愛知県で「政活費返還」判決 全国への影響は?(地方議会ニュース解説委員 山本洋一)

 

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■ 名古屋高裁が愛知県議会の2009年分の政務調査費の一部返還を命ずる

愛知県議会の政務調査費(現政務活動費)の一部の使途が違法だとして、住民が2009年度分の返還を求めていた訴訟の控訴審で、名古屋高裁は24日、全額を返還するよう命じた。全面敗訴の県議会側は「とんでもない判決」と反発する一方、「他の自治体に影響する可能性がある」との声も出ている。今回の判決の意味するものとは。

 

 

訴えていたのは名古屋市民オンブズマン。2009年度に県議が支出した「事務所家賃」と「自動車リース料」は条例違反だとして、領収書が公開されていた3万円以上の支出すべての返還を求めていた。すでに返還された140万円を除くと対象額は8116万6125円。

 

報道によると、裁判長は「当時の地方自治法では、政調費を充てられる対象は『調査研究に必要な経費』に限定されている」と指摘。「調査活動に事務所、車が不可欠だと主張・立証しない限り、賃借料などに充てられないと推認される」と判断したという。

 

■「事務所家賃」、「自動車リース料」は政務調査費に当たらないと判断

 

ここで「当時の」と出てくるのは、2012年に地方自治法が、翌2013年に県の条例が改正されたからだ。改正前の名称は「政務調査費」で、交付目的は「議員の調査研究に資するため」だったが、名称を「政務活動費」に修正。交付目的も「議員の調査研究その他の活動に資するため」と拡大し、具体的な支出対象は各自治体の条例で定めることとした。

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【資料公開】千代田区「特別職報酬等審議会」答申案3つの疑問(地方議会ニュース調査員 深水英一郎)

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2015年12月10日10時より第12回千代田区特別職報酬等審議会がおこなわれました。
そこで配布された資料を公開します。

https://drive.google.com/file/d/0B1_qJYetJNwAakpKOTBvMlV4aE0/view

この審議会の議論は、政務活動費を議員報酬に組み込もうとしているとして話題になり、注目されています。

第12回審議会は、多くの傍聴者とメディアが参加しましたが、冒頭、会長から報道側に撮影禁止が求められたり、委員から報道関係者の参加を疑問視する趣旨の発言がされるなどして騒然となっていました。また審議会の後半では答申の白紙撤回の声も委員からあがっていました。

答申の内容に関しても、注目されている政務活動費の議員報酬への組み込みについてはそのままとなっていました。政務活動費を減らし、議員報酬を増やすことによってお金を使いやすくするという考え方になっており、これで透明性が保てるのか疑問です。

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報酬に関しては、議員や区長らの勤務実態をフルタイム勤務相当であるとして算出されています。しかし議員アンケート等はとられておらず、実態の調査もおこなわないまま。「フルタイム勤務相当」であるとする根拠が不明確です。データや調査に基づいておらず印象のみでおこなわれている審議といってよく、これでよいのかと疑問を感じました。

期末手当についても「議員報酬月額に45%を加算した額に支給基準率を乗じて算出」という算出方法について「審議の過程においては、この45%を加算する理由が不明確なため説明ができるように整理する必要がある」としながらも、結局のところ理由がうやむやなまま議論を終えており、疑問でした。

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会長の武藤氏に政務活動費をなぜ報酬に組み込む必要があるのかときいたところ、「議員が領収書の整理などといった細かいことに時間を使うのはもったいない」「議員は志の高い人達なのだからもっと信用すべき」といった持論を語っていただけました。ただこれはあくまで会長個人の持論であって、多くの人の納得を得られるものではないような気がしました。

今後千代田区の議員や区長など特別職の報酬に関する議論はどうなっていくのか、引き続き注目です。

(地方議会ニュース調査員 深水英一郎)

政治の常識は、世間の非常識【地方議会ニュース解説委員 山本洋一】

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■ 議員、第三の報酬≒費用弁償が大部分の地方議会で存続

全国47都道府県議会のうち、37議会で「費用弁償」が存続――。朝日新聞が4日の朝刊で、こんな驚くべき調査結果を紹介している。費用弁償とは議会出席にかかる経費を一律支給するもの。「第三の報酬」との批判も多いが、改善の動きは遅々として進んでいない。

費用弁償は、議員が本会議や委員会などに出席する際の交通費や宿泊費などを公費で支給する制度。「議員は、職務を行うため要する費用の弁償を受けることができる」という地方自治法の規定が根拠で、実費ではなく、出席日数に応じて1日あたりの一律支給金を支払うのが一般的だ。

例えば東京都議会では23区と島しょ部の議員が1日あたり1万円で、それ以外の地域の議員は1万2000円。23区内の議員であれば議会のある新宿に通うのに往復1000円もかからないから、残りの9000千円ちょっとは議員の懐に入っている。

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