5Gは、パートナーと一緒に
新ビジネスを作る種になる

 NTTドコモは第5世代移動通信方式(5G)の2020年での商用サービス開始を目指し、幅広いパートナーと新たな利用シーン創出に向けた取り組みを拡大するため「ドコモ5Gオープンパートナープログラム(以下、本プログラム)」を提供する。

 その第1回ワークショップが、2018年2月21日に都内で開かれた。会場にはパートナーとして参加を表明している389社が集まり、NTTドコモがプログラムに臨む姿勢の発表やパートナーからのソリューション紹介などが行われた。
 NTTドコモは第5世代移動通信方式(5G)の2020年での商用サービス開始を目指し、幅広いパートナーと新たな利用シーン創出に向けた取り組みを拡大するため「ドコモ5Gオープンパートナープログラム(以下、本プログラム)」を提供する。
 その第1回ワークショップが、2018年2月21日に都内で開かれた。会場にはパートナーとして参加を表明している389社が集まり、NTTドコモがプログラムに臨む姿勢の発表やパートナーからのソリューション紹介などが行われた。

連携を深めて1+1を3にも4にもしていく

 今回提供されるプログラムでは、パートナーとなる企業や団体に対して5Gの技術や仕様に関する情報を提供し、パートナー間で意見交換を行う5Gパートナーワークショップの場などを提供する。また、NTTドコモが常設する5G技術検証環境においては、5Gの実験基地局装置や実験移動局に接続する映像伝送機器などがパートナーに対して無償で提供される。

 これによって、パートナーとなる企業・団体は、2020年に先立ちいち早く5Gを用いたサービス構築や検証が可能となる。さらに、高速・大容量、低遅延、多数の端末との接続といった5Gの特長を活かした自社のサービスの品質向上や、新たなソリューションの創出に活用できる。

 NTTドコモは本プログラムを通じて、何をパートナーに提供しようとしているのか。NTTドコモ 5G推進室室長の中村武宏氏、法人ビジネス戦略部長 荻野衛氏に伺った。

――本プログラムの狙いについて聞かせてください。

中村氏 このプログラムではパートナーの皆様との連携を深めて、新たなビジネスにつながりそうな種をまいていく活動を続けていきたいと思っています。商用開始に向け、パートナーの皆様にとっても、5Gを活用したビジネスに向けてのステップアップが重要になってきますから、そのために何をやるべきかについても、プログラムの中で議論をし、どうすればビジネス化に近づけるのかを考えていきます。

NTTドコモ 5G推進室 室長の中村氏

荻野氏 NTTドコモは本プログラムによって、パートナーの皆様との連携をますます深めていき、お互いが協力し合う協創ビジネスを作り上げていきたいと考えています。これまで、NTTドコモの携帯電話やその他の通信機器を販売いただいたりご利用いただいてきたお客様が今後はパートナーとなり、BtoBの先にあるBtoBtoXのビジネスを作り上げていくのです。こうした取り組みによって、Win-Win-Winの関係を築き上げていきます。

 5Gというテクノロジーにより、4K/8Kといった超高解像度動画のストリーミングを快適に楽しめるようになるなどさまざまな可能性があります。それを実現するためには、通信技術の進化だけでなく、画像処理やディスプレイの表示技術が必要です。5Gが持つ高速・大容量、低遅延、多数の端末との接続といった特徴を活かしたアプリケーションを、パートナーの皆様と一緒になって作っていきたい。それができて初めて、さらにその先にいるお客様を満足させるものが提供できるのです。

――NTTドコモと組むことによって、パートナーにはどのようなメリットがあるのですか?

荻野氏 新しいビジネスや市場が開拓できると思います。これまでのビジネスに付加価値が加わり、売り上げの増加に寄与できればいいなと考えています。従来のNTTドコモとパートナー様との関係は、商材を卸す側と仕入れる側、もしくは使う側という一方通行の関係でした。それが今後は、NTTドコモとパートナーの皆様が対等にビジネスを進めていく双方向の関係になります。私どもはむしろ、黒子に徹しようと思っています。

NTTドコモ法人ビジネス戦略部長の荻野氏

中村氏 私たちは5Gのテクノロジーを研究し、プロダクトやサービスを一緒に開発する立場としてパートナーの皆様とタッグを組みます。そのための技術的なサポートとして、5Gの技術に関する情報提供を積極的に行い、常設の5G接続環境を東京都内で提供します。

 こういった施設をより多くのパートナーに利用していただくことで、多くの知見が得られるはずです。それらの知見を共有することで、パートナーの間でも意見交換の場や協力関係が生まれるきっかけになればと。

――5Gのテクノロジーを生かしたビジネスやサービスには、どのようなものが考えられますか。

荻野氏 多視点映像によるリアルタイムなスポーツ中継などが可能になります。一方で5Gのテクノロジーは、社会課題の解決という側面でもいろいろと役に立つと思っています。例えば、地方創生や働き方改革といった課題です。

 現状、都心と地方都市ではいろいろと情報格差があります。そこに5Gのテクノロジーを導入することで、高速で大容量のデータ伝送や、低遅延でタイムラグのない情報のやり取りが可能になります。自宅と拠点を結んでテレビ会議を行う場合でも、5Gの回線を使えばスムーズにやりとりができるようになり、地方の課題も解消されるでしょう。こういったことが、いずれは働き方改革にもつながっていくのではないでしょうか。

5Gがもたらす可能性について語る両氏

――今回のプログラムに参加されたパートナーの皆様へのメッセージをお願いします。

荻野氏 今回のプログラムに参加していただいたパートナーの皆様には、5Gに関する最新の情報を続々と出していきたいと思っています。また、実際に5Gが持つメリットを体感できる場も提供する予定です。そこで感じたことを私どもに伝えていただくことによって、新たな発見があるかもしれません。そのようにして、お互いに切磋琢磨しながら進めていければと思っています。さらに、パートナーの皆様同士を結びつける場もご提供したいと思っています。

中村氏 おおっと驚かれるような新しい取り組みの種を出しつつ、一方では現実味のある活動をしていきたいですね。それらのことに一つ一つ丁寧に取り組めば、具体的な形ができてくるでしょう。そのために、今私どもが思っていることをパートナーの皆様にきちんと説明する。お互いのベクトルをしっかりと合わせておけば、これからどんな分野のパートナーが参加しても、一緒に連携を進めていくことができると考えています。

 1+1が3にも4にもなる。このプログラムでそういった結果が出せれば、日本の総合力を国外にも誇れるようになるのではないでしょうか。

満員となったキックオフ

満員となった会場の様子

 本プログラムのワークショップは、年2回の開催が予定されている。2018年2月21日に開催された第1回ワークショップでは、基調講演やパートナー講演、特別講演などが行われ、会場は満員の盛況ぶりを示した。

 主催者挨拶では、取締役常務執行役員 R&Dイノベーション本部長の中村寛氏がワークショップ開催の主旨について、「先行する事例を発表することで、5Gとはどういうものか、皆様の期待や疑問について応え、一緒に価値を創造していきたい」と語った。

 次に、法人ビジネス本部 ソリューションサービス部長 三ケ尻哲也氏が、本プログラムの役割について述べた。目的はより多くのパートナーと利用シーンを生み出すことであるとし、2020年に向けてさまざまな利用シーンやビジネスを創出していく。その結果、新しい市場を創出したり、社会課題の解決につなげていきたいと語った。また、東京・四谷のNTTドコモビルの中に5Gの設備を常設し、2018年4月から基地局や移動局を無償で借りられることが発表された。

(左)主催者挨拶を述べるNTTドコモ取締役常務執行役員の中村氏 。(中)本プログラムについて語る三ケ尻氏 。(右)5G最新技術動向とパートナーと切り拓く未来について語る5G推進室 室長の中村氏

 基調講演では5G推進室 室長の中村氏が、5Gに関する最新の技術情報などを紹介した。NTTドコモが進めている5Gの仕様のほか、各国の標準化の動向などについて触れた。また、サービスのイメージを3カテゴリーのユースケースに分け、その中でも映像系のユースケースが最も重要になるのではないかと語った。

 続けて本プログラムに参加しているパートナー企業の事例紹介として、2社の講演が行われた。まず2017年10月、NTTドコモとともにIoTを活用する建設現場向けクラウドサービス「LANDLOG」を立ち上げたコマツは、建設機械を5Gで遠隔操作する取り組みについて紹介した。2017年12月から今年1月にかけて行った実験で、NTTドコモの山王パークタワー会議室からコマツの平塚工場にある建設機械を、5Gで遠隔操作した様子を語った。

 ソニーの事例では、すでに人の眼の認識能力を超えたソニーのイメージセンシング技術をIoTで活用する提案と、8Kによる高画質映像をモビリティで活用する提案について紹介した。いずれも従来の通信技術では実現不可能であり、先端技術で新しい社会を作っていくインフラとしての5Gへの期待について語った。

 最後に特別講演として、東京大学大学院工学系研究科教授の森川博之氏が登壇した。森川氏はこれからの流れはすべてがデジタルになると述べ、スポーツ分野や劇場などのエンターテインメント分野でデジタルが先行する事例を紹介。一方で、現場からデータが上がってくるところまでがIoT、上がってきたデータを集めるとビッグデータになり、ビッグデータを分析するのがAIになるといった一連のループを通じて「デジタルの目的は生産性の向上でもある」と語った。

 講演終了後の意見交換会会場には、先行する企業による5G活用事例の展示があった。その中の1つである凸版印刷と東京大学・暦本研究室との共同研究「IoA仮想テレポーテーション」は、リアルタイムでデータ転送ができる5Gの特性を活用したテレプレゼンスを実現。テレワークから遠隔医療の活用までを想定し、社会課題の解決への貢献も目指している。

デジタルが社会・経済・産業・地方を変えると語る森川氏

凸版印刷によるIoA仮想テレポーテーションの展示。左から、同社 情報コミュニケーション事業本部 ICTソリューションセンター ICT戦略部 事業ICT企画チーム 課長の名塚一郎氏、情報コミュニケーション事業本部 ICTソリューションセンター ICT戦略部 部長の山浦秀忠氏

 

 凸版印刷 情報コミュニケーション事業本部 ICTソリューションセンター ICT戦略部 部長の山浦秀忠氏は「さまざまな分野のパートナーと一緒に開発を進めていくことで、これまで想定していなかった使い方などのアイデアが出てくることにも期待している」と、本プログラムへの期待を寄せた。

5Gのテスト環境がそろった今、パートナーにとっては大きなチャンス

 次にドコモ5Gオープンパートナープログラムに関わる現場担当者のインタビューをお届けしよう。答えてくれたのはNTTドコモ R&D戦略部 研究開発推進担当課長 小西宗生氏、NTTドコモ 法人ビジネス戦略部 サービス企画担当課長 宮本薫氏、NTTドコモ・ベンチャーズ Senior Director 西本暁洋氏の3名である。

左から小西氏、宮本氏、西本氏

――まずはそれぞれの立場から、今回のドコモ5Gオープンパートナープログラムへの関わり方と目標について説明いただけますか。

小西氏 R&Dでは2017年5月からすでに「5Gトライアルサイト」を開始し、パートナーとトライアルを行ってきました。今後は技術やサービス面だけでなく、ビジネス面での検証も積極的に行いたいと考えています。すでに完成したテクノロジーやインフラを提供するのではなく、皆さんと一緒に5Gというプラットフォームの未来を創造していければと思います。

宮本氏 パートナーの皆様が5Gに関する新しい取り組みを始めようと思った際には、まずは私たちに声をかけていただきたい。検討の初期段階の情報提供から実用化に向けた実証時の技術面でのサポートまで含めて、お客様のよりリアルなニーズに基づいた利用シーンや、その先にあるビジネスニーズの創出まで一緒に検討を進めていきたいと考えています。

西本氏 NTTドコモ・ベンチャーズではこれまでも新サービス創出のため5G関連のワークショップやアイデアソンをR&Dと連携して開催してきましたが、今後はより幅広い分野からアイディアを創出するお手伝いをしたいですね。とくに私たちはベンチャー企業との接点がありますので、パートナーの皆様とベンチャー企業との接点をうまく作っていくことで、新しい協創も生まれるのではないかと考えています。

――具体的にどのようなパートナーに参画してもらい、どういった支援をしたいと思っていますか。

小西氏 これまではエンターテインメント系のトライアルが多かったのですが、法人向けビジネスに力を入れていくため、BtoB、そしてその先のBtoBtoXにつながるパートナーへの広がりを期待しています。また、ドコモグループは社会課題の解決にも力を入れています。そういったソリューションにつながるような、自治体・団体の方々にも積極的にご参加いただきたいと思います。

宮本氏 プログラムに参加する動機を考えると、自ら5Gを活用したサービスを提供したいパートナーから、自社デバイスを5Gに対応させたいパートナー、ユーザーの立場から5Gの動向を追いかけたいパートナーなど、さまざまなパターンが考えられます。そうした多彩な目的を持ったパートナーに参加いただき、パートナーの皆様の声を聴き、プログラム運営にフィードバックすることで、業種や業態にとらわれない横串の支援ができると思っています。

西本氏 すでに5Gを活用して実現していきたいイメージを持っているパートナーには、実証実験実施に向けたサポートや、その先のビジネス化に向けた検討などをより実践的に支援していきます。そして、まだ実現したい具体的なイメージはないが、5Gに関心があるパートナーには、5Gに関する情報提供や利用シーンなどを提示し、次のステップに進むサポートをしていくことを、ドコモ5Gオープンパートナープログラムを通して進められればと考えています。

――これまで行ってきた協業プログラムとくらべて、今回はどういった点が違うのでしょうか。

小西氏 すでにサービス仕様が決まっているネットワークやデバイスを使うのではなく、こういう仕様や機能がほしいという要望に応えながらトライアルを進めていけるのが今回のプログラムの特徴です。我々としてはそういった声をできるだけ早く集めていきたい。技術面においても双方向に意見が交わせるところが、これまでの進め方とは大きく違います。

宮本氏 これまでの5Gトライアルは特定のパートナーとだけ限定的に実施していましたが、今回NTTドコモが5Gオープンラボを開設し、5Gの通信環境に加えて最先端の高精細映像伝送システム、8K相当のVR伝送システムまで提供することで、幅広いパートナーが簡易に実証実験できる環境がそろいました。これにより5G通信環境で事前にコンテンツや対応デバイスの通信試験をすることで、サービス提供時のボトルネックがどこにあるのかなどを検証いただけるものと考えています。

――今後、とくに重点をおきたい点は?

小西氏 まずは2020年の5G導入に向け、東京オリンピック・パラリンピックのタイミングでどういったサービスを提供できるのかを検討することが重点項目の一つとして捉えています。そのタイミングで5Gの特徴や技術的優位性をきちんと出すために、これからも日々取り組んでいきます。

宮本氏 5Gでは、4Gまでのデバイスをコアとした利用シーンではなく、さまざまな社会インフラのバックボーンを支えていく利用シーンを創造していきたいです。高速・大容量・低遅延が可能にする想定事例をたくさん作り、通信事業者の枠にとらわれることなく、社会課題の解決に関わるパートナーとの連携をこれまで以上に深めたいと思っています。

西本氏 5Gによって、今後はVRやARの世界が具現化してくるはずです。現実空間と仮想空間がリアルタイムに重なり合い、そこに新しいビジネスが生まれる。そういう世界がどのように広がっていくのかについて、ドコモ5Gオープンパートナープログラムの中で皆様と議論し、具体化していきたいと考えています。

お問い合わせ

ドコモ・イノベーションビレッジ事務局
E-mail:village-application@nttdocomo-v.com