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プロジェクター付きシーリングライト「popIn Aladdin」。子供の知育だけじゃない大人も楽しめる魔法のランプだった

700ルーメンのDLP方式プロジェクターにLEDシーリングライトでお値段格安

Engadget JP Staff , @engadgetjp
2017年11月9日, 午前11:30
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寝室の壁に投影される映像。でもプロジェクターらしきものは見当たりません。「popIn Aladdin(ポップイン アラジン)」と名づけられたこの製品、アラジンの物語のように、これは魔法のランプなのでしょうか?

実はこれ、現在Kickstarterで「子供を持つ家庭向けのIoTシーリングライト【popIn Aladdin】」と題してクラウドファンディング実施中の、天井に取り付けるシーリングライトにプロジェクターを埋め込んだ製品なのです。親子でコミュニケーションしながら知育していくためのIoT製品で、2018年7月の発売予定となっています。

子供たちに寝室で読み聞かせしたりする......というのが本来の使い方ですが、5万円以下の価格で横方向台形補正が付いていて天井吊りがカンタンな700ルーメンのプロジェクターと聞くと、むしろ一人暮らしの方にとってもなかなか興味深いガジェットにもみえてきます。

子供に知育しようと試行錯誤した過程がスゴイ

筆者も小さい息子が2人いて、確かに寝かしつける前に絵本を読み聞かせしたりしていました。それを壁に投影、しかもシーリングライトを使うという発想に興味津々となった筆者は、早速このプロジェクトを手がけている人物にお話を伺うことにしてみました。その人物は、popInの代表取締役である程涛(テイ・トウ)氏です。

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▲popInの代表取締役である程涛氏。今回製品開発の過程を熱く語っていただいた。

popInは、2008年7月に東大発ベンチャーとして設立し、ニュース系大手メディア向けのレコメンドサービスを提供している会社です。そんな会社が、今回の製品を開発しようとしているとはあまり想像がつきませんが、実は程氏自身が個人的にやりたいと思っていたことを実現しようとしているのだとか。

程涛氏(以下程)今回このような製品プロジェクトを起ち上げた動機としては、これまでレコメンド技術を手がけてきて、それを自分の子供たち(3人いる)にも何かできないか、という気持ちがいちばん強かったですね。レコメンド技術は、何かのデバイスを介さなければ提供できませんが、子供たちには、PCやスマホをあまり触らせたくはありません。そこで注目したのが壁に貼るポスターです。ポスターは紙ベースですが、ふだんから自然に触れて学んでいけるので、とてもいいと思います。それと同じような情報環境を壁に大画面で見せることができれば、コンテンツを入れ替えられますし、知育にもぴったりです。

そこでまず考えたのがプロジェクターです。そこでいろいろなプロジェクターを購入して家のあらゆる場所に設置してみたものの、さまざまな問題がありました。まずは給電方法です。最適な場所にコンセントが必ずしもあるわけでなく、ときにはバッテリーを使って駆動してみたりしました。でもバッテリーだと短時間しか持ちませんし、コンセントだと長い延長ケーブルが必要で邪魔だったりします。

また、プロジェクターを常に置いておく場所がなかなかなくて、それも困りました。常に利用できる環境でないと、すぐに使わなくなってしまうからです。これらの課題を解決するものはないかと考え、ひらめいたのが引掛けシーリングです。引掛けシーリングは、照明を取り付けるための標準規格で、どの家庭にも各部屋に1つは備え付けられています。しかも規格として耐荷重が5kgまで大丈夫になっています。また、電気は引掛けシーリングから提供されるので、常に設置した状態で利用できます。これらの条件から、シーリングライトIoTとして考えたのが今回のプロジェクトなのです。

シーリングライトとして利用するにあたり、設置場所は寝室が一番適していると思いました。リビングにはすでにテレビがあり、そこに入り込むのは難しいかなと。子供と一緒に過ごす寝室ですと、寝る前や起きた後に利用できます。そこで、寝室に設置するという設定で、アイデアを固めていきました」


▲引掛けシーリングの1つ。統一規格なので、これに合うタイプなら装着可能だ。

――Kickstarterにも開発シーンとして写真が公開されていましたが、その前段階というものがあったんですね。

「はい。試作機第1号となったのが、市販されているワイヤレステレビを引掛けシーリングに吊り下げるというものです。このワイヤレステレビは軽くて取っ手がついているで、シーリングレールを設置してフックを使って吊り下げるのに最適だったんです。ベッドの上に設置するので、落下したら大変です。そのあたりは細心の注意をはらいました。リモコンで操作できるので、ベッドに寝ながら操作できるのがとてもよかったのですが、画面が15インチと小さいので寝ながら見るには少々厳しかったです」

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▲市販のワイヤレステレビを吊り下げることから、今回の企画はスタートした。


▲これが、実際に自宅の寝室に吊り下げた時の写真。シーリングレールを使用して吊り下げている。

――市販のテレビを吊り下げるという発想がすごいですね。

「試作機第2号は、もう少し大画面をと24インチのディスプレイにしました。取っ手がないのでVESAのネジ穴を利用して吊り下げるように設置しました。しかし、これでもまだ画面が小さいという印象でした。そこで試作機第3号で、プロジェクターが登場します。しかし、壁には投影せずリアプロジェクション方式で裏側から投影するための板を吊り下げて下から見るようにしました。板は透明なアクリルを使用し、トレーシングペーパーを貼っただけで、あとはそれをワイヤーフックで吊り下げました。これは私の中で傑作だと思っています」

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▲試作機第2号は、24インチのディスプレイを吊り下げてみた。VESAのネジ穴を利用して吊り下げたとのこと。


▲15インチよりは大きくなったが、ディスプレイを消すと黒い板になり圧迫感があるとのこと。

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▲アクリル板にトレーシングペーパーを貼り、バックから投影したリアプロジェクション方式。吊り下げはワイヤーフックを使用し、フックの位置を調整して見やすい角度にしたとのこと。


▲実際に装着したところ。リアプロのように背面から投影し、見やすくしかも映像を消しても黒い板にならない。

――これはこれで面白いですよね。ただ、かなり圧迫感がありそうです。

「そうですね。住宅の天井高はだいたい2m50cmが標準ですので、ベッドの高さを考慮するとかなり圧迫感がありました。そこでできたのが試作機第4号です。今回のプロジェクトに近いイメージとなる、引掛けシーリングに設置したプロジェクターを壁に投影するタイプになります。しばらく自宅で使ってみて、写真を見せたりYouTubeを見せたりしたら、子供たちがすごく喜んでくれました。これを商品化しようと会社に提案して、商品化が決定したのが今回のプロジェクトになります」


▲試作機第4号は、壁にプロジェクターを向けて投影するタイプに。これが今の製品の原型となる。

――Kickstarterに掲載されている写真の前に3段階、自宅で試されていたわけですね。

「そうですね。当初、商品化は考えておらず、純粋に家で子供たちと楽しみたいだけでした。試作機第3号は思ったより良くできたのですが、吊り下げを考慮していない短焦点プロジェクターだったため、取り付けが不安定でした」

どんな部屋にも対応できるよう柔軟な仕様

――現在開発中の製品の概要はどのような感じなのですか?

「現在の試作段階では、直径41cm、高さが25cmでDLP方式のRGB LED光源を使用したプロジェクターを内蔵しています。解像度はWXGA(1280×800ドット)で、OSはAndroidを採用し、AirPlayやMiracastなどでミラーリングもできるようになります。スピーカーも内蔵しており、投影する壁に向かって音を出すことで、あたかも壁から音が聞こえるかのような仕組みにしようとしています。全方位タイプで音を出そうと思ったのですが、映像の方向から音が聞こえないと違和感があったため、そのような仕様にしています。また、Bluetoothを内蔵しているので、スマホから音だけをこのスピーカーから出すということもできます。

投影する映像の明るさは700ルーメンなのですが、これも寝室で見ることを考慮しました。明るすぎずかつ暗すぎない、このくらいの明るさがちょうどよかったですね。シーリングライトはLEDを採用しており、ライトの色は昼白色と昼光色、電球色の3色を切り替えられます。ふつうの家庭にあるシーリングライトはもっと薄いので、現状25cmある高さを12~13cm程度に抑える予定です


▲現在の試作品。これだけ見るとサイズ感がわかりづらいが、直径は41cm。高さは25cm。高さは半分くらいにまで抑える予定とのこと。

――プロジェクターの仕様で気になるのが、映像補正機能なのですがどこまでできるのでしょう。

「プロジェクターは斜め下方向を向いていますが、設置する際に角度調整できるようにします。また、台形補正はもちろん上下左右の位置を30度ずつずらすこともできます。引掛けシーリングの位置と投影する壁の関係は部屋によってさまざまだと思うので、ある程度柔軟にできるようにします」


――おお、それを聞いて安心しました。必ずしも部屋に広い壁があるわけではないと思うので。

「あと、お問い合わせで"天井には投影できないのか?"という質問を受けたのですが、天井に投影した場合、上向きに寝て見ることになるので、あまり自然ではありません。むしろ見づらいと思いました。壁に大画面で投影すれば、座っても見られますし、横になっても見られます。寝ながらゲームするとかよくありますが、習慣化するとは思えないんですよね」

――見づらかったりすると習慣化しないですよね。

「今回のコンセプトの1つとして挙げているのが、"使い続ける製品になる"ということです。そのために、コンテンツサービスを充実させることも重視しています。子供をもつ家庭向けのレコメンドとして、日々楽しみながら子供の世界観を広げるようなコンテンツを提供していきたいです。

たとえば、動いている太陽系の映像を投影することで、親が子供にいろいろと教えられるようにしたり、学習用ポスターのようなひらがな表だったり、あるいは子供の好奇心を掻き立てる世界の不思議のような百科事典や、昔話の絵本の読み聞かせなどですね。

あとは、朝起きたときに天気予報の他にイベント情報や子育てに役立つ情報も用意しました。そういったコンテンツサービスもキチンと力を入れていこうと思っています。先日小児科オンラインとの提携が決まりました。購入した方は発送から3ヵ月無料で利用できる予定で、スマホと本製品を利用して小児科医とリアルタイムに相談したり、子供の医療に関する記事を閲覧したりということができます」


▲子供向けのコンテンツは、かなり充実しそうだ。


▲10月30日に発表された、小児科オンラインとの提携。コンテンツも提供される。


実はpopIn Aladdinは大人向けの製品でもあった

――AirPlayやMiracastなどに対応しているということは、スマホのコンテンツをそのまま映して楽しむことも可能ということですよね。

「そうですね。YouTubeの動画も見られますし、ゲームもタイムラグが気にならないタイプならプレイできます」

――それって、親子で利用するという用途以外にも十分使えるということですよね。

「OSにAndroidを採用しているので、子供向けだけでなく大人向けのコンテンツも投影して楽しんでいただけると思います。ただ、自由にアプリをインストールできる仕様にする予定ではないので、著作権のあるコンテンツを表示するためには、あらかじめアプリをインストールしなければなりません。実はまだはっきりは言えないのですが動画コンテンツサービスなどと提携できないか画策しています。うまくいくかどうかはわからないですが、ぜひ実現させたいですね」

――プロジェクトのタイトルが「子どもを持つ家庭向け」となっているので、この話を聞いたら今まで以上のユーザーがわんさか来ると思います。

「実はお問い合わせの中でも比較的多いのが、大人向けのコンテンツに関してなんです。Androidなので、自由にインストールを許可すれば解決するのですが、そうすると、(タップやスワイプで操作することを前提にした)スマホではないので操作性が悪く、逆に商品の印象が悪くなるのではないかと思っています。なので、Bluetoothリモコンで操作できるコンテンツだけ採用するようにしようとも考えています」

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▲現在もよりよい製品にしようと精力的に動き回っているという程氏。

Kickstarterのタイトルだけ見ると、筆者は子供がいるので、この製品の魅力というのは伝わってくるが、子供がいない人にとっては関係ない製品という印象を持たれがち。しかし、スマホの画面をミラーリングして投影することが可能だと言うことだけでもわかれば、それだけで十分に「シーリングライト付きプロジェクター」という製品として世に広まることでしょう。

さまざまな活用法を妄想してしまった

発売が2018年の7月予定ということで、まだいろいろと試行錯誤している段階であり、仕様はまだ確定していないが、先述のお話で触れた以外にも、
  • 搭載するスピーカーはステレオで、音質にもこだわっている
  • 音声認識対応のマイクを備え、声でいろいろと操作できる
  • プロジェクターでランプの映像を投影することで、間接ライトの役割もできる
  • スクリーンの必要がないよう、壁紙の色に合わせた色調整をできるようにする
などといった仕様を予定しています。現在はまだシーリングライトとして考えるとちょっと厚みがあるのですが、空間的な余裕はあるそうなので、もう少しスタイリッシュなデザインになって発売される予定だとか。

とにかく、小さい子供のいる家庭には、子供向けコンテンツが充実しているので、寝室に設置することでこれまでと違った子供とのふれあいが生まれることでしょう。大画面でいろいろと学べるコンテンツを利用すれば、子供にも親にもプラスになることは間違いありません。小児科オンラインとの提携で子育てに悩んでいる人たちにもありがたいことでしょう。


▲投影する場所はある程度調整可能なので、棚や柱を避けて投影することもできる。700ルーメンは意外と明るく見やすい。

そして、寝室に限らず書斎などに設置して個人的に楽しむのにもオススメ。発売までまだ半年以上あるので、それまでに大人向けのコンテンツも充実すれば、さらに需要は高まるでしょう。プロジェクターを常設するには、テーブルの上だと邪魔だし、棚に置いても前に座ったら影が映り込んでしまってダメだし、天井は穴を開けたりして設置するのも大変で、なかなか難しいもの。それが、どこの家庭にもある引掛けシーリングを利用するというアイデアは、引掛けシーリング=照明用器具という固定観念を打ち破ったイノベーションであり、画期的な製品といえます。

700ルーメンは意外と明るいので、室内が明るい場所でも視認性は高いです。なので、たとえば病院の待合室で映像を流しているとか、店頭の一角で広告を流すといった活用もできるかもしれません。引掛けシーリングがある場所に設置できるので、工事の必要もありません。発売前からいろんな活用法を想像して夢が膨らみます。

しかも、単純に700ルーメンのプロジェクターを購入するだけでも6万円以上するのに、LEDシーリングライトも付いて、販売予定価格は4万9800円とかなりの破格。さらにKickstarterでいまバックしたら2万円オトクな2万9800円で手に入ります(数量限定)。これは、いま投資しなくていつするのでしょう。程氏はすでに量産に目を向けていますので、「popIn Aladdin」をオトクに手に入れるならいますぐKickstarterへ直行しましょう。
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