半鐘鳴らし 住民助け合って避難

台風19号で千曲川の堤防が決壊した長野市の穂保とその周辺の地域では、事前に取り決めたやり方で、市が避難を呼びかける前から1人暮らしの高齢者や障害者など支援が必要な住民の避難が行われていました。
専門家は「日頃の備えの効果が出たと考えられる」と指摘しています。

台風19号で千曲川の堤防が決壊した長野市の穂保と、その周辺の赤沼、津野、大町のあわせて4つの地区には2300人余りが住み、65歳以上の高齢化率がおよそ40%に上っています。
この地域の自治会によりますと、市が避難準備の情報も出していなかった今月12日の午後5時前に、自治会が1人暮らしの高齢者や障害者など支援が必要な住民の避難を呼びかけ、事前に取り決めたやり方で住民が避難を行っていたということです。
この地域では、古くは江戸時代から繰り返し水害の被害にあい、地域内には、その際の浸水の水位を示す「水位標」が残されています。
そうした水害の経験を踏まえて、自治会では4年前に災害が起きた際の避難のルールを独自に作り、支援が必要な人を誰が助けるのかを事前に決めてそれぞれの住民に依頼しているほか、毎年、防災訓練も行ってきました。
今回の水害では、このルールがある程度機能した形ですが、自治会では、地域の中で2人が死亡したうえ、いったん避難したものの天候の回復に伴って決壊する前に自宅に戻った人がいたことから、今後、避難後の対策についても検討したいとしています。
地域防災に詳しい山梨大学の秦康範准教授は「浸水規模をみれば、もっと被害が出てもおかしくなかった。避難訓練など日頃から地域を挙げて備えてきたことに効果があったのではないか」と指摘しています。

台風19号の大雨で千曲川の堤防が決壊した長野市穂保とその周辺では、堤防が決壊する前の今月13日未明、住民に避難を呼びかけるため、地域内に4つある半鐘が鳴らされました。
このうち穂保に近い津野では、消防団員の山田信幸さん(41)が今月13日の午前1時ごろ、分団長からの指示を受けて半鐘を鳴らしました。
山田さんは「住民全員が無事でいてほしいと、無我夢中で5分くらい鐘を鳴らしました。鐘の音を聞いて逃げたという人もいたということで、よかったと思います」と話していました。

台風19号の大雨で千曲川の堤防が決壊した長野市穂保に近い津野に住む小川京子さん(64)は、氾濫が始まる7時間以上前の今月12日の午後5時ごろから避難を始めました。
これまでにも水害の経験があった小川さんは、雨の量が増えてきたため、市の避難勧告が午後6時に出されるのを待たずに避難を決めたということです。
その際には、隣に住む76歳の1人暮らしの女性に声をかけ、車で一緒に避難しました。
女性は足腰が悪く、自動車の免許も持っていないため、災害が起きた時には、小川さんが声をかけて避難するよう自治会からお願いされていました。
小川さんは「自治会から災害の時はお願いしますと言われていたので隣の家の女性のことはいつも気にしていました。日頃からの意識があったので行動できたと思います」と話していました。

台風19号の大雨で千曲川の堤防が決壊した長野市穂保とその周辺では、堤防が決壊する前の今月13日の未明に、地元の消防団が火の見やぐらに設置されている鐘、「半鐘」を鳴らして避難を呼びかけていました。
台風19号の大雨で千曲川の堤防が決壊し、長野市穂保とその周辺では多くの住宅が浸水しました。
国土交通省によりますと、この場所では今月13日の午前0時20分ごろから川の水が堤防を越え始め、午前4時前ごろに決壊した可能性があるということです。
穂保とその周辺のあわせて4つの地区では、水が堤防を越え始めた午前1時ごろ、地元の消防団が地域内に4つある火の見やぐらに設置された鐘、「半鐘」を鳴らし、避難を呼びかけていました。
地元の消防団によりますと、鐘を鳴らすことは近年、ほとんどなかったものの、見たことのない高さまで水位が上がっていたため、本気で避難をしてもらおうととっさの判断で鳴らすことにしたということです。
この地域では、実際に、半鐘の音を聞いて避難をした人もいました。
その1人で、穂保に近い赤沼地区に住む小滝卓也さんは「半鐘が鳴る状況は普通じゃないと感じて避難しました」と話していました。
鐘を鳴らした地元の消防団の飯島基弘分団長は「当時の状況は、危険を知らせる必要があると感じました。5分でいいから思いっきり鐘を連打するよう指示しました」と話していました。