復興から開発へ:緒方貞子理事長アフガニスタン訪問概要

2007年12月20日

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カルザイ大統領からマラライ勲章を授与される緒方理事長=カブール市内の大統領府

日本がアフガニスタンに本格的な協力を開始して5年余り。

緒方理事長は、これまでの復興支援の成果などを確認し、今後5年間程度を視野においた協力の方向性を検討することを目的に、12月11日〜15日まで3年ぶりにアフガニスタンを訪問しました。

天候不良による航空便欠航でマザリシャリフへの訪問はできませんでしたが、アフガニスタン政府要人、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)など国際機関の代表等との会談、カブール市内で実施中のJICAプロジェクトの視察、JICA派遣専門家との意見交換を行いました。

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女性に贈られる最高位の「マラライ勲章」

緒方理事長は13日、カルザイ大統領を表敬。女性に贈られる最高位の「マラライ勲章」が授与されました。

大統領からは、2002年に東京で開催された「第1回アフガニスタン支援国会合」以降の我が国及びJICAの復興支援に対する深い感謝の言葉が述べられ、今後、治安対策と密接な関連のある麻薬問題や警察強化、周辺国との地域協力を促進し、経済開発、貧困削減に結びつけたいとの考えが示されました。理事長は、同国の復興支援を継続していく方針を伝えました。

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結核センターを視察する緒方理事長。左は結核対策プロジェクトの磯野光夫チーフアドバイザー=カブール市内の国立結核研究所

同日に行われたアトマール教育大臣との会談では女子初等教育支援への期待、ジア農村復興開発大臣からは、JICAの実施する地方開発プロジェクトに対する高い評価とともに農村における経済活動を促進するための支援への期待が表明されました。

また、UNHCRをはじめとする国際機関関係者との会談を通じ、難民支援へのアフガニスタン関係機関の組織能力の強化などで連携していく重要性を確認しました。

理事長は12日に結核対策プロジェクトを視察。施設が有効活用され、助産師や検査スタッフに対する研修プログラムが着実に実施されていました。

同行したカカール公衆衛生副大臣は、都市部貧困層や僻地には保健医療サービスが行き届いていないことを指摘。今後、サービスへのアクセス率と質の向上、特に女性の保健医療従事者の充実、帰還難民への感染症対策の重要性が確認されました。

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カブール職業訓練センターで裁縫訓練の様子を視察する緒方理事長=カブール市内

また、13日に視察した職業訓練プロジェクトでは、パキスタンやイランからの帰還難民や女性を含む訓練生に、裁縫、コンピュータ、板金、電気工事などの分野でよく工夫された訓練が実施されており、7割の訓練生が卒業後に就職。3年前と比較し施設・内容とも飛躍的な進歩を遂げていました。

アフガニスタンでは、派遣専門家など常時60名近いJICA関係者が活動していますが、安全対策の規制が厳しい環境のなか、士気を高くして活動している様子が見て取れました。

理事長は、前回2004年の訪問時と比べてもアフガニスタンは着実に発展に向けて動き出しており、もはや復興期ではなく開発期に入ったことを実感。今後この流れを維持し、人々に「平和の実感」をもたらす上で経済発展を促進していくためのインフラ整備の必要性も確認しました。

今回の滞在中には、「カブール首都圏開発計画調査」(注1)の実施にあたり合意文書の署名が行われ、今後の首都圏の開発に向けてアフガニスタン関係者からも大きな期待が述べられました。

また、緒方理事長は、日本が施設整備に協力した国営テレビ放送局の番組で、直接アフガニスタンの人々に支援の継続を語りかける機会を得るなど意義深いものとなりました(14日夜、現地で放映)。

JICAはアフガニスタンに対し、「人間の安全保障」の視点を踏まえ、教育・医療施設の改修や道路整備などの緊急復興支援、教師の育成など教育支援、感染症対策など保健医療分野、地方農村開発、給水、女性の地位と生活の向上を目指す支援などを実施してきています。

(注1)「カブール首都圏開発計画調査」
カブール市の急激な人口増加に伴い、交通渋滞、電力不足、廃棄物処理及び上下水道施設の不足といった様々な問題が発生している。これらに対処するため、カブール市全体の開発マスタープランを作成し、カブール市民の生活水準向上を目指すための調査。2008年3月をめどに開始される予定。