終わりなき日常の終わり

2019.07.21

ライフ・ソーシャル

終わりなき日常の終わり

純丘曜彰 教授博士
大阪芸術大学 哲学教授

/あれだけの惨事を目の前にしながら、よりタイトな状況で規定の製作スケジュールをこなすのは無理だ。業界全社、いったん立ち止まって、仕事や待遇、業界のあり方、物語の方向性、ファンとの関係を見直し、あらためて大人になる物語を示すこそが、同じ悲劇を繰り返さない一歩になると思う。/

あまりに痛ましい事件だ。もとはと言えば、1973年の手塚プロダクションの瓦解に始まる。同じころ、もう一方のアニメの雄、東映も労働争議で多くの人材を放出。かれらは、それぞれにスタジオを起こした。だが、これらのスタジオは、アニメの製作ノウハウはあっても、資金的な制作能力に欠けており、広告代理店やテレビ局の傘下に寄せ集められ、過労働が常態化していく。

そんな中、74年日曜夜に放送された『宇宙戦艦ヤマト』は、視聴率の低迷以前に予算管理と製作進行が破綻して打ち切り。にもかかわらず、時間帯を変えた再放送で人気を得て、77年に映画版として大成功。当初はSFブームと思われ、78年の『銀河鉄道999』や79年の『機動戦士ガンダム』が続いた。

しかし、サンリオ資本のキティフィルムは、80年に薬師丸ひろ子主演で柳沢きみおのマンガ『翔んだカップル』を実写化し、SFではなく、その背景に共通しているジュブナイル、つまり中高生モノの手応えを感じており、81年、アニメに転じて『うる星やつら』を大成功させる。

なぜ子供以上大人未満のジュブナイルが日本アニメの主流となったのか。中学高校は、日本人にとって、最大公約数の共通体験だからだ。しかし、いま、もはや市場が高齢化してきている。だから、この機に事業再編し、常態化した過労働と決別する必要がある。

あれだけの惨事を目の前にしながら、よりタイトな状況で規定の製作スケジュールをこなすのは無理だ。休もう。番組も、映画も、穴を開けて休もう。業界全社、いったん立ち止まって、仕事や待遇、業界のあり方、物語の方向性、ファンとの関係を見直し、あらためて大人になる物語を示すこそが、同じ悲劇を繰り返さない一歩になると思う。


※ この記事は、大阪芸術大学の意見・見解を代表・代弁するものではありません。


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純丘曜彰 教授博士

大阪芸術大学 哲学教授

美術博士(東京藝大)、文学修士(東大)。東大卒。テレビ朝日ブレーン として『朝まで生テレビ!』を立ち上げ、東海大学総合経営学部准教授、グーテンベルク大学メディア学部客員教授などを経て現職。

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