潜水艦「伊58」を特定 穴の分布など決め手 長崎・五島沖
(2017/9/7 17:03)-
長崎・五島沖で旧日本海軍の潜水艦「伊58」の特定作業を行っていた「ラ・プロンジェ深海工学会」(代表理事=浦環・東大名誉教授)は7日午前、都内で記者会見を開いた。先月の調査終了時点で有力視された船底を上に海底に横たわる艦ではなく、艦尾を上に、斜めに海底に突き刺さる別の艦の一部を伊58と最終的に特定した。同潜水艦は船体が朽ち、漁網や海洋生物に覆われ、作業は極めて難航したという。
調査は下田市の海洋調査会社「ウィンディーネットワーク」も参加し、8月22~26日に実施。水深約200メートルの海底で有線水中ロボットカメラ(ROV)を駆使して、戦後連合国軍総司令部(GHQ)が海没処分した旧日本海軍の潜水艦24隻を調査し、その中から伊58を特定した。
伊58と特定した艦は、艦尾を上に北東方向に約60度傾き、海底に突き刺さった状態。海底から艦尾までの高さは約50メートル、水中に露出している艦の長さは約60メートルだった。決め手について浦教授は「艦橋側面の構造上の穴の分布などから総合的に判断した」と述べた。穴は艦内の空気や水を抜くためのものだった可能性が高いという。
調査終了時点で有力視された、船底を上に海底に横たわる艦は検討を重ねた結果、同規模の「伊53」と特定。当初、伊58とみられた艦首を上に海底に垂直に起立する艦は「伊47」だった。
同学会では今後、五島沖の約6平方キロメートルの海底に散らばる潜水艦24隻のデータを解析してコンピューター上で3次元化し、「バーチャルメモリアル」として一般公開する計画がある。浦教授は「実物を見たり、技術史を知ったりすることで、変わらない、われわれのものの考え方が見えてくる。戦争について考える契機にしてほしい」と話した。
戦時中、橋本以行艦長(故人)の近くに艦長付として仕えた元乗組員の中村松弥さん(92)=京都市伏見区=は取材に、「『おれたちの棺おけだ』と乗り組んだのが伊58だった。戦後72年目に再会し、複雑な気持ちになった」と語った。
GHQは全国で旧日本海軍の潜水艦を海没処分し、静岡市清水区沖の駿河湾でも計4隻を処分した。同学会は清水を含む各地の海没潜水艦調査にも関心を寄せているという。
<メモ>伊58 人間魚雷「回天」を搭載した旧日本海軍の大型潜水艦(全長110メートル)。終戦直前の1945年7月、当時広島に投下予定だった原爆の部品をテニアン島に運ぶ任務を終えた直後の米重巡洋艦「インディアナポリス」を撃沈、犠牲者は600人ともいわれる。米海軍は今年8月、インディアポリスの残骸がフィリピン沖の海底で見つかったと発表した。
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