当選からわずか1年、新型コロナウイルス蔓延という国難に直面した山梨県の長崎幸太郎知事。県独自の休業要請個別解除方式や“やまなしグリーン・ゾーン認証制度”など、全国から注目される様々な施策を矢継ぎ早に打ち出す。「やることが『賽の河原の石積み』にならないように」を肝に銘じ、日々の対策に奔走する知事に、独占インタビューを敢行した。

山梨県知事の長崎幸太郎氏。県庁の屋上ヘリポートより富士山をバックに(写真:吉成 大輔、以下同)

当選1年目の国難

 1期目は地ならし、本当に力を発揮するのは2期目から。以前ある県知事をインタビューしたときにそんな話を聞いた。衆議院議員を3期勤めた後の2019年、山梨県知事に当選した長崎幸太郎氏は、地ならしなどする間もない就任1年目にして新型コロナウイルス蔓延という国難に遭遇した。

 「新型コロナについてはもちろん想定外のことでしたが、ある意味、やらなければならないことを前倒しで始めることができたということもある」(長崎氏、以下「」内は全て長崎氏)

 長崎知事本人はそう語る。

 新型コロナウイルスが猛威を振るう今のこの世界は、もちろん想定外ではあるが、同様の危機を私たちは過去に何度も経験している。例えば2009年、世界的に大流行した新型インフルエンザ(当時)は全世界で28万人以上の犠牲者を出したと、米疾病対策センター(CDC)は推定している。このときも政府は「新型インフルエンザ等対策特別措置法」を発出し、事態の終息を図った。

 「新型インフルエンザ等が発生したら国や都道府県において対策本部を設置とか、医療等の提供体制を確保するため 臨時の医療施設の設置など、当時のインフルエンザ特措法にはいろいろと有効なことが書かれています。我が県でも当然そのような態勢になっているとばかり思っていたのですが──」

 ところが実際は、過去の教訓が全く生かされていなかったのだという。

 「まさに言葉通り『白紙に絵を描く』という状態で、全ての仕組みを作らなければなりませんでした。医療に関して言うと、ほとんど病床の準備がゼロ。感染対策に関する物資の備蓄もなかった。そんなゼロ状態からいろいろと知見を積み上げていった。そうするしかなかったのです。たぶん新型インフルエンザのときも同じような状態だったと思う。つまり、いったん積み上げたものを喉元を過ぎた時点で崩してしまった。まるで賽の河原の石積みです。これではだめだと感じました」