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中国のレアアース等原材料3品目に関する輸出税が廃止されます

本件の概要

本日中国は、レアアース、タングステン、モリブデンに賦課している輸出税を廃止します。
中国によるレアアース、タングステン、モリブデンに対する輸出規制措置については、WTO紛争案件として、我が国が米国及びEUとともに提訴していましたが、昨年8月にWTO上級委員会は、中国の輸出規制措置はWTO協定に違反する旨の報告書を公表し、中国の輸出規制措置の違反が確定しています。
中国はWTOの勧告に従って、輸出数量制限については既に2015年1月1日をもって撤廃していましたが、輸出税についてもWTO勧告に従い、本日から撤廃するものです。
我が国としては引き続き、輸出規制の運用の状況を注視し、必要に応じてWTO協定に整合的な運用を求めて働きかけを行っていくこととしています。

1.経緯

中国は1999年以降、重要戦略的資源であるレアアース、タングステン、モリブデンにつき順次輸出数量制限を導入するとともに、2006年以降輸出税を賦課しています。中国は、2006年以降輸出割当数量を年々削減し、特に、2010年下半期の輸出割当を大幅に削減したことなどを機にレアアース価格が高騰し、市場に混乱をもたらしました。

こうした事態を受け、我が国は、米国及びEUとともに、2012年3月、中国による輸出数量制限、輸出税の賦課等の輸出規制は、WTO協定に違反するとして、WTO協議要請を行い、同年6月にパネル設置要請を行いました。

その後、WTOパネルは、2014年3月、報告書を公表し、中国の輸出規制(輸出数量制限、輸出税、貿易権の制限)について、GATT(関税及び貿易に関する一般協定)第11条1項(輸出数量制限の禁止)及び中国のWTO加盟議定書第11条3項(輸出税の禁止)等に違反するとの我が国の主張を全面的に認める判断を示し、同年8月に公表されたWTO上級委員会もパネルの判断を支持しました。パネル報告書及び上級委員会報告書は同月のWTO紛争解決機関会合において採択され、中国の輸出規制措置がWTO協定に違反することが確定しました。

(参考1)平成26年8月7日ニュースリリース
「中国のレアアース等原材料3品目に関する輸出規制がWTO協定違反と確定しました」
http://www.meti.go.jp/press/2014/08/20140808001/20140808001.html

(参考2) パネル報告書及び上級委員会報告書における主な認定内容
パネル報告書及び上級委員会報告書は、日本の主張を全面的に認め、中国にWTO協定に従って措置を是正するよう勧告しました。
 

  • 中国が賦課している輸出税は中国のWTO加盟議定書11条3項に抵触するところ、当該措置を、「環境の保護に関する措置」についてGATT上の義務の例外を規定するGATT20条(b)の援用により正当化することはできない。 
  • 中国が講じている輸出数量割当はGAT11条1項に抵触するところ、GATT20条(g)に規定する「有限天然資源の保全に関する措置」とはいえず、同規定の援用により正当化することはできない。
  • 中国が輸出数量割当の前提として要求している最低資本金及び輸出実績要求といった貿易権の制限は、中国加盟議定書5条1項及び作業部会報告書83条、84条に規定される貿易権の制限の禁止に抵触する。当該貿易権の制限は、GATT20条(g)項に規定される有限天然資源の保全に関する措置とはいえず、正当化されない。


WTOの勧告に従い、中国は、2015年1月からレアアース、タングステン、モリブデンに関する輸出数量制限及び貿易権の制限を廃止しました。
輸出税は引き続き維持されていましたが、4月23日に公表された中国財政部の通知により、本年5月1日から、輸出税も廃止されることとなりました。

(参考3) 中国財政部ウェブサイト掲載内容(2015年4月23日公表)
<タイトル> 国務院関税税則委員会による一部品目の輸出関税調整に関する通知
<本文>
海関総署:国務院の承認を経て、一部品目の輸出関税を調整する。具体的には以下のとおり。

  1. 鉄の顆粒粉末、レアアース、タングステン、モリブデン等品目の輸出関税を撤廃する。
  2. アルミ加工材等品目の輸出に対し、ゼロ税率を実施する。
  3. 以上の調整は2015年5月1日より実施する。

2.意義

本件は、重要資源であるレアアース、タングステン、モリブデンに関して、中長期にわたり市場を歪曲してきた輸出数量制限、輸出税賦課がWTO協定に違反することが確定した重要なケースです。資源国が、天然資源の保全や環境保護といった建前で国際ルールに反する天然資源の輸出規制を行い、実際には国内産業を優遇することは、WTO協定違反となることを明確にした点でも意義を有します。

中国がWTO勧告に従い、輸出規制措置を是正したことは、昨今、一部の資源国において、国際ルールに反する形で天然資源の輸出規制等を導入するなど保護主義的行動が広がる中でも、特に意義が大きいと考えられます。

我が国としては引き続き、輸出規制の運用の状況を注視し、必要に応じてWTO協定に整合的な運用を求めて働きかけを行っていくこととしています。

担当

  • WTO紛争処理全般について
    通商政策局通商機構部 (併)国際経済紛争対策室
  • レアアース等に関する対策について
    製造産業局希有金属室
    資源エネルギー庁鉱物資源課
  • 日中経済関係について
    通商政策局北東アジア課

公表日

平成27年5月1日(金)

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