東京オリンピックをきっかけにサマータイムを導入するという話がにわかに浮上しています。サマータイムは酷暑対策に効果があるのでしょうか。導入した場合には混乱はないのでしょうか。

写真:アフロ

 このところ酷暑ともいえる状況が続いており、2020年に開催される東京オリンピックを無事に乗り切れるのか不安の声が上がっています。こうした中、東京五輪・パラリンピック大会組織委員会の森喜朗会長は安倍首相と会談し、暑さ対策としてサマータイムの導入を要請。これを受けて首相は自民党に検討を指示しました。来年に試験導入を行い、オリンピックが開催される2020年に本格導入するという案などが議論されているようです。

 サマータイムは、日照時間が長い夏季に限定して標準時よりも時間を進める制度で、欧米では広く導入されています。朝の涼しい時間帯を有効活用できるほか、外が明るい時間帯に仕事を終えることができるので、個人の消費も活発になるといったメリットがあります。

 しかしながら日本でサマータイムを導入するためには解決すべき問題が山積しています。サマータイムの導入で始業時間を早めても、慢性的な残業問題を解決できなければ、その分だけ長時間労働になってしまう可能性があることは否定できません。韓国では1988年のソウル五輪をきっかけに導入したものの、労働時間が長くなるケースが続出し、結局はサマータイムを中止しています。

 情報システムについても懸念があります。情報システムがサマータイムに完全に対応していないと、システム障害が発生するリスクが出てきます。オリンピックという大きなイベントを前に社会の基礎となるITインフラに負担をかけることについては一部から疑問の声が出ているようです。

 さらにいえば日本の場合、欧米に比べて緯度が低く、日照時間がそれほど長くならないため、効果は限定的との見方もあります。大阪府の松井一郎知事は、オリンピックのためだけに実施するのは反対であるとの意見を表明しました。 サマータイムの議論は、戦後、何度も浮上しては消えていったという過去があります。導入にはかなりの混乱が予想されますから、もし実施するのであれば、相当な準備が必要と考えられます。五輪開催まで2年しかないことを考えると、実現は困難かもしれません。

(The Capital Tribune Japan)