クローズアップ現代

毎週月曜から木曜 総合 午後10:00

Menu
「TWICEになりたい」 日本のアイドルの卵たちが、韓国デビューを選ぶ理由

「TWICEになりたい」 日本のアイドルの卵たちが、韓国デビューを選ぶ理由

2018年2月14日

日本の若者がスターを目指して韓国へ。そんな新しい潮流が生まれている。去年(2017年)の紅白歌合戦に出場した韓国のガールズグループTWICE。メンバー9人のうち3人が日本人だ。いま、日本国内のダンススクールには、韓国でのデビューを夢見る中高生が殺到。日夜、厳しい練習に励んでいる。韓国の音楽シーンの何が若者をひきつけるのか。また、なぜ韓国からデビューを目指すのか。

仕掛け人が語る TWICE成功の秘密

日本の中高生から絶大な支持を集めるTWICE。日本のテレビ出演が数える程しかない彼女たちが、広く知られるようになったきっかけは、インターネットの動画サイトだ。ダンスの振り付けで、泣き顔を示す「TTポーズ」が大流行。中高生がTWICEのまねをして踊り、動画にアップさせて拡散。先月(1月)始まった初の日本ツアーのチケットは、即日完売するほどの人気だ。なぜ日本の中高生がここまで夢中になるのか。TWICEの生みの親、JYP エンターテイメント代表兼プロデューサーのパク・ジニョンさんは語る。

「ファンがスターの結びつきを感じる一番のきっかけは、親近感です。特に3人の日本人メンバーとは、同じ言語、文化を共有できるわけですから、親近感はさらに増すはずです」。

TWICEは、9人のうち3人が日本、1人が台湾出身という“多国籍グループ”。実際、ライブに来ていた若者は、「K-POPっていうと、韓国だけのイメージがあるけど、日本人も入っているから、すごく親近感がわく」、「日本メンバーがいたら、韓国メンバーに日本語教えて、しゃべってくれるところとかが、めっちゃかわいい」と、距離の近さを強調していた。

TWICEに限らず、韓国では様々な国や地域の出身者のいるグループが増えている。「GOT7」(中国、タイなど)、「SEVENTEEN」(アメリカ、中国など)。日本からも「CROSSGENE」のタクヤさん、「D.HOLIC」のレナさん、「NCT127」のユウタさんなど、10人以上が活躍中だ。

ジャスティン・ビーバーを超えた! 韓国アイドル勝利の方程式

K-POPが若者に支持されるもう1つの秘密が、積極的なSNS戦略だ。全米チャートで上位にランクインし、世界中に熱狂的なファンをもつBTS(防弾少年団)。一糸乱れぬ激しいダンスが特徴の7人組ヒップホップグループで、K-POPグループの中でも最も先進的なSNS戦略をとっている。思わずシェアしたくなるようなメンバーのプライベートなつぶやきを連発。ツイッターのリツイート数でギネス記録を打ち立てた。去年(2017年)5月には、アメリカ最大の音楽チャート、ビルボード・ミュージックアワードで、「トップ・ソーシャル・アーティスト賞」を受賞。6年連続トップだったジャスティン・ビーバーを抑えての快挙で、大きな話題を呼んだ。アメリカをはじめ、南米や中東など、SNS上で反応がいい国には、たとえ遠くてもすぐさま足を運ぶ。SNSのファンとじかに交流を深めることで、世界中で熱狂的な支持を得ることに成功した。


アーティストのSNS上の人気を調査しランキングする、ビルボードの「ソーシャル50」には、BTSのほか、TWICEなど韓国グループが6つランクイン(2018年1月末時点)。TWICEも世界を視野に、今月(2月)、アニメとの本格的なコラボを試たミュージックビデオをリリースした。新曲発売の1か月前にフルバーションを無料で先行公開し、すでに世界中で2,000万回以上再生されている(2018年1月末時点)。韓国アイドルやK-POPに詳しいジャーナリストの古家正亨さんは、韓国の音楽業界がSNSで成功を収めた背景をこう分析する。

「スマホの普及によって、言語の壁というのはなくなったと感じます。昔、FMラジオでかかる洋楽を必死に聴いて、意味も分からずCDを買に行くっているのが1つの流行だった。同じような感覚で、今、K-POPを言葉の壁を関係なく、聴いているような感じがします。しかも、『見る音楽』という価値観で聴いている人が多い。聴く音楽の時代だと、K-POPは、もしかするとここまで成功しなかったかもしれません」

日本の若者たちも続々 韓国デビューは世界への近道? 

多国籍化とSNS戦略によって、国を越えて熱狂的なファンを獲得していく韓国のグループ。彼らが世界を目指す背景には、「韓国国内の音楽市場が日本の20分の1と非常に小さいという切実な事情もある」(古家さん)という。一方、韓国でデビューすれば、一気に世界を目指せるチャンスにもつながる。そこで、世界を夢見て、日本から韓国をめざす若者も多い。

「すごいクオリティーの高さ。いろんな国でも認められる音楽で(世界に)出て行ったりしてるから、そこはすごい尊敬するし、憧れています」と話すのは、高校2年生の福井菜々子さん。先月(1月)、韓国の芸能事務所と正式契約。デビューを目指して練習生としての生活を始めた。小学生のころは、日本のアイドルグループに入ることを夢見ていた菜々子さん。だが、中学生の時に、母親と行ったK-POPのライブに衝撃を受け、韓国デビューを目指すようになった。


一足先にデビューを果たしたのは、高田健太さん(23)。2年前に単身韓国へ渡り、3か月前、期間限定で結成された6人組グループJBJのメンバーになった。「『休みはいりません』と言いました。マネージャーに。これがやりたくて来ているし、あきらめなければ、絶対に幸せだと思いますし、気持ちひとつです」と話す。ファンを増やそうと、アジア各国を回ってライブを行っている。


大阪にあるK-POPスタジオでは生徒数が急増し、400人を超えた。卒業生のミナさんがTWICEに選ばれたことがきっかけだ。多くは10代の女性。ライブで2時間近く歌い踊り続けられる基礎体力をつけるため、体を徹底的に作り上げている。韓国の芸能事務所から、スカウトがたびたびやってくるという。

しかし、デビューまでの道のりは厳しい。仮にデビューできても、韓国には100組以上のアイドルがいるといわれる。テレビで活躍できるのは一握りだ。

秋元康さんのノウハウも K-POPのさらなる進化

韓国の芸能界は、スターのさらなる国際展開を進めるため、海外のプロデュース戦略も貪欲に吸収している。例えば、公開オーディション番組。視聴者投票でデビューするアイドルをふるいにかけていく仕組みで、アメリカのリアリティーショーのノウハウを取り入れいている。さらに昨年11月には、オーディション番組のひとつが秋元康さんに声を掛け「PRODUCE48」という国際コラボ企画を立ちあげた。これまでは事務所で育て上げた「完成型アイドル」が主流だったが、AKB48のように、ファンと共に育てる「育成型アイドル」を目指しているという。日本のノウハウも取り入れながら、独自の発展を遂げようとしている。

一方、日本の音楽業界。ビルボードの「ソーシャル50」に日本のアイドルやアーティストの名前はなく、やや寂しい印象を受ける。しかし、古家さんによると、韓国の音楽関係者は口を揃えて、「日本の多様性が本当に羨ましい」と話すという。

「ロック、ジャズ、ダンス、クラシック、アニメにサントラ、そしてアイドルと、それぞれの市場がしっかりと確立されていて、そしてリスナーも多い。韓国の音楽業界はアイドル市場が大多数を占めてしまっていて、少し偏り過ぎている。そこからは日本から学ぶべきことが多いし、日本ももしかすると、そういった日本の音楽市場の良さを生かして、世界へアプローチする、そういった世界への可能性があると思う」

世界へ進出する新しい道を開いた韓国の音楽業界。そこに挑戦する日本の若者たちの姿からは、国境にこだわらない柔軟さとたくましさも感じる。これからどんなアーティストが世界に飛び出してくるのか、目が離せない。

この記事は2018年1月30日に放送した「韓国から世界デビュー!? スター☆新時代」を元に制作しています。

もっと読む