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神田沙也加がヒロイン、新たな解釈も 『AKURO 悪路』再演

2008年11月24日

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写真『AKURO』の舞台稽古より。安倍高麿役の坂元健児(左)とアケシの神田沙也加

写真『AKURO』の舞台稽古より。謎の若者を演じる吉野圭吾

写真演出家の謝珠栄

 大和朝廷による蝦夷(えみし)征伐を題材にしたミュージカル『AKURO 悪路』が11月29日から兵庫・東京で再演される。坂元健児・吉野圭吾ら初演キャスト陣に、ヒロイン・アケシとして神田沙也加が新たに加わった。

 平安時代の初め、征夷大将軍・坂上田村麻呂により平定された東北地方を治めるため、都から役人・安倍高麿(坂元)が赴任する。敬愛する田村麻呂の密命により、蝦夷の隠れ里を探す高麿の前に、謎の若者(吉野)が現れ、彼を蝦夷の里へ導く。そこで目にしたのは敗者・蝦夷たちの虐げられた姿だった。都で聞いていた話と180度異なる現実に衝撃を受けた高麿は、蝦夷の人々を深く知るにつれ、大和と蝦夷の和解の道を探ろうとするが――。

 『AKURO』の演出・振付は謝珠栄(しゃ・たまえ)。質の高い歌と踊りにメッセージを込めたオリジナルミュージカルを作り続けている。06年の初演では、対立しあう人間の和解への道を、迫力ある歌とアクションでエンターテインメントたっぷりに表現し、高く評価された。今回の再演では、舞台セットを一新し、殺陣などアクションの見せ場も強化、より迫力ある舞台を作り上げている。

 11月、東京都内のスタジオを訪問し、稽古の様子を見た。今回新たに用意された大きな回り舞台が中央に置かれている。高低差があるため、役者の動きはより立体的になり、斜面を生かした演出も面白い。回転させることで、対峙する2人の場面などは、それぞれの表情がじっくり味わえる。宝塚歌劇のショーなどでも回り盆を使った効果を得意とする謝ならではのダイナミックな演出だ。

 『AKURO』に登場するのは、高麿ら大和朝廷の軍人と、蝦夷の男たち。戦闘の場面では所狭しと走り、飛び跳ねる。アクロバティックな動作がふんだんに取り入れられ、迫力満点だ。
 その中で坂元、吉野、神田らが、裏切りや疑惑、絶望、そして希望とさまざまに揺れ動く感情を歌い上げる。特に第2幕、蝦夷の若者たちと高麿が大和の民との戦いに赴く前、愛する郷土を思って歌い踊る場面は心に残った。

 稽古後、主要人物を演じる4人に話を聞いた。

 坂元が演じる安倍高麿は大和朝廷側の人間だが、赴任地の東北で蝦夷たちと親交を深めるうちに、朝廷の支配に疑問を抱く。まっすぐで正義感あふれる役だ。「まったくゼロから作っていった初演は無我夢中だった。もう一度この舞台に参加できて嬉しい。最初、何も知らなかった高麿は、旅をする中で、いろいろな事実を知っていく。そういう意味では観客の代表ともいえる。観客と同じ目線を意識して演じたい」と話した。

 吉野は高麿を導く謎の若者、実は坂上田村麻呂に成敗された蝦夷の王アテルイの化身を演じる。「アテルイは高麿を導いていくが、押しつけたりはしない。自分が見せたものをとおして、高麿自身に気づかせていく。全体を見通す立場なのでなかなか難しいが、存在感・空気感を大事に演じたい」と語った。

 神田が演じる盲目の娘アケシは、大和朝廷と蝦夷をつなぐ『AKURO』のテーマともいえる重要な存在。はかなさと芯の強さをあわせ持つ。初演では元宝塚トップスターの彩輝なおが演じた。「初演を映像で観て、音楽とストーリーに感動しました。念願かなって参加できて嬉しいです。
 激しい動きに注目が集まりますが、男性の皆さんのアクロバティックな動きに無理にあわせようとせず、より女性らしく柔らかく、どうきれいに見せるかということを意識しています。激しい舞台でもあり、決して明るい物語ではない。ちょっとでも気を抜くと弱くなってしまう。気を抜かないように、千秋楽まで努力を続けていきたい」と目をキラキラさせて語った。稽古後、謝のダメ出しで真剣にメモを取る姿が印象的だった。

 平澤智は蝦夷の一族でアケシの兄オタケを初演に引き続き演じている。「内容が感動的なだけに、あえて感動的になり過ぎないよう注意している。今までの自分の演技を超えて新しいことに挑戦していきたい」と意欲的に話した。

 最後に演出の謝に話を聞いた。
 「今回初演と解釈を変えたところもある。たとえば2幕の蝦夷の里で、高麿と蝦夷の男たちが歌う場面、初演では戦いに行く男たちを送る寂しさを表した場面だったが、再演では、将来への希望を持って楽しげに歌うように変えた。生まれ変わったら大和でも蝦夷でもなく暮らせる、新しい世の中へ希望を託すというのがいいんじゃないかと。
 初参加の神田沙也加は、素直で自然な芝居をしてくれる。最初は他のキャストとの年の差が心配だったが、持っているオーラがあるので、高麿役の坂元とも田村麻呂役の今拓哉とも自然。衣装もとても似合ってきれいで、初演のときとイメージが違うという人もいるかもしれないが、たぶん納得されると思う。
 初演は一から作っていくことに精一杯だったが、再演では見えなかったものが見えるよさがある。新鮮な気持はなくさずに、より深めていきたい。」

『AKURO 悪路』
《兵庫公演》2008年11月29日(土)〜30日(日)、新神戸オリエンタル劇場
《東京公演》2008年12月5日(金)〜12日(金)、東京芸術劇場 中ホール
出演:坂元健児、吉野圭吾、神田沙也加、駒田一、今拓哉、平澤智ほか
演出・振付:謝珠栄
脚本:大谷美智留
音楽:玉麻尚一
詳しくは「AKURO」特設サイトへ


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