佐藤小児科

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論文が出ました

アトピー性皮膚炎におけるステロイド外用剤依存

 DrugHealthcPatientSaf.2014Oct18;6:131-138.にTopicalsteroidaddictioninatopicdermatitis(アトピー性皮膚炎におけるステロイド外用剤依存)という表題で、私たち8名の共著論文が掲載されました。

 下記サイトから無料でダウンロードできます。
 http://www.dovepress.com/articles.php?article_id=18757#

深谷元継(鶴舞公園クリニック),佐藤健二(阪南中央病院皮膚科),佐藤美津子(佐藤小児科),木俣肇(木俣肇クリニック),藤澤重樹(藤澤皮膚科),堂園晴彦(堂園メディカルハウス),吉澤潤(吉澤皮膚科),水口聡子(こうのす共生病院皮膚科)

アメリカ皮膚科学会(AAD)の新ガイドライン[2]には3つの問題があります。そのうちの1番目が、以下の文章です。

1プロアクティブ療法には隠された意味がある

 ガイドラインには「近年、同じ個所に頻回に繰り返し再燃する患者に対して、プロアクティブ療法による維持が提唱されている。・・・これは、そのような個所に週一、二回規則的にステロイドの外用を続けるという方法で、再燃の頻度を抑え、保湿剤単独に移行してから最初の再燃までの時間を長くするというものである」[2]。と書かれています。

 いわゆるプロアクティブ療法が紹介されています。これらのプロアクティブ療法の研究[12]-[14]においては、患者の疾患は研究参加前に強いステロイドによってコントロールされました。うまくコントロールされた患者は週1-2回ステロイドを外用するグループ(プロアクティブ療法)と、悪化した時のみステロイドを外用するグループ(アクティブ療法)の二群に分けられ、前者の方が再燃までの期間が長く経済的負担も少なかったです[15]。

 しかしながら、プロアクティブ療法の研究には二つの隠された意味があります。(1)研究の対象となった患者は全員、最初に強いステロイド外用剤で良好にコントロールできた患者です。したがって最初の段階でコントロール不良と判定された患者が存在し、そのような患者は研究に含まれていません。(2)プロアクティブ療法に従えば、患者は理論的に永久にステロイド外用剤から離脱できません。湿疹患者は、とくに乳児や小児では、しばしば自然治癒しますが、そのような自然治癒傾向はプロアクティブ療法では想定されていません。

 上記の研究においてコントロール不良であった患者の率は10%-20%であり、古江らの研究11におけるコントロール不良群の率に非常に近いです。著者はプロアクティブ療法がステロイド外用剤の休薬期間を設ける投薬方だという意味において、TSAやRBSSの患者を減らす可能性があることは認めます。しかしこの方法は最初にコントロール不良と判定されたTSAやRBSSを既に発症してしまっている患者たちの役に立つものではないという点は認識されなければなりません。」

3番目が以下の文章です。

3治療不足は必ずしも不適切とは言い切れない

 ガイドラインには「ステロイド外用剤の慎重な使用は確かに重要だが、ステロイド忌避の結果としての治療不足の認識もまた重要である。・・・ステロイド外用剤のリスクは、適切な用法と強さの選択を間違えず、不使用の期間をはさむようにすれば、出現は低い。したがって(実際に奏効するよりも)より強いステロイド外用剤が患者によっては考慮される。それはリスクよりも有益性のほうが高いからだ」[2]。と書かれています。

 ステロイド恐怖による治療不足がここでは議論されています。このようなステロイド恐怖の患者は実際に存在します。患者の中にはステロイド外用剤を使用さえしなければ湿疹は治ると信じる者もいます。実際、アトピー性皮膚炎と言うのは自然治癒傾向をもった疾患であり、ステロイド外用剤はこの自然治癒過程を阻害しているかもしれないので、間違っているとは言い切れません[17]。

 さらに、患者がステロイド外用剤依存に陥っている場合には、「治療不足」抜きには患者の回復は有り得ません。数か月から数年と言った短期の外来診療における経過観察においては、ステロイド外用剤によって「治療不足」の患者を治療することは効果的にみえます。そういう理由から、過去の多くの研究がステロイド外用剤は有用だと結論付けてきました。

 しかしながら、さらに長期的な観点からもステロイド外用剤は有益なのでしょうか?数十年前に皮膚科医がステロイド外用剤を処方するようになってから、成人性アトピー性皮膚炎患者は増えているではありませんか?なぜアトピー性皮膚炎患者だけがステロイド外用剤の使用に不満を訴えたり不安を感じたりするのでしょうか?

 皮膚科医がこれらの疑問に明確に答えることが出来ない以上、アトピー性皮膚炎患者には、医学的に十分な情報提供を受けた後に、彼ら自身で治療法を選択し決定する合理的な権利があります。ステロイド外用剤は、患者が依存に陥っていない場合に、少なくとも短期的には有用ということです。したがって「治療不足」への過剰な警告は患者の治療法選択の権利を侵すものであり、そのような患者は疾患の治療に真剣に取り組んでいないのではないかという社会の誤解を招くものです。」

皆様にお願いです。上記論文を可能な限り各方面へ多く紹介・リンクしてくださるようにお願いいたします。

ビデオ

「アトピー性皮膚炎におけるステロイド外用剤依存」

ITSANがvideo abstract作ってくれました。

https://www.youtube.com/watch?v=O82WQR1yo0I

英語の字幕が付いています。