現行民法168条1項前段は定期金債権(基本権)の消滅時効期間について、第1回の弁済期から20年間としています。定期金債権は、例えば年金債権のように、支分権を発生させながら長期間にわたり存続するという性質を持つことに鑑みて、原則的な時効期間よりも長期の期間とすることが適当と考えられています。なお支分権について何回か弁済がなされた場合にはその後に未払いが発生した支払期から(支分権を行使できる時から)20年間で時効となると解されています。なお同項後段は、最後の弁済期から10年間行使しないときも消滅時効となる旨を定めていますが、最後の弁済期以後は、基本権の役割は終わり、各支分権の消滅時効だけを考慮すればよいことから無意味な規定であるとの指摘もあります。
要綱仮案の原案では、現行民法168条1項前段の規律について起算点を「第1回の弁済期から」との文言から「…各債権を行使することができる時から」に改めて、第1回の弁済期に弁済がなされた後の規律についても明確にすることが提案されています((1)ア)。また、無意味な規定ともされる現行民法168条1項後段については削除が提案されてます(2)。
その上で、要綱仮案の原案では、定期金債権についても主観的起算点を導入し、各債権(各支分権)を行使することができることを知った時から10年という消滅時効期間を重ねて設けることが提案されています。この10年という期間は、現行民法168条1項前段が、定期金債権の時効期間を債権の原則的な時効期間の2倍としていることを考慮したと説明されています
【部会資料69A】
参照。
要綱仮案の原案において、定期金債権の消滅時効期間について主観的起算点から10年という長期を許容していることに鑑みれば、後述の「生命・身体の侵害による損害賠償請求権の消滅時効」についても主観的起算点から10年とすることも可能ではないかとも思われる。