫く弁護士にも変わった部分があるというリアリティーを出したいと思いました。番組をご覧になった視聴者の方が自分なりの結論を出す、性格や価値観、好き嫌いで判断できるような余地を残しておきたいと思って書きました。最終的にそうなっているかは監督の腕次第ですけど(笑)。

『一年半待て』の演出を手掛けるにあたって

(西浦正記監督)
人にはそれぞれ業(ごう)があります。それを見ている方にちゃんとわかってもらいたいと思って今回演出しました。ジェームス先生に書いていただいたすばらしい脚本をもとにうまく表現できたのではないかと思っています。

視聴者の皆さんへメッセージ

(ジェームス三木)
人間は誰しもエゴイズムみたいなものを持っています。自己弁護やプライドなど、そういうものが著しく傷ついたときに人間はどうなるのかを描きたいと思いました。弁護士が自己嫌悪に陥るというところに見ている人は同情し、感情移入できると思います。弁護士もやっぱり人間なんだなと。視聴者の皆さんが想像する弁護士とは違う姿を描いてきましたので、松本清張スペシャルドラマ『一年半待て』をぜひご覧ください。

キャスト

  • 菊川怜
  • 雛形あきこ
  • 戸次重幸
  • 前川泰之
  • ふせえり
  • 松澤一之
  • 近江谷太朗
  • 春海四方
  • 渋川清彦
  • 寺田農
  • ジュディ・オング
  • 石田ひかり