アニメ会社放火 死者16人に

18日午前、京都市伏見区にあるアニメーション製作会社のスタジオに、40代とみられる男がガソリンのような液体をまいて火をつけ、爆発的な火災が起き、警察によりますと、これまでに16人が死亡したということです。
また、消防によりますと、建物の3階から屋上につながる階段で複数の人が心肺停止の状態で見つかっているということです。
火をつけた男は身柄を確保され、警察が放火の疑いで調べています。

18日午前10時半すぎ、京都市伏見区のアニメーション製作会社「京都アニメーション」のスタジオの建物内で、男がガソリンのような液体をまいて放火し爆発的な火災が起きました。
消防車30台が出て消火にあたった結果、出火から5時間近くがたった午後3時すぎに火はほぼ消し止められました。
出火当時、建物には従業員などおよそ70人がいたということですが、警察によりますと、これまでに16人が死亡したということです。

NHKが入手した図面によりますと、現場のスタジオは南北に長い長方形の3階建ての建物で、建物1階の南側に玄関があり、西側には従業員用の玄関があります。
玄関を入るとすぐにらせん階段があるほか、建物西側にも階段やエレベーターが設置されています。
この建物は1階が事務所、2階と3階がアニメーション製作の作業場だということで、図面上では1階には「音声収録室」、3階には「会議室」などがありますが、そのほかに建物内を仕切る壁はほとんどなく開かれた空間が広がっています。
遺体が見つかった場所は、1階が1人、2階が11人、2階と3階の間の階段が1人、3階から屋上につながる階段が3人だということです。
また、消防によりますと、3階から屋上につながる階段で心肺停止の状態の人が複数いるということです。
このほか、30人余りが病院に搬送され、手当てを受けています。

警察によりますと、火をつけた男は現場で身柄を確保され、持っていた免許証から41歳の男とみられるということです。
男もけがをして病院で手当てを受けているため、警察はまだ詳しい話が聞けていませんが、搬送される際に液体をまいて火をつけたと話していたということです。
捜査関係者によりますと、現場の目撃情報から男はガソリンのようなものに火をつけながら「死ね」などと話していたということです。
現場には刃物のようなものが複数落ちていたということですが、男のものかどうかはわからないということです。
現場では、消防が取り残された人の救助活動を続けるとともに、警察が放火の疑いで詳しい状況を調べています。

【男がガソリン40リットル購入】
火災があった現場から西におよそ500メートル離れたガソリンスタンドの店員によりますと、火災が起きるおよそ30分前の18日午前10時ごろ、男が1人で訪れ、40リットルのガソリンを購入したということです。
男は2つの携行缶に入れて手押し式の台車に載せて徒歩で運んでいったということです。
ガソリンスタンドの店員に対して男は、「発電機に使う」と説明していたということです。
男は年齢が30代から40代くらいで、赤いTシャツのようなものを着て、リュックサックを背負っていたということです。
警察が火災との関連について調べています。

【近隣住民“叫び声が聞こえた”】
現場近くの自宅でカフェを経営する鎌田朋代さんは、当時の状況について、「家の中にいたら突然、外から男の人の声で『しんどい』などという叫び声が聞こえた。怖かったので、しばらく待ってから外に出たら、京都アニメーションの方から黒い煙が出ていた。家の向かいを見たら男の人が座り込んでいて、足のあたりから煙が出ていた。近所の人がその男の人に水をかけていて、その後、救急車で運ばれて行った」と話していました。
また、経営するカフェには、京都アニメーションの従業員もよく訪れるということで、「みなさんまじめで仕事熱心。いい方ばかりなので大変、驚いている」と話していました。

【NHKのディレクターが確保の様子を撮影】
火災現場の近く居合わせたNHKのディレクターが、容疑者とみられる男を複数の警察官が取り囲んでいる様子を映像におさめていました。
撮影したのは、NHKの首都圏放送センターに勤務する吉田達裕ディレクターの取材チームで、京都駅から火災が起きた京都アニメーションの本社に向かっている途中でした。
現場付近に到着した際の様子について吉田ディレクターは、「進行方向に黒い煙が上がっていて近づいていくにつれ周りに消防車やパトカー、救急車が増えていきました。煙もどんどん大きくなり、窓から火が出ているのが見えました。サイレンが鳴り響き、警察官など多くの人がいて現場は混乱していました」と話していました。
そして、現場にほど近い場所で吉田ディレクターたちは、路上に倒れている男を目撃し、映像におさめていました。
撮影された映像には、路上に男があおむけに倒れていて複数の警察官が取り囲んでいる様子が映し出されています。
吉田ディレクターは、「倒れている男がいて、周りに警察官が3人ほど集まり、男に話しかけている様子でした。男の服は右足膝の下からやぶれ落ちていて、靴をはいていない状態でした」と話していました。
吉田ディレクターは、本社での打ち合わせのあと、午前11時ごろから火災が起きた第1スタジオで番組の撮影を行う予定だったということです。

【けが人を介抱した男性】
火事で近くの公園に逃げてきた人を介抱したという76歳の男性は、「服がすすだらけの男女4人が公園のベンチに座ったり地面に寝そべったりしていた。顔や腕にけがをしている人もいたので、ブルーシートを敷いたり、うちわであおいだりして近所の人たちと一緒に介抱した。40年近く生活しているがこのようなことは初めてで、とても驚いている」と話していました。

【京都アニメーションとは】
京都アニメーションは、京都府宇治市に本社があるアニメーションスタジオで、映画やテレビでヒットした「涼宮ハルヒの憂鬱」や「けいおん!」などの人気アニメ作品を数多く制作しています。
東京のスタジオが中心だったアニメーション業界にあって、京都アニメーションは地方から次々とヒット作を制作し、注目を集めてきました。

会社のホームページによりますと、昭和56年創業、社員数は160人ほどで、アニメーションの製作のほかに、関連するグッズの販売や、アニメーションを作るスタッフの養成などを行っているということです。
火事があった京都市伏見区には、「第1スタジオ」といわれる施設があるということです。

【“地方アニメ制作の突破口”】
アニメーションの研究者で、明治大学の氷川竜介特任教授によりますと、「京都アニメーション」は、東京中心だったアニメーション業界で、地方に拠点を置く先駆けになった会社だということです。
氷川特任教授によりますと、京都アニメーションは20年ほど前から「涼宮ハルヒの憂鬱」や「らき☆すた」、「けいおん!」など、次々と話題作を発表し、日本だけでなく海外でも高い人気を集めてきたということです。
特に平成18年に発表された「涼宮ハルヒの憂鬱」は、インターネットでの配信が本格化したこともあり、日本のアニメーションがアメリカをはじめ、海外で受け入れられていくきっかけの1つとなった作品だということです。
一方、当時、東京一極集中だったアニメーション業界の中で、設立当初から京都にスタジオを構えてヒット作を次々と発表し、地方に拠点を置くスタジオができる突破口になったということです。
氷川特任教授は「映像の高いクオリティーや脚本力、それに演出力など総合力があり、京都アニメーションという名前をブランドとして確立させた。日本のアニメを変えてきた会社なので、このような火災が起きて非常に驚いている」と話していました。

【一緒に仕事する学芸員“信じられないし、すごくつらい”】
映画やアニメに詳しく、「京都アニメーション」とともに仕事をしている京都文化博物館の学芸員、森脇清隆さんは、「京都アニメーションの作品はキャラクターの情感などの表現がすばらしく、ファンとも信頼関係が厚い。これまで、トラブルがあったという話は聞いたことがない。『萌(も)え』や『聖地巡礼』という言葉は、京都アニメーションの作品がきっかけに広まるなど、アニメ業界の中では先頭を走る存在だ。このような事件が起きて本当に信じられないし、すごくつらい」と話していました。
また、現場のスタジオをおよそ10年前に1度、訪れたことがあるということで、「建物の2階が、木目調で整えられた作業場で、育児スペースがあるなど、アニメーターが働きやすいようにと配慮された空間で、アットホームな感じを受けた。火事が起きたときは、みなさん、おそらく働いていたと思うので、けがをされた人たちが心配です。また取りかかっている作品も影響を受けていると思うとつらいです」と話していました。

【人気作品で聖地 喫茶店は】
兵庫県西宮市の「珈琲屋ドリーム」は、京都アニメーションの人気作品、「涼宮ハルヒの憂鬱」の作中に登場した喫茶店のモデルといわれ、ファンの間で聖地と呼ばれています。
この店の店主の細海章子さん(62)は、「店には京都アニメーションの社員の方も来てくれていて、知り合いもいるので心配しています。いまは何もできないので祈るばかりです」と話していました。

【ハレ晴レユカイ 海外でも人気】
「京都アニメーション」が平成18年に制作したテレビシリーズ「涼宮ハルヒの憂鬱」では、エンディング曲の「ハレ晴レユカイ」に合わせてキャラクターが踊るシーンが話題となりました。
そっくりにまねをして踊っている動画をインターネットに投稿するのがブームとなり、日本だけでなく、海外の人たちからも投稿が相次ぐなど日本のアニメの国際的な人気を象徴する現象の1つとなっていました。

【献花に訪れたファンの男性】
「京都アニメーション」の東京オフィスが入る港区のマンション前には、アニメファンだという男性が訪れ、入り口に菊の花を手向けていました。
男性は、『けいおん!』や『涼宮ハルヒの憂鬱』など京都アニメーションがつくった作品のファンだということで、「火災のニュースを知って胸が詰まる思いになり、いちファンとして花を手向けたいと思い来ました。中学生のとき作品をみて、友だちと語りあうなどして、いい思い出になっています。この火事で大変だと思いますが、復興してまたいいアニメをつくってほしいです」と話していました。