麻生財務相は4月9日午前の会見で、20年ぶりに紙幣・貨幣のデザインを刷新すると発表した。

1万円札の肖像画は、現在の福沢諭吉から「日本資本主義の父」と呼ばれる渋沢栄一。
5000円札は、現在の樋口一葉から「女子教育の先駆者」と評され、津田塾大学創始者である津田梅子。
1000円札は、現在の野口英世から「近代日本医学の父」と言われる北里柴三郎に切り替わる。

もうひとつ新しくなる500円硬貨は、肖像画が変わる紙幣とは違い、「桐」などのモチーフは変わらないようだが、実は様々な新技術を導入しているという。

まず目を引くのは、周囲と真ん中で色が違う「バイカラー・クラッド」という構造。
フチのギザギザは、一部を異なる形状にした「異形斜めギザ」を導入。大量生産する硬貨への採用は世界初だという。

さらに日本国と書かれた面の周辺には、日本の硬貨として初めて採用された「微細文字」でJAPAN、500YENと書かれている。
これらの技術は、偽造防止のため導入されたという。

出典:財務省

現行の500円玉と比べると、重さは0.1グラムだけ重くなり、直径はまったく同じ。
500と書かれた面の下部にあった「竹」は元号が書かれるためなくなるが、上部の「竹」、左右にある「橘」、裏面の「桐」というモチーフも同じ。
この草花は、昭和生まれなら懐かしい「岩倉具視」の500円札に代わって500円玉が登場した1982年から変わっていない。

お札のデザインは大きく変わるのに、なぜ「竹」「橘」「桐」は同じなのか?
そして2色はどんな色なのか?
財務省の担当者に聞いてみた。

周りは500円玉、真ん中が100円玉の色になる

――「バイカラー・クラッド」とはどんな意味?

バイカラー」とは2色ということです。
周囲は黄色っぽく、真ん中の部分は銀色の2色になっています。
海外の貨幣では「バイメタル=2種類の金属」と表記する場合もあります。
新貨幣の真ん中は表から見ても裏から見ても銀色ですが、別の金属を挟み込んでいて、このようなものは一般的に工業関係で「クラッド」材と呼ばれています。

新貨幣は二色三層になっているので「バイカラー・クラッド」と呼んでいるということです。

出典:財務省

――今の500円玉は「ニッケル黄銅」だが新500円玉はどんな色になる?

周りが黄色いところが今の500円で使われている「ニッケル黄銅」です。
真ん中は「白銅」なので今の100円と同じ色になると思います。


慣れ親しんだ500円のデザインを踏襲

――お札の肖像は変わったのに、「竹」「橘」「桐」はなぜ同じなの?

今回は、皆さんが慣れ親しんだ500円貨幣の図柄をベースに作ったということです。


――「竹」「橘」「桐」にはどんな意味がある?

もともと「竹」「橘」「桐」は、縁起が良い・おめでたいという意味があります。
そういうところから貨幣の図柄に使われ始めたのだと思います。

――むかし、ニセ500円騒動が起きたけど新硬貨は大丈夫?

以前の貨幣は単一素材でしたが、新貨幣は製造するのが難しいものになりました。
絶対出ないと断言することはできませんが。


――…ちなみに「バイカラー・クラッド」ってどうやって作るの?

具体的な作り方は説明していません。
テレビなどで、コインを圧印で「ガチャン」と作っている様子を見かけたことがあるかと思いますが、お伝えしているのはそこまでです。



新500円玉が、周りは今の500円玉、真ん中が100円玉と同じ色になるとは発見だった。
この新硬貨、いち早く手にしてみたい人は多いだろうが、発行時期の目途は2021年度上期だという。。
ただ、「バイカラー・クラッド」や「異形斜めギザ」は、2008年から発行された「地方自治法施行60周年記念貨幣」の500円でも採用されているので、手にしてみたい方は探してみてはいかがだろうか。