アイドリング!!!がアイドル業界にもたらした功績とその役割

 去る10月31日、若者たちがハロウィンで盛り上がっている頃、フジテレビの球体展望室(はちたま)で、ひとつのアイドルグループがその歴史に幕を降ろした。2006年の10月30日に“フジテレビ発のアイドルグループ”として誕生したアイドリング!!!である。グループ結成から9年+1日目のことであった。
アイドリング!!!は48グループやももいろクローバーZのようにブレイクを果たしたとは決して言えないだろう。しかし、アイドリング!!!がアイドル業界にもたらした功績、果たした役割は意外と少なくない。アイドリング!!!の特徴とともに検証してみよう。
 アイドリング!!!が誕生した2006年は、モーニング娘。の人気も陰りを見せ始め、アイドルシーンが停滞していた時期にあたる。AKB48も前年に誕生していたが、まだ、“秋葉原の地下アイドル”というイメージを払拭できないでいた。AKB48は連日の劇場公演により“会いに行けるアイドル”という新機軸を打ち出したが、基本的には従来のアイドルと同様、歌やダンスのパフォーマンスを見せるスタイルであった。
その中でアイドリング!!!は、レギュラー番組内で、従来のアイドルがほとんどやらなかった極端な“汚れ役”や“笑われ役”に挑戦し“笑われるアイドル”という新たな方向性を生み出したのだ。ここまでバラエティに特化したアイドルグループになったのは、いい意味で運営スタッフにアイドルをよく知るものがほとんどいなかったからであろう。
新しいものは追随するものが生まれてこそ、その価値を発揮する。2008年にスタートしたAKB48地上波初のレギュラー番組「AKB1じ59ふん!(後のAKBINGO!)」ではアイドリング!!!を思わせるような身体を張った企画が多数登場。AKB48のブレイクから始まるグループアイドル全盛時代では、ももいろクローバーZをはじめ、様々なグループアイドルが“笑われることをいとわない”活躍を見せている。歌って踊って笑顔を振りまくことが基本だったアイドルに、芸人並みのバラエティとしての可能性を見出し、そのスキルアップの礎を築いたことは大きな功績といえるだろう。
 さらにアイドリング!!!が斬新だったのは、IT業界の技術革新や世間のインターネットへの依存といった現状にいち早く対応し、オンデマンド放送を活動の主軸にしたことだ。オンデマンド放送自体はアイドリング!!!が誕生する前から存在していたが、地上波で放送された番組の再放送がメインだった従来に対し、アイドリング!!!はオンデマンド放送から新たなものを発信していくという新たなスタイルを構築したのである。しかも、テレビ番組では避けては通れない“放送時間”に拘束されないため、フレキシブルに放送時間を調整できるといったメリットも存在していた。
 決められた時間にアイドル番組を見るのではなく、見たい時にアイドル番組を見るという概念、放送時間にとらわれないアイドル番組というものは現在へと続くグループアイドルにも脈々と受け継がれ、そのスタイルは、各テレビ局のオンデマンド放送のみならず、ニコニコ生放送に代表される“インターネットで視聴者たちがアイドル番組を共有して楽しむ”という進化した文化に発展していった。これはアイドリング!!!がテレビ局主導のアイドルグループであったからだといえるだろう。
 そして、忘れてはならないのが、AKB48とともに、現在に繋がるグループアイドル全盛時代を作り上げたことだ。AKB48は2008年にリリースした「大声ダイヤモンド」の大ヒットで世間での知名度を上昇させ、翌2009年にブレイクを果たしたが、これを機にアイドリング!!!のプロデューサー(当時)である門澤清太氏が“アイドル多様化時代に向かっていることを知ってもらいたい”という思いのもと、アイドリング!!!をホスト的な役割に据えて2010年にTOKYO IDOL FESTIVAL(以下TIF)を立ち上げたのだ。
 TIFは、“さまざまなアイドルが独自性を持ち、互いを補完し合う”というコンセプトのもと、有名、無名を問わず全国からアイドルが参加するという一大イベントとなり、個性的なアイドルの登場やアイドルファンの増加、新たなアイドルフェス誕生に一役を買った。その中で、スタート時点からMCを務めたり様々なアイドルとコラボしたりしてTIFを盛り上げ、イベントのスケールアップに貢献したアイドリング!!!の功績は大きいといえるだろう。こうした動きは、アイドリング!!!が誕生した2006年当時には無かった“アイドルファンの市民権獲得”にも繋がり、アイドルが日本を代表する文化のひとつとして海外に知れ渡るまでの成長を遂げた一因となっている。
 2015年、アイドリング!!!が誕生した頃とはアイドルシーンを取り巻く環境、状況は大きく変化した。これはAKB48のブレイクから始まる48グループの躍進もさることながら、アイドルをあまりよく知らないテレビ局のスタッフだったからこそプロデュースできたアイドリング!!!の活動抜きには考えられないといっても過言ではないだろう。
アイドリング!!!は、来るべくアイドル多様化時代の先兵として地道に活動を続けた。そして、その目的を達成したからこそ、解散ではなく全員卒業という名で9年+1日の長きに渡る活動を終了し、静かにその役割を終えたのである。
 
 

ライター・村田穫

 
 

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