言文一致歌詞の『教科適用 幼年唱歌』全十冊

納所弁次郎,田村虎蔵 共編(十字屋,1900年6月〜1902年9月)






『教科適用 幼年唱歌』 初編上巻表紙


それまでの文部省の音楽教科書は子供の普段使う言葉からかけ離れていた.これではなじめないので,子供の日常語で歌詞を作るべきだという主張のもとに,新に『教科対応 幼年唱歌』は尋常小学(現在の小学1年から4年に対応)が作られた. 言文一致唱歌の嚆矢のもの.これに引き続いて高等小学校生(現在の小学校5年から中学2年生に対応)対象の『教科統合 少年唱歌』全8冊も明治36年4月から明治38年10月にかけて発行された.こちらの方は,流石に従来通りの文語が使われている.

作曲の内訳は納所(のうしょ)が31曲,田村が32曲,外国曲が14曲で残りはゲストの日本人作曲家による.編者の納所は東京音楽学校の2期生で,バリトンで鳴らし,学習院の教師となった.田村は納所の東京音楽学校での後輩で,東京高等師範学校付属小学校の訓導となる.音楽教育界のリーダーであった.口語の歌詞は主として高等師範学校付属小学校訓導の石原和三郎と田辺友三郎によって創られている.



納所弁次郎(1865 - 1936. 5)


田宮虎蔵(1873. 10 - 1943. 11)

石原和三郎(1865 - 1922. 1)

年配の人に懐かしい曲として,「金太郎」,「花咲爺」,「兎と亀」,「毬」(現在の「子狐」)などがある.

引用した曲は * 印をつけた.


  緒言

明治照代の奎運(けいうん)愈(いよいよ)開くるにつれて、音楽の道も次第に進歩発達
を来たし、学校唱歌に関する著書編纂は、今や実に汗牛充棟も啻(ただ)
ならず、盛んなりと謂ふ可し。然り而して其多くは、所謂名家大家の
ものせる歌曲なるが故に、概ね典麗高尚にして、美は美、善は善な
りと雖(いえども)、而も教育的教授上、小学児童に適当なる唱歌教材の撰択
に困難を感ずるは、普(あまねく)く吾人の実地経験する所なり。故に其題目、
事実は他教科との関係を保ち難く、唱歌者たる児童は、遂に其歌
詞の意味を会得する能はざるもの、比々(しばしば)皆然りとす。これ畢竟斯
道の一大欠点にして、夙(つと)に教育者識者の遺憾とする所なり。編者
多年茲(これ)に顧(かえりみ)る所あり、常に小学児童を教授し、孜々として研究の
労を重ねし結果、今や以上の欠点を補ひ、以て教育的教授上最も
適切なる唱歌教材を供給せんが為め、浅学菲才をも顧みず、敢て
これが編纂に従事せんとす。幸に同好諸士の賛同を得て、斯道教
育上の一助ともならば、編者の光栄これに過ざるなり。
 本書を編纂するに当りて、編者の特に意を用ひたる一般の条
 項は凡そ左の如し。
 一本書は、尋常小学科第一学年より、高等小学科第四学年に至
  る迄、各学年各学期に配当し、以て教科用書に充てんとす。
 一歌曲は、専ら児童の心情に訴へ、程度に鑑み、歌詞は平易にし
  て理解し易く、曲節は快活にして流暢、以て美徳感情の養成
  に資するものを選択せり。殊に尋常科の材料は、主として活
  溌又は愉悦なる歌曲を選びて、教師の直ちに取りて遊戯と
  連絡を保たしむるに便せり。
 一題目は尋常科にありては、専ら修身、読書科に関係を有する
  事実、又は四季の風物に因みて之を取り、高等科にありては、
  更に地理、歴史、理科等、其他の教科に関係を有する事実を選
  び、以て各教科の統一を完(まった)からしめんことに勗(つと)めたり。
 一歌詞は、多年小学教育に従事し、実地の経験を有せる識者の
  手に成るもの多く、漸く進みては、所謂古今の名家の作を交
  へたり。且本邦古来の童謡にして、教育的価値あるものは、
  程度に応じてこれを挿入し、以て国民感情の養成に資せん
  とせり。
 一曲節は、概ね編者多年の研究の結果に出で、或は多年小学教
  育に経験ある音楽家諸氏の作に係り、能く其音程、音域の如
  何を審査し、児童発達の程度を探竅(たんきゅう)し、以て順次易より難に
  進めて配当せり。尚ほ泰西諸家の作曲にして、本邦児童に適
  応したるものをも交へて、汎(ひろ)く音楽上の趣味を添へんこと
  を勗めたり。
 此他詳細なる編者の用意及び、音楽上併に教授上の注意に至
 りては、各編毎にこれを記述せん。

東宮殿下の御慶事を言寿ぎ奉りつつ
                編者識す

 明治三十三年五月十日


  目次

初編上巻 (1900年6月18日発行; 訂正5版 1903年7月18日)
第一  雲雀
第二  金太郎
第三  桜
第四  めぐれ
第五  開いた開いた
第六  桃太郎
第七  友達
第八  蛍

初編中巻 (1900年9月2日発行; 訂正5版 1903年7月18日)
第一  猿蟹
第二  運動会
第三  お月様
第四  雁
第五  浦島太郎
第六  兵隊
第七  大寒小寒
第八  雪だるま

初編下巻 (1901年6月23日発行; 訂正3版 1903年7月18日)
第一  お正月
第二  花咲爺
第三  たこ
第四  梅
第五  お雛様
第六  親と子
第七  舌切雀
第八  進め

二編上巻 (1901年6月23日発行; 訂正3版 1903年7月18日)
第一  春の野
第二  蝶々
第三  大江山
第四  池に金魚
第五  兎と亀
第六  鷲
第七  蜻蛉
第八  松山鏡

二編中巻 (1901年8月26日発行; 訂正再版 1903年7月18日)
第一  日の丸
第二  神武天皇
第三  虎
第四  蜜蜂
第五  海
第六  稲
第七  日本武尊
第八  牛と馬

二編下巻 (1901年11月9日発行; 訂正3版 1903年7月18日)
第一  羽子
第二  金鵄勲章
第三  毬
第四  加藤清正
第五  雪投
第六  烏
第七  笛と太鼓
第八  牛若丸

三編上巻 (1902年3月4日発行; 訂正再版 1903年7月18日)
第一  春の山
第二  和気清麿
第三  燕
第四  潮干狩
第五  北条時宗
第六  蝙蝠
第七  平重盛
第八  汽車
第九  新田義貞
第十  海水浴

三編下巻 (1902年7月1日発行; 訂正再版 1903年7月18日)
第一  日本三景
第二  皇恩
第三  大和男児
第四  森蘭丸
第五  菅公
第六  年の暮
第七  養生
第八  護良親王
第九  鴬
第十  野遊び

四編上巻 (1902年9月15日発行; 訂正再版 1903年7月18日)
第一  海の世界
第二  近江聖人
第三  山路の旅
第四  夕立
第五  蜂
第六  汽船
第七  菊
第八  行軍
第九  徳川光国
第十  源平の戦

四編下巻 (1902年9月30日発行; 訂正再版 1903年7月18日)
第一  二宮尊徳
第二  鶏
第三  大砲
第四  国旗
第五  五港
第六  凱旋
第七  水鳥
第八  雪景色
第九  卒業の歌
第十  明治の御代



  凡例より表情記号について

 本書では幼児に分かりやすいように、音楽表情記号に工夫がある。すなわち

    「ツ」は「強く」の意味で「f」に対応
    「ヨ」は「弱く」の意味で「p」に対応
    「チ」は「中等に」の略で「mp」に対応
    「mf」はこれより「やや強く」の意味
    「シ、ツ」は「次第に強く」の意味で「crescendo」に対応
    「シ、ヨ」は「次第に弱く」で「decrescendo」に対応している。


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初編上巻 

(尋常小学第一学年第一学期用)

?@上 第一 雲雀 (石原和三郎 作詞 納所弁次郎 作曲)

  ヒバリハ、アガル、テンマデモ、
   サクラハ、チルヨ、ハルカゼニ、
  チョーチョーハ、マフヨ、ナノハナニ、
   ワレラハ、アソブ、ハルノノニ。



?@上 第二 金太郎 (石原和三郎 作詞 田村虎蔵 作曲)

一 マサカリカツイデ、キンタロー、
  クマニマタガリ、オウマノケイコ、
   ハイ、シイ、ドードー、ハイ、ドードー、
   ハイ、シイ、ドードー、ハイ、ドードー。
二 アシガラヤマノ、ヤマオクデ、
  ケダモノアツメテ、スマウノケイコ、
   ハッケ、ヨイヨイ、ノ コッタ、
   ハッケ、ヨイヨイ、ノ コッタ。

歌唱は
金太郎(唱歌)
http://www.youtube.com/watch?v=boVC_qOQ1LQ



?@上 第三 桜 (石原和三郎 作詞 外国曲)

一 ノベニ、ヤマニ、サクラノハナガ、
  サイタ、サイタ、キレイニサイタ、
  ハナノ、シタデ、オホゼイアソブ、
  ウタヲ、ウタヒ、オニゴトシタリ。
二 ヒラリ、ヒラリ、キレイナハナガ、
  チルヨ、チルヨ、サクラノハナガ、
  カタノ、ウヘニ、アタマノウヘニ、
  トマル、ハナハ、カヘリノミヤゲ。



?@上 第四 めぐれ (田辺友三郎 作詞 田村虎蔵 作曲)

一 メグレヨメグレ、クルクルト、
  クルマニナラヒ、イザメグレ、
  クルリヤクルリ、クルクルト、
   アシナミソロヘ、イザメグレ。
二 マハレヤマハレ、クルクルト、
  コマノゴトクニ、イザマハレ、
  クルリヤクルリ、クルクルト、
   テヲヒキアヒテ、イザマハレ。



?@上 第五 開いた開いた (我国童謡)

一 ヒライタ、ヒライタ、
  ナンノハナガ、ヒライタ、
  レンゲノハナガ、ヒライタ、
  ヒライタト、オモタラ、
  ミルマニ、ツボンダ。
二 ツボンダ、ツボンダ、
  ナンノハナガ、ツボンダ、
  レンゲノハナガ、ツボンダ、
  ツボンダト、オモタラ、
  ミルマニ、ヒライタ。

歌唱は
ひらいたひらいた わらべ歌集
http://www.youtube.com/watch?v=gwXg4XQpls4



?@上 第六 桃太郎 (田辺友三郎 作詞 納所弁次郎 作曲)

一 モモカラウマレ、タモモタロー、
    キハヤサシクテ、チカラモチ、
   オニガシマヲバ、ウタントテ、
     イサンデイヘヲ、デカケタリ。
二 ニッポンイチノ、キビダンゴ、
    ナサケニツキクル、イヌトサル、
   キジモモラウテ、オトモスル、
     イソゲモノドモ、オクルナヨ。
三 ハゲシイイクサニ、ダイショーリ、
    オニガシマヲバ、セメフセテ、
   トツタタカラハ、ナニナニゾ、
     キンギンサンゴ、アヤニシキ。
四 クルマニツンダ、タカラモノ、
    イヌガヒキダス、エンヤラヤ、
   サルガアトオス、エンヤラヤ、
    キジガツナヒク、エンヤラヤ。



?@上 第七 友達 (田辺友三郎 作詞 田村虎蔵 作曲)

一 キミモキタマヘ、ワレモユク、
  ユクモカヘルモ、ツレダチテ、
  ヨミカキソロバン、アソビヲモ、
  トモニスルコソ、タノシケレ。
二 イツモナカヨク、ツキアヒテ、
  ウソヲツカヌガ、トモノミチ、
  ウレシイトキモ、キミヲヨビ、
  カナシイトキモ、キミヲヨブ。



?@上 第八 蛍 (田辺友三郎 作詞  納所弁次郎 作曲)

一 ホタルコイ、ホタルコイ、
  ヒルハクサバニ、カクレテモ、
   ヨルハデテコイ、
     ヒトモシテ。
二 ホタルコイ、ホタルコイ、
  コチラノミヅハ、アマイゾ、
   タヲモカハヲモ、
     トビコエテ。


初編中巻 

(尋常小学第一学年第二学期用)

?@中 第一 猿蟹 (石原和三郎 作詞 納所弁次郎 作曲)

一 はやくめをだせ、 かきのたね、
   ださぬと、はさみで、ちょんぎるぞ、
  はやく、ならぬか、かきのみよ、
   ならぬと、はさみで、ちょんぎるぞ。
二 はちや、たまごや、たちうすが、
   かにを、たすけて、かたきうち、
  たまごのぢらいくゎ、はちのやり、
   とうとうさるめは、つぶされた。



?@中 第二 運動会 (田辺友三郎 作詞 田村虎蔵 作曲)

一 ちひさしとても、にっぽんだんじ、
  まけてはならじ、かけくらべ、
  あひずとともに、かけだして、
  われ一ばんの、てがらせん。
二 ならしておいた、このあしだめし、
  てなみをみよや、はれのばの、
  むかうにならぶ、はたじるし、
  われ一ばんに、とってこん。



?@中 第三 お月様 (石原和三郎 作詞 納所弁次郎 作曲)

一 おつきさま、えらいな、
    おひさまの、きょーだいで、
  みかづきに、なったり、
    まんまるに、なったり、
  はる、なつ、あき、ふゆ、
    にっぽんじゅーを、てらす。
二 おつきさま、わかいな、
    いつもとしを、とらないで、
  くしのやぅに、なったり、
    かがみのやぅに、なったり、
  はる、なつ、あき、ふゆ、
    にっぽんじゅーを、てらす。



?@中 第四 雁 (田辺友三郎 作詞 西洋曲)

一 さきのがんも、まけずにすゝめ、
  あとのがんも、おくるなよ、
  はねをばならべ、れつをばただし、
  なかよくわたれ、おほぞらを。
ニ くものうへも、おそれずとべよ、
  きりのなかも、わけてゆけ、
  やまよりたかく、うみをもこえて、
  いさみてわたれ、おほぞらを。



?@中 第五 浦島太郎 (石原和三郎 作詞 田村虎蔵 作曲)

一 むかしむかし、うらしまは、
  こどものなぶる、かめをみて、
  あはれとおもひ、かひとりて、
  ふかきふちへぞ、はなちける。
二 あるひおほきな、かめがでて、
  「まうしまうし、うらしまさん、
  りゅーぐーといふ、よいところ、
  そこへあんない、いたしませう。」
三 うらしまたろーは、かめにのり、
  なみのうへやら、うみのそこ、
  たひ、しび、ひらめ、かつお、さば、
  むらがるなかを、わけてゆく。
四 みればおどろく、からもんや、
  さんごのはしら、しゃこのやね、
  しんじゅやるりで、かざりたて、
  よるもかがやく、おくごてん。
五 おとひめさまに、したがひて、
  うらしまたろーは、三ねんを、
  りゅーぐーじょーで、くらすうち、
  わがやこひしく、なりにけり。
六 かへりてみれば、いへもなし、
  これはふしぎと、たまてばこ、
  ひらけばしろき、けむがたち、
  しらがのぢぢと、なりにけり。



?@中 第六 兵隊 (石原和三郎 作詞 西洋曲)

一 ほまれのたかい、にほんのへいし、
   よくきをつけて、ごーれいまもり、
    すゝむをしって、
     にげるをしらぬ。
ニ われらもいまに、へいしとなるの、
   よくきをつけて、ごーれいまもり、
    いくさにでれば、
     しんでもにげぬ。

[注] 18世紀のドイツ・シュレジア地方の民謡.[桜井:私信 2013. 1. 24]

歌唱は
Gestern abend ging ich aus
http://www.youtube.com/watch?v=4zqtdTM3N8M



?@中 第七 大寒小寒 (石原和三郎 作詞 田村虎蔵 作曲)

一 おほさむ、こさむ、ふゆのかぜ、
  あれあれからすが、四つ五つ、
  カーカーカーと、ないてゆく、
  あれはねぐらに、かへるのか。
二 おほさむ、こさむ、ふゆのかぜ、
  あれあれきのはが、六つ七つ、
  ヒラヒラヒラと、まうてゆく、
  あれはどこまで、とんでゆく。



?@中 第八 雪だるま (田辺友三郎 作詞 納所弁次郎 作曲)

一 ゆきはちらちら、ふってきた、
  ふったらたまれ、にはさきに、
  たまったゆきを、つみあげて、
  いざやつくらん、ゆきだるま。
二 おほきいまなこ、くろぐろと、
  むすんだくちは、一もんじ、
  ものはよくみよ、ものいふな、
  われらのにはの、ゆきだるま。



初編下巻 

(尋常小学第一学年第三学期用)

?@下 第一 お正月 (田辺友三郎 作詞 納所弁次郎 作曲)

一 もんにたてたる、まつたけの、
  うへにひらひら、ひのみはた、
  たこをあげるに、ほどよくて、
  はごにさはらぬ、かぜがふく。
二 とそやおぞーに、おいはひの、
  あとはともだち、うちよりて、
  かるた、すごろく、ふくびきや、
  たれもうれしい、あそびごと。



?@下 第二 花咲爺 (石原和三郎 作詞 田村虎蔵 作曲)

一 うらのはたけで、ぽちがなく
  しょーじきぢいさん、ほったれば、
  おほばん、こばんが、ザウザクザクザク。
二 いぢわるぢいさん、ぽちかりて、
  うらのはたけを、ほったれば、
  かわらや、かひがら、ガラガラガラガラ。
三 しょーじきぢいさん、うすほって、
  それで、もちを、ついたれば、
  またぞろこばんが、ザクザクザクザク。
四 いじわるぢいさん、うすかりて、
  それでもちを、ついたれば、
  またぞろかひがら、ガラガラガラガラ。
五 しょーじきぢいさん、はひまけば、
  はなはさいた、かれえだに、
  ほーびはたくさん、おくらに一ぱい。
六 いじわるぢいさん、はひまけば、
  とのさまのめに、それがいり、
  とうとうろーやに、つながれました。

歌唱は
花咲爺(唱歌) - 井上裕子
http://www.youtube.com/watch?v=vEfle0ovnc8&feature;=related



?@下 第三 たこ (石原和三郎 作詞 納所弁次郎 作曲)

一 かぜよふけふけ、たこたこあがれ、
  あがれたこたこ、てんまでとどけ、
  いとがいるなら、いくらもやるぞ。
二 そらにみえるは、からすかとびか
  あれにまけずに、わがたこあがれ、
  ちからがなければ、かせいしてやるぞ。



?@下 第四 梅 (石原和三郎 作詞 未詳)

一 さいたよさいた、うめのはなさいた、
  さむさにもまけず、ゆきにもおぢず、
  きのふは一つ、けさまた二つ、
  三つ四つ五つ、うめのはなさいた。
二 かをるよかをる、うめのはなかをる、
  てんじんさまの、おすきなうめが、
  あちらののべや、こちらのにはに、
  うぐひすさそふ、うめのはなかをる。



?@下 第五 お雛様 (田辺友三郎 作詞  田村虎蔵 作曲)

一 うへのだんには、だいりさま、
  五にんばやしは、なかのだん、
  わたしのすきな、にんぎょーも、
  一しょにかざりて、ひなまつり。
二 ひなのおどーぐ、あいらしい、
  おぜんおわんも、とりそろへ、
  わたしのすきな、ともだちを、
  一しょにあつめて、まゝあそび。



?@下 第六 親と子 (田辺友三郎 作詞 武田林風 作曲)

一 むかうのやまに、ひかげうつり、
  わがこのやがて、かへらんとき、
  わがやをさして、くるはたれぞ、
  うれしやあれは、わがおもひご。
二 まなびのわざの、ときはすぎて、
  こひしきいへに、いまぞかへる、
  わがやのもんに、たつはたれぞ、
  うれしやあれは、わがはゝうへ。



?@下 第七 舌切雀 (田辺友三郎 作詞 納所弁次郎 作曲)

一 のりをなめたる、 むくいとて、
  したをきられし、 すずめをば、
  いとしというて、 じひふかき、
  ぢゞがたづねて、 でかけたり。
二 したきりすずめ、 やどはどこ、
  たづねあてたる、 たけのもん、
  むかへにでたる、 すずめのこ、
  おやもよろこび、 ちそー(馳走)する。
三 さゝ(酒)のきげんも、 おもしろく、
  すずめをどりも、 おもしろく、
  みやげのつづら、 かるけれど、
  たからぞおほく、 でたりける。
四 それをうらやみ、 よくふかき、
  ばゞがたづねて、 ちそーうけ、
  もらいしつづら、 おもけれど、
  むしこそおほく、 でたりけれ。



?@下 第八 進め (石原和三郎 作詞 田村虎蔵 作曲)

一 あしなみそろへて、へいしにまけず、
  すゝめやすゝめ、一二三四。
二 れつをそろへて、わきめもふらず、
  すゝめやすゝめ、一二三四。
三 しせいをただして、ごーれいまもり、
  すゝめやすゝめ、一二三四。
四 をとこも、をなごも、おとらずまけず、
  すゝめやすゝめ、一二三四。




二編上巻 

(尋常小学第二学年第一学期用)

?A上 第一 春の野 (田辺友三郎 作詞 田村虎蔵 作曲)

一 ましろに、みえし、 ゆき、きえて、
  のは、おもしろく、 なりにけり。
   草も、はえ、 木も、めばり、
   ひばりなき、 ちょーも、とぶ。
  ふくとも、みえぬ、 春かぜを、
  なびく、やなぎに、 しるばかり。
ニ いつかと、まちし、 花さきて、
  日も、あたゝかに、 なりにけり、
   とも、さそひ、 かご、さげて、
   すみれ、つみ、 れんげ、とり、
  あそぶも、たのし、 春の、のに、
  ながき、ひかげの、 うつるまで。



?A上 第二 蝶々 (石原和三郎 作詞 納所弁次郎 作曲)

一 うめがちるのか、  さくらの花か。
  白いちょーちょが、 ひらひらまふよ。
二 山ぶき、ちるのか、 なたねの花か、
  きいろの、ちょーちょが、ひらひらまふよ。
三 かぜは、そよふく、 そよふく、かぜに、
  花と、ちょーちょが、おにごと、するよ。



?A上 第三 大江山 (石原和三郎 作詞 田村虎蔵 作曲)

一 むかし、たんばの、おほえやま、
  おのどもおほく、こもりゐて、
  みやこにでては、人をくひ、
  かねやたからを、ぬすみゆく。
二 げんじのたいしょー、らいこーは、
  ときのみかどの、みことのり、
  おうけまうして、おにたいじ、
  いきほいよくも、でかけたり。
三 けらいは、なだかき、四天王、
  山ぶしすがたに、みをやつし、
  けはしき山や、ふかき谷、
  みちなきみちを、きりひらき。
四 おほえの山に、きてみれば、
  しゅてんどーじが、かしらにて、
  あをおに、あかをに、あつまって、
  まへようたえの、大さわぎ。
五 かねてよーいの、どくのさけ、
  すゝめておにを、よひつぶし、
  おひのなかより、とりいだす、
  よろひかぶとに、みをかため。
六 おどろきまどふ、おにどもを、
  ひとり、のこさず、きりころし、
  しゅてんどーじの、くびをとり、
  めでたくみやこに、かへりけり。

歌唱は
大江山 (おおえやま・唱歌)
http://www.youtube.com/watch?v=U5FIvjaCMEg



?A上 第四 池に金魚 (田辺友三郎 作詞 西洋曲)

一 にはの、中に、おいけをほりて、
  五つ、七つ、はなしたきんぎょ、
  いったり、きたり、小じまのかげを、
  みえて、かくれ、かくれてみえて、
  おそく、はやく、およいでまはる。
ニ いけの、みづは、きれいにすみて、
  およぎ、あそぶ、われらのきんぎょ、
  はなれつ、あひつ、ひれふり、をふり、」
  ひれと、をとは、てあしのかはり、
  みづを、かきて、ういてはしづむ。



?A上 第五 兎と亀 (石原和三郎 作詞 納所弁次郎 作曲)

一 「もしもし、かめよ、かめさんよ
  せかいのうちに、おまへほど、
  あゆみの、のろい、ものはない、
  どうして、そんなに、のろいのか。」
二 「なんと、おっしゃる、うさぎさん、
  そんなら、おまへと、かけくらべ、
  むかうの小山の、ふもとまで、
  どちらが、さきに、かけつくか。」
三 「どんなに、かめが、いそいでも、
  どうせ、ばんまで、かゝるだろ、
  ここらで、ちょっと一ねむり、」
  グーグーグーグー、グーグーグー。
四 「これはねすぎた、しくじった、」
  ピョンピョンピョンピョン、ピョンピョンピョン、
  「あんまりおそい、うさぎさん、
  さっきのじまんは、どうしたの。」



?A上 第六 鷲 (石原和三郎 作詞 田村虎蔵 作曲)

一 すごいまなこは、千りをにらみ、
  つよいつばさは、万りをかける、
   とりの王。とりの王。
    あの、あらわし、
     あの、あらわし。
二 とがるくちばし、とらをもころし、
  まがるつめでは、くぢらもつかむ、
   とりの王。とりの王。
    あの、あらわし、
     あの、あらわし。



?A上 第七 蜻蛉 (田辺友三郎 作詞 多 梅稚 曲)

一 とんぼ、とんぼ、とべやとんぼ。
   とんぼのすむのを、みわたせば、
   そらひろびろと、はてもなし、
   きれいなはねで、かぜをばきりて、
   ゆくべく方(ほー)を、たしかにきめて、
  とべやとんぼ、どこまでも。
二 とんぼ とんぼ、とまれよとんぼ。
   とんぼのすむのを、みわたせば、
   草あをあをと、花あかし、
   四つのはねを、しづかにやすめ、
   六つの足を、一つにそろへ、
  とまれよとんぼ、花の上。



?A上 第八 松山鏡 (田辺友三郎 作詞 納所弁次郎 作曲)

一 まへの母にも、今のにも、
  われは一つに、つかふるを、
  なにゆゑいまの、はゝうへに、
  かあいがられぬ、われなるぞ。
二 かたみのかがみ、とりいだし、
  むかへばうつる、おもかげは、
  こひしきまへの、はゝうへか、
  ものいはれぬは、なにゆゑぞ。
三 かくれてみしより、うたがひの、
  くもはひとたび、かゝりしも、
  まことの心に、はれわたる、
  まつ山かがみ、子のかがみ。




二編中巻 

(尋常小学第二学年第二学期用)

?A中 第一 日の丸 (石原和三郎 作詞 納所弁次郎 作曲)

一 年のはじめを、家々で、
   かゝげていはふは、なーにぞ。
  おまつりのひや、いはひ日(び)に、
   いつでもたてるは、なーにぞ。
  あさ日をうつした、日の丸よ、
   あさ日をうつした、日の丸よ。
ニ あさ日をうつした、日の丸は、
   わが日本の、はたじるし。
  あさ日をかざす、日本の、
   ひかりをせかいに、かがやかせ。
  あさ日はせかいを、てらすなり、
   あさ日はせかいを、てらすなり。



?A中 第二 神武天皇 (石原和三郎 作詞 田村虎蔵 作曲)

一 せにおはれたる、  あまつ日のかげ、
  ゆはずにとまりし、 こんじきのとび、
  けだかいかな、   おほみすがたの、
  いさましいかな、  おほみいくさの。
二 くにのもとゐを、  さだめられたる、
  やまとのうねびの、 かしはらのみや、
  みとはうごかじ、  天地と共に、
  いさをはかがやく、 月日と共に。



?A中 第三 虎 (石原和三郎 作詞 納所弁次郎 作曲)

一 おほきいけものは、  あのぞーよ、
  はげしいけものは、  あのしゝよ。
   おほきいばかりが、 えらかろか、
   はげしいばかりが、 えらかろか。
ニ おほきいばかりが、  えらからず、
  はげしいばかりが、  えらからず。
   しんでもかはを、  のちのよに、
   のこすはとらよ、  あのとらよ。



?A中 第四 蜜蜂 (田辺友三郎 作詞 田村虎蔵 作曲)

一 東の山ぎは、ほのぼのしらみ、
  よはいまあけたり、みなおきいでよ、
  はねをばふるひて、ブンブンブンブン。
  すつくりゑはこび、しごとをわけて、
  はねをもやすめず、こゝろをくだく、
  あさよりくれまで、ブンブン ブンブン。
  いく千万びき、ちからをあはせ、
  ひとりの王をば、だいじにまもる、
  はちよ、みつばち、ブンブン ブンブン。
二 すごもりくらさん、ときにはあらず、
  花野にみちたり、みなとび出でよ、
  東に西に、ブンブン ブンブン。
  みそらにまひては、こずゑにとまり、
  のはらにとびては、はずゑをわたる、
  花より花に、ブンブン ブンブン。
  わがみの上には、こゝろもとめず、
  ひとりのきみをば、だいじにまもる、
  はちよ、みつばち、ブンブン ブンブン。



?A中 第五 海 (石原和三郎 作詞 西洋曲)

一 あれあれおきべに、しらほが見える、
  しらほを見てゐりゃ、足もとへ、
  をなみに、めなみ、ぴちゃぴちゃよせる、
  あれあれしらほは、もう見えぬ。
二 あれあれなみまに、かもめがうかぶ、
  かもめを見てゐりゃ、みゝちかく、
  いそべの松が、オルガンならす、
  あれあれかもめは、もう見えぬ。



?A中 第六 稲 (田辺友三郎 作詞 田村虎蔵 作曲)

一 人の花見に、いそぐころ、
  なはしろ小田(をだ)に、たねまきし、
   いねは、のびぬ、
   いざや、うゑん、
  さみだれつよく、ふるとても、
  わがみはいたく、ぬるとても。
二 花のさかりに、たねまきて、
  さみだれふるに、うゑつけし、
   いなぼ、たれぬ、
   いざや、からん、
  いねかりうたを、うたひつゝ、
  たのしきけふを、いはひつゝ。



?A中 第七 日本武尊 (田辺友三郎 作詞 納所弁次郎 作曲)

一 むかしをうすの、おーじとて、
  かしこきみこぞ、おはしける、
  おんちゑふかき、その上に、
  おんちからさへ、なみならず。
二 おーじおん年、 十六の、
  をりにくまその、そむきしを、
  みかどのおほせ、かうむりて、
  たひらげんとて、出でたまふ。
三 ぬく手も見せぬ、くゎいけんに、
  くまそたけるを、うちとりて、
  やまとたけるの、みこといふ、
  おん名をえさせ、たまひけり。
四 またも東夷を、 うたんとて、
  するがのくにゝ、ゆきたまひ、
  ぞくのはかりし、やきうちに、
  かへりてぞくを、やいづばら。
五 草なぎはらひし、草なぎの、
  つるぎのひかり、かがやきて、
  とほき東の、  えびすらも、
  ほどなくおそれ、なびきたり。
六 みこのちからに、西東、
  みなしづまりて、そのときの、
  みかどのとくに、なつきたる、
  みいさをあふげ、人々よ。



?A中 第八 牛と馬 (田辺友三郎 作詞 吉田信太 作曲)

一 いただくつのゝ、すがたによらず、
  こゝろはすなほ、きはおちつきて、
   つよきちから、しごとをたすけ、
   おもきくるま、かろげにひく、
  おそきあゆみも、たゆまぬ牛は、
  つひには行かん、千里の道も。
二 いなゝくこゑは、あたりをはらひ、
  大地をけって、かけだすときは、
   雲をおこす、ひづめのもと、
   風にのるか、ちゅーをとぶ、
  アレヨといふまに、すがたも見えず、
  かけゆくうまは、いさまし、はやし。




二編下巻 

(尋常小学第二学年第三学期用)

?A下 第一 羽子 (田辺友三郎 作詞 田村虎蔵 作曲)

一 年のはじめは、  うれしいな、
  はごをついて、  あそぼうよ。
   一二(ひーふー) ふじの山。
  ふじのお山を、  こすまでも、
  たかくはずめよ、 はーごはご。
ニ 松のうちは、   たのしいな、
  はごをついて、  あそぼうよ。
   九十(くーじゅー) つくば山。
  つくばのみねも、 ひくいまで、
  高くはずめよ、  はーごはご。



?A下 第二 金鵄勲章 (石原和三郎 作詞 納所弁次郎 作曲)

一 むかし神武のおんみかど、
   長すねびこを、うたれしに、
  ピカ、ピカ、ピカ、あやしの光は、天皇の、
   お弓のさきに、とまったり。
二 よくよく見れば金いろの、
   とんびよ、とんびよ、その光、
  ピカ、ピカ、ピカ、長いすねびこも、その軍も、
   おそれて足も、すくみたり。
三 今や、めいよの軍人の、
   むねにかがやく、くんしょーの、
  ヒカ、ヒカ、ヒカ、あれこそ、きんしの
   くんしょーよ、あれこそ、
    きんしのくんしょーよ





?A下 第三 毬 (田辺友三郎 作詞 西洋曲)

一 やなぎのこかげの、まりあそびまりあそび。
  木のしたかげに、はずんだときは、
  くるりとまはって、つばくらめ。
二 まりつきあそぶは、おもしろやおもしろや。
  しだれたえだに、はずんだときは、
  これこそ木(こ)のまの、お月さま。
三 まりつく手ぶりも、しなかへてしなかへて。
  ヒフミヨ、イムナヤ、ココノツトーよ。
  トーからつづいて、百までも。

[注] 原曲は "Fuchs, du hast die Gans gestohlen". 日本では戦後の
勝承夫作詞「子ぎつね」(1947年国定音楽教科書)[こぎつね こんこん 
山の中 山の中]が有名[「みんなの歌」研究会:pp. 77 - 90]



?A下 第四 加藤清正 (田辺友三郎 作詞 納所弁次郎 作曲)

一 武勇はならぶ  ものもなく、
  忠義はあつき  ますらをと、
  よばれし加藤  清正は、
  太閤秀吉、   一の臣。
二 其名も高き   しづがたけ、
  七本やりを、  はじめとし、
  多くのいくさに、 うって出(い)で、
  いつもてがらを、 あらはせり。
三 ちょーせんぜめの をりからは、
  十字のやりを、 おっとって、
  北のはてまで、 つきすゝみ、
  てきにも鬼と、 よばれたり。



?A下 第五 雪投 (石原和三郎 作詞 田村虎蔵 作曲)

一 きえずにあれと、  たのしみし、
  には白たへの、   しらゆきは、
  ひるのやすみも、  けさのまゝ。
  いざ、ゆきがっせん、 やれやれやれ。
二 東の大しょー、   たれなるか、
  西の大ショー、   たれなるか、
  しんぱんかんは、  先生よ。
  やくわりきまった、 よしよしよし。
三 てんでによーいの、 ゆきつぶて、
  かためてもつや、  七つ八つ、
  うちつ、うたれつ、 おひまはる、
  どっちもまけるな、 それそれそれ。
四 てあたりしだいに、 かいつかみ、
  めった、やたらに、 なげあうて、
  にはに花ちる、   ゆきふぶき、
  をりからすずが、  りんりんりん。



?A下 第六 烏 (田辺友三郎 作詞 奥 好義 作曲)

一 あさ日にいそぐ、 あさがらす、
  学校さして、   いそぐのか。
  さきにたつのが、 先生で、
  あとから行くのは、生徒らか。
二 ゆふ日にかへる、 ゆふがらす、
  しごとをすまして、かへるのか。
  さきにたつのが、 おや鳥で、
  あとから行くのは、子がらすか。



?A下 第七 笛と太鼓 (石原和三郎 作詞 納所弁次郎 作曲 )

一 けふは、うれしい、 日よーび、
  みんなで、なかよく あそぼうよ、
  おたいこ、たゝいて、 ふえふいて、
  ピーピードンドン、 ピードンドン。
二 けふは、めでたい、 おいはひ日、
  みんなで、なかよく あそぼうよ、
  おたいこ、たゝいて、 ふえふいて、
  ピーピードンドン、 ピードンドン。
三 けふは、めでたい、 おまつり日、
  みんで、なかよく、 あそぼうよ、
  おたいこ、たゝいて、 ふえふいて、
  ピーピードンドン、 ピードンドン。
四 けふは、わたしの、 たんじょー日、
  みんで、なかよく 、あそぼうよ、
  おたいこ、たゝいて、 ふえふいて、
  ピーピードンドン、 ピードンドン。



?A下 第八 牛若丸 (石原和三郎 作詞 田村虎蔵 作曲)

一 父は、をはりの  つゆときえ、
  母は平家に    とらへられ、
  兄は、いづに   ながされて、
  おのれひとりは、 くらま山。
ニ かたきの平家を  ほろぼして、
  わが家(いへ)、源氏を  おこさんと、
  ひるはがくもん、 けんじゅつは、
  人目をしのぶ   よるのわざ。
三 七つどーぐを   なげだして、
  弁慶あやまる、  五条橋、
  金売(かねうり)吉次(きちじ)が、 おともして、
  おちゆく道は、  おーしゅー路。
四 鏡のしゅくの   げんぷくに、
  其名は義経    源(げん)九郎、
  とちゅーのなんぎ、 きりぬけて、
  秀ひら、やかたに、 つきにけり。
五 ほどなく、源氏の 花さくや、
  兄よりともの   めいをうけ、
  あさひしょーぐん 義仲を、
  ただ一うちに、  ほろぼして。
六 ひよどりごえの  坂おとし、
  八島(やしま)の海の 八そーとび、
  だんの浦では、  弓ながし、
  ながく、ほまれを のこしけり。




三編上巻 

(尋常小学第三学年第一学期から第二学期前半用)

?B上 第一 春の山 (佐々木信綱 作詞 納所弁次郎 作曲)

一 桜も今日が、さかりなり、
  太郎の、はたは、赤の色、
  次郎の、はたは、青の色、
  風に、なびいて、ひーら、ひら。
二 ラッパの、ひびき、とほく、さり、
  子らの、かへりし、春の山、
  たふとき人の、石ぶみに、
  松のこゑのみ、しづかなり。


?B上 第二 和気清麿 (田辺友三郎 作詞 田村虎蔵 作曲)

一 わがまゝつのる、 僧道鏡、
  御位のぞみし、  そのをりに、
  神のみつげを、  受けこよと、
  清麿あふせを、  かうむりぬ。
二 清麿宇佐に、   向ふ時、
  おのが心に、   したがはば、
  大臣とせん、   さもなくば、
  きってすてんと、 おどしけり。
三 清きこゝろの、  清麿は、
  おどしにおそるゝ、ものならず、
  神のみつげを、  其まゝに、
  悪僧の、きも、  とりひしぐ。
四 神のみつげの、  御言葉、
  わが大君の、   御血すじ、
  定まりつるを、  のぞみなば、
  きれとありしぞ、 かしこきや。
五 いかりにあふは、 かくごなり、
  つくしのはてに、 ながされて、
  うき年月を、   おくれるも、
  みな大君の、   御世のため。
六 やがてはれにし、 みよのそら、
  めでたく都に、  立ちかへり、
  後にはかみと、  まつられて、
  みいさをあふぐ、 高雄山。



?B上 第三 燕 (石原和三郎 作詞 西洋曲)

一 つばめ、つばめ、つばめ、
   去年のやどを、
    わすれず、きたか、
     かはい、なつかしや。
ニ つばめ、つばめ、つばめ、
   南の国へ、
    かへるか、しばし、
   をしや、なごりをし。



?B上 第四 潮干狩 (佐々木信綱 作詞 小出雷吉 作曲)

一 のりそだ、をって、 しかられし、
  おとゝは、はるか、 あなたより、
  兄さん、たひが、  見つかった、
  あさりなんぞは、  ぼくは、いや。
二 くらげが足に、   そら、そこに、
  おもしろいなー、  うれしいな、
  こゝにも一つ、   あそこにも、
  きそうて、ひろふ、 しおひがり。



?B上 第五 北条時宗 (石原和三郎 作詞 田村虎蔵 作曲)

一 五尺のからだ、 一ぱいに、
  大和だましひ、 こもりたる、
  さがみの太郎、 時宗が、
  鎌倉しっけん、 たりし時。
二 元の大王、   忽必烈(クビライ)が、
  支那を、のこらず、 手に入れて、
  なほ、あきたらず、 我国へ、
  ぶれいの使を、 おこしたり。
三 時宗いかって、 いくたびか、
  来る使を、   おひかへし、
  さいごの使の、 首をはね、
  かくごの、ほどをぞ、 示しける。
四 忽必烈、今は、 こらへかね、
  我日の本を、  一うちと、
  時は弘安、   四年夏、
  大軍つかはし、 せめ来る。
五 かねて、かくごの、 時宗は、
  ふせぎの用意を、 おこたらず、
  朝廷にても、  神々へ、
  ちょくし、たてゝの、 おんいのり。
六 たまたま七月、 三十日(みそか)の夜、
  にはかに、おこる、 神風に、
  三千よそーは、 こなみぢん、
  十万よ人は、  水のあわ。
 合唱「あな、ここちよや、きみよしや、 国威かがやく、日の光。」



?B上 第六 蝙蝠 (田辺友三郎 作詞 納所弁次郎 作曲)

一 鳥と、けものと、なかたがへ、
  いくさ、おこりし、その時に、
  かうもり、ばかりは、どちらへも、
  つかじと、いうて、居たりける。
二 鳥に、にたれど、鳥ならず、
  けものに、しては、羽がある、
  どちらの、みかたも、せぬことは、
  道理と、こそは、きこえたれ。
三 さは、いひながら、かうもりは、
  はた色、見ては、二ごころ、
  鳥についたり、けものにも、
  ついて、ひとりで、てがらがほ。
四 そのうち両方、わぼくして、
  何れも、かうもり、いやしめば、
  ひるは、でられず、ゆふぐれに、
  人目しのびて、とぶとかや。



?B上 第七 平重盛 (石原和三郎 作詞 納所弁次郎 作曲)

一 平治の、いくさに、  兵士を、はげまし、
  源氏の、あらむしゃ、 あしらひあひらひ、
  右近の、たちばな、  左近の、さくら、
  七たび、めぐりし、  あゝその武勇。
二 平家のさかりに、   一門いましめ、
  さすがの父をも、   いさめつ、なだめつ、
  君には忠節、     親には孝行、
  二みち、つくしゝ、  あゝその誠。



?B上 第八 汽車 (石原和三郎 作詞 田村虎蔵 作曲)

一 けむりを、はきたて、トンネルぬけて、
   千里の野原も、一すぢに、
    フヮッ、フヮッ、ガラガラ ガラガラ、
  はしるは竜(りょー)か、うはばみか、
   汽車よ、汽車よ、
    あれ、あのいせい。
二 車をつらねて、山道うねり、
   長い鉄橋、一すぢに、
    フヮッ、フヮッ、ガラガラ ガラガラ、
  はしるは大蛇(をろち)か、大むかで、
   汽車よ、汽車よ、
    あれ、あのいせい。



?B上 第九 新田義貞 (富永岩太郎 作詞  鈴木米次郎 作曲)

一 ひが世にも、ひがまじと、
  たてなほす、まごころの、
  一すぢに、いのりつゝ、
  なげしたち、神うけぬ。
ニ 金の城、鉄のかべ、
  さもかたき、かまくらへ、
  ひとうちに、やぶりける、
  そのいさを、千代くちじ。
三 天(あめ)のした、またみだれ、
  身はつひに、みこしぢの、
  あわ雪と、きえつるも、
  そのひかり、世のかがみ。



?B上 第十 海水浴 (石原和三郎 作詞 納所弁次郎 作曲)

一 大うなばらに、   目をはなち、
  すなはま、はしり、 うをを、とり、
  たべて、からだも、 まるまると、
  ふとってかへるが、 何よりも、
  海水浴の、     よいみやげ。
二 よせくる波に、   身を、うたせ、
  天ぴに、さらし、  しほかぜに、
  ふかれて色も、   くろぐろと、
  やけて、かへるが、 何よりも、
  海水浴の、     よいみやげ。



三編下巻 

(尋常小学第三学年第二学期後半から第三学期用)

?B下 第一 日本三景 (石原和三郎 作詞 田村虎蔵 作曲)

一 島のいろいろ、なみまにたち、
   松のさまざま、水にうつる。
  おもしろのけしきやな、おもしろのながめやな。
   これぞ名におふ、奥の「松島。」
二 砂しろじろと、みさきながく、
   並たつ松の、色あをあを。
  めづらしのけしきやな、めづらしのながめやな。
   これぞ名におふ、「天の橋立。」
三 くゎいろー長く、きしにつづき、
   とりゐ高く、おきにたてり。
  うつくしのけしきやな、うつくしのながめやな。
   これぞ名におふ、あきの「宮島。」



?B下 第二 皇恩 (桑田春風 作詞 納所弁次郎 作曲)

一 子を思ふごと、民おもふ、
  おほみ心ぞ、ありがたき。
  ふかきめぐみの、つゆうけて、
  しげらぬ草も、民もなし。
   あふげ、あふげ、
    おほぎみの、めぐみ。
二 国、をさまりて、民やすく、
  太平いはふ、たのしさよ。
  さかゆくみ代は、あめつちと、
  きはみなきこそ、めでたけれ。
   いはへ、いはへ、
    おほぎみの、み代を。



?B下 第三 大和男児 (東宮鉄真呂 作詞 小山作之助 曲)

  我君のためには、
    身をすてゝつとめ、
  我国のためには、
    家もすてゝはげみ、
  あめ、あられふりくる、
    弾丸(たま)なかをおかし、
  いなづまのきらめく、
    太刀のもともおぢず。
  「ますらたけを、これぞ、
    これぞ、ますらたけを、
  やまと男児、これぞ、
    これぞ、やまと男児。」

[注] 本元子は小山作之助の筆名.



?B下 第四 森蘭丸 (石原和三郎 作詞 田村虎蔵 作曲)

一 三つ四つ五つ、   十、二十、
  かねて、かぞへし、 そのきざみ、
  とはれて数を、   こたへぬは、
  世にめづらしき、  正直よ。
二 六つ七つ八つ、   九つと、
  かぞへて見たる、  つめのくず、
  たらぬ一つを、   たづねしは、
  子供にまれの、   さかしさよ。
三 五十、七十、    百、五百、
  てきよせきたる、  本能寺、
  主君と共に、    ほろびしは、
  あっぱれ武士の、  かがみかな。



?B下 第五 菅公 (桑田春風 作詞 目賀田万世吉 作曲)

一 ま白き梅の、   花よりも、
  公(きみ)がこゝろは、清けれど、
  さがなき人の、  ねたみうけ、
  流され、たまひし、うたてさよ。
二 盛りの梅の、   かをりより、
  公が才徳、    高けれど、
  世に、いれられず、しばらくは、
  うき年月を、   おくりけん。
三 筑紫の、はての、 秋の夜に、
  恩賜の御衣の、  からうたや、
  古(むかし)ながらの、まごころは、
  神も知りけん、  守りけん。
四 やがて罪なき、  証明(あかり)たち、
  とがは許され、  後の世に、
  北野の神と、   まつられて、
  千年のけふも、  梅かをる。



?B下 第六 年の暮 (石原和三郎 作詞 西洋曲)

一 年よや、年よや、
    なれたる今年に、
  今さら別るゝ、
    なごりの、をしさよ、」
  さりとて、とどめん、
    よーもなし。
ニ 年よや、年よや、
    今年は、ゆくとも、
  とくこよ来年、
    花、鳥、雪持て、」
  たのしき春をば、
    まつぞかし。



?B下 第七 養生 (石原和三郎 作詞 田村虎蔵 作曲)

一 およそ、からだの、よーじょーは、
  まづ、第一が、 のみくひよ、
  三度の食は、  ほどをきめ、
  はら八分に、  たべておけ。
二 つぎは運動、  運動は、
  ものゝこなれや、ちのめぐり、
  元気もよくし、 すぢ、ほねを、
  たくましくさへ、するものぞ。
三 其ほか家の、  ふきそーじ、
  湯に入ることも、せんたくも、
  きたない空気を、すはぬため、
  からだに、あかを、つけぬため。
四 玉にも、まさる、このからだ、
  よーじょーのみち、おこたらず、
  進みゆく世に、 ながらへて、
  ながく御国の、 ためとなれ。



?B下 第八 護良親王 (石原和三郎 作詞 納所弁次郎 作曲)

一 かれ高時(たかとき)は、 何者ぞ、
  身は陪臣で、ありながら、
  帝(みかど)のあふせ、かろんじて、
  御国の民を、しへたぐる。
二 から尊氏(たかうぢ)は、何者ぞ、
  わずかの功に、増長し、
  帝の寵を、かさにきて、
  天下をあやふく、せんとする。
三 護良(もりよし)の皇子、これを見て、
  いかで御心、やすからん、
  すみぞめ衣(ごろも)、ぬぎすてゝ、
  弓矢の道に、たゝれたり。
四 大和の、なんは、のがれしも、
  尊氏どもの、ざんげんに、
  父の帝の、もとにさへ、
  まごころ通はぬ、かなしさよ。
五 ところもあるに、天の下、
  日かげもさゝぬ、鎌倉の、
  土のむろやに、こめられて、
  憤(いかり)におくる、うき月日。
六 かくて建武の、第二年、
  陪々臣の、手にけがれ、
  かくれたまひし、くやしさは、
  後の世たれか、わするべき。



?B下 第九 鴬 (笠原白雲 作詞 西洋曲)

一 谷間を出(い)でて、たのしき春を、
  つげくる庭の、うぐひすよ。
  『あれ鳴く、ホーホヶキョ、
      うたへや、ホーホヶキョ。』
ニ 寒さに、たへて、うれしき春を、
  むかへて咲ける、梅が枝(え)に。
  『節(ふし)よく、ホーホヶキョ、
      うたへや、ホーホヶキョ。』



?B下 第十 野遊び (富永岩太郎 作詞 田村虎蔵 作曲)

一 なつかしき、したはしき、
   あそびのともよ、
  ひろやかに、ながめよき、
   しばふのはらは、
  はやくきませと、
   さそはぬばかり。
二 へだてなく、かたりあふ、
   あそびのともよ、
  野も山も、あをぞらも、
   みわたすかぎり、
  ゑがほをみせて、
   われらをまねく。
三 いざきたれ、いざゆかん、
   ちぎりのともよ、
  いさめよや、すゝめよや、
   ちからのかぎり、
  いさむものこそ、
   われらのともなれ。
四 いざとばん、かけりてん、
   ちぎりのともよ、
  のに、やまに、芝生の原に、
   つかれもしらず、
  したしきともと、
   あそぶたのしさ。




四編上巻 

(尋常小学第四学年第一学期から第二学期前半用)

?C上 第一 海の世界 (桑田春風 作詞 納所弁次郎 作曲)

一 千ひろの海の、 その底に、
  高き山あり、  谷もあり、
  いとめずらしき、草や木の、
  花うるはしき、 園もあり。
二 水に生まれて、 水に住む、
  あまたの魚や、 けものなど、
  こゝにかしこに、遊ぶなる、
  海の世界ぞ、  おもしろき。
三 たいまい、さんご、しゃこ、しんじゆ、
  世の人々の、  もてはやす、
  たふとき玉の、 かずかずも、
  みな海よりぞ、 得られける。
四 海は、宝の、  庫(くら)なれや、
  深くも、ひろき、その庫の、
  宝さぐりて、  子どもらよ、
  御国の富を、  つくれかし。



?C上 第二 近江聖人 (石原和三郎 作詞 内田粂太郎 作曲)

一 身を修むるぞ、 本(もと)なると、
  説きおかれたる、聖人の、
  教にふかく、  感ぜしは、
  年十一の、   時とかや。
二 山より高き、  親の恩、
  親のためには、 金銀も、
  禄も位も、   なにかはと、
  大洲を去りしは、二十七。
三 さて、母親の、 ひざもとに、
  朝ゆふ近く、  かしづきて、
  心をなぐさめ、 身をやすめ、
  孝養いたらぬ、 くまもなし。
四 その、いとまには、里人に、
  忠孝の道、   説きをしへ、
  なにし近江の、 聖人と、
  美名を今に、  伝へけり。



?C上 第三 山路の旅 (旗野士良 作詞 納所弁次郎 作曲)

一 世におもしろき、 けふの旅よ、
  一足ごとに、   登る山路
  木の根は踏みこえ、岩根は跳(は)ねこえ、
  はやはや進めよ、 楽しき境に。
二 身はしら雲の、  うちにありと、
  ふもとを望む、  目より気附く、
  あの森この里、  かすかに見えても、
  みなみなわれ等が、経て来しところぞ。
三 山また山の、   奥はゆかし、
  浮世のほかの、  花もありて、
  学びの道ぐさ、  つみてや帰らん、
  それそれめづらし、そこにもここにも。



?C上 第四 夕立 (石原和三郎 作詞 田村虎蔵 作曲)

一 一むらがりの、夏の雲、
    かなたの峰に、かゝるよと、
  見るまに、一天かきくもり、
    耳をつんざく、雷(らい)のおと。
二 電光まなこを、くらまして、
    しのつく雨は銀のはり、
  道は、たきつせ庭は海、
    世界は水に、ならんとす。
三 やがて雷電、をさまりて、
    雨やみ空も、はれ渡り、
  野辺の草木は、生きかへり、
    青葉をつたふ、露きよし。



?C上 第五 蜂 (高木和足 作詞 西洋曲)

一 ブンブンブンブン、ブンブンブンブン、
    蜂が、とぶよ。
  あれ見よ、草葉に、
    とまりつ、たちつ、
  うれしげに、たのしげに、
    あそぶ、蜂を、見よや。
ニ ブンブンブンブン、ブンブンブンブン、
    蜂が、とぶよ。
  あれ見よ、花の上に、
    たわまず、うまず、
  うれしげに、たのしげに、
    はげむ、蜂を、見よや。



?C上 第六 汽船 (石原和三郎 作詞 納所弁次郎 作曲)

一 ゴトゴト、ガバガバ、
  汽船は港を、はなれたり。
  櫓かいも、いらず、帆も竿も、
  大浪、小浪を、かきわけて、
  はてなき大洋(おほうみ)、走りゆく。
二 ゴトゴト、ガバガバ、
  汽船は、はとばを、はなれたり。
  櫓かいもいらず、帆もさをも、
  流るゝ水に、さからうて、
  みなぎる大河、のぼりゆく。



?C上 第七 菊 (旗野士良 作詞 田村虎蔵 作曲)

一 意思(こゝろ)ありとも、白菊、黄菊、
  菊は、うれしき、御宴(ぎょえん)の名誉(ほまれ)、
  えてこそ花と、世の秋の、
   垣根の霜に、ほこらめ。
二 露に匂へる、玉菊、小菊、
  きくもかしこき、御冠(ぎょかん)の挿頭(かざし)、
  さすがに花と、世の人に、
   羨まるゝも、ことわり。
三 かゝるめぐみの、露さへおきて、
  むかし賜ひし、御盃(ぎょはい)のかをり、
  千歳の今も、みなと川、
   浪残(なごり)を嗚呼(あはれ)、きくすゐ。



?C上 第八 行軍 (杉谷代水 作詞 西洋曲)

一 見よ見よ兵士の行軍、
    足並そろへて、きたる。
  あれあれ喇叭(らっぱ)のおと、
    ふし面白く吹くよ。
  テチテタ、ドトトトト、トテトタ、ドトトトト、
   隊伍正しく進む。
二 こよこよ我等の行軍、
    足並そろへて進め。
  ふけふけ行進喇叭、
    ふし勇ましく吹けや。
  テチテタ、ドトトトト、トテトタ、ドトトトト、
   隊伍正しく進め。



?C上 第九 徳川光国 (桑田春風 作詞 納所弁次郎 作曲)

一 梗概志士を あつめては、
  王に勤めて、義を唱へ、
  歴史あみては、皇国(すめぐに)の、
  世々の跡をば、正しけり。
   あゝ高し、義公のいさを、
    西山の月影、きよく。
二 忠臣楠氏(なんし)を、しのびては、
  時を憂へて、世を諷し、
  湊川原に、碑を建てゝ、
  うもれし名をば、あらはしぬ。
   あゝゆかし、義公のこゝろ、
    瑞竜のほまれは、つきず。



?C上 第十 源平の戦 (石原和三郎 作詞 田村虎蔵 作曲)

 『源氏平家の、たゝかひは』
一 まず手はじめが、富士川よ。
   平家の軍勢、五万余騎、
   夜半の、ねざめに、水鳥の、
   とびたつ音に、驚きて、
   え物もすてて、にげ帰る。」
二 つぎは越中となみ山。
   義仲牛を、かりあつめ、
   松明角(つの)に、むすびつけ、
   平家の軍に、けしかけて、
   くりから谷に、追ひ落とす。」
三 つぎは、摂津の一の谷。
   ひよどり越の、阪おとし、
   平家は西に、のがれ行く、
   熊谷次郎直実が、
   敦盛うちしは、この時ぞ。」
四 つぎは讃岐の屋島浦。
   陸と海との、たたかひに、
   景清、しころを、引ちぎり、
   那須野の與一、宗高は、
   扇のまとを、射たりけり。」
五 をはりは、長門の壇の浦。
   白旗赤旗、いりみだれ、
   波をけたてて、戦ふに、
   平家の運命、つきはてて、
   底のもくづと、なりにけり。』




四編下巻 

(尋常小学第四学年第二学期後半から第三学期用)

?C下 第一 二宮尊徳 (桑田春風 作詞 上 真行 作曲)

一 あしたに起きて、 山に柴刈り、
  草鞋つくりて、  夜は、ふくるまで、
  路行く、ひまも、 書をば、はなたず、
  あはれ、いぢらし、この子、誰が子ぞ。
二 勤倹、力行、   農理を、さとり、
  世に報徳の、   教を、つたへ、
  荒地、ひらきて、 民を救ひし、
  功績(いさを)の、あとぞ、二宮神社。



?C下 第二 鶏 (大橋銅造 作詞 西洋曲)

一 コケ、ココ、ココ。
  コッケッコ、コッケッコ、東が、しらむ、
  コッケッコ、コッケッコ、夜が、あけた、
  ねぐらをいでて、朝餌(あさげ)のしたく、
  コッケッコ、コッケッコ、いそがしや。
二 コケ、ココ、ココ。
  コッケッコ、コッケッコ、朝日が、のぼる、
  コッケッコ、コッケッコ、皆起きた、
  太郎さん、次郎さん、学校のしたく、
  コッケッコ、コッケッコ、おくれるな。



?C下 第三 大砲 (旗野士良 作詞 田村虎蔵 作曲)

一 千軍万馬の、ちからでさへ、 破るにかたき、磐石城も、
  一度火蓋、切り放てば、 ドンドン、カラ、カラ、ガラガラ ガラガラ、
  雷轟電激、微塵と摧(くだ)け、 すき [=金偏に挿の旁]もて小砂を掘るより易し。
   世の恐 [りっしん偏に曜の旁](おそろし)の大砲や、 世に、おそろしの大砲や、
  我が古(いにしへ)に、名づけたる、 国崩(くずし)とは実(まこと)なり。』
二 震天動地の、あら浪さへ、 平気にわたる甲鉄艦も、
  一度火蓋、切り放てば、 ドンドン、カラ、カラ、ガラガラ ガラガラ、
  悪竜毒蛇、のたうちまはり、 鎚もて陶器(せともの)、打つより易し。
   世の恐 [りっしん偏に曜の旁](おそろし)の大砲や、 世におそろしの大砲や、
  我が古(いにしへ)に、 名づけたる国崩とは実(まこと)なり。』



?C下 第四 国旗 (佐々木吉三郎 作詞 納所弁次郎 作曲)

一 昇る朝日の、色美しく、 かがやき渡る、日の丸の旗、
   是ぞ是ぞ日本の、 是ぞ我等の国旗なる。
  かがやけ、かがやけ、 世界の果の、はてまでも。
二 海上万里の、波をけたてゝ、 こぎゆく船の、日の丸の旗、
   是ぞ是ぞ日本の、 是ぞ我等の国旗なる。
  ひらめけ、ひらめけ、 なびかぬ国の、なきまでに。
三 御国の民の、住める門(かど)ごと 、祝ひかゝぐる、日の丸の旗、
   是ぞ是ぞ日本の、 是ぞ我等の国旗なる。
  うれしや、うれしや、 共に祝はん、君が代を。
四 数ある国旗の、中にすぐれて、 見るも目さむる、日の丸の旗、
   是ぞ是ぞ日本の、 是ぞ我等の国旗なる。
  いさめよ、いさめよ、 御旗を守る、国民(くにたみ)よ。 第五  五港
一 四面海なる、日の本の、港の数は、多けれど、
  始めに指を、折らるゝは、横浜、神戸、長崎よ。
二 まづ横浜に、かずしれず、むらがる汽船、帆前船、
  積みこむ宝、幾何(いくばく)ぞ、取り出す宝、幾何ぞ。
三 神戸も今や、横浜と、負けず劣らぬ貿易場、
  名も長崎は、早くより、世に知られたる交易場。
四 北海道の、函館は、全道一の、よき港、
  越後の国の、新潟も、開港場の、一つなり。
五 さて、この五つの、港にて、西と東の産物の、
  取引、年々、四憶円、げに盛なる、ことなれや。



?C下 第五 五港 (石原和三郎 作詞 永井幸次 作曲)

一 四面海なる、日の本の、港の数は、多けれど、
  始めに指を、折らるゝは、横浜、神戸、長崎よ。
二 まづ横浜に、かずしれず、むらがる汽船、帆前船、
  積みこむ宝、幾何(いくばく)ぞ、取り出す宝、幾何ぞ。
三 神戸も今や、横浜と、負けず劣らぬ貿易場、
  名も長崎は、早くより、世に知られたる交易場。
四 北海道の、函館は、全道一の、よき港、
  越後の国の、新潟も、開港場の、一つなり。
五 さて、この五つの、港にて、西と東の産物の、
  取引、年々、四憶円、げに盛なる、ことなれや。



?C下 第六 凱旋 (石原和三郎 作詞 田村虎蔵 作曲)

一 天のたすくる、正義のいくさ、
   向かふところ、敵もなく、
   北洋艦隊を、全滅し、
   彼がまよひの、夢をさまし、」
  東洋の、平和を、ちかはしめ、
  御国の、光を、世界に示し、」
   万歳の声、天地をゆすりて、
   凱旋す、我が海軍。』
二 無礼をこらす、義侠のいくさ、
   たゝかふ勝つ、攻むる取る、
   旅順も金州も、おとしいれ、
   彼がまよひの、夢をさまし、」
  東洋の、平和を、ちかはしめ、
  御国の、光を、世界に示し、」
   万歳の声、天地をゆすりて、
   凱旋す、我が陸軍。』



?C下 第七 水鳥 (桑田春風 作詞 納所弁次郎 作曲)

一 花散りこぼるゝ、  園生の池に、
  羽がひを、そろへて、をしどり遊ぶ、」
  ついばむ、花びら、 餌と思ひてか、
  あやおる波間を、  いと楽しげに。』<
二 青柳しだるゝ、   背戸の小川に、
  家鴨(あひる)、鵞鳥の、むれてぞ遊ぶ、」
  雨の日、風の日、  声さわがしう、
  浮びつ、ながれつ、 波のまにまに。』



?C下 第八 雪景色 (旗野士良 作詞 田村虎蔵 作曲)

一 夢に打つおと、  きゝし窓を、
  あけて、おどろく、今朝の雪、」
  塵のうき世を、  一夜にうづめ、
  おもしろし、とは、このことよ。』
二 雪にねざめの、  こゝろ洗ひ、
  あゝゝ清やと、  見る目さき、」
  野山、家むら、  ただ一色に、
  おもしろし、とは、このことよ。』



?C下 第九 卒業の歌 (旗野士良 作詞 西洋曲)

一 日の御旗、晴の席上(むしろ)に、
   頭戴(いただ)く卒業(しるし)の、證書(みふみ)も、」
  師の恩恵(めぐみ)、朋友(とも)の真実(まこと)に、
   斯こそ我が得し、名誉(ほまれ)と、」
  『それこそ思へば、四年(よとせ)のさまざま、
  いまや胸に、うかびて。』(復唱)
ニ 園(その)の花、枝の鳥さへ、
   吾等を祝ふと、めでられ、」
  今日のみは、何に譬喩(たとへ)ん、
   嬉しき心の、おくこそ、」
  『縦(よし)ただ謡ひて、そのまゝ表はせ、
  精神(まこと)こめし、ひとふし。』(復唱)



[注] 原曲はドイツの学生歌 "Krambambuli" で,大和田建樹・奥好義 共編『明治唱歌』第六集の 「梅松」
に採録されていた.
歌唱は,例えば,
Studentenlieder - Krambambuli
http://www.youtube.com/watch?v=9Vq_TItXjVM



?C下 第十 明治の御代 (石原和三郎 作詞 納所弁次郎 作曲)

一 盛なるかな、明治の御代。
   教育の道を、はげまされ、
   深山の奥の、村々までも、
   学校の設置、ゆきとどき、
   日に日に進む、人の智恵。
  祝へ祝へ、明治の御代。
二 盛なるかな、明治の御代。
   殖産興業を、進められ、
   野山の産物、海のもの、
   人の手業に、はた商業に、
   日に日に進む、国の富。
  祝へ祝へ、明治の御代。
三 盛なるかな、明治の御代。
   陸海軍を、ふるはせられ、
   日清の役に、又北清に、
   忠勇義侠の、名をあげて、
   今こそ世界の、日本国。
  祝へ祝へ、明治の御代。




以上

(2009年10月)

2012.05.13     全曲掲載した.
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