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啓林堂メールマガジン
10月号 2016.10.1
啓林堂書店 http://www.books-keirindo.co.jp
 
校閲とは?
校閲ガール  主人公・河野悦子(こうの・えつこ)は、念願叶って出版社・景凡社へ就職を決めたものの、名前が“らしい”からなのか、なぜか志望していたファッション雑誌編集ではなく、校閲部へと配属されてしまう。いつか憧れのファッション雑誌編集へと異動するため、悦子は今日も真面目に仕事をこなす。なお、少し口の悪い子を演じているのも、早く異動できるようにするために作戦の内だ。
 悦子のこの秘密を知っているのは同じ部署に所属するグレーゾーン、米岡光男。何故グレーかと言うと、“彼”は魅力的な男性につい「カッコイイ!」と声弾ませてしまうことがあるから。もはやグレーじゃないのではと悦子は疑うが、さて。
 もう一人注目したいのが、編集のくせにろくなチェックも入れず、校閲に原稿を丸投げしてくる要注意人物・貝塚八朗。悦子を何かというと、ゆとりと呼ぶのだが、貝塚も結構抜けているところがあり、悦子によくやりこめられている。彼には作中でとある疑惑が持ち上がるのだが・・・その真実とは?
 他にも魅力的なキャラクターが多数登場。絶妙な掛け合いに終始笑いとツッコミが止まらない。登場する先輩や作家にも、悦子は遠慮せず思ったことをズバズバ言って斬り込んでいくので、見ていて爽快である。

 なお、一言で校閲の仕事と言っても、誤字脱字の確認、事実確認、言い回しのチェックなど、その仕事は多岐にわたる。
 まず第1話では、時刻表の事実確認で発覚したあるミステリの矛盾点に悦子が迫る。この真実が明らかになった時、一人の作家の隠し事が判明するのだが、少し悲哀を感じてしまうお話になっている。それにしても校閲の確認事項の多さには思わずびっくりしてしまった。
 続いて第2話、ここでは校閲において大事なことが語られる。意外かもしれないが、それは「原稿を“読んではいけない”」ということ。校閲の仕事は間違いを指摘し、美しい文章に仕上げることだ。客観視が何より大事なのである。それなのに読者になって話に入り込んでしまっては仕事にならない。感情移入なんて持ってのほか! ただ、そうは言っても好きな作家やジャンルに当たったとなれば何としても読みたいと思ってしまうのが人情。部下の様子に目を光らせる部長に、「大丈夫です、できます」と言って原稿を死守しようとする一幕に原稿への愛を感じてしまった。しかしそこまで熱狂的なファンを作り上げるとは、一体どんな内容の文章を書かれる方なのか・・・無冠の女王、真理恵様がとても気になる。なお、第3話以降は悦子の好きなファッションに関するエッセイが登場。第2話で仕掛けられていた伏線がここで効いてくる仕組みとなっている。仕事の難しさに直面する悦子。だが、とある出会いが悦子を奮起させることに。それは・・・アフロ? この辺りから後半にかけて一気に話が面白くなるため、用事雑事は読み始める前に全て終わらせておくことをおすすめしておきたい。

 ちなみに、本書の中にはそれぞれの作家が書いたとされる「作中小説」が登場するのだが、中でも是永是之の小説は群を抜いて個性的。悦子同様、私もどう読んだらいいのかと悩んでしまった。何とも不思議な世界観である。できることなら、是永是之の頭の中が見てみたい。
 ただ、本書巻末にある角田光代さんの文庫解説を読むとこの「作中小説」に対する印象がまた変わる。的確な分析は必見!
 読書中は何も耳に入って来ないほど久々にのめり込んでしまった。10月からはドラマ化もされるそうだ。おすすめ!
今月の私の1冊
「アリバイ会社にご用心」
【宝島社文庫】 新藤卓広 著 756円
アリバイ会社にご用心 依頼客にアリバイを作る「鈴木アリバイ会社」。この会社に勤務する右藤旺太郎は、ある日顧客であった佐々木勇の殺害容疑をかけられてしまう。だが警察から事情聴取を受けた次の日、会社に自身のアリバイを“崩してほしい”という依頼人・藤寺美沙がやって来た。彼女は自分が佐々木を殺した犯人だと言うのが・・・自身の身の潔白を証明するため、右籐は藤寺の依頼を受けることに。しかし事態は思わぬ方向に繋がってゆき、“関係者たち”を翻弄していく。
読み始めた時はもう少し軽いノリを想像していたのだが、思っていたよりも骨の太い内容だった。少しシリアス。だが、最後まで展開が読めず面白い。読み応えあり!
今月の私の一冊
ミニコラム「私と本」
≪今月の担当≫ 生駒店 店長 松井典子
 「本って捨てられないよねぇ」 そう同意を求められて、私は「そうだよねぇ」と相槌を打つ。ここにはほんの少し、嘘がある。
 数ヶ月に一度、自分の部屋の大きな本棚の前に仁王立ちして、そこから抜き取る本を選ぶ。
 これは売却。これは譲渡。これは、捨てる。
 そう。私は、本を捨てる人。
 思い入れのある本は求められても必ず捨てると決めている。手に届くところにあると未練が残るから、1つのケジメのようなものだ。
 本当は捨てたくない。
 本棚に並ぶ本は、自発的な学びの証だ。
 でも、社会は目まぐるしく変化して、本はどんどん出版されて、本棚の容量は変わらないから。
 充分にに学ばせていただきました、ありがとうございました。丁寧に紐をかけながら、心の中で合掌をする。
Chat & Chat
 先日、まとめ買いした本が数冊消える事案が発生。辺りを見渡してみても見つかりません。持ち出した覚えもないので、思わず本に足が生えて逃げ出す様子を想像・・・気持ち悪い。が、すぐに隣の部屋から家族の笑い声が聞こえてきたところでははぁ、と納得しました。
――まぁいいか。
 怒りはしません。どうせ1冊ずつしか読めないのだし。ただし、返ってきた本が万一折れていたりしたならば、今度こそ烈火のごとく怒る自信がありますが。
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