ベトナム:人気練炭、日本の無煙炭をヒントに
ハノイ市Hai Ba Trung区Vinh Tuy橋のたもとにある工場で生産される練炭は、無煙・無臭で火付きが良いと評判で、連日多くの人々が買い求めにくる。社長Hoang Van Thuongさんは、14年の歳月をかけ、この練炭を作り上げた。
Ha Nam省出身のThuongさんは、貧しさから抜け出そうと27歳の時に妻と2人の幼い子供とともにハノイに上京した。当時の財産は古ぼけた自転車1台と、現金5,000ドンだけ。住居を転々としながら建設現場の作業員などをして日銭を稼いだ。
わずかな貯えができるとオート三輪を借り炭の行商を始めたが、初日は全く売れなかった。空腹に耐えかねパンの屋台で炭10塊とパン1本を交換して食べたが、500ドンのパンさえ買えない貧しさに涙が溢れ喉を通らなかった。
その後3年間は雇われで炭作りの仕事をしながらわずかな蓄えもできた。妻に内緒で1993年に親類に懇願して集めた土地使用権証明書を抵当に入れ、銀行から9,000万ドン(約5,625ドル)借り、炭圧縮機を購入し工場用地を借りた。だがその矢先に自動車事故に遭い、約1カ月入院することになった。少しでも早く借金を返そうと完治しないうちに退院、炭を港から工場まで運んで精製し妻が行商に出た。
翌年、日本の研修から帰国した友人から日本には火付きが早く無煙・無臭の炭があることを聞き、人生を賭けてみようと思い立った。だが同業者に協力を求めても相手にされず、無謀なことをする奴だと陰口をたたかれた。
当時は工場を立ち上げたばかりで雀の涙ほどの利益から生活費や人件費をやりくりし、残りは全て原料探しに費やした。ぼろぼろのバイクで移動してバイクの上で仮眠を取り、ガソリン代はバイクタクシーをして稼ぎながら移動を続ける生活が13年も続いた。
全国各地を回り、実験を繰り返し命を危険にさらすこともあった。易燃性物質を炭に混ぜ、煙が立ち込めたところで鼻を近づけ意識を失ったこともある。だが諦めず、夜中に工員が寝静まると自分の勘を頼って実験に勤しみ、化学物質を買っては無駄にした。
こうして試行錯誤を繰り返しながら数百件もの実験をこなした頃に、薬用効果のある木を数種類混ぜ炭に合わせたところ、追い求めていた練炭に行き着いた。早速、ハノイ市科学技術局測量品質基準総局に申請したところ、SO2、NO、CO、煙の指数がいずれもTCVN4600-1994基準を満たすことが証明された。
より高品質の練炭を目指し現在も実験を続けており、最近ではココナッツの殻とおがくずを混ぜた練炭の試作品を関連当局に送る準備を進めている。南部で大量に捨てられるココナッツの殻を有効利用できないかと考え、殻とおがくずを粉砕し煮たものを炭にして化学物質を加えると良質の練炭が完成した。殻を再利用することで木の伐採を抑えられ森林破壊や洪水防止にも繋がる。
ハノイで「Hoang Thuong」ブランドの無臭・無煙練炭は多くの消費者からの信頼を得ており、Bac Ninh省、Son La省、ホーチミン市からも噂を聞きつけて人々が訪れる。先ごろ日本にも輸出され高い評価を得ており、日本やフィリピンからビジネスパートナーの打診もあるという。
(Tien Phong)
(2007/07/04 07:41更新) |