「生きるレシピ」を探す旅 ―志津野雷―

旅から帰ってくる場所を育てる「逗子海岸映画祭」

  • 文・動画 志津野雷、写真 志津野雷、佐野竜也
  • 2018年5月22日

  

 今回は住んでいる場所から外に出る“旅の話”ではなく、旅で得たものを生活にどう落とし込むかということを書きたい。

 自分にとって、時が経つのは早いと毎年感じるのが、ゴールデンウィークが近づいてきたころ。

 連載に先立つインタビューでも話したけど、旅を通して出会った人や文化を呼び寄せるための拠点が欲しくなった。

 刻々と進む時代の中で、自分らしく生きていける場所を探すだけではなく、出会ってきた仲間が持っている体験や知恵を持ち寄り、共有する場所を自分たちで作り上げたかったのだ。

  

  

それが、逗子海岸映画祭

【動画】「第9回逗子海岸映画祭」2018

 4月27日から5月6日まで開催した今年も、世代や国籍をこえた仲間が逗子に集まってきてくれた。

  

  

  

 設営時からドラマは生まれていく。様々な天気の中で、1年ぶりに会う友人や初めて参加してくれる人たちと、一緒に作業をする。「海岸に村を作る!」という共通のイメージをゴールとして時間を共有する中で、どんどん意識や価値観の距離が縮まっていく。

  

  

 映画祭という“非日常的な場”を作り上げている。その様をファインダー越しに見ていると、まるで自分自身が映画の世界にいるような錯覚に陥ることがある。

  

 いざ本番、家族のようないいチームが出来上がり、それぞれの持ち場で、毎日空の色から感じる温度まで違う環境を楽しみながら、お客さんを迎え入れる。

 いろんな言葉が飛び交い、いろんな笑顔が生まれる。

  

  

  

  

  

  

  

  

 そこにあるのは争いではなく、愛とこれからの可能性。今年で9回目となる映画祭を無事に終えた。

 いよいよ来年は、立ち上げた当時に目標とした10年目。

  

 古(いにしえ)から続く伝統的なお祭りを継続していく大切さも感じている。と同時に、自分たちの生きている時代から、新しいものを生み出し、ボーダーレスにみんなが集う場作りをしていきたい。それを振り返ると歴史となるような、新しい文化として定着していけるようなものになることが望みだ。

  

 これを書いている今日は、もうすでに海岸には何も残っていない。いつもの逗子海岸。

  

 出現してはあっという間に消えていく。その余韻に浸りながら、夢でも見ていた気分になる。

  

 大人たちが本気で遊んでいるこんな姿を見せることが、次世代の子供達にはいい教育となるのかもしれない。また旅に出て新しい仲間に声をかけに行こう。

  

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PROFILE

志津野 雷(しづの・らい)

写真家、シネマ・キャラバン主宰、「逗子海岸映画祭」発起人。自然の中に身を置くことをこよなく愛し、写真を通して本質を探り、人とコミュニケーションをはかる旅を続ける。ANA機内誌『翼の王国』や、ロンハーマンなどの広告撮影を中心に活動。2016年初の写真集「ON THE WATER」を発売。

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