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(12)紅葉包

紅葉包の折形図 「紅葉包」(遠州六世貞松斎米一馬筆「華包」より)
紅葉包の折形図
「紅葉包」(遠州六世貞松斎米一馬筆「華包」より)


花を通じ四季を楽しむ喜び


紅葉

 「もみじ」とも読み、秋になると鮮やかな赤に色づくカエデの別称ともなっている。他にも、ハナミズキやドウダンツツジ、ソメイヨシノなど、美しく色づく身近な樹木は多い。万葉の時代には「黄葉」が詠(うた)われることが多かった。





 山や街の木々が紅(あか)く染まりはじめ、目に映る風景がガラリと変わる。9月の重陽の節句からお彼岸、時代祭、ハロウィンと古くからある文化と新しく根付いた文化とで、秋は私たちをいろいろ楽しませてくれます。

 今回の華包は「紅葉(こうよう)包」、合わせる花材にはナナカマドの紅葉を選びました。

 左右対称になる紅葉包は他の華包とは少し違い、花を引き立てる凛(りん)とした姿に惹(ひ)かれます。中心にはリンドウ、そして全体にワレモコウを。ナナカマドの躍動感が出るようにシンプルに生けています。掛け軸は祖父でもある先代家元の書です。

 アレンジ作品の方は松ぼっくりと華包を合わせ、秋の庭の賑(にぎ)やかさを演出しました。水引は栗(くり)をイメージし、先を揃(そろ)えずに毬(いが)を表現、遊び心を添えています。

 家の中でも目で楽しめる秋。日本には花やいけばなを通し、季節を感じることができる文化があります。その喜びを感じていただければと思います。


京都華包研究会 大津智永 (おおつ・ちえい)

 1979年京都市生まれ。都未生流副家元。京都華包研究会同人。

小ぶりの華包で、秋の野山のにぎわいを。カラフルな水引で栗の毬をイメージする 色づき始めた木々が凜と。花を包む和紙の色も鮮やかに (京都市左京区・高樹院)
小ぶりの華包で、秋の野山のにぎわいを。カラフルな水引で栗の毬をイメージする
花材=ナナカマド、リンドウ、オンシジューム、松ぼっくり
色づき始めた木々が凜と。花を包む和紙の色も鮮やかに
(京都市左京区・高樹院)
花材=ナナカマド、リンドウ、ワレモコウ

【2018年10月12日付京都新聞夕刊掲載】