日本固有のチョウチョウウオ ユウゼン

 チョウチョウウオのなかまは熱帯域を中心に分布し、世界からおよそ120種、日本から51種が知られている。側扁した体の色や模様は多種多様で、観賞魚としての人気が非常に高い。多くの種はサンゴ礁の海に広く分布しているが、中には特異な分布をする種もいる。その一つがユウゼンである。

 ユウゼンは伊豆諸島南部や小笠原諸島などのごく限られた地域に分布する魚で、日本の固有種である。体色は黒を基調にして鱗やその縁に白が入り交じり、各ひれの後端は黄色で縁取られている。この鮮やかな色彩が日本の代表的な布染め技法である友禅を連想させることからユウゼンという和名がつけられた。

 伊豆諸島南部に位置する八丈島の岩礁域では、ユウゼンの姿があちこちで普通に見られる。数百匹が密集して群がることがあり、「ユウゼン玉」と呼ばれている。これを目当てに日本各地からやってくるダイバーも多い。

 八丈島より北の三宅島ではユウゼンの数はずっと少なくなり、それ以北の地域ではほとんど見られなくなる。南房総の海では希に姿を現すことがあるが、秋頃に幼魚が一時的に見られる程度で、やがて姿を消してしまう。生まれてからしばらくの間は浮遊生活を送っていることから、その時期に潮の流れに乗った幼魚が本来の生息域から遠く離れた地域に到達しているらしい。(千葉県立中央博物館分館海の博物館 川瀬裕司)

 ◆海の博物館では6月5日まで、マリンサイエンスギャラリー「水辺の生きものあれこれ-外房の豊かな海と川から-」を開催中


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