東京都中央区は2015年6月8日、2020年の東京五輪後に住宅への転用が見込まれる選手村の予定地などに、地下鉄新線を建設する構想を区議会に報告した。都心の銀座付近から江東区の東京国際展示場(東京ビッグサイト)付近に至る臨海部の延長4.8kmで、事業費は概算で2000億円弱と見込んでいる。
東京都中央区が検討中の地下鉄新線のルート案(左)と、東京都がほぼ同じエリアで検討中のBRT(バス高速輸送システム)のルート案(右、破線内)。東京都(右)と東京都中央区(左)の資料に日経コンストラクションが加筆
東京五輪選手村の建設予定地である中央区南端の晴海地区は、五輪後の再開発などによって人口の増加が見込まれているが、鉄道が通っていない。中央区は14年度、「都心部と臨海副都心を結ぶ地下鉄新線の整備に向けた検討調査委員会」(委員長:森地茂・政策研究大学院大学客員教授)を設置して、同地区を経由する新線構想の検討に着手した。
6月8日の区議会環境建設委員会で、検討結果として新銀座駅(仮)と新国際展示場駅(仮)を結ぶ第三セクターの新線構想を明らかにした。前者は既存の東京メトロ銀座駅に、後者はりんかい線(東京臨海高速鉄道)国際展示場駅にそれぞれ乗り換えられるようにすることを想定。両駅の中間に駅を三つ設置する。銀座駅を経由する東京メトロ線と新線との相互乗り入れは現時点で未検討で、今後の課題だという。
新線の概算事業費は、駅などの施設を5両編成対応とする場合に1625億円、10両編成の場合に1995億円で、建設に5年かかると見込む。開業予定時期はまだ決まっていないが、収支計算のために便宜上、2025年とした。
■ポスト「18号答申」の動きに対応
都心と臨海部を結ぶ新たな交通ネットワークとして、東京都を事業主体とするBRT(バス高速輸送システム)のプロジェクトも進行している。BRTはバス専用レーンを設けるなどして、鉄道のような定時運行を確保する交通システムだ。都は19年度内の運行開始を予定している。中央区は、「地下鉄新線が事業化して本格的な検討を始めることになれば、BRTとの役割分担や、地下鉄駅とBRTの停留施設との連携なども検討の対象になっていくだろう」(環境政策課)としている。
区は事業化を目指して、国土交通省の交通政策審議会が今年度に出す東京圏の都市鉄道に関する答申に地下鉄新線の整備が盛り込まれるよう、都に働きかけていく考えだ。
東京圏の鉄道ネットワークの整備は、これまで旧運輸省の運輸政策審議会が2000年に出した答申18号に沿って進行してきた。この答申が2015年を目標年次としているので、国交省の交政審では鉄道部会の「東京圏における今後の都市鉄道のあり方に関する小委員会」を中心に、新答申の内容を審議している。
都は年内をめどに、同委員会に地元自治体としての意見を伝達する予定だ。意見のなかで中央区の地下鉄新線に言及するかどうかについて、都の担当部署である交通企画課では6月10日、「今後検討していく」とコメントした。
国土交通省交通政策審議会鉄道部会の「東京圏における今後の都市鉄道のあり方に関する小委員会」が5月27日に開いた第8回会合の様子(写真:日経コンストラクション)
(日経コンストラクション 安藤剛)
[ケンプラッツ 2015年6月12日掲載]
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